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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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103

いつの間にか、俺は祖父母と暮らしている家に戻っていて、祖父が整備した25メートルの射程距離がある射撃レンジで祖父から譲られたライフル銃を使って射撃練習をしている。

ちょうど5発目を発砲し終わってボルトハンドを右手で握り、一度ボルトハンドを持ち上げるようにしてから後方へ引くと、真鍮製のボトルネックと呼ばれる形状をした空薬莢が、僅かに残存している硝煙を漂わせながらエジェクションポートから飛び出してくる。

地面に落ちた空薬莢を拾って、祖父がリロードするのに再利用する目的で空薬莢を回収するために置いている大きな空き缶へ入れて、何気に家の方へ視線を向けると陽当りの良い物干し場で、一人祖母が洗濯物を干している姿が見えた。

祖母の姿を目にして、理由もなく落ち着いた俺は再び射撃練習を行おうと祖父がリロードした243ウィンチェスター弾薬が収納されているプラスチック製の弾箱の蓋を開けて、中から5発分の243ウィンチェスター弾薬を掴み取ると取り出した弾薬は一旦ズボンの右ポケットへ仕舞ってから、ライフル銃を裏返してトリガーガードの前方にある固定式マガジンの蓋を開け、ズボンの右ポケットに仕舞っておいた243ウィンチェスター弾薬を固定式マガジンの中へ互い違いになるよう配列してから蓋を閉じる。

後は、ボルトハンドを操作してチャンバーへ243ウィンチェスター弾薬を送り込めば発砲準備が整うのだが、何を思ったのか振り返って家の方へ視線を送ると洗濯物を干している祖母から100メートルくらい離れた林から5匹のコヨーテが現れたのを発見する。

5匹のコヨーテは洗濯物を干している祖母に向けられていることから、明らかに獲物として祖母を狙っているのは間違いないと判断した俺は大声で

「お婆さん、コヨーテが狙っているから逃げてッ」

と叫ぶのだが、どうしたことか口から声が出ない。

一刻も早く祖母に逃げて欲しくて、再び大声で危険を知らせようとするのだが口から出るはずの声が虚しいくらいに出てこない。

そこで、俺は手にしたライフル銃を構えて5匹のコヨーテへ銃口を向けてスコープを覗き、右手でボトルハンドを操作してチャンバーに243ウィンチェスター弾薬を送り込んでから、一番手前にいて体格の大きなコヨーテに照準を合わせる。

プレリードックのハンティング用としてリロードされている弾薬が、目の前に現れたコヨーテに通用するのか一抹の不安が過りはしたが、祖母が狙われて一刻一秒を争う状況では迷っている暇はない。

とにかく、狙ったコヨーテの前脚の付け根付近にレティクルのセンターが合うと迷うことなくトリガーを引き絞ると、発砲している筈なのに発砲音が聞こえてこない。

しかし、不思議なことに発砲音が響かないのに反動による衝撃は左腕の付け根にハッキリとストレートパンチを受けたような感じで突き上げてくる。

その不思議な感覚に戸惑いながらも狙ったコヨーテに命中したのか、一旦スコープから視線を外して5匹のコヨーテが居る方へ視線を向けると、1匹の大柄なコヨーテが地面に倒れているのが確認できた。

狙ったコヨーテが、地面に倒れているということは間違いなく俺が発砲した弾丸が、コヨーテに命中したのだろうが、確実に急所へ被弾しているのかまでは分からない。

他の4匹は、発砲音が聞こえたわけでもないのに、一番大柄でボス的な存在であった1匹が地面に倒れたことで、直ぐに危険を感じて一目散に逃げて行ったのかもしれない。

物干場にいる祖母が心配そうな表情で

「ジョウジ、どうしたの?」

と問い掛けてくるのに答えるのも忘れて、俺は地面に倒れているコヨーテに向かって小走りで近寄って行く。

倒れているコヨーテの1メートル手前で立ち止まり右手でボトルハンドを掴んで操作して弾薬の排莢と再装填をしてから、倒れたコヨーテを観察すると口と鼻から血を吹き出し、被弾していない方の脚で駆け出すような仕草をしており、開かれている鋭い瞳は俺を睨んで弱々しいながらも唸り声を発している。


