7-30 大規模オフ会 終
遅くなりました。
本日もよろしくお願いします。
一夜明け、朝ご飯の時間になった。
朝ご飯は惣菜パンやおにぎりと即席スープ、デザートにバナナである。朝食なんてこんなものだ。
覇王鈴木のグループは朝から招集を受けて、この配給を手伝うことに。八鳥村側からはサバイバーが来てくれている。
「昨晩の件は聞いたか?」
準備をしながら、覇王鈴木がサバイバーに小声で問う。ネムネムがどこまでネット弁慶なことを隠したいのか実際のところわからないので、あくまでもサバイバーにだけ聞こえる声。
「ああ、知っているよ。俺とキキョウが出ようかというところで君が対応してくれたからね。助かったよ」
「そんな感じだったのか」
「ああ。朝方にキキョウが家に行って、それとなく見ているはずだよ」
「そういえば、キキョウさんはニーテストたちと仲が良いのか」
「そうだね。あの子もぶっちゃけ同年代の友達がいない子だったから、凄くありがたいよ」
「そりゃ里で暮らしてたらそうだろうな。ところで、やっぱり、この里って侵入者はすぐにわかる感じ?」
「わかるよ。前は道路にだけ警戒網があったけど、いまは山にも構築作業中だ。もちろん、女神像がある場所にもね」
「へえ、山の中にも。どんな物か知らないけど、住むヤツらからすると安心だな」
ネコミミストアのひさしの下に長テーブルが置かれ、その上に総菜パンやおにぎりが入った業務用バットやお湯が入った魔法瓶が並べられた。オーナーがネコ忍で賢者以外の客は来ないため、やりたい放題だ。
準備が整ったくらいで人が来始めた。
「おはよう」
「おう、工作王、おはようさん。昨晩はお楽しみでしたね」
「そりゃもうドキッ生産漢だらけのお泊まり会だったしな。盛り上がったぜ」
「想像がつかねえな」
「これ、どれを食ってもいいのか?」
「ああ。おにぎりかパンを3つな、あとスープとドリンクとバナナ。1人で同じ物ばっかりは選ばないでくれ」
「3つもいいのか? うーん、でも朝はいつも軽めだし1つとスープとバナナでいいなー」
「いや、3つ持っていってくれ。余っても困るみたいだ」
「あー、そういう感じか。それじゃあ家に持って帰るかな。魔法を使うようになってから何かと食うし」
「スープは保存が利くから飲まなくてもいいぞ」
「スープこそ飲ませてくれよ」
「夏だし、いらないんじゃね?」
「夏でもスープは別腹だろ」
そんな会話をしつつ、各々が食べたい物を選び、スープを飲みたい人はお湯を入れて離れていく。
「やっぱり男の方が早く来るな」
「女性は準備があるからね」
誰ともなしに言った覇王鈴木の呟きを拾い、サバイバーが言う。
「とはいえ、男だって身嗜みを整えだしたら朝も早くなるだろうさ」
「朝はゆっくりしたいもんだぜ」
やはり早く来るのは男ばかり。どの顔も多少眠そうだが、クエストを取るために時間を問わず起きることが多いためか、そこまで苦ではなさそうだ。
ほとんどの男子が来た頃に、ホクトたちがやってきた。
身嗜みが整えられ、顔だけ洗ってきましたみたいな男子たちとは全然違う輝きだ。
「なんだか、あの子たちを見ていると高校時代を思い出すな」
「そうか? あんな可愛い子いなかったけどな。ハトは中学でどうだ?」
まだ遠目に見る女子たちを見て、タカシと闇の福音が言った。
「え。うーん、どうでしょう。でも、ホクトさんたちは凄く綺麗だと思います」
闇の福音の問いかけに、平和バトははぐらかした。同級生を悪く言いたくないのだ。
そして、女子高生たちが来るとタカシと闇の福音はすぐに気配を消した。
「「おはようございます!」」
「ああ、ユナちゃん、アオちゃん、おはよう。よく眠れた?」
「はい、ぐっすり眠れました」
「そりゃ良かった。あっ、1人3つ持っていってね。スープが飲みたかったらあっちね」
「わかりました。3つ……3つか……」
「あたし、これとこれとこれ!」
