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侵略者 ~漆黒の救世主?現る~


 さあ、遂に「ヒーロー」の登場です。


「ヒーローは、どうにもこうにもならない時にやってくる」もの。


 さあ、一気に物語が進みますよ~。





 メタリオと異なる、明らかに無機的な外見の化け物たちが現れた瞬間から、英傑の形成が逆転することとなった。


 如何なる射程のどんな攻撃も一切通じず、かといって弱点を探ろうにも魔法も効かないし、成す術が無い。


 最近、英傑組で話題となっていた「自分達よりも強い正体不明のアンノウン」

 都市伝説か何かと思っていた物がまさか、自分達のシフトの時に遭遇するとは思ってもみなかった。

……それは、みんなが共通して思ったことだった。





(~戦闘終了後、英傑の6人の少女達から聞き出した、当時の精神状態のコメントより~)






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 親玉と思しき、4本の結晶体の繋がった腕を持つアンノウン<球形(オーブ型)>が1体。

 多面結晶体が強引に人型を形成しているアンノウン<人形(ドール型)>が10体。

 残る15体はメタリオの上級タイプである、クラッドの上位種若しくは成体である複数の腕と頭部を持つ甲冑型モンスター<アースラ>が3体1グループ、合計5グループで構成されていた。


 アースラは6本ある腕と3つの顔が1つにくっついた頭部をフルに駆使し、ほぼ死角無しの視野と攻撃範囲を確保。近付けば全力で殴りつけ、遠距離から仕掛けようにも腕をロケットパンチの如く飛ばしてくる上、一発の威力が高質量でよけないと一撃でやられかねないという難敵だが、全ての腕を飛ばした後は回収までに時間がかかる弱点を突いて一気に攻めるのがセオリーとなる。


 だが、問題は11体のアンノウンだ。


 何せ現時点までで攻撃の概要が全く掴めておらず、過去の遭遇の際にはまるでSF系やファンタジー系のビデオゲームにでも出てきそうな、攻撃範囲・攻撃手段一切不明のミステリアスな代物をウジャウジャと叩き込まれたとの被害報告が上がっていたほどだ。


 実を言うと2280年4月現在、特撮ヒーローが好きな英傑や、ビデオゲームオタクな英傑も所属してはいるものの、当人達が実際に遭遇していなかったのはまさに「不運と言わざるを得ない」

 現時点でその情報を元に、該当する二人が、似た様な敵が特撮やゲームに出てきていないかと検証を行っている段階ではあるものの、それに関しては実質プライベートで行わないといけなかったという問題点が足を引っ張ってしまっていた。

(事情を把握こそしているものの頭が固い学園長兼白金宮殿総責任者のラライヤや、同じく事情を把握しているものの、結局の所相手方のアドバンテージをきちんと把握せずに根性論同然のスパルタ特訓を課す難点を抱えている現・研究部門責任者兼戦闘教官のミレイがプライベート関連の話を持ち込もうとすると「データ云々を集める前に、先ずは基本能力を養え(いなさい)!!」と聞く耳をきちんと持たなかったのである。

……実はこの二人、25年程前にも同じ過ちを犯していたにも拘らず、当時も聞く耳を持たなかったのが仇になり、ある人物の命を危険に追いやったという前科もあるのだが、当人達は全く覚えていないのだ)


「……っの!!何なのアイツ、マジうざいんだけれど!!」

 シャーナの毒舌は、正体不明のアンノウンにも容赦無く向けられる。

 彼女のハルバートはアースラへと向けられていたにも拘わらず、「何故か」遠くにいる筈の<人形>達の腕によって阻まれていた。

 正しく言うと、アースラの近くに「穴みたいなものが出てきた」と思いきや、そこから<人形>の片腕が伸びて光の盾でシャーナのハルバートの斬撃を「完璧に受け止められてしまった」のである。


「その子を離しなさい!!……ユキエ、一緒に!」

「はい!……行けぇーーー!!」


 ルベラのマスケット銃とユキエの弓矢での一斉射撃が始まった。

 本来、マスケット銃は火縄銃同様に弾の装填に時間がかかる難点があるが、ルベラのそれはあくまでも見た目だけであり、エネルギーの弾丸を連射できる代物だ。

 そして、ユキエの弓矢も矢自体は矢を放つ意思を念じると矢が1本~複数本を自在に形成出来るので、こちらも弾数制限を意識すること無く放てる。

 これら二つの神器から放たれる光の弾丸と光の矢は一斉掃射によって、目で把握し切れない数の弾幕となって襲い掛かるのだ。


……しかし、これもあっという間に無効化されてしまう。


 少女を捕えている腕付きの<球形>目掛けて撃った筈の大量の弾幕だったが、それも穴らしき空間を作って瞬間移動してきた数体の人形達が形成した大きな光の盾によって「全て受け止められてしまった」

