1-39 討伐後始末
本日もよろしくお願いします。
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開始時刻 即時
仕事:ゴブリンの死体の後始末
人形:石製人形15体
募集人数:15人
条件1:竜胆を指名
条件2:各属性1名の計11名
条件3:回復属性1名
条件4:誰でも可2名
達成条件:ゴブリンの死体の後始末を行なう。
説明:
・後始末の際に死体で検証を行なう。死体の処理なので受ける者は注意してほしい。
・検証内容は、死体の鑑定、死者蘇生の魔法、葬送の魔法の3つ。葬送の魔法が存在しない場合は、回復属性の生命循環で死体を始末する。
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森の中での討伐作戦が終わり、15人の戦士たちが残した石製人形に再び賢者が宿った。
それを迎えたサバイバーが、フキダシで挨拶した。
『サバイバー:悪いね、みんな』
『カーマイン:いえ、この件は私たちも向き合わないとなりませんからね』
『竜胆:ああ。向き合い方は人それぞれだろうが、我々も傍観者ではいられない』
『モグラ:それじゃあ改めて指示をくれ。ちゃっちゃと終わらせよう』
『サバイバー:ありがとう。じゃあさっそく死体の鑑定から始めようか。以降の段取りは竜胆に任せるよ』
竜胆は頷くと、前に出て挨拶した。
『竜胆:異世界検証委員会の副委員長をしている竜胆だ。委員長のクラトスは別のクエストに行っているから私が検証の音頭を執らせてもらう』
『闇の福音:始める前にいいか? 死体傀儡の魔法とかは検証しないの?』
『竜胆:し、死体の傀儡か……。まあ試すのはいいと思う。けれど、もしあったとしてもその扱いは慎重であるべきだと思う。緊急事態でのみ使うとかね』
『カーマイン:私も竜胆さんの意見に賛成です。我々はミニャさんの力であるということを忘れてはいけません。死体傀儡をこの世界の人間が見てどう思うかはよく調査しなければなりません。ミニャさんが魔王認定されて世界の敵になったら目も当てられませんから』
『闇の福音:ぬぅ。ちょ、ちょっと気になっただけだよ』
弱い。
というわけで、それぞれが分担して検証に取りかかった。
ミニャのオモチャ箱に存在する属性は、11種類。
RPGでもよく見るオーソドックスな水、火、土、風の4種。
ちょっと特別感のある木、雷、氷、光、闇の5種。
なんか毛色が違う生産、回復の2種。
賢者たちは300人いるわけで、普通に考えれば各属性27名くらいになる。
だが、調べによると、雷と闇を合わせて85名もいた。全部生まれた国のサブカルチャーが悪い。
この大惨事で一番に割を食っているのは回復属性だ。最終的に300人の賢者の中で5人しかいなかったのだ。たぶん女神も想定していない異常事態である。
生産属性は意外に人気があって33名もおり、残りの属性は若干の偏りはあるもののほぼ均等と言えた。
さて、この場にいる賢者はそれぞれが後始末という嫌な役割を買って出たわけだが、死体を前にしてその覚悟とは裏腹にテンションはダダ下がりだ。やはり臭いがきつかった。
38体ものゴブリンの死体だ。ビジュアル的にも最悪である。死体の山から少しだけ離れたゴブリンを数人で囲み、死体の山の方は見ないように検証がされた。
最初に魔法を発見したのは氷属性の北海道という賢者だった。たぶん道民。
『北海道:死体鑑定があった!』
『闇の福音:あれ、俺も死体を鑑定できるぞ?』
闇の福音は闇属性だ。そのままである。ネーミングはあれだが、闇属性の大半が似たようなものだ。しかも、なんと闇の福音はちゃんとリアルで職に就いているのである。偉い!
