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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第2章

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2-16 森の入り口の監視 1

本日もよろしくお願いします。


 ミニャが布を織り始めてから数日間、賢者たちは下流で調査を進めていた。


 水神王たちが初めて人を発見した初日は、それ以降に人を見ることはなかった。

 それからまるまる2日を費やして観測したが、森に入ってくる人は他にもいた。


 賢者たちは彼らをラノベやゲームに因んで、『冒険者』と呼ぶことにした。


 ここは毎晩行なっている定例会議のスレッド。

 そこで観測班から報告がされた。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

【4月6日】第10回 定例会議

  ・

  ・

  ・

45、ワンワン

 この3日間で観測できた冒険者は全部で10人。全員が日本人と北欧人のハーフのような顔立ちだ。人種は普通人が6人、ケモミミが4人。この中で日を跨いでやってきたのは4人いた。つ【画像10枚 それぞれ異世界人】


46、名無し

 あっ、このお姉さん、初日に男とチューしてた人だ!


47、名無し

 俺よりも若かったのに、2人はどこまでいってるんだろうなぁ。


48、名無し

 そりゃ、異世界人だし娯楽もないだろうからなぁ。きっといろいろ早い。


49、名無し

 異世界だから娯楽がないってのは異議を申し立てる。テーブルゲームなんか古代エジプトの時分にはあったんだぞ。


50、名無し

 話が脱線しているぞ。


51、ワンワン

 続ける。彼らを見たのは11時から14時の間だ。それ以外の時間帯では、一切、人を見ていない。推測になるけど、川沿いにある大岩を目印に活動しているのだと思う。


52、名無し

 あの大岩を帰る目印にしているって考えると、10人は少なくないか?


53、名無し

 そもそも冒険者という職業が俺たちの空想の可能性は十分にある。村に住んでいる狩人と考えれば3日で10人見たのは十分な数だと思う。


54、ワンワン

 数に関しては、俺たちが観測していた地点が探索ルートのひとつに過ぎないのだと思う。全員が同じルートを辿ったら、後のヤツに採取物なんて残っちゃいないだろうからね。


55、名無し

 あー、それは論破力大だわ。


56、名無し

 冒険者の日程を推測してみた。日の出と共に起きて8時から森に入り、片道4時間の大岩に来て、探索2時間、戻りで4時間なんて感じでどうだろう。大岩は中級者ルートの1つみたいな感じ。


57、ニーテスト

 いろいろな考察はあるだろうが、なんにせよだ、彼らの活動時間が知れたのは大きい。つまり、夜には人がいないってことだからな。


58、名無し

 よし、サバイバー、出番だぞ。ちょっと森の入り口まで走ってこい。


59、サバイバー

 まあやれと言われればやるけれど。


60、ニーテスト

 ああ、悪いがちょっと行ってきてくれ。


61、サバイバー

 了解。あと悪いけど、任務が終わったら8時まで寝させてもらうからね。


62、ニーテスト

 了解した。


63、名無し

 サバイバーも寝るんだな。


64、サバイバー

 寝るよ!


65、名無し

 片目ずつ閉じて脳を休ませて、24時間活動するもんだと思ってた。


66、ニーテスト

 今回の任務だが、まずはサバイバーを先行させて川筋の状況を確認してもらう。その30分後にカヌーを出発させ、秘密工房で作られた人形を輸送する。先行するサバイバーが野宿している人を発見した場合は、その付近に前線基地を作ってカヌーを保管し、サバイバーにだけ森の入り口へと向かってもらう。


67、名無し

 いいと思います!


