2-2 リフォーム工事2
本日もよろしくお願いします。
『覇王鈴木:よし、コイツで良いだろう』
河原に来た石運搬班。
リーダーは何かと使い勝手の良い覇王鈴木だ。
石製人形に宿った覇王鈴木が指さしたのは、一辺が80cmはありそうなかなり大きな岩だった。子供がピョンと上に乗りたくなっちゃうような大きさである。
『雷光龍:1tくらいありそうだな。岩だしもっと重いか?』
『ラグーン:1㎥の花崗岩で2000kgオーバーだってスレッドで言ってるぞ』
『雷光龍:マジかよ。まあ丸ごと持っていくわけじゃないけど』
こんな大きな石をどうするのか。
もちろん運ぶのだ。
現在までの研究で、石材変形のルールがかなりわかってきた。
石を粘土のように扱えるこの魔法だが、別々の石同士をチョコレートのように混ぜ合わせることはできなかった。これは花崗岩Aと玄武岩Aは当然無理だし、花崗岩Aと花崗岩Bでも無理だった。
つまり、石ころと黄金を混ぜ合わせてゴッドネコイロカネは作れないし、小さなダイヤモンドを合体させてカイザーにゃんこダイヤモンドも作れない。
しかし、花崗岩Aを砕いた欠片・花崗岩A1~A10を元の花崗岩Aに戻すことは可能だった。
賢者たちはこのルールから、石にも個としての意識があるのではないかと考察した。
今回はこの法則を利用する。
『サガ:うん、オッケー。大丈夫だ』
生産属性の賢者が、この岩にも正しくこの法則が適用されるか確認して、ゴーサインが出る。
『覇王鈴木:よーし、それじゃあ頑張って運ぼう!』
生産属性の賢者が大岩を1kg程度の大きさに分離し、それを40人の運搬班が斜面の下まで運んでいく。その姿はまるで現代に蘇った古代の奴隷のよう。
どう考えても頭がおかしい仕事なので、全員がパワーのある石製人形に宿っての従事だ。
アリンコのように行列を作った賢者たちが、現在作業中の階段を登っていく。
「賢者様、頑張ってぇ!」
「モモグゥ!」
そこは最もキツイ区間だったが、幼女から可愛い声援を貰い、頑張って登った。
「あーっ、大丈夫!?」
『ユズリハ:だ、大丈夫!』
途中で転んじゃう賢者も。
ユズリハは女性賢者だ。女性なのにドレ……キツイクエストを頑張っている。偉い!
ミニャは転んじゃった賢者を拾い上げ、膝に着いた泥をぷにぷにお手々で払ってあげた。優しい。
しかし、その甘さが命取り。
転んじゃう賢者が続出したのだ。
『くのいち:ピピーッ! 真面目に働いてください!』
近衛隊に注意された。
『覇王鈴木:いやいやいや、冷静に考えると頭おかしいな!』
登り終えた覇王鈴木は冷静になった。
階段を作ったのはいい。登りやすい。
しかし、丸めた布団くらいの大きさの石を担いで登るのは、やっぱり頭がおかしい。
『覇王鈴木:今回はもう仕方ねえけど、次からは何か考えないとダメだな』
冷静になったからと言って、今から装置を作るとなったら今日の仕事が滞る。
そもそも、引き上げるにはロープのような物が必要だ。ツルはあるが、20kgや30kgの重さに耐えられるかと言えば疑問である。あまり少ない数を引き上げる装置を作ってもあまり意味がない。
やはり頑丈なロープなどの道具の生産が急務であった。
そんな文句を言いつつも、拠点にどんどん岩を分割した物が運び込まれていった。
さて、石材変形のルールに則ると、面白いことができた。
川で大岩を分割し、それをみんなで拠点に運び込めば、拠点で継ぎ目のない大岩に戻すことが可能なのだ。
もちろん、岩に戻しても仕方ないので、今回は浴槽に姿を変えた。
浴槽は水を張るので、継ぎ目が生じてはならないのだ。石のわずかな継ぎ目は水をガンガン流してしまうので。
運搬賢者が一往復するたびに、浴槽が出来上がっていった。
これがまたなかなか素敵な色合いで、黒い斑点模様がある灰色の湯船である。
作業をする賢者たちもかなり真剣で、突起を絶対殺すマンと化して魔法のヤスリをかけている。
他の場所では木材がどんどん運ばれてきて、屋根作りの準備が進められていた。
途中でミニャも通路の屋根作りに合流しつつ、リフォーム作業はどんどん進んでいく。
さて、本日のお昼は宴会の2回目が予定されていた。
昨晩とは違い、今日のお昼はお外で食べることに。
土塁の内側にカマドが作られ、串に刺さった魚が大量に並ぶ。
ミニャの護衛があるためサバイバーが狩りに行けず、残念ながらメニューに鳥のお肉はない。
しかし、それでも幼女とのバーベキューに参加する賢者たちは楽しげだ。
モグが大人気で、特大のもふもふ生物に多くの賢者が抱きついたり撫でたりして癒されていた。
一方のモグは焼いたお魚を夢中でモグモグ食べていて、賢者どころではない。
と、そこで護衛役のサバイバーがミニャや賢者たちに言った。
『サバイバー:みんな聞いてくれ。あそこに大きめの鳥がいる。おそらく魚を狙っているのだろう。使える者は属性武器を発動してくれ。近衛隊は襲ってきたらシールドの展開を』