『竜胆:ふむ、それじゃあ二つの違いを生放送で送っておいてほしい。あとで検証しよう』
■賢者メモ 鑑定魔法 ※のちの検証結果■
『死体鑑定』
・生き物の死体を、ミニャを基準にして鑑定できる。
・氷属性のみ全ての死体を鑑定できる。他の属性は、その生物が生きている間に鑑定できる場合に限って、死体になっても鑑定できる。例えば、闇属性ならば生きた魔物も死んだ魔物も鑑定できる。なお、氷属性と他の属性が使う鑑定の精度は変わらない。
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そんな死体鑑定でゴブリンを鑑定してみると、以下の結果が得られた。
■賢者メモ 死体鑑定■
『ゴブリン』
・ミニャにとって、毒性あり、薬効あり、食用可。
・ばい菌や寄生虫の温床となっているため、触れるべきではない。簡単に手に入る素材だが、正しく加工するには高度な魔法知識が必要。
・日の当たらない場所に放っておくとアンデッドになりやすい。
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『サバイバー:この世界はアンデッドがいるのか……』
『カーマイン:しかし、日の当たらない場所と言及されていますし、アンデッドは光が弱点なのではないですかね?』
『サバイバー:まあ無敵の存在なら、世界中アンデッドだらけになるしね』
新たな事実を鑑定結果から得つつ、検証会は続く。
次に検証するのは死者蘇生だったが、これはどの属性も発動することはなかった。
『平和バト:ダメですね。回復魔法にも死者蘇生はないです。ホマズンさんは?』
『ホマズン:僕の方も無理ですね』
平和バトとホマズンは、レアな男性の回復属性の2人だ。
『闇の福音:闇属性もダメだな。実はゾンビ化も試してみたけどなかったよ』
『竜胆:私たちの実力不足の可能性もある。心肺停止してから短時間なら現実的に蘇生は可能だ。この世界ならば、それを魔法的なプロセスで可能なんじゃないかな?』
『ホマズン:僕も同意見です。あと、僕ら自身の心の問題もあるかもしれません。正直なところ、僕がゴブリンたちを生き返らせたいと心から願っているかと言えば、答えはノーですからね』
『カーマイン:魔法の発動条件の1つはイメージですから、ホマズンさんの言うことは一理ありますね』
『竜胆:なんにせよ、今回の件で存在しないと決めつけるのは早すぎるだろう。機会があればいろいろ研究しよう』
気を取り直して、検証を続ける。
鑑定、死者蘇生と続き、最後の検証は葬送の魔法。これはすぐに見つかった。
とある賢者の前で光の柱が立ったのだ。
『ロリエール:見つけましたぞ!』
『サバイバー:本当かい? ちなみに君は何属性なんだい?』
『ロリエール:私は光属性ですぞ』
『火剣:おいおい、邪属性の間違いじゃなく?』
『ロリエール:私のどこが邪属性なのですか。日々を一生懸命生きる幼子たちの姿を見守る私の心は、常に光に満ちています』
『闇の福音:え? 幼女じゃなくて幼子たち?』
『レオン:おいおい、それってもしかして、日本でのことなんじゃ……』
『北海道:お巡りさん、この人です!』
ロリエールは疑わしい発言をちょいちょいする賢者だったが、光属性らしい。まだ逮捕案件は何もしていないが、目を離せないヤツだと全員の心が一致した。
『カーマイン:それじゃあもう一度使ってもらえますか?』
その要請を受けてロリエールが魔法を放った。
すると、ゴブリンの死体に光の柱が立ち、その光に寄り添うように死体から抜け出た光の粒が天に向かって昇っていった。
『カーマイン:竜胆さん、確認できましたか?』
カーマインはこの場にいるもう一人の光属性に尋ねた。竜胆である。
光属性は魔法自体の鑑定が行なえるのだ。
『竜胆:うん。どうやらロリエールが発見したのは、レクイエムという魔法のようだね。ちょっと私も使ってみよう』
『モグラ:それ、ロリエールが昇天しちゃわない?』
『ロリエール:失敬な! 光の中を毎日お散歩している私が光で消えるわけがないでしょう!』
『闇の福音:そのお散歩のルートに幼稚園とか小学校は入ってないよな?』
そんなやりとりがされる中、竜胆がレクイエムを試す。しかし、発動できない。