会話をしていたユナやアオが朝食を選び始めたので、次のルナリーを見る。
覇王鈴木は昨晩の出来事を思い出し、ネムネムはルナリーに挨拶するのかなと考えた。このオフ会は午前中に終わるので、声を掛ける時間は少ない。
「おはようございます」
「おはよう、レイちゃん」
「なんですか?」
「いや、なんでもないよ」
自分を見ていたことに疑問を感じたようで、ルナリーがちょっと嬉しそうな顔で小首を傾げる。
それに対して覇王鈴木がはぐらかしていると、最後のホクトが兄に胡乱げな視線を向けた。挨拶はなし。兄妹なんてそんなものだ。
その時、丁度ニーテストたちがやってきた。その中にはネムネムの姿もある。ルナリーが近くにいる現状、覇王鈴木は我がことのようにドキドキしてきた。
「よう、やってるな。ご苦労さん」
ニーテストが適当な挨拶をした。
「おはよう。昨日は大丈夫だったか?」
「ああ、別に問題なかったぞ。なあ、ツナはないの?」
ニーテストの軽い返答に、自分が重く考えすぎなのかなと覇王鈴木は思った。
とはいえ、夜中にあれだけ励ましたのだから、そう思うのも無理はない。みんなで騒ぎながらネムネムと交流したニーテストとは、この件に対する目線が違うのは当然だった。
「ないか? さっきまであったけど、そこに並んでなければもうないな」
「うーん、じゃあ昆布でいいや」
「欲しければ俺のをやろうか? お手伝い特典で先に確保してるから」
「ほう、じゃあ貰おうか。くれ」
自分で提案しておきながら、コイツ全然遠慮しないなと思いつつ、覇王鈴木はツナおにぎりを提供した。
「ニーテストさん、おはようございます。ビニール袋はいりますか?」
「おっ、平和バトか。朝から働いてお前は偉いな」
「てへへ!」
「じゃあ1枚貰おうか」
ニーテストの家は八鳥村にあるので、すでに持って帰る気満々だった。
「おはよう、みんな!」
「おはようございます、ブレイド」
「ああ、おはよう」
ネコ太に続いて、乙女騎士が少しはにかみながらブレイドに挨拶する。ブレイドも嬉しそうに挨拶を返した。そんな騒ぎの列の中に、ネムネムもちょこんと混じっていた。
「お、おはよ……」
ネムネムが俯いた顔を赤くし、覇王鈴木に挨拶した。
「昨日は楽しかったか?」
「うん」
「そうか、良かったな」
覇王鈴木が口角を上げると、ネムネムははにかむように笑った。
「そういえば、ルナリーちゃんがいるぞ」
覇王鈴木がコソッと言うと、ネムネムはハワッとした顔をする。
「紹介してやろうか?」
「あ、あ、あ……んしゅっ!」
謎の返事をしたネムネムは、ふんすぅと気合を入れる。
「えっと、それは紹介するということで良いんだよね?」
念のために問うと、ネムネムはコクンと頷いた。
「じゃあ、ニーテストたちと食っていてくれ。折を見て連れて行くから」
ネムネムを連れて行けば、あまり接点のない3人の女子高生が話に加わる。このコミュ障にそれは荷が重かろうと、ルナリーをネムネムの下へ連れて行くことにした。
ホクトたちから始まった女性ラッシュが落ち着くと、一緒に配給係をしていたタカシが言う。
「お前、めっちゃ女子と話せるじゃん」
いまの誰だ、といった質問が来なかったことに少しホッとしつつ、覇王鈴木は答える。
「まあ、妹がいるし、ルナリーちゃんもよく遊びに来たから、昔から女子とはそこそこ話せたな。いまだと共通の話題もあるし」
「あー、共通の話題があるのはデカイかも」
「ああ。高校の頃も女子とは普通に話せたけど、何を話せばいいかはわからなくて業務連絡的なことしか話さなかったな。それに比べるとずいぶん楽だ」
「楽ねえ。なあサバイバー。女子と話すコツとかないの?」
タカシがサバイバーに水を向けた。
「忍び的な話術の訓練をしたいということかい?」
「それはちょっと興味があるけど。じゃあ、ひとまず一般的に」
