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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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102

牧場内牧場の中程まで来ると祖父は、俺に向かって緩やかな丘を指差して土が僅かに盛り上がっている箇所を示してながら

「あそこから、狙っているプレリードックが巣穴から立ち上げって出てくるので、そこを狙ってライフル銃で仕留めるんだよ、お前はあそこの巣穴を狙ってやってごらん」

そう俺に説明すると、自分は1メートルくらい離れた所へ移動して

「儂は、少し離れた巣穴を狙っているから、何か分からないことがあれば聴いてくると良い」

と自分のライフル銃に弾薬を装填しながらハンティングの準備を始めている。

その祖父を横目にして、多少戸惑いながらも祖父から寄こされたライフル銃、今となってはモデル名さえ忘れてしまったが昨今出回っているようなボックスマガジンを装着するようなタイプではなく、トリガーガードの前部にある金属製の蓋を外して弾薬を5発装填するタイプのライフル銃で、取り付けられたストックも年季の入った木製だったように記憶している。

ライフル銃に装填した弾薬についても、初めてライフル銃を扱う孫のために243ウィンチェスター弾薬を準備してくれたと記憶しており、弾丸も狙う対象がバーミントであるプレリードックだったので55グレイン(3.56グラム)という軽量弾を選択していたように思う。


243ウィンチェスターは、6×52ミリメートル弾薬で1955年にハンティング用として一般的であった308ウィンチェスター弾薬(7.62×51ミリメートル弾薬)の弾丸口径をサイズダウンさせたスポーツライフル用として開発されている。

特に、欧米でハンティングはスポーツとしてカテゴライズされていおり老若男女を問わず親しまれているので、女性や子供であっても扱い易いが一定程度の威力がある弾薬が必要とされていた事情もある。

243ウィンチェスター弾薬は、特徴として308ウィンチェスター弾薬より弾丸の口径が小さいために、発砲した際の反動が比較的少なく女性や子供であっても扱い易いのに加えて、そこそこの威力がありアメリカ国内でのディアハンティングにおいて最も最小の口径として人気がある。なお、アサルトライフル銃で使用されるケースが多い5.56×45ミリメートル弾薬(223レミントン弾薬)はアメリカ国内でディアハンティング用として威力不足と認識されているため、ディアハング用としての使用は禁止されている。


243ウィンチェスター弾薬を装填したライフル銃に安全装置を掛けてから、スタンディングのポジションで構えて祖父が示してくれたプレリードックの巣穴にスコープを向けて見ているが、肝心のプレリードックはなかなか姿を見せてくれない。

仕方なしにスタンディングのポジションのままで、暫くスコープを覗いていると何の前触れもなく巣穴からプレリードックの顔が見えた。

暫くの間、待たせれていたこともあってライフル銃の重さに焦れていたせいもあったのだが、プレリードックの顔が見えた俺は慌ててトリガーを引いくのだが、トリガーは故障でもしているのかと思えるほど全く動かない。

何度も力を込めてトリガーを引くのだが、結果としてトリガーは動かぬまま発砲することができないでいると、いつの間にかプレリードックは巣穴に引っ込んでしまって姿を消している。

漸く訪れたチャンスに発砲することができなかった口惜しさもあり

「このライフル銃、壊れてない?」

と少し乱暴な口調で祖父に問い掛ける。

俺に声を掛けられた祖父がスコープから目を離して、俺の方へ視線を向けると苦笑いの表情を浮かべて

「ジョウジ、教えた通りにチャンバーへ弾薬を装填して安全装置を掛けたのは褒めてあげられるが、お前がライフル銃を発砲しようとした時に安全装置を外さなければ、どんなに力持ちであってもトリガーを引くことはできないよ」

祖父は答えながら、右手の人差し指で俺が持っているライフル銃の安全装置レバーを指差している。

祖父から言われて、俺は自分のライフル銃に視線を向けると安全装置のレバーはONの位置に入ったままとなっているのが分かった。

それを見て納得した俺が

「ライフル銃が壊れていたんじゃなく、僕がダメだったんだね」

と照れたような表情で祖父に言う。

それを聞いた祖父は、穏やかな表情で首を左右に振ると

「ジョウジ、それは違うよ。お前がダメなわけではなく初めてのハンティングで緊張していたんだろう。直ぐにチャンスが巡ってくるから、今度は落ち着いてトライしてみなさい」

祖父は優しく励ましてくれる。

不思議なもので、祖父に優しく励まされると次は焦らず落ち着いて頑張ってみようという気持ちになってくる。

それから暫くは、巣穴からプレリードックが現れてくるのを気長に待っているが、その間にも祖父のライフル銃から発砲音が聞こえて、確実にプレリードックを仕留めていくのが見なくても分かる。

順調に祖父がプレリードックを仕留めているのが分かってくると、徐々に俺にも焦りが芽生えるが、その気持ちを落ち着かせるかのように、頬に冷たい風が吹き付けてくる。

そんな状態のなか、再び巣穴からプレリードックが姿を現してくれた。

今度こそは思いながらライフル銃を構えている手に力が入るが、プレリードックが立ち上がるのを慎重に待っているとプレリードックが立ち上がって周囲に視線を走らせている。

本来、プレリードックは捕食される側の生き物なので、最も天敵である鷲等を見付けるために視力は相当に良く、少しでも危険を感じるような物や生き物を見付けると直ちに巣穴へ避難してしまう。