68、名無し

 野宿しているヤツなんているかな? 大岩に来ていたヤツとか日帰りで来ていたっぽいし、野宿のメリットが少なそうに思える。


69、名無し

 僕たちに想像のつかない理由で野宿する場合もあるだろうし、用心に越したことはないと思うよ。異世界なんだし。


70、ニーテスト

 では、そのように。それじゃあ、定例会議を続ける。次の議題は——


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 こうして先行してサバイバーを走らせ、懸念していた野宿勢は特に見つからずに、およそ5km下流に森の入り口を発見した。遅れてカヌーも無事に到着。


 森の外は丘陵地帯で、丘の上に茂った草が月の白い光を浴びながら風に揺れていた。

 とりあえず一つ目の丘の上に登ってみたが、他の丘に阻まれて先々の様子は見えなかった。


 森の入り口の川には幅2mほどの木橋があり、床板の様子からかなり多くの人が利用しているのが見て取れた。


 水神王がカヌーで輸送してきた人形たちに賢者が宿り、森の入り口に最前線の秘密工房が作られるのだった。




『ワンワン:こちら森の入り口監視班ワンワン、スタンバイ完了』


『覇王鈴木:同じく覇王鈴木、スタンバイオーケー』


 ミニャがまだスヤスヤ寝ている朝早く。

 賢者たちは朝から元気に盗撮のスタンバイを完了させた。

 ちなみに、本日のミニャの予定は掛布団作りである。【2-14 掛布団 参照】


 監視班がいるのは、森と丘陵地帯の境目。

 その監視方法はシンプルだ。

 川の左右の岸辺にある茂みに2つの穴を掘り、そこに潜んでいるだけである。


 穴は深く、すぐに内部へと逃げられるようになっている。茂みの中にある穴なので周囲には木の根が張っていて、掘り起こすにはかなりの労力が必要なはずだ。それぞれの穴の中には人形が4体ずつおり、交換することで長時間の監視が可能になっている。

 なお、穴の入り口と賢者の上半身は苔でカモフラージュされている。


 準備は万端。しかし、来るのがちょっと早すぎた。一向に誰も来ない。

 スタンバイオーケーと格好つけたが、いきなり暇になった。


 だが、そこは賢者。

 スレッドに書き込んでいれば無限に時間を消費できる生き物である。あまりに時間を消費しすぎて、気づいたら数年ニートをしちゃった賢者もいるくらいだ。

 覇王鈴木に至っては探索委員会のクエスト発行の仕事があるので、なおさら暇することはない。

 穴の中に入っている交換用人形と入れ替わりつつ、待つこと2時間ほど。


『ワンワン:あっ、やばっ! 覇王鈴木、人が来た!』


『覇王鈴木:やべ!』


 2人は慌ててウインドウを最小モードにした。なにが監視班か。


 やってきたのは、2人組の男たち。

 顔立ちはやはり日本人と北欧人のハーフといったような容姿で、身長はどちらも170cm強くらい。靴を脱げば170cmを割るかもしれない。


 服装はまさに冒険者といった様相。

 どちらも生成りのズボンを履き、その上から革製の防具でスネやヒザを保護している。靴も革製のブーツだ。上半身はやはり生成りの服を着ており、その上に謎の素材で作られたラメラアーマーを着用している。

 片方はマントを着用しており、両者ともリュックを背負っていた。

 賢者たちの大好物である武器は、片方は手斧、片方は鞘の形状からナタだと思われる。また大振りのナイフを2人とも所持していた。

 武具を含めてアイテムは全てが使い込まれており、ベテランといった風体だ。


 本日までに布を織っていた賢者たちだけに、生放送で注目されたのは意外にも布の質だった。おそらく植物繊維の服で、賢者たちが織った布よりも上質に見える。ぐぬぬ。


 監視班はすぐにニーテストに連絡をして、予定通りの行動を開始する。


 冒険者たちが森と草原の境目までやってきた。

 ある程度を移動してきたようで、すぐに河原へ降りて石に座って休憩を始めた。

 覇王鈴木から3mほど、その対岸にいるワンワンからは10mほど離れている。


 男たちが座る石の近くには焚火の跡があり、頻繁に使う休憩所になっているのだろう。もちろん、その跡があるのでこの場に監視班を展開しているのだが。


【81、ニーテスト:すぐに検証を始める】


【82、ワンワン:了解。こっちの準備はオーケーだ】


【83、覇王鈴木:こちらも大丈夫だ。始めてくれ】


 ニーテストにより、覇王鈴木がいる穴の中で賢者が召喚された。


 男たちは召喚に気づかない。

 以前、サバイバーがゴブリンの集落へ向かう際に動物を対象に同じ実験をしたが、その時も動物たちは気づかなかった。やはり、賢者召喚は第三者が気づくようなものではないのだろう。