 少女を巻き込まない様に、攻撃する箇所を見定めた上で放った攻撃だったのだが、集中して撃った攻撃も全て纏めて防御していた。


 それならばと、魔法攻撃を伴った近距離戦を挑むのは、メノウを始めとするイスターシャとマキの近距離組。

「私が牽制を掛ける。……みんな、お願いね。後から続くよ。……<蒼炎>ッ!!」


 メノウが刀型神器を左手で疑似的に納刀し、右手を前に突き出すと、魔法で青い炎の弾丸を連射する。

 それに続いて、イスターシャがガンランスを回転させドリルのような状態にして突撃。その後ろに両手でツヴァイヘンダーを後ろに構えたマキが波状攻撃の用意を整えて続く。


「仕掛けます。……はあああああーーーーーーッ!!」

「そこからぁ、一気にィ!!」


 ドリルのように回転させたガンランスから牽制用の小型エネルギー弾が多量にばら撒かれ、続けて高質量の突撃槍の一撃。イスターシャの突撃に続き、大ジャンプで跳躍するマキが彼女の頭上から現れ、同じく大型且つ高質量のツヴァイヘンダーの一撃が<人形>の壁へと衝突する。


 マキとイスターシャによる連携攻撃<マスドライブ・コンビネーション>


 高質量の近接武器を扱うマキとイスターシャだからこその重い二連続攻撃。

 この技で破れなかった防御と障壁は今まで存在しなかった。


 続けて、<蒼炎>による援護攻撃を終えたメノウが瞬間的に剣術仕込みの平面跳躍をして移動を開始、一気に距離を詰めた彼女が左手に添えていた刀に<蒼炎>の蒼い炎を付与すると、先程も披露していた三連続の剣閃を放った。

「…………抜刀術技・蒼炎三連閃……!」


 マキとイスターシャが後ろへと退避し、メノウの得意技・三連閃に得意魔法<蒼炎>を加えた複合技、英傑の中でも習得率の低い高等剣技である<抜刀術技・蒼炎三連閃>の連続攻撃が光の壁へと襲い掛かった。

 これも、数多くのメタリオを葬ってきた「放った時点で勝ち確定」とまで言われているレベルでの高威力の必殺技である。……英傑の視点では、だが。


 全ての攻撃が当たったことで爆発と土煙が戦場に広がり、メノウが後ろへと退いていたイスターシャとマキの元へ戻った。

 

「へえ……、やっぱりあたし達に掛かればアンノウンだって……!」

「シャーナ!油断するんじゃない!!後ろ!」


 一度距離を取って攻撃態勢を取り直していたシャーナが勝ちを確信した時、彼女の右後ろ側からルベラの怒声が響く。

 シャーナは全体的な能力が高い反面、性格が「他者を平気で見下すメスガキ」と言っていいレベルの問題児であり、彼女の監視役のような扱いを受けている学級委員ポジションのルベラにとっては胃痛と頭痛の種になっていた。

 そして、その傲慢さと油断は、今ルベラの叱責と「真後ろに出現した<穴>から伸びる人形の腕の襲撃」という形で代償となって返ってきたのだ。


「え……!?……ごはあぁっ!!」

 背中に突き刺さるような一撃。

 それがシャーナに襲い掛かったものの感覚であった。

 シャーナは思いがけない一撃で、一瞬意識を失った瞬間に前のめりに倒れ込んでしまう。


ーーーメノウ達の一斉攻撃は、全く通じていなかったのである。


<人形>達が形成する大きな光の壁で、神装の力の根源である<想いの力>を全身全霊に込めているはずの一撃が、「全て受け止められていた」のである。今までのシャーナ達の攻撃と同様に。


「シャーナ!!……だからあれほど油断するなって……!」

 ルベラはシャーナを放っておけず、救助へ向かおうとする。


 そこへ完全に攻撃対象から外れていたアースラ達の「ロケットパンチ」の弾幕が襲い掛かる。

 1体につき6本、それが複数体分という数の暴力でやってくる。


「うわあぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ!!!?」

「ルベラ先輩っ!!」


 一緒に行動しているユキエが気付かないレベルの反応速度で飛び出していたルベラは、危険と分かっていながらアースラの一斉射撃を潜り抜けるも捌き切れず、何本も直撃してシャーナのいる元まで吹き飛ばされる。

