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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第2章

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2-15 下流探索再び

本日もよろしくお願いします。


 お布団が完成した日から時は少し遡り、ミニャが初めて機織りを体験した土曜日。

 この日は大きなイベントクエストがもうひとつあった。

 拠点の6kmほど下流にある大滝の下から、さらに下流を調査するべくカヌーで探索隊が出発したのだ。


 大滝の滝つぼは結構広く、いかにもなにかが潜んでそう。なので、カヌーの旅は滝つぼを避け、川幅が狭くなったところから始めることになった。


『水神王:こちら水神王。これから2回目の下流探索を行なう』


 というわけで、いざ出発。


 今回も前回と同じ手法がとられている。

 つまり、カヌーに4体の人形を配備し、その内の3体には賢者を宿す形だ。1体は予備となる。

 リーダーは、学生時代にカヌー部に入っていたという水神王。カヌー関係だと非常に頼りになる人物だ。

 ただし、前回は石製人形に宿ったサバイバーが水に落ちて死にかけたので、今回は全て木製人形となる。


『水神王:滝の下は岩が少ないな。かなり漕ぎやすい』


『ブレイド:あんまり変わらないと思うよ!?』


 前回も水神王と共にカヌーに乗ったブレイドは、今回もクエストを受けていた。ビビっている様子だが、コメントとは裏腹に案外楽しんでいる。


『ハナ:きゃーわわわわわっ!』


 今回は女子もカヌー体験をしていた。しかも女子高生だ。

 植生がどうなっているか調査するために木属性の賢者を募集したところ、このハナが受注したのである。初日にサバイバーとコルンの木を切りに行った賢者で、サバイバーからも名前を憶えられている。