たしかにサバイバーの言う通り、木の上にいる鳥がジッと宴会の様子を見ていた。結構でかい。遠めで逆光なので種類はわからないが、猛禽類かもしれない。
賢者たちは一旦楽しむのを止めて、それぞれの属性で武器を形成した。
「むむむっ、ミニャたちのお魚狙ってる!」
「モモグゥ!」
ミニャも近くの枝を手に取って臨戦態勢。
モグも短い前足を頭上にあげて威嚇の構え。
そして、サバイバーがウォーターボールを威嚇として放つ。
うじゃうじゃいる賢者たちが一斉に魔法を使ったことで、鳥は慌ててその場から立ち去った。
すると、賢者たちから歓声のフキダシが上がった。
『サバイバー:やはり野生の動物は魔力に敏感なようだね』
『ネコ太:また来るかな?』
『サバイバー:来るかもしれないが、こうやって脅せば、ミニャちゃんや人形を襲うのはヤバいって理解するはずだよ』
そんなハプニングがあったものの、宴会は楽しく終えることができた。
残念ながら昨晩のようなミニャちゃんの演説はなかったが、毎日やらせるものでもない。
お風呂や通路にも屋根が設けられ、リフォーム作業は16時少し過ぎには全て終わった。
「ふぉおおおお……」
地面の中で拡張されたお家を見ては、ミニャちゃん陛下の瞳もキラッキラ。
『ネコ太:ミニャちゃん、入ってみよう!』
「にゃん!」
興奮したミニャは、猫っ気を放出しつつ頷いた。
入り口はまずドアから始まる。屋根に対して斜めに置かれているのでフタに近い。埋没している家なので、階段の下にドアをつけると雨が降った時に困ったことになるのだ。
ミニャはフタのようなドアを横にずらしてみた。
すると、すぐに階段が。ミニャは手をブンブンした。
「モグちゃん、行くよ!」
「モグ!」
しかし、モグは足が短いので地下へ続く階段が降りられない模様。
「もう仕方ないなー」
先に降りたミニャがモグを抱っこして、降ろしてあげた。
ミニャとモグの後をたくさんの賢者たちが続く。ミニャちゃん軍突撃陣形。
階段を降りると、頭上を覆う木の屋根が。
ミニャはほへーと天井を見上げた。ヘルメットを被っているので、遺跡見学にでも来た小学生のよう。
光属性の賢者が明かりを灯し、ご案内。
『ネコ太:ミニャちゃん3方向に分かれてる! どうしゅるどうしゅる!?』
「うにゃ、にゃ、にゃにゃにゃ! こっち!」
ネコ太に煽られたミニャは、まず左手の通路に入った。
『くのいち:ピピー! 男子はここで待機です!』
そちらは男子に待機させる必要がある場所らしい。
「おトイレ!」
ドアを開けてみると、すでに使ったことのあるおトイレだった。いわゆるボットン便所である。
ここの床は石タイルではなく、普通の圧縮された地面だ。おトイレの穴の周りだけは石で頑丈に作られ、崩れて落ちないようにされていた。
おトイレの近くには石の器があり、木くずが大量に入っている。
ミニャが用を済ませたら、その木屑を中に入れるのである。
この拠点は1か月程度使う予定なので、もし匂いが酷くなるようなら何かしら策を講じる必要があるだろう。最終的には埋め立てる予定だ。
『ネコ太:おトイレまで屋根ができたから、夜におしっこに行きたくなってもお外に出なくていいんだよ』
「おーっ!」
賢者たちはやはり現代人として、トイレのために外に出るのは違和感が凄かった。実のところ、田舎育ちのミニャならそんなこともないのだが、より良い生活を送らせたい賢者心である。
ミニャは続いて向かい側のドアを開けてみた。
「むむむっ! ここ、みんなで作ってたところ!」
本日は丸太階段を作ったり、屋根作りをしたりしていたミニャ。当然、この部屋でお風呂の施工をしているのは見ていた。しかし、用途はよくわかっていない様子だ。お風呂を知らないのだろう。
ミニャは水の入っていない浴槽を見てキュピンとする。
シュバッと浴槽の中に入ると、香箱座りする猫のように丸まった。ひんやりして気持ちが良いのか、ほえーっとした顔だ。
そんなミニャを、モグが浴槽の縁に前足をかけて覗き込む。
『ユズリハ:きゃーっ、超かわいいですぅ!』
『くのいち:ありがたやありがたや……』
ミニャが時折見せる猫っぽさに、賢者たちは熱狂する。
これには奴隷の如く石を運んでいた賢者たちの疲れも吹き飛ぶというものだ。
とりあえずミニャを浴槽から出し、内見を続けた。
最後はミニャのお部屋だ。
「ここはみんなのお部屋!」
ミニャ的には自分だけのお部屋ではないらしい。
部屋は特に変わっていない。唯一、枝をまとめて作られたドアがつけられたくらいだ。
最終的には壁が石で覆われる予定だが、本日は通路やお風呂の製作に手こずってしまったので、この作業は明日となるだろう。
こうして、ミニャのお家はひとまず形となるのだった。
読んでくださりありがとうございます。
次回お風呂。
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