表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

織姫と彦星に願う

作者: 黒片大豆

「なんて書いたの?……っぷ! 『お金持ち』だなんて、子供っぽ」

「うっせ」

「わたしは……じゃん! 『織姫と彦星が、今年も出会えますように!』」

「なんだそれ、当たり前じゃん。たとえ雲で見えなくても、年一回イチャコラしてんだよ奴ら」

「うわ、ロマンもなければデリカシーもない」

「うっせ」

「でも……さ」

「ん?」

「年一回、なんだね。会える機会って」

「人間の寿命として考えたら、酷だな」

「そうかな。ちゃんと出会えるだけ嬉しいと思うよ? 羨ましいくらい」

「そうか? 年一回だぞ? なんも連絡が無ければ、お互い忘れちまうぞ普通」

「ううん、相思相愛だったら、しつこいくらいに覚えていると思うわ」

「そんなもんかね」

「んもう! ほんとデリカシーないんだから!」



***



濃い黄緑色(アイビーグリーン)の短冊は、笹に紛れて風に揺れていた。

今なら理解できる、彼女の言葉。小暑の候になると痛いほど頭の中で繰り返される。

後悔しても悔やみきれない。気の利いた言葉すら返せなかった自分が憎い。


空を見上げると、天の川を隔てて織姫(ベガ)彦星(アルタイル)が煌めく。

彼女は今、どのあたりで瞬いているのだろうか。



『また、君に会いたい』



今年の短冊にも、俺は、叶うことのない願いを書き留めていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