 彼らが乗っているのは顔のない木製人形だが、ハナはそんな姿でも女子だとわかるアワアワぶりだ。


 素人2人はかなり慌ただしくしているものの、カヌーの旅は順調に進んだ。


『水神王:ん? 左に漕いで。接岸させるよ』


 500mほど下ると、水神王の指示が飛ぶ。

 3人でパドルを左に漕ぎ、進路を右に取る。


 カヌーは右手の岸に接岸するが、降りるわけではない。


『水神王:見ろ。支流と合流するようだ』


 一番後ろの席でそう告げる水神王。前の2人も前方に支流との合流地点を見つけることができた。

 どうやら、左手、つまり東方向から流れる川と合流するようだった。


『ブレイド:たぶん、森塩草の奥にあるっていう川と合流してるんじゃないか?』


『水神王:方向からしてそうだろうな』


 森塩草の群生地の奥には川があった。

 ゴブリンの森にも川があるので、かなり近い場所に3本の川が流れていることになる。


 3人は合流地点にカヌーを近づけ、一旦岸へ降りた。

 スレッドで『水の味を確かめてほしい』とリクエストがあったのだ。


 水神王は合流する前の水を飲んでみた。

 水神王の口元で、水が光になって消えていった。


『水神王:うまっ。でも塩味はしないな』


『ブレイド:マジで美味いな、この水』


『ハナ:ホントですね!』


 生水は飲むなが基本だが、光に変わるし良いだろうという楽観的なスタイル。

 というわけで、少なくともこの地点では、塩は水に味が出ない程度には薄まっていると報告した。


 調査を終え、ハナは合流後の川を見た。


『ハナ:かなり激しそうですね』


『水神王:支流から石が流れ込んでいるからな。まあ100mも下れば地形も落ち着くと思うよ』


『ハナ:そうですか……』


『水神王:まあ最悪落ちても今回は木製人形だから死にはしないと思うけど。でも、誰かと交代するなら今の内だよ?』


『ハナ:だ、大丈夫です! 頑張ります!』


 とハナはふんすとした。




『ハナ:うきぁあああああああ!』


 カヌーが白波に乗り上げ、船首を斜め30度まで空へと傾ける。その次の瞬間には、今度は水平を突き抜けてマイナス方向へ船首が傾いた。


『ハナ:わきゃあああああああ!』


 即オチ2コマとはこのことか。

 ふんすとしていた女子高生は船縁に掴まって荒波になされるがままだ。


『ブレイド:す、水神王さーん! これ無理じゃね!?』


『水神王:はははっ! そうは言ってももう手遅れだ!』


 支流と合流したあとの川は、そこら中で白波が立つ複雑な水域になっていた。上に下に船は暴れ、時には石にぶつかって予期せぬ方向へ体が持っていかれる。


『水神王:抜けた! ハナちゃん、もう大丈夫だ!』


 やがて激流から抜け、流れが落ち着いた。

 水神王がそれを見て呼びかけるが、ハナは目を回していた。


『ブレイド:おい、こりゃ気絶してるぞ』


『水神王:人形でも気絶するんだな。ニーテスト、見てるか? 回復属性を誰か送ってくれ』


 水神王が呼びかけると、スレッドでニーテストから了承のコメントが返ってきた。

 接岸して格納スぺースから木製人形を取り出すと、その人形に回復属性の平和バトが宿った。


『平和バト:うーん、気絶だから状態異常の回復ですかね? うーんと、目覚めてくださーい!』


 平和バトはそう念じて魔法を使った。

 キラキラとした光が木製人形を包み込み、ハナはハッとしたように目を覚ました。


『ハナ:ハッ、まだ異世界!? あ、あれ、どうなりました!?』


『水神王:気絶してたんだよ。平和バトが治してくれた』


『ハナ:そ、そうだったんですか。すみません、平和バトさん。ありがとうございます。お二人もご迷惑をおかけしました』


『ブレイド:いや、いいよ。人形の体でも気絶するってわかったしな』


 相手が女子だからみんな優しい。

 男子だったら水をぶっかけて起こすまである。


『平和バト:具合は大丈夫ですか?』


『ハナ:はい。おかげさまで』


『水神王:気絶はどんな感じだったの? 普通の気絶と変わらない感じか?』


『ハナ:うーん、私が気絶から目覚める時はいつも物凄く気怠いんですけど、今回は目覚めが凄く良かったです。回復魔法のおかげかもしれません。気絶している最中はちょっとわからないですね』