 一方、ワンワンのいる対岸の穴の中でも賢者が召喚され、その賢者が土の中にあるツルを引っ張った。そのツルは土中に掘られた穴から5mほど離れた茂みに繋がっており、カサカサと茂みを軽く揺らした。

 それと同時に、ワンワンは縮小化していたウインドウを男たちに見える程度まで拡大した。


 男たちは川の対岸で揺れた茂みへすぐに視線を向けた。手はいつの間にか腰の武器に添えられ、いつでも抜ける構えだ。

 揺れた茂みから男たちの距離は12mほどあった。絶えず聞こえる川の音や森の騒めきの中ですぐに茂みの音に反応するところから、自然ではない音を聞き分ける能力に長けているようだった。


 一方で、かなり目立つはずのウインドウは見えていないようだ。

 これも動物実験と結果が同じであり、ウインドウもまた限られた者にしか見えないのだろう。


 男たちは何事かを話し始めたが、覇王鈴木たちはその言語を理解できなかった。


『覇王鈴木:おいおいおい、ヤバいな。言葉がわからないぞ』


『ワンワン:いや、大丈夫だよ。ウインドウの下の方を見てみな』


 ウインドウに表示されたワンワンのコメントを見て、覇王鈴木はそのまま視線を下部へと向けた。すると、ウインドウの最下部に見慣れない表示があった。そこにはこう書かれていた。


(茶髪の男:そういえば、言おう言おうと思ってたんだけどよ)


 どうやら、ウインドウには異世界言語の翻訳機能がついているようだ。これは生放送を見ている賢者たちにも同様に表示された。

 ミニャは日本語を話すので、この機能は初めて発見したものだった。


 異世界人は冒険の前にどんなことを話すのか。「森の気配がおかしい」とか意味深なことを言っちゃうのだろうか。賢者たちがワクワクしながら見守る中、茶髪の男は続ける。


(茶髪の男:この前さ、シャロンちゃんがジョイのやつとキスしてるところ見ちゃったんだけど)


 凄く俗な話だった。


(マントの男:マジで!? どこでよ!)


(茶髪の男:正午石の近く。仕事中だってのに、これがもう舌ぶち込んだ濃厚なヤツでさ。そのあとマーシーのやつが合流したんだけど、慌てて離れてたぞ。俺、森から見てたんだけど、あわあわしちゃったよ)


(マントの男:ふはっ、そりゃ慌てるわ。あいつらって3人とも同じ村から出てきた幼馴染だったよな)


(茶髪の男:ああ。だからさ、最近、森に入るたびにジョイの死体が見つかったらどうしようってひやひやしてんだ)


(マントの男:嫌だねぇ)


 などと話しているようだ。


『覇王鈴木:こっちが嫌だわ! なんで異世界人の昼ドラ聞かなくちゃならねえんだよ!』


『ワンワン:うぅうう……中学生の頃の苦い記憶が……っ! なんであんなワルと……っ!』


 賢者たちに軽くダメージを与えつつ、検証は続く。

 次は鑑定についてだ。


 冒険者仲間の昼ドラにキャッキャしている男2人に向けて、鑑定魔法が慎重に使われていった。

 鑑定魔法は5m以内が射程範囲なので、2人に近い覇王鈴木がいる方でのみ検証されていく。ワンワンの方の監視穴は10mくらい離れているのだ。


 メイン監視員の覇王鈴木以外には、穴の中に3体の人形が入っているのでそれに賢者たちが交代で宿されていった。ちなみに覇王鈴木はジョブが戦士なので、雷属性も召喚されて検証。