『竜胆:おかしいな。光の柱をイメージしているんだが発動しない』
賢者たちが魔法を使うプロセスは、念じることから始まる。念じて、自分の属性と保有魔力でできることならば発現し、どちらかが不足していれば何も起こらない。
なお、魔法の命名は賢者たちが適当に行なっているが、魔法鑑定をすることで正式名称も出てくる。
竜胆には今回の魔法で欠けているものはなさそうに思えたが、発動できなかった。
『竜胆:ロリエール、どんなふうに発動するのか教えてほしい』
『ロリエール:どんなふうにと言われても、死者の冥福を祈っただけですぞ。死後の世界がどのようなものかわかりませんが、地獄に行くのなら贖罪の日々への応援を、天国に行くのなら安らかな眠りを、生まれ変わるのなら今度は正しい心を持てるように。そんなことを祈った次第であります』
『火剣:あれぇ!? こいつ聖者系の変態!?』
『闇の福音:バカな、俺よりも人間レベルが上だと……!』
賢者たちはどよめいた。
『ロリエール:何を驚いているんですか。こんなのは幼女学を学んでいる者にとっては当然持っている慈しみの心です』
『平和バト:わぁ、幼女学凄いです……』
『火剣:お、おい、平和バト、そっちへ行っちゃダメだ! それは踏み入っちゃいけない花園だ!』
『闇の福音:そうだぞ。お前がそっちに行ったら、貴重な回復属性が一人ミニャちゃん陛下に近づけなくなる』
平和バトは名前が変だが、妙に純粋な発言をする賢者だった。それもそのはず、平和バトはまだ中学2年生だった。本来なら死体の後始末をするなんて早すぎる年齢だが、男の回復属性は自分とホマズンだけなので頑張ってクエストを受けたようだ。
『竜胆:わかった。とりあえずそんな気持ちでやってみよう』
竜胆は改めてそんな気持ちで魔法を使ってみた。
すると、ゴブリンの死体に光の柱が現れるではないか。
『竜胆:ほ、本当に使えた』
『モグラ:じゃあ、マジでロリエールはそんな気持ちでゴブリンに魔法を使ったのか』
『火剣:しかも相当早かったぜ? 俺とかキモグロとかしか思ってなかったんだが』
賢者たちはロリエールに人間レベルで敗北してテンションを下げた。
■賢者メモ 魔法鑑定■
『レクイエム』
・光属性が使える鎮魂の魔法。
・死体のアンデッド化を防ぐ。
・死体はそのまま残り、特に殺菌の効果などはない。
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『レオン:神秘的な光景だけど、光の根っこに転がってるのがゴブリンじゃあな』
臭いも残っているし、「ふわぁ、綺麗」とはならない。
光の柱が収まって、竜胆が少し考える素振り。
『サバイバー:どうしたんだい?』
『竜胆:鑑定の文言が気になっているんだ』
その言葉にサバイバーはスレッドを少し遡り、レクイエムの鑑定結果を探して確認した。しかし、特に気になるところは見つからなかった。
『サバイバー:全然わからないね。どこかおかしいかい?』
『竜胆:死体はそのまま残るとわざわざ書いている点だよ。死体が残るのは見てわかるだろう? つまり、死体が残らない葬送の魔法が他に存在し、この鑑定結果はその魔法との差別化がされているんじゃないかと思ったんだ』
『サバイバー:言われてみれば凄くそんな気がするね。となると生命循環がそれなのかな?』
『竜胆:いや、どうだろうか』
ロリエールショックから立ち直り、その場の全員が賢い奴っているんだなぁと感心した。
『竜胆:ちょっと試させてもらいたい。ロリエール、もし私が魔法を発動できたら魔法鑑定を頼む』
『ロリエール:わかりましたぞ』
『闇の福音:くっ、ロリエールのくせに大活躍しやがって!』
竜胆はゴブリンに手を向けてしばらく頑張るが、唐突にふらりとした。
『サバイバー:大丈夫かい?』
『竜胆:大丈夫。ちょっと気持ち悪くなっちゃった』
ゴブリンの死体である。
直視し続けるのは普通にキツイ。
それでも竜胆は立ち上がってゴブリンの死体に手をかざし続けると、魔法が発動した。
それは白い炎で、ゴブリンの死体に着火して瞬く間に全体を包み込んだ。
サバイバーともう1人いる水属性の賢者が慌てて火に向かって手をかざした。トラップに使った窪地の中ならともかく、草木が茂る場所で火を焚けば下手をすれば山火事になる。
