7-17 ミニャちゃん陛下と新米賢者
本日もよろしくお願いします。
『ロバートさん、いまのルールを前提にしたうえで、あなたも特別に異世界へ連れて行くことができます』
白衣のポケットから引き抜いた竜胆の手には、人差し指と中指に1枚の招待チケットが挟まっていた。それはこれまで賢者たちが使用していた物とは色の違う特別な招待チケット。
今まで賢者たちは特別なチケットなんて生み出せなかった。そうなった原因は数日前のミニャとニーテストの話し合いが原因だった。
数日前、ミニャンジャ村。
ミニャの家の居間で、ミニャはお話があるというニーテストと対面していた。
ミニャは子供用ソファにちょこんと座り、ニーテストはテーブルに置いた人形用ソファに座っている。なお、子供用ソファには足がふらふらしないように足置きがついた物だ。
『ニーテスト:ミニャはロバートが賢者になってやってくるかもと思っていたようだが、実を言うと、ロバートは賢者になれない』
「にゃんですと!?」
さっそく告げられた驚愕の事実に、ミニャはお目々を真ん丸にして驚いた。
ニーテストは、悪人でないこと、日本人であること、女神パトラの信者もしくは無宗教者であることが賢者になるための条件だとミニャに教えた。
「ふむふむ。じゃあニーテストさんは日本人ていうこと?」
『ニーテスト:その通りだ。そして、ロバートは日本人ではない』
「ふーむ!」
ミニャはすかさず腕組みをしてお姉さんの構えを取ったが、あまりピンと来ていなかった。
『ニーテスト:ミニャには国といってもあまりピンと来ないだろう。だから、ちょっと見てもらいたいものがある』
ニーテストは、ミニャに髑髏丸の生配信を見るように促した。ウインドウに映ったのは髑髏丸の