「それなら、マイナスの感情を抱きながら会話をしないことだね。例えば、内心で笑われているかも、なんてことは考えない方が良い。それは舌や表情筋の動きを鈍らせ、会話へ割くべき思考力を低下させる」
「俺のことを見透かさないでください!」
とタカシが叫ぶ横で、闇の福音もそっと胸を押さえた。旅行中にひとつ屋根の下に泊まった女子たちとほとんど話さなかった反省点が胸にクル。
「あははは!」
サバイバーが笑う。ツッコミがウケたことに、タカシはちょっと嬉しそうに笑った。すると、サバイバーが言った。
「とまあこんなふうに笑うことも重要だ」
「え」
「俺が笑って、タカシは嬉しかっただろう?」
「おい、俺の心を管理しないで!」
「ふふっ、ごめんごめん。とにかく、男友達と喋っている時のように遠慮せずに声を出して笑うことだ。笑いこそが会話の極意の一つだよ」
ふと覇王鈴木は平和バトを見た。平和バトもよく笑う子である。だから、可愛がられるのだろうと思った。
「あとはそうだなぁ。会話の主人公を女性にすることだね。女性とトークをするのなら、これが最も難易度が低い」
「どういうこと?」
「世の中には、知っている話題が始まるなり、すぐに『俺は』と自分の体験談をペラペラと話し始める人がいる。女性本人がそれを求めていない限り、そんな体験談は求めちゃいないんだよ。まあ、これは女性に限った話ではないけどね」
その場にいる男子たちは、ぽわぽわーんと自分の過去を振り返った。女の子と話した経験が少なすぎて、ぽわぽわーんの中には特に参考データが生じなかった。
「要は、知っている話題が出た時に、ステレオタイプのオタクみたいに語るなってことか?」
覇王鈴木が言う。
「それに近いね。会話はキャッチボールだ。『俺は』と体験談を話し始めたら一方的にボールを投げているだけなんだよ。相手は確実に受け身となって、最悪オチを期待されてしまうようになる。会話の難易度はグンッと上がると思った方がいい」
タカシが「こわっ」と呟いた。
「しっかりとキャッチボールがされた雑談にオチなど不要なんだ。喋っていて、相手が笑えばそれだけで楽しいんだから。そのためにも相手に喋らせるようにすればいい」
「例えば?」
「そうだな。女性がステーキハウスに行った話をし始めたとしよう。タカシもその店に行ったことがあったとしても、君がすべき答えはこうだ」
『え、俺もそのステーキハウス行ったことある! えーっ、どうだった?』
「これだけでいい」
サバイバーはタカシの声でそう言った。
タカシ本人は自分の声色だと気づいていないようでキョトンとしており、代わりに他の面子が驚いた。
「肝心なのは、自分も行ったあるいはまだ行っていないという前提の情報を提示したうえで、すぐに相手に返すこと。その物語の主人公はその女性なんだから。サーロインが美味しいなんていう情報すらも付け加えてはいけない」
「うわ、言っちゃいそう」
「それを口にするメリットは一切ないんだ。味の良し悪しはこの会話の重要な部分である可能性が高いから、主人公である女性が初めて会話のテーブルに出すのが最善。それを聞いた後に、自分もテンションを上げて、『わかる、あそこ美味しいよねー!』なり同意すればいい。女性は自分が美味しいと感じた物にタカシが共感してくれて嬉しいし、タカシも『なにを食べたの?』といった次への質問への弾みになる」
「はえー、難しそうです」
平和バトが言う。
「そんなことはないさ。相手がそういう話題を出してきた時点で、相手の感想はもう出ているんだから、その感想を引き出すだけでいい」
「あっ、確かにそうかもです」
「自分が話題を提供する時だってそうさ。我々だとミニャちゃん関連がホットな話題になるわけだけど、提供した話題に相手が食いついてきたのなら、次第に会話の主人公が相手になるように立ち回ればいい。そうすれば女性は楽しく会話をしてくれて、向こうの方からもこちらの意見が聞きたい欲求が出てくるようになる」