しかし、そんな心配とは裏腹に、白い火はゴブリンの死体だけを燃やし続け、ついには骨も残さずに灰にしてしまった。
『ロリエール:鑑定できました。どうやらセイントファイアという魔法のようですぞ』
■賢者メモ 魔法鑑定■
『セイントファイア』
・光属性と火属性が使える葬送の魔法。
・アンデッド化を防ぎ、アンデッドに特効性能を持つ。
・対象とした死体のみを聖なる炎で焼き尽くす。また対象の保持している病原菌や寄生虫を共に葬る。
・生者に対してはなんの効果も及ぼさない。
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『火剣:おーっ、火属性に大きな活躍の機会が!』
『闇の福音:なんか神官が葬式に松竹梅をつけてそうだな』
『ホマズン:ははっ、ありえそうですね』
『竜胆:ふーむ、レクイエムとセイントファイア、そして生命循環は、文化的にかなり意味が異なるかもしれないね』
『モグラ:どういうことだ?』
『竜胆:セイントファイアや生命循環を行なうことで、アンデッドの発生はもちろんだが、土葬による疫病の発生が防がれる。一方、レクイエムは形が残るので土葬をする地域の魔法な気がするね。もちろん、闇の福音のいう松竹梅説もあり得るが』
『火剣:土葬だと疫病が発生すんの?』
『竜胆:地下水が汚染されたり、獣が墓を掘り返してしまう可能性があるそうだよ。だから、土葬をするなら場所や墓穴、棺桶などに工夫が必要になる』
『火剣:はーん、なるほどねー』
『北海道:ということは、この世界は女神様信仰だけじゃないのかな?』
『竜胆:それはわからないね。でも、これら3つの魔法が我々に与えられたということは、死者の弔い方の違いはあれ、それらの文化の根源には女神様がいるということなのではないかな?』
『ホマズン:なるほど、女神様が土葬派なら、私たちはレクイエムしか使えなかったという考察ですね?』
『竜胆:ああ、まあ真実はわからないが』
『カーマイン:すみません、ひとつ魔法を思いつきました。葬送の魔法に種類があるのなら、死体の防腐処理の魔法が存在するのではないですか?』
『竜胆:エンバーミングか。やってみようか』
『火剣:すまん、エンバーミングってなんだ?』
エンバーミングとは、遺体を防腐処理して長く衛生的に保存することだ。
地球では遺族や友人と別れるまでの時間を引き延ばすための技術だが、この異世界ではそれに加えて素材の腐敗を遅らせられる目的に使えるかもしれない。
『北海道:なんか発動した!』
『闇の福音:俺も!』
結果、発動したのは氷属性と闇属性だった。
魔物鑑定と死体鑑定で一緒に魔法を見つけた2人だが、それは偶然だ。しかし、今回の魔法は全く同一の魔法だった。
■賢者メモ 魔法鑑定■
『腐敗遅延』
・氷属性と闇属性が使える葬送の魔法。
・アンデッド化を防ぎ、死体の腐敗を遅らせる。
・すでにアンデッド化している存在に使うと防御性能を強化してしまう場合があるので注意。
・衛生的に保たれる効果はない。
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『カーマイン:魔物や動物の素材を活用するなら良い魔法ですね』
『闇の福音:良かった。活躍の場が増えそうだ』
『火剣:俺もだよ。このままじゃ暖炉係をみんなで取り合うような事態になるところだったぜ』
『レオン:うーん、他には何かないかな』
そんなことを話していると、サバイバーが言った。
『サバイバー:みんな、そろそろやめよう。死体を長く置けば変なものを招きかねない』
『竜胆:そうだね。目的は達成したし、ひとまずこのくらいで十分だろう』
『サバイバー:それじゃあ、これからセイントファイアと生命循環で死体を処理してしまおう。他のメンバーはこの辺りでの戦いの痕跡を消すよ』
こうして賢者たちはいくつかの重要な魔法を発見して後始末を行ない、森でのゴブリン討伐作戦を全て完了した。
これらの葬送の魔法の存在は直ちに共有され、河原で戦っている賢者たちの後処理に大いに役立つこととなる。
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