『ブレイド:夢で謎の女性から意味深なコンタクトとかはなかった?』


『ハナ:残念ながらなかったですねー』


『水神王:ていうか、ハナちゃんはよく気絶する子なの? 渓流下りとかして大丈夫?』


『ハナ:私はあまり体が丈夫なタイプじゃないんですが、人形の体だと凄く元気に動けるので大丈夫だと思います』


『水神王:ふーむ。まあプライベートの話だし、あまり深くは聞かないけど……人形の体だと元気になるっていうのは割と重要な情報かもな。気のせいとかじゃないよね?』


『ハナ:1週間様子を見たので、間違いないですね』


『水神王:そっか。ニーテスト、一応、このことも覚えておいてくれよ』


【218、ニーテスト:ああ、なかなか重要な発見だ。暇をみてアンケートでも取ってみよう。それと、もう少ししたら一度秘密工房を作ってくれ。山の麓辺りがいい】


『水神王:了解』


 スレッドでニーテストから指示を受け、水神王たちはカヌーを出発させた。




 カヌーでの探索は続く。

 水神王は外せないが、他の2人は秘密工房を作るたびに変更だ。


 大滝から下の流域は、全体的にあまり河原の石場がない地形だった。水際には雑草が茂り、人でも人形でも歩きにくそうだ。

 川が合流してからは川幅が広くなり、それまでの川幅が2~3mだったのに対して、合流後は4~5mといったところだ。


 2つの秘密工房を作り、そろそろ3つ目を作ろうかという頃だった。


 入れ替わりのクエストをゲットしたのは、またもハナ。

 クエストの受注は早い者勝ち。同じクエストを受ける人はたくさんいるので、ハナを責める者はいない。悔しがる人はいるだろうが、それもお互い様なところはある。


 もう1人は水属性の賢者カレン。

 偶然にもハナと同様に女子高生だった。カレンは言動も行動も元気っ子だ。ただし、リアルでも同じとは限らない。ミニャのオモチャ箱はネット陽キャには良い環境なので。


 幸いにして川は穏やかで、たまにうきゃーと騒ぐタイミングがあるのもスリルがあっていい感じだ。

 これには無表情な人形の内側でニッコニコな水神王である。最高に楽しかった。これで2人とも女子高生だと知れば、料金の発生を心配したことだろう。


『水神王:この辺りの水際には草が少ないね』


『ハナ:そうですね。ここら辺は歩きやすそうです。あとで動画を見直して地図を描いておきますね』


 などと女子とお喋りしながらの川下りを楽しんでいる水神王だったが、カーブを曲がった瞬間、先頭に乗るカレンから冷や水をぶっかけられるような急報が告げられた。


『カレン:ひ、人! 人がいるよ!』


『水神王:んえぇ!? 右、いや左! 左に漕げ! 左左!』


 カレンのコメントを見て、水神王は無い目を見開く思いでパドルを左に漕いだ。女の子たちとのドキドキレジャーから急展開したので、美人局にでもあった気分だった。


 なんとかカヌーを接岸させて前方を見るが、幸いにしてこちらに気づいていない様子だ。カレンが遠目に発見してくれたことで、不測の接触は避けられた。


 遠目に見えるその人物は、いかにも冒険者といった様相の服を着た女性だった。ビキニアーマーでもへそ出しショートパンツでもなく、厚手の服に何らかの革を使ったレザーアーマー、足にはゲートルという、かなり現実的な服装である。

 髪の毛は茶色で、顔の系統は遠すぎてわからない。


 彼我の距離は40mほどか。

 女性は河原を下流方面へ歩いているものの、近くの地面にリュックが置かれているので、その辺りで何かを探しているようだった。


 彼我の間には石場に根性で生えたような草が茂っており、カヌーや水神王たちを上手いこと隠してくれていた。しかし、何かを探している女性なので近づかれたらすぐにバレるだろう。


『水神王:ニーテスト指示を頼む!』


【567、ニーテスト:カヌーから降りて右手の草むらに入れ。魔法は使うな。気づかれるかもしれない】


『水神王:了解』


 スレッドでニーテストの指示を受けて、一行はすぐ近くの草むらにカヌーを運んだ。

 3人はホッとしつつ、周りを観察する。


 3人がいる右手の岸辺は幅2mほどの石場があり、そこから高さ50cmほどの土手の上に森が始まる。

川を挟んだ向こう岸は幅4mほどの石場が広がり、そこには女性の背丈くらいの大きな岩が1つあった。


『カレン:山菜か薬草でも取っているのかな?』


『ハナ:うーん、その割には籠のような物を持っていませんけど。リュックに直接入れるんですかね?』


『カレン:リュックの両サイドについている筒が怪しいと思うな』


『水神王:あれは武器が入ってるんじゃないか?』


 3人であれこれ話し合っていると女性は何かを発見したようで、石をひっくり返した。


『ハナ:全然見えないです!』


『水神王:まあこの距離と俺たちの背丈じゃあな』


 どういう作業が行なわれたのか3人はわからなかったが、気づいたら女性はヘビを手に持っていた。


『カレン:うわっ、ヘビ捕ってる!』


『水神王:ドングリヘビなんかは薬効があるっていう話だしな』


 女性はリュックから袋を取り出して、ヘビを中に入れた。

 そのリュックには両サイドに筒が取り付けられており、ヘビを入れた袋はその中に収納された。


『ハナ:はえー、たくましいです』


『カレン:あたしには無理だわー』


『水神王:俺にも無理だ。いや、最近の俺ならイケるか?』


 などと異世界女性のお仕事に感心していると急展開が。

 森から女性の背後を取るように男が現れたのだ。


『水神王:おいおいおいおい、ウソだろ』


 こっちは女子連れなんだぞ、と水神王はこれから起こることを想像して慌てた。

 誰もいない森の中に女が1人。女性の隙を突くように背後から現れた男。そんなのもう、なにも起きないはずもなく——


 そんな水神王の心配とは裏腹に、女性と男性は普通に会話し始めたのでたぶん仲間だろう。いらん心配だった。


 ……否っ!