 因みに、ルベラはあくまでも放っておけない存在というのは「何とかして精神面を叩き直さねば、という使命感からくるもの」であり、好意的なもので気にかけている訳ではない。

 そして何より、今までの歴史で戦死者を出していない英傑組から初の死者を出させないための心配という意味でも、ルベラはシャーナを救いに行ったのである。


 この時点で戦闘不能者が2名出てしまっている。

 残った4人は早く脱出しないといけないのだが、ルベラとシャーナを置いて脱出は出来ないし、混沌領域(カオティック・ゾーン)をメタリオ大型種であるアースラ達が展開してしまっていると「脱出魔法(エスケープ)」の術式展開も出来なくなってしまう。

 こちらは、常時状況を監視している司令室側の転送用魔法陣からも脱出魔法は使用できるのだが、混沌領域が展開されてしまうと術式展開が出来ない……双方が安全な状態でないと片方が仮に術式展開が出来たとしても、転送が成立しなくなる……という理由から脱出が出来なくなってしまうのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




(…………~~~~~ッ!!……マズい、混沌領域があたしの方にまで広がり始めてる!このままじゃ……)


 状況を見渡せるビルの屋上で、英傑の6人を見守っていたマリナだが、状況が悪化しているのに気付き脱出をしようとするも混沌領域の展開範囲が想像以上に広がっていた。

 マリナがルーグから託された、青い石の付いたペンダントは、一定時間であれば混沌領域に入ってしまっても無害で済む謂わば「防毒」的なアイテムなのだが、それの連続使用時間は決して長くは無い。


 ルーグが所有するそれは、白金宮殿で公的に配布されるオリジナルの量産品ではなく、あくまで緊急脱出用に用いられる「限りなくオーセンティックに近い量産品」であるらしく、彼曰く「10分保てばいい」とのことだった。


 今から脱出しても、何とかビルの1階までは下りられるのだが、混沌領域の広がるスピードがマリナの想像しているものを遥かに上回っていて、領域まで脱出し切れるか怪しい。

 ペンダントを装備していると、混沌領域の展開範囲を目視出来るようになるのだが、そこそこ体力面を鍛えていたマリナでも脱出は絶望的と言えるくらい広がるのが早い。


「……あたし、……このまま、死ぬの……?何にも出来ずに……?自分の無念が、自分の願いが、…………なにも、果たせずに……?」


 死ぬのは、誰だって怖い。

 しかもまだ、大人になっていないにも拘らず、目標を果たすことも出来ずに、そして……何で英傑になれなかったという理由を何も知ることも無いまま……。

 マリナ・ヤオは、この瞬間、絶望と共に死を受け入れることが出来ずに、涙を流そうとしていた。


ーーーーーーその時だった。


<…………僕が何とかする!!>


 女尊男卑の今の戦場に相応しくない、少年の声が、マリナの横から瞬間的によぎった。


「……え?」


 マリナが気付いた時、黒い影が、建物の屋上や壁を経由して物凄いスピードで移動しているのを目撃した。


「……何……あれ……」


 彼女が目撃した「それ」は、間も無く、正体不明のアンノウン相手に英傑が成し遂げられなかった逆転劇を演じることとなる。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





<人形>達の攻撃範囲と射程が全く分からない、空中に形成された穴を経由した攻撃を防ぐのに精一杯でアースラのロケットパンチの再装填を全く妨害出来ず、更にそのアースラのロケットパンチの弾幕でダメージが蓄積するという悪循環が形成されていく。


 意識を取り戻したシャーナとルベラ、そしてそれ以外の4人で二手に分かれている状態で、しかも距離があるという最悪のシチュエーションで合流もままならず、防戦一方。

 更に、混沌領域は通信電波を妨害する特性を持っている為、司令室への通信も出来なくなり、アカデミーの司令室でも「6人の現在の状況を知る手段が無くなってしまう」という四面楚歌に陥っていた。

(実はこの時、アカデミー側からの通信が出来なくなっていた理由が別に存在していたが、それは後で語ろう)


「このままじゃ……、本当に……!」


 ユキエの声は既に、これから待ち受けている「完全敗北の先に起こる最悪の事態」を想像してし、絶望してしまっていた。


「諦めるのはまだ早い……!アカデミーの距離からは遠くない。今、急いで応援のチームを編成しているはずだよ。……だから……!!」


 マキは(アカデミー側で起きていた状況を知らないまま)ユキエを叱咤激励する。正直、応援部隊の編成が本当に行われているかの保証も無いままだが、行われていると信じたいのだ。

 英傑は一人だけで成り立たない。チームを作るメンバーがあってこそなのだ。


(……正直、希望は望み薄だけれど……。マキの言う通り、応援が来ることを信じて耐え忍ぶしか……ない……!!)