「なるほどねー」
「女性と会話をしていて、『俺は』と追加の情報を言いたくなったら一旦立ち止まるようにしてみな。自分が語るよりも、相手が語って自分が笑う方が大抵の女性は楽しんでくれる」
そんな講義を聞きながら、覇王鈴木はネムネムのことを考える。
あの子はこの方法を使えば、楽しく喋れるのだろうかと。引っ込み思案すぎて、その姿はちょっと想像がつかない。
「とっ、サバイバー、少し抜ける」
「了解」
「なあなあ、じゃあ例えば、床屋のお姉さんに『その服、素敵ですね。どこで買ったんですか?』て聞かれたら?」
ブレイドが問うた。最近、メッシュをかけに美容院に行った際にまったく同じことを言われたのだ。
出発しようとした覇王鈴木は、容易に想像がつくシチュエーションなので聞きたいと思ったが、足を動かした。
「そのメッシュを入れた時に聞かれたのかい?」
「そうなんだよ、参っちゃうよな。しかも、施術をするから布で服が隠れてたんだぜ? 自分がどんな服を着てきたのかすら思い出せなかったわ」
「美容院こわぁ」
などと、タカシたちは覇王鈴木がどこに行くのか関心を持たず、サバイバーとのお喋りに夢中だ。
後ろ髪を引かれつつ、覇王鈴木は先ほどの約束を果たすべくルナリーたちの下へ向かった。
ご飯を貰った人たちは、一緒に貸し出されたレジャーシートに座って食べている。
女子高生たちも木陰がある場所にシートを敷いて、ウインドウを浮かべながらワイワイと食べていた。
「レイちゃん、ちょっといいか?」
「なんですか?」
「ちょっとニーテストたちのところに一緒に来てくれ」
「え、わかりました」
覇王鈴木が来ると、女子高生たちは会話をやめて注目した。それに少し気まずさを覚えつつ、ルナリーを連れ出すことに成功。
少し離れた場所にレジャーシートを敷いていたニーテストたちの下へ。
ネムネムはネコ太の横にちょこんと座り、小動物のようにメロンパンをもぐもぐしていた。しかし、覇王鈴木とルナリーがこちらに向かってきているのを発見すると、頭の中を真っ白にしてわたわたとし始めた。
「大丈夫だよ」
ネコ太がそう言って笑い、ネムネムは「うん」と頷いた。
ルナリーをネムネムの下へ連れて行くと、覇王鈴木が言う。
「レイちゃん、紹介したい人がいる。この人がネムネムだ」
「えーっ! ホントですか!?」
「よ、よ、よろしくお願いします」
ネムネムはメロンパンを両手で持ったまま、ぺこりと頭を下げた。
「ほら、ルナリーちゃん、座って座って!」
すぐさまネコ太がサポートして、ルナリーがレジャーシートに座る。
覇王鈴木はネコ太へ目配せすると、任せておけとばかりににこやかな笑顔が返ってきた。であるならば、自分はもう用済みなので、背中でキャッキャとした声を聞きながらクールに立ち去るのみ。なお、キャッキャとした声は主にネコ太である。
持ち場に戻ると、配給係が工作王や髑髏丸たち生産班の面子に入れ替わっていた。
「よう、食ってきていいぞ」
「ああ、サンキュー」
長机の裏側に確保しておいた食事を取りつつ、工作王たちにもネムネムを紹介するべきか、ふと考えた。
しかし、ネムネムは精神的余裕のキャパシティが小さいように思える。
工作王たちが来ていることはネコ太やニーテストだって知っているのだから、必要なら彼女たちがするだろうと覇王鈴木は静観することにした。
朝飯を食べてしばらくすると、2時間ほど昨日の復習が行なわれた。
それから各々が使った宿泊所に戻って清掃が始まった。泊まった部屋は、その後に他の賢者が借りることになるので、しっかりと清掃する。
「ハトは風呂掃除が上手いな」
「はい、家ではいつも僕がやってますからね!」
「マジか、偉いな。実家にいた頃は一切そういうことしなかったわ」
闇の福音は平和バトと一緒に風呂掃除。