 はたして本当にそうなのでしょうか!?


 きょろきょろと周りを見回す男女。

 グッと女の腰を抱いて引き寄せる男。ヘビを余裕で手掴みするワイルドさはどこにいったのか頬を赤く染める女。


『ハナ:あーわわわわわわっ!』


『カレン:はわわわわっ!』


 ハナとカレンが草むらから身を乗り出してはわはわした。


『水神王:ちょちょちょ! 2人とも草むらから出ちゃダメだって!』


 大興奮の女子高生2人と、慌ててそれを止める水神王。


 そう、女性と男性はお口とお口をくっつけたのである! 女子高生が身を乗り出すような濃いヤツだ!

 なお、幸いにしてミニャは「カッコン、にゃしゅ!」に夢中で、生放送は見ていない。「これなにしてんのー?」といったような近衛隊が気まずくなる質問をされることはなかった。


 ドキドキしながらこの後の展開を見守る女子2人。

 誰もいないこの場なら、これ以上の何かが始まってしまうのでは……っ! どうしましょう!?

 女子高生、草むらから身を乗り出し問題勃発。

 水神王はそんな2人にハラハラした。


 すると、男女はササッと身を離し、2人で女性のリュックを眺め始めた。

 それから20秒ほどして、森から第三の男が現れた。

 その男も仲間のようで、3人は一緒になって川を下っていった。


『ハナ:あーわわわわわ、さ、三角関係ですぅーっ!』


『カレン:は、破廉恥だよーっ!』


『水神王:お、おう』


 嬉しそうなハナと、興味津々だったのに破廉恥とほざくカレン。

 水神王はさっきまで滅茶苦茶楽しいカヌーの旅だったのに、今では少し気まずい気分になっていた。親との夕食の際にテレビから『あなたと合体云々』みたいなワードが流れてきた時のような気分であった。


 ミニャ以外の異世界人との接触は、なんとも生々しいものになった。




【590、ニーテスト:お前らはカヌーと共に森に潜伏しろ。そこに秘密工房を作って様子を見るぞ。あと、サバイバーを送る】


【591、名無し:ミニャちゃん陛下の情操教育に悪いやつらは皆殺しってことですね!?】


【592、ニーテスト:それだとお前らが死ぬことになるがな。では、行動しろ】


 スレッドで指示が飛ぶ。

 派遣されたサバイバーがすぐに秘密工房に良さそうなポイントを探しだし、木の上に登って周囲を警戒した。


 状況が変わったので水神王たちは帰還し、代わりに3人の土属性が派遣され、短時間でカヌー共々に地中へ身を隠すことに成功。


 今回の秘密工房は用心のために深く作られ、穴の周りをサバイバーが入念に偽装して隠蔽性もマルだ。

 相手は石の下からヘビをゲットするような職業の人たちなので、今までのように小動物だけを気にすればいいわけじゃない。日本の狩人の隠蔽術と、異世界の狩人の探索術が火花を散らす。


 こうして、最前線の秘密工房で準備が開始されるのだった。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第一町人、発見!(所ジョージ風)
[一言] これが…異世界昼ドラ…!(違)
[気になる点] 人形に回復魔法かけて気絶から回復してる 魔法が現実側の賢者に影響するとは考えにくいので、精神が異世界側にあるってことだろうか 結構怖いことなのでは?
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