<障壁>の魔法を英傑の面々が展開し、武器を盾代わりに耐え続ける。

 メノウは状況を冷静に分析しているが、有るのか無いのか分からない応援を信じるしか行えることが無かった。

 それだけ、相手の攻撃が苛烈で、脱出する余裕も無い状況まで追い込まれているのだ。

 自分達のいる場所と、ルベラ達のいる場所まで50m近く。

 合流するまでにかかる時間はいくら足の速い常人であろうと、7~8秒は確実にかかる。

 英傑は身体能力が上がっているので、一応脚力も強化されているからそれくらいはどころかそれ以上のタイムで合流が出来る。

 しかし、その数秒ですら許されない規模のロケットパンチの弾幕に加え、どこから現れるか分からない<人形>の穴経由の腕伸ばし攻撃で隙が全く無いのだ。


 このまま何も成す術も無いまま、負けるのか?


 誰しもが……、あの傲慢なシャーナですら絶望を抱き、アースラの集団に包囲され、一斉にその牙が向けられようとしていた、その時。




ーーー全てが、変わったーーー




 ……黒い影が少女達の目の前に降り立ったと思った瞬間、アースラの一体が上半身から吹き飛ばされ、その残骸が空中へと飛び散ったではないか。


 続けて、二体目が黒い影によって、目にも止まらぬ速さで上半身と下半身が両断された。


 更に、三体目。今度は、縦から真っ二つにされ、黒い影の目の前で二つに分断された半身が左右へと倒れた。


「……な……。何だ、あれは……」


 敗北を、死を覚悟していたルベラは、目の前で起きている事態を全く把握できなかった。


「嘘よ、こんな事態。……あたしの様な英傑が倒せなかった連中を……どうして、どうして、こんなにアッサリと倒せるのよおぉぉーーーーーーッ!!!!」


 傲慢であるが故にプライドも高かったシャーナは、今起きている事態を見て、現実逃避の叫びを挙げている。


 英傑にとっては信じられる訳が無い。

 何せ、今、今まで英傑が倒すことの出来なかったアンノウン達が、正体不明の黒いアンノウンによって一切の苦労も無く蹴散らされているのだから。


 光の壁を形成し、どこからともなく空中に穴を開けて腕を伸ばしてくる攻略困難であったはずの<人形>がいともたやすく倒されていく。


 ある程度の数が一掃されて、動きを止めた黒い影の正体であるアンノウン。

 今まで電撃的な攻撃の一方で姿が見えなかった<それ>は……


ーーー黒い甲冑。

ーーー怒り肩であることを強調する楕円形のショルダーアーマー。

ーーー攻撃用と思われる膝の三角錐に、その側面にはスラスターと思われる装置。

ーーー背中にも加速用と思われる、小さな翼にも見える左右二対の黒いスラスター。

ーーー赤い鋭角的なデザインのサングラスにも見える、アイセンサーが透けて見えるバイザー。

ーーーそして、風に煽られることによって炎が揺らめいている様な錯覚をさせる、炎の色の様なマフラー。


 まるで、どこかの特撮変身ヒーローの様な雰囲気を持った、漆黒の戦士が……そこにいた。


 ショルダーアーマーのスリットが割れ、三つのパーツに展開すると、放熱の為か蒸気なのか煙なのか分からない白い気体を凄い勢いで放出する。


「凄い……。まるで……」


 特撮ヒーローに理解を示しているマキが形容する<それ>は……


「まるで……正義の味方……。正義の……、ヒーロー……」


<正義の味方>であり、<正義のヒーロー>だった。


「……ここからは僕がやる。……動いたらダメだ」

 黒い甲冑のアンノウンから、初めて、声が発せられた。


 それは、少年の声。


 マキは少年と思しきそれの声を聞き、何故か安心して、それの言う言葉を信じて、動かないことを選択してしまう。


 それを見届けて、黒いアンノウンはショルダーアーマーの放熱を終わらせると展開されていたそれを閉じ、再度攻撃を開始する。

 右腕を前で折り曲げ、左腕は後ろにする構えを取ると、そのまま忍者の如く高速で脚を凄まじい足捌きで前進する。


 それは、英傑の高速移動の方法と比べても、遥かに上の移動速度。

 反応速度も英傑のそれを上回っていた。

 瞬時に大ジャンプし、錐もみ回転で何回回ったか分からない程の回転を繰り広げた後、その反動に任せて背中のスラスターを焚いて<人形>へ右脚を突き出し、それが頭部へと直撃。頭部が爆散した。