ただ、スコープに写し出されているプレリードックは捕食者等を見付けるために立ち上がってくれたお陰で、胴体までが完全に巣穴から出てスコープで捉えている状況なので、俺は一度スコープから視線を外して安全装置のレバーを目視しながら慎重に安全装置をオフに切り換えて、再びスコープを覗くとプレリードックは巣穴に戻ろうとしているのを目にする。

焦った俺は、未だレティクルのセンターがプレリードックの一部を捉えているのが分かってトリガーを引くと、今度は間違いなくトリガーが引かれて俺が持っているライフル銃から「タァーン」という発砲音が聞こえた。

発砲と同時に発生した反動によってスコープは、捉えていた筈のプレリードックから逸れて見えなくなってしまったので、慌ててプレリードックがいた辺りへスコープを戻して見るが、仕留めた筈のプレリードックの姿は何処にも見当たらない。

不思議に思った俺が、スコープから視線を外して肉眼でプレリードックの巣穴を見てみるが、やはり仕留めた筈のプレリードックの姿はなく小首を傾げている俺に向かって祖父が

「あと少しのところで残念だったな」

穏やかな声で祖父が慰めてくれるが

「でも確かにスコープの真ん中にプレリードックを捉えていたよ」

俺が必死なって言うと

「確かに、お前がプレリードックを捉えていたのは間違いないんだろうけど、お前がトリガーを引く時に風が吹いていただろう。その風が原因で、放った弾が横に流れてしまってプレリードックに命中しなかったんだよ」

祖父は穏やかに話してくれる。

「えッ、弾丸って真っ直ぐに飛ぶんじゃないの?」

俺は驚いて疑問を祖父に投げ掛ける。

「成る程、でも銃弾であったとしても空を飛んでる以上は、風等の影響を必ず受けるんだよ。お前がアメリカに来る時に載っていた飛行機だって風の影響を受けて着陸の時に機体がふら付いたのを覚えているだろう」

確かに、祖父母を訪ねて来た時に乗っていた旅客機が滑走路に接地する手前で風に煽られてふら付いた瞬間、墜落するのではといった不安を感じないでもなかった。

だが、日本に居た頃に見たテレビドラマや映画の記憶では、銃から放たれた弾丸は必ず真っ直ぐに飛ぶもんだし、スコープで狙撃する時は必ずレティクルのセンターが狙った箇所を捉えるものとしか表現されていなっかたので、何の根拠もなく勝手に銃弾は真っ直ぐ飛ぶものだとか、スコープで狙う時は必ずレティクルのセンターに合わせるものと思い込んでいた。

「確かに、お爺さんの言う通りなんだろうけど風が吹いてきた時には、どうすれば良いの?」

俺は素直に感じた疑問を祖父に離すと

「そんな時は、スコープの中央にあるダイヤルを弄ってレティクルのセンターを修正するんだが、ハンティングの時みたいにダイヤルを弄っている暇がないケースもあるから、そんな時はレティクルのラインに目盛りが付いているだろう。その目盛りを使って風の状態を見ながら必要な分だけ目盛りを頼りに狙う場所を移動させて撃つんだよ。ただ、どれくらい移動させれば良いのかは口で説明するのは難しいから、そのライフル銃はジョウジが自由に使っても良いから時間のある時に色々と練習して身体で覚えるしかないなぁ」

祖父の答えは恐らく正しいのだろうけど、今の俺が理解するには実際にライフル銃を撃ってみないことには分からないような気がした。

結果として、初めてのハンティングで俺は1匹もプレリードックを捕まえることができなかったが、祖父は6匹のプレリードックを捉えるのに成功しており牧場を去る時には半分の3匹をお礼として牧場主に渡していった。

3匹のプレリードックをお礼として受け取った牧場主は、厄介者のプレリードックを始末してくれたほかに、食糧としてのプレリードックを貰えたことに凄く喜んでいたことを鮮明に覚えているし、俺も一生懸命に射撃の練習をして早く他人に喜んでもらいたいという気持ちがあったからこそ、こうしてライフル射撃のスキルが向上したとも言える。

ただ、改めて祖父が偉大だと思うのは俺をハンティングに連れて行ったのが牧場だったということで、これが山の中や森林地帯であれば熊等の大型動物と遭遇する可能性があるのでバックアップと護身用にするため44マグナムクラスのハンドガンを携行していかなければならず、そうなると俺が練習の成果を求めてハンティングへ行こうとすれば祖父もライフル銃とハンドガンを毎回携行しなければならなかったはずで、如何に孫が大事とは言え44マグナムクラスのハンドガンを射撃経験の少ない孫に持たせるまでの決心がつかなかったのだろう。

その点、牧場であれば飼育している牛等を守るために電気柵等も施しているだろうから大型野生動物と遭遇する機会も確率として低いのでバックアップ用や護身用の拳銃を持たせる必要もない。

しかも仮に、俺へ44マグナムクラスの拳銃まで与えた際に、悪戯等の目的で隠して拳銃を持ち出した場合に誤って発砲するような事態ともなれば単なる過失事故程度では済ませれなくなるのは容易に想像できることである。

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