水回りは特に注意が必要だ。新生活に夢を馳せて部屋を借りたのに、カビていたらテンションも駄々下がり。良かれと思って貸してくれたネコ忍やニーテストたちの評価だって下がってしまう。
平和バトは排水溝のフタの中から抜け毛も取り除き、生命循環の魔法で光に還す。
「生命循環って便利だな」
「はい、生ゴミ関連には凄く便利です。キッチンのヘドロなんかも消すことができるんですよ」
「へえ、いいな。あれ面倒なんだよな。あっ、最後にその中にこれを入れておいてくれだって」
「あっ、これスーパーでよく見かけるヤツです。でも、使ったことないなー」
「俺はこの前使ったぞ。カスミ製薬の製品だから目についたんだよな」
「わっ、ホントですね。どうでした?」
そんな会話をする闇の福音は、先ほどのサバイバーの話を思い出した。平和バトは自然と『どうでした?』と質問するので、こういうことかと納得した。たしかに凄く喋りやすい。
各々が持ち場を清掃し、いよいよ出立の時。
家の鍵をしっかりとかけて、チェックアウト。
「これから家まで帰るのか。だりーな」
駐車場に向かいながらタカシが言う。
「お前と覇王鈴木は電車だもんな。俺とハトは髑髏丸の車だから楽なもんだぜ」
「クソ野郎がよー」
「だって運転免許持ってないんだもん」
「ロリエールはヴィヴィさんの車だろ? お前は免許持ってないの?」
「私も持ってますぞ。帰りは私が運転する約束になっています」
「……なるほど」
タカシはチラッとブレイドを見た。
ブレイドはこれから乙女騎士と一緒にツーリングをしながら帰るので、ニコニコだ。だから、帰路の話は振ってあげない。
「まあ、帰りの電車は他の賢者もたくさんいるし、暇はしないだろうさ」
覇王鈴木がそう締めくくる。実際にタカシとも途中までは一緒だ。
そんなことを話しているうちに、ネコミミストアの駐車場に到着した。
解散の一本締めなどはなく、あとは部屋の鍵を返して帰路に就くだけだが、まだ話している人は多い。
バスの出発まで少し時間があるので、覇王鈴木もブレイドのバイクを見せてもらったりしながら過ごした。
そんな覇王鈴木の下へ来客が。
ニーテストたちだ。ニーテストたちの家にもたくさん泊まったので、その見送りに来たのである。
「ニーテスト、世話になったな」
「ああ、気にするな。それより、ネムネムも私たちの家で暮らすことになった」
「え、マジで?」
「ああ、部屋も余っているし武者修行だ。他人と暮らせば多少は引っ込み思案も治るだろうさ」
「引っ込み思案を治すためにシェアハウスとは、恐ろしい武者修行だぜ」
「コイツは自宅で金を稼げるから、そうでもしないと他人と喋らないんだよ」
「なるほど、たしかにそうかもな」
ニーテストと話していると、ネコ太が背後に隠れていたネムネムを「ほら」と前に出した。
ネムネムは俯き、もじもじしながら手を差し出してきた。
「こ、これ、あげる」
開いた手には、昨晩覇王鈴木が褒めたミニャのアクリルキーホルダーが乗っていた。
「え、いいの?」
「うん。お礼」
「そっか、それじゃあ貰うよ。すげえ可愛いと思ってたんだ。ありがとうな」
「……っ!」
ネムネムはシュバッとネコ太の背後に隠れてしまった。
そんなやり取りをする覇王鈴木を、ブレイドたちがジーッと見つめる。
「ギャルゲの主人公みたいで草」
そして、ニーテストが半笑いでそう言い、全員が無言で頷いた。
こうして、賢者たちの大規模オフ会は無事に終わった。
これを機に八鳥村に引っ越す人もいれば、そこまでいかずとも、近隣の賢者と交流を持つようになった賢者は多い。ブレイドは許すまじ。
なによりも、呼吸法を覚えたことで彼らがどのように変化していくのか、本人はもちろん賢者全体の楽しみができた。
賢者たちの結束力と能力を高め、第一回目の大規模オフ会は大成功したのだった。
読んでくださりありがとうございます。
次からはミニャンジャ村へ戻ります。