 頭が無くなった<人形>の目の前へ着地すると、今度は地面で体全体をスピンさせ、その勢いでその<人形>を蹴り飛ばし、近くにいたもう一体の<人形>諸共ぶつけ、さらに追い打ちで高速移動の後跳び蹴り。二体が粉々に粉砕される。


「……纏めて吹き飛べ!!」


 そして着地地点の近くにいたアースラ5体を確認すると、右腕にエネルギーを集中させ、黒いアンノウンの右手を模した「巨大なエネルギーの右手」が出現した。

 それを後ろへ一度下げた後、一気に左側まで大振りすると、エネルギーの右手が平手で5体のアースラを巻き込み、平手打ちの要領で5体全てを粉砕してしまった。


「……イレイズバイト……」


 まるで熊の手の様な巨大な手でビンタする攻撃のことを、そう呼んだのがメノウには聞き取れた。


 残った敵もまるで赤子の手をひねるかのようにドンドンと撃破され、最後の<球形>の元へ辿り着くと、黒いアンノウンが姿を変える。

 今度は真っ白い、どこぞの水中用ロボットの様なガニ股の着ぐるみみたいな不格好な外見になっていた。


 そして、ホースの様な節のカバーで覆われた両腕を<球形>へと手を伸ばすと、エネルギーと思しき目に見える<何か>を長時間吸い続ける。すると、<球形>の全体が真っ白に変わっていき、まるでガラス細工のようにパリパリと砕けていった。


 空中で捕まっていたままの少女をその不格好な着ぐるみの様な姿でキャッチすると、先程吸い取っていたエネルギーらしきものを両腕を経由して少女へと送るアンノウン。

 少しすると、少女が意識を取り戻し、それを確認するとアンノウンはゆっくりと彼女を下ろし、再び黒い甲冑の姿へと戻る。


「……この子は急いで医療施設に運んだ方が良い。……あと、君達の司令室が危うく襲われそうになっていたから、そちらも撃退してある。それを考慮に入れて、対処を」

「あ……、あの……」

「また逢うことになる。その時は、<僕の敵>になっていないことを祈っているよ……」


 近くにいたユキエに、これからの対処方法とアカデミーの司令室の状況を伝え、黒いアンノウンは去っていった。

 その中で、再び自分が移動をしていた建物の壁や屋上を使って戻る際に、「見覚えがある少女」がまだ同じ場所に立って状況を見守っているのに気付く。


 マリナの近くで一度降り立つと「気にするのは分かるけれど、無茶ばっかりしない方が良いよ」と擦れ違い様に口にし、再び猛スピードで跳躍して飛び去って行った。


 黒い甲冑のアンノウンは、今まで英傑の生徒の中で囁かれていた都市伝説だった。

 何せ、遭遇したとは言え、姿をまともに見た人間は全然いなかったのだから。

 だが、今回のことで遂に目撃者が現れた。しかも6人。


 ここから、本格的に黒いアンノウンについての調査が始まることになるのだが、英傑サイドでその全容が解明されるのは……まだまだ先のこととなる。


<彼>の声を理解し、その正体を知るのは、果たして何時のことになるのか?



(アイツ……、一体何者だったの?……あの台詞、まるであたしに会ったことがある様な言い方を……)


 マリナは黒いアンノウンに思い当たる節があるのだが……、それが誰なのかは……同じく少しだけ先の話となる。






 天地です。


 水面下で書いている作品がスランプに陥っている時は、こうやって別の作品を書くことで解消しているのです……。

 こういう時にヒーローの物語が役に立つなんて、黒いアンノウンはまさに救世主ですよ。


 ……なんて言っていますが、物書きをすることが楽しいのは事実です。

 とある某作品のアンチテーゼ物だというのを忘れてしまうくらいであれば、なお嬉しいのですが……。


 この調子でナイトメア・クライシスも再び執筆再開できればな~と本気で思いますよ……。


 また、お会いできることを楽しみにしております。


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