 何度も召喚を繰り返すが、やはり男たちは召喚に気づかなかった。


 一方の男たちは休憩から準備に行動を変えた。

 リュックから謎の草を取り出し、それを川の水にサッと潜らせる。その草を2人で分けると、手の中で揉んでからその汁を首や脚半に塗っていった。おそらく、虫よけだろうというのが賢者たちの考察だった。


 そんな準備をする男たちに、どんどん鑑定が試されていく。風、土、水、雷、氷、木、闇、光と火で、最後の3人が順番に召喚された。


『サトル:生産属性は、人物は鑑定できないけど鎧とかは鑑定できたよ』


 生産属性ではそのような結果になった。

 自分たちが作った物でも同じなので、これは予想できていた。

 ただし、『生産鑑定』は、製造方法はわからない。


■賢者メモ 生産鑑定■

『鎧魚のラメラアーマー』

・魔物由来の鎧。そこそこ仕立ては良い。

・よく手入れがされている。

■・■・■


 しかし、このように名称がわかるので、作り方の想像がつく場合もあるだろう。

 生産属性のサトルが引っ込み、次は回復属性だった。


『ホマズン:回復属性はダメだね。人物鑑定はないし、健康鑑定もできないようだよ』


 数少ない回復属性のホマズンがそうコメントする。

 ちなみに、回復属性としてよく活躍している平和バトは中学生であり、今週から新学期が始まってしまったためお休みである。いや、休みではない。むしろ他の賢者たちが年中無休の休みである。

 学生賢者はそこそこおり、今週から平日の昼間はニートや休職中の賢者たちが場を支えていた。


『覇王鈴木:マジか。絶対に健康鑑定はいけると思ったんだけどな』


『ホマズン:ネコ太さんは、相手の名前を知るかミニャちゃんの眷属になるかのどちらかが条件で、健康鑑定ができるようになると考えているみたいだよ。モグちゃんがそうだったみたいだね』


『覇王鈴木:なるほど。じゃあホマズンはそのまま残って、名前がわかったらもう一度頼むよ』


 そんなことを議論していると、最後に召喚された火属性のホムラが言った。


『ホムラ:うひゃーっ、キタコレ! 火属性に人物鑑定があったわ!』


■賢者メモ 人物鑑定■

『レイモン』

・普通人族

・強さ★8 ・特殊★3

・ミニャにとって危険度★10、敵対心★0

・目立った犯罪歴はない。

■・■・■


 年齢や生い立ちなどといった情報は得られないようだ。

 しかし、強さの目安がわかるのはありがたい。


 そして、この鑑定結果が共有された時、回復属性のホマズンが報告した。


『ホマズン:おっ、レイモンさんの健康鑑定ができるようになったよ』


『覇王鈴木:となると、トリガーは名前だけで、ミニャちゃんの眷属になる必要はないってことか』


『ホマズン:ああ、そうみたいだね』


『ホムラ:ホマズン、もう1人の男はガジェだよ』


『ホマズン:よし、そっちの健康もわかるようになったよ』


『覇王鈴木:確定だな。健康鑑定は名前がわかればできるようになるんだろう。それで、アイツらの健康状態はどうなんだ?』


『ホマズン:うーん、2人とも良好みたいだね。でも、栄養に偏りがあると出ている。野菜や果物を食べるべきとあるから、病気になるまでかなりの猶予がある感じなんじゃないかな?』


 そうやって検証をしていると、他の冒険者たちがぞろぞろとやってきた。


 その中には10歳くらいの子供が1人混じっており、賢者たちの注目を集めるのだった。



読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
読み返し中。ここにサトルという賢者もいたんですねぇ。良くある名前だしなぁ。
[一言]  危険度が気になるな。保護者のいない子供は孤児院→女神様魔法が異教徒レベルなのか。保護者のいない子供→奴隷レベルなのか。そもそもミニャちゃん種の獣人とは敵対しているのか。説明が待ち遠しい。 …
[一言] いずれ町に潜入するとなると人型以外の人形も必要になるのでは?また人形の大型化には挑戦したみたいだけど小型化はやってみたのかな?小さい賢者なら冒険者ギルドにも潜入できそう。
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