そんな目の前で展開されるシーンに圧倒されていると、急に何者かが俺の右肩を揺すってくる。

それに反応して目を開くと、つい今しがたまで祖父母の家であった風景が、空母ジェラルド・フォードへ向けて飛び立った汎用戦術輸送ヘリコプターUH-60ブラックホークの機内に変わっている。

デルタ・フォースの基地を飛び立ってから仮眠しようと眠りに就いて、いつの間にか夢を見ていたのだろうが、それにしても随分と不思議な夢を見たものだと思う。

俺が、祖父からライフル射撃の手ほどきを受けたのは、今から15年近くも前の話であるばかりか祖母がコヨーテに襲われた事実はなく、だいたい俺は祖父母と共に生活している期間、生きたコヨーテを見たことは一度としてない。

中途半端な睡眠時間だったせいか多少とも頭がボーッとしているが、UH-60ブラックホークに持ち込んだバックパックを背負って右手には支給されたSCAR-Lアサルトライフル銃を掴みUH-60ブラックホークの機外へ出てみると、未だ回転しているメインローターが吹き下ろす強風のせいで目を全開にしていられない。

薄目にして何とか飛行甲板を歩くが、暫く歩いても強風は一向に収まる感じがしない。

空母ジェラルド・フォードの乗組員が近寄ってきたので、今夜の天候は悪いのかと聞くと多少時化ているので風が強く波も荒れているとのことで、確かに足元の飛行甲板が心なしに揺れている。

そのような状況で乗組員に案内されて艦内へ入りブリッジへ向かうと、空母ジェラルド・フォードの副長であるブルックリン大佐がおり

「諸君等については、事前に連絡を受けている。目的地までの短い時間だが少しは休息できるように部屋を用意しているので、ここにいるマーク伍長に案内させる」

と言い顎に髭を蓄えた白人のマーク伍長に合図を送る。ブルックリン大佐に呼ばれたマーク伍長は俺達の前へ歩み出ると

「それでは用意しました部屋へ案内しますので、自分の後に付いて来てください」

敬礼しながら言うと踵を返してブリッジを退出するので、俺達もブリッジの片隅にただ突っ立っていたところで邪魔扱いされるだけなので、マーク伍長の後を追ってブリッジを退出する。

時化た影響で揺れる艦内の廊下をふら付きながら歩き4人が待機している部屋へ案内されるが、艦自体は巨大であるものの乗組員の生活空間はお世辞にも快適空間が確保されているわけではなく、その点は陸軍や空軍でも同様なのでスートルールが用意されるとは最初から思ってもいないが、マイクを始めとする大柄な男4人が収まるにしては相当に厳しく狭い。

部屋へ案内してくれたマーク伍長は、何か用事がある場合は、廊下にいる水兵に声を掛けるよう言い残して退出していく。

マーク伍長の姿が見えなくなると、マイクは持っていた荷物を2組ある二段ベッドの手前側にある下段の1つに放り投げて

「俺のような体格の大きい人間は、下のベッドを使うからジョージは上の方を使えよ。仮に、俺が上のベッドを使うと時化で船が激しく揺れたりしたらベッドが壊れて俺が上から降ってくることになるからなぁ」

と笑いながら言ってくる。

こんな場合、俺がマイクに幾ら意見したところで簡単に聞く耳を持たないのを承知しているので、素直に俺が従うしか選択の余地がない。

するとマイクは

「セルジオとスティーブも、早くベッドの位置を決めて楽になった方が良いぞ」

と言いながら自分のバックパックを枕替りにして横になる。

セルジオとスティーブの2人は、暫く話し合った後に比較的体格の良いセルジオが下段を使い、スティーブが上段を使うことになったようで各自の荷物をベッドの上に置く。

暫くは、各自がバッドの上で身体を休めていたが時間を持て余し始めたマイクが

「少し早いが、艦内の食堂で夕飯でも食おうぜぇ。今回のミッションで真面な料理はこれが最後だからなぁ」

半分冗談めかして話すが、確かに本格的な食事時間となって下手をすれば食べられないまま出撃となるよりは早めに食べておいた方が得策ではある。それに、このミッションが順調に展開すればコロンビアのジャングルに長期間も野宿することはないが、何か不具合が発生してジャングルで滞在する期間が長引けば野生生物を捕獲して食糧にしなければならず、そうなれば確保した食い物について美味いとかマズい等ということは問題にしていられなくなる。

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