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わかれ




 公園の葉の色が変わるころに、僕とメブは疎遠になっていた。学校で会っても話さなかったし、帰り道で見かけても声をかけることはなかった。なんとなく彼女のほうからも、避けられているような気がした。それでも、いままでの僕なら彼女に話していたかもしれない。彼女と関わることを諦めたのは、メブが中学の教師と関係があるという噂をきいたからだった。


 ある日、僕は学校に行くのもいやになって、駅のちかくにある公園にいた。ベンチにすわって、なにも考えずに空をみていた。青い空に細い雲が一筋ながれていた。どこからかカップルの声がきこえてきた。僕は大きなため息をついた。


「サイトウ君じゃないか。となり失礼するよ」


 声の主はナナさんであった。白のシャツに黒のスカートといった姿であった。

「こんなところでどうしたんだい。さぼりかね」


「ナナさんこそ。仕事は?」


「今日は昼までさ」彼女はポケットから煙草をとりだして火をつけた。「公園でぶらぶらしていたら、傷心中の少年がすわっていただけさ」


「なにか、知っていますね」


「すこしだけ。君がふられて、彼女をまえに号泣したことくらい」


「泣いてなんかいませんよ」と僕は頭をかいた。「ナナさんは中学教師のことをしっていますか」


「ああ、知っているとも」


「メブはあなたにならなんでも話すのですね」


「まあそうだね。たがいに隠し事はしないようにしている。最近の情報は、メブの母親がまた男のもとへ行ったくらいさ」


「どうして、メブはまた身体を売りはじめたのですか」


ナナさんは険しい顔つきをした。


「母親が、メブの貯めていた金を全部とっていった。メブの祖母が止めに入ったがダメだった。祖母は足を骨折して入院した」と静かに言った。「君はもういちど話し合うべきだ。彼女はなんでも背負いこみすぎるからね」


「いまさら会えませんよ。必要とされていませんから」


「私と約束したじゃないか」


「もう、なにがなんだかわかりません」僕は力なく笑った。


「しっかりしろ」ナナさんは僕の肩をつかんだ。「彼女がそばにいないだけで、彼女のことを忘れられるのか。セックスができないから見捨てるのか。甘えるな。いまひとりでどうしようもない現実と向き合っている彼女に手をさしのべてあげなくてどうする。君はもういちど彼女と会うべきなんだ。迷うな」


「ごめんなさい。ナナさん」僕は立ち上がると、公園から出ていった。ナナさんはなにも言わなかった。


 彼女にできることはなかった。この悪夢のような現実に耐える力など僕にはなかった。ただ時間がすぎればいい。そうすれば、また三人で旅行に行ったときのような楽しい時間が戻ってくるような気がした。それは間違った考えであった。しかし、僕は必死に願っていた。そうして、いくぶん気分が紛れるようにすこしずつ勉強をはじめた。しかし、彼女のことを思い出すと、なにもかも手つかずぼんやりとしていた。


 この悪夢がはやくすぎてください。しかし、神様はどうもしてくれずに、ただ僕が苦しんでいるのを楽しんでみているのではないか疑った。

 僕はK兄さんに願った。しかし、K兄さんの最愛の人に手をだした僕に、その資格があるのかわからなかった。藁にもすがるおもいだったのだ。そうして冬がきた。


十二月の後半のことであった。雪のふる夜に、ひとりの金髪の男が逮捕された。その男は女子高生を殺害すると、その死体を溝にすてた。彼女は裸で発見された。


 寒かっただろう、痛かったであろう。悔しかっただろう。僕はそんなことをおもいながらその話をきいた。


 女子高生のほうも非があったにちがいないと、街の人たちは言った。未成年が身体をうってお金を稼ぐなんて言語道断。まったく正しい意見である。そんな的確な批判をまえに、僕は答えをもっていない。でも、一言いわせていただくと、君らの意見なんて糞食らえだ。




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