表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

嵐を呼ぶ転校生 ~始まり~







ーーーアカデミー内の案内図を探していたセイルに、ラフな着こなしの少女が声をかけてきた。


 ウェーブの入ったサイドポニー、所謂ギャルっぽい印象の割にどこか落ち着いた雰囲気が両立している。


「転入生の方?」


「……ん、ああ……スミマセン。この学校なかなか広いので、誰かに声をかけようかと思ってたところなんですよ」


 間が空いたが、セイルは素直に道に迷っていることと返答する。

 同時に声のかかった方へと振り向いた。


 ギャルっぽい女子は自分の方へ振り向いたセイルを見て、一瞬驚いた。

 下手したら、彼の顔は「女の子です」と言われても信用してしまうレベルの中性的な、ある意味で世間一般の男性らしくない「可愛い」が通用してしまう顔つきだったのだから。


「…………、顔つき凄く女の子っぽいけれど……男子なの、ね」

「よく言われますね。母にそっくりだって、父さんからも言われるくらいですし。もう慣れましたよ」

「…………ごめん、侮辱する気は無かった。怒らせたなら、ちゃんと謝るわ」


 ギャルっぽい女子はセイルの顔について、失言したな……と一瞬申し訳なさそうな思いになったが、セイルの方から「大丈夫ですよ。……そういう返しをすぐにしてくれているだけで、十分あなたの優しさが伝わってきますから」と返されて、ホッとした。


「……お詫びと言っては何だけど、最後まで案内するわね。職員室……の前に、先ずは手続き云々だろうから、1階の受付の方が早いわ。君、付いてきて?」


 手で「おいで」のジェスチャーをされ、それに従うセイル。

 彼女の誘導に従うことで、10分と経たずに受付で手続きを片付けることが出来、案内の教官が間も無くやってくる。


「ありがとう。僕だけだと入学式前に間に合うか分からなかったから、ホント助かったよ……」

 

 ペコリと頭を下げるセイルに、ギャルっぽい少女は今までちょっと無愛想な顔から笑みを覗かせる。


「良かった。困っていたから放っておけなかったのよ。……同じ学年カラーだから、またどこかで会えるかもね」

「うん。……その時はまた、よろしくお願いします」


 セイルの制服の左腕には現在の学年を指す色付きの腕章があるのだが、ギャルっぽい少女は女子制服なのでそれを意味する部分は襟元のリボンとなる。

 双方共に、緑色。故に同学年となる。


 教官が「ツクモ君、そろそろ始業近いから応接室に急いでな~」と言われ、セイルは少女へ再度お辞儀をして温厚そうな教官の後ろへと付いていった。

「ヤオ君、人助けは大いに関心するけれど、始業に遅れるなよ~。あと、授業もきちんと受けるんだよ~」とついでとばかりにギャルっぽい少女へお節介を飛ばす教官。


「……大きなお世話ですよ~」とヤオ君と呼ばれた少女は、強くも弱くもない返事を返すが、始業前のベルの音を聴き「ヤバッ!」と急いで自分の教室へと向かう。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 国立ラ・ピュセル・アカデミーは、嘗ては「ありとあらゆるスタッフが全て女性で統一された女子校」として知られていた。


 その理由の大元としては、女性しか選ばれない地球最大の防衛力「英傑」を擁する学校であったこと、そしてその英傑関連で予期せぬ異性トラブルを回避する為という部分が大きかった。


……が、25年前に謎の異性生命体<メタリオ>と人類間で勃発した「神託戦争」に始まる一連の事件を切っ掛けとして、現状の体制を改めることとなり、23年前より男女共学制となったという。


 英傑を支援する組織「白金宮殿(プラチナムパレス)」もこの体制変更には同意するも条件として引き続き、

 ①組織のスタッフは、今まで同様、英傑経験者やその関係者のOGのみとし、OBなどの男性スタッフは特例を除いて認めないこと。

 ②支援を行う機関・組織は、白金宮殿が厳正に調査をし、認可された存在のみ……を、引き続き厳守すること。

 ③なお、その引き換えにアカデミーは男性スタッフも採用することを認可するが、①②の条件が破られる場合は再検討の可能性があることを了承する。

……を、了承させた。


 以降は神託者の啓示により、白金宮殿の協力の元、全世界で「防衛手段として英傑を選別する」こととなり、ラ・ピュセル・アカデミーは全世界に分校が存在する国際組織へと姿を変えた。


 そして、ジパニア地方に存在する、御柱の置かれたラ・ピュセル・アカデミーを本校とすることになる。


 必要最低限のシステムこそ厳守したまま、白金宮殿をバックとした「ラ・ピュセル・アカデミー」は今の男女共学制を維持しているのだ。







 


ーーー時は戻り、午前8時40分。




 高等部・普通科2年C組、ギャルっぽい少女こと「マリナ・ヤオ」はお気に入りである窓際の自席で、担任の話を半ば聞き流して窓から見える光景をボーっと眺めている。


 いつもならクラスメートの女子達とHR(ホームルーム)開始前まで駄弁るのが習慣であるが、今日に限っては転校生の男子を助ける為に時間を使ってしまったので、いつもの調子が狂ってしまった。


 部活動に「今は」所属していないマリナにとっては、朝に出来る数少ないルーティーンだったので……と残念な気持ちではあったが、人助けをしたことでせめてもの充足感を得ていたのは、事実。


「……と、そろそろ入学式が近いからやることやらないと、だな。みんな、一度静かに~~」

 と、担任が話を切り上げて、両の平手でパンパンと鳴らして静かにするよう促した。


「……と、いうことで、クラスの皆に吉報の~~<転校生紹介の時間>だ。……男子諸君には念のために言っておくが、可愛い顔しているが、れっきとした男子だからな?変に盛り上がるんじゃないぞ?先生はその手の趣味には理解は示すが、御相伴(ごしょうばん)にあやかる気も無いからな」


 同時に注意を促すが、「可愛い顔」というワードでクラス全員がどんな奴なんだ?という興味を引かせることとなった。……転校生というワードで、気付いたマリナを除いて、だが。


(……転校生で、可愛い顔……って、ことは……まさかあの時の……!?)


 マリナは先程あった手続きのやりとりを少しばかり聞き耳立てていたのだが、今日の転校生は彼しかいないという情報を取り込んでいた。……そうなると、答えは……


「ツクモ君、入ってきてくれ」という担任の言葉で、女顔寄りの中性的な少年が教壇側の扉よりトコトコと足音を立てて教壇の右側でクラス全員の方を向いた。


「本日からみんなの新しい仲間となる、セイル・ツクモ君だ。ミハシラノオカにはまだ慣れていないようだから、みんな色々と教えてあげてくれよ?……ツクモ君、みんなに挨拶を」


(や……、やっぱりだった……!)


 転校生の顔を見て、またどこかで会えるかも……とは言ったが、こんなに早くに再会するとは思わなかったマリナ。ショックではないが、ちょっと気まずい感じになってしまう。


「ミハシラノオカに最近越してきた、セイル・ツクモです。……宜しく、お願いします」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








 一方その頃。


 学園長室では、元・英傑特別クラス(通称:英傑組)の担任で、今は学園長であるラライヤ・クランが、アカデミーの別所に存在する英傑の作戦司令本部兼ラボ「中央講堂」にいる戦闘部門総責任者のミレイ・アイムス(元・対メタリオ研究部門責任者)とモニター式通信機で交信中であった。


「入学式という大事な日に、アンノウンの反応ですって!?」

 神託戦争当時はショートにしていたが、今は伸ばした髪を蛇腹状に畳んで留めた後ろ髪にしている眼鏡の女性……ラライヤが、思わぬ侵略者の出現の報を受け、驚愕の表情を浮かべる。


<現状は、防衛隊が監視している段階だから、本格的に攻撃が来た場合は英傑組の出番もあるかもしれないってことさ。昔に比べれば、防衛隊だけでもメタリオ相手なら対応は出来る訳だが……な>


 モニターに映るのは、ラライヤとは逆に嘗て伸ばしていた髪を切って、ショートヘアーに変えて上に作業着を羽織っている女性・ミレイ。


<なんなら、入学式中にでも来たらプレゼン代わりに英傑組の活躍振りを見せるのも一つの手だぞ?……規模を見る限り、偵察部隊っぽいから士気向上にはもってこいだし、いざという時の備えもしてある>

「英傑組の活動は遊びではないのはあなたも分かっているでしょ……?ミレイは相変わらずすぎるわ……」

<……仕方無いだろ。ここ最近、アンノウンがアンノウンを倒している……なんていう噂が広がり過ぎているだけでなく、英傑がそのアンノウンに勝てていない……という情報があるくらいだ。……こういう時くらいは、な>


 ミレイのタブレット経由で、ラライヤのモニターには現在出撃シフトに入っている英傑組の生徒のリストが表示されている。

 本日のシフトは、中等部3年・2名と高等部2年の・4名の計6人。高等部と中等部の入学式はずらしてあるので、スケジュールに支障を来たしにくい学年を配置しているが、状況次第では緊急シフトもある。


<サルース、リーリ、クモンキは入学式の対象だから、絶対に出撃させられない>

「高等部生徒会長であるヒイラギザワさんも同様ね。……その4人にはあなたの言うプレゼンに協力してもらうことがあるでしょうけれど、出撃する6人には油断禁物の伝言と、いざという時は遠慮無くヘルプコールを送信するように伝えておかないとね」


 通信を終了すると、出撃シフト対象6人のホロフォン(立体映像投影型携帯電話。スマートフォンに該当する装置)へ通信を送る。


「こちらラライヤ。6人とも、入学式の日に申し訳ないけれどアンノウン反応がありました。防衛隊が排除出来ない場合、貴方達に出てもらう必要があるかもしれないので、そのつもりで」




 6人の了解の返事を確認後、通信を切ると、校内の電話から入学式会場となる高等部体育館へと移動するように女性教官からの通信が入る。


 入学式、中等部から引き続き通う新入生・他校からの途中編入生どちらにとっても大事なイベントの日。新年度早々から、侵略者への対応が急務となった。





 最近英傑組内を騒がせている謎のアンノウンの話諸々含めて、胃に穴でも空きそうな気分で高等部体育館へと向かうことになるラライヤであった。








 天地です。


 本命となるバトルは、次回以降で行けるかな~~というペースです。


 気分で書いているところもある為、次回も同じ間隔で更新できるかは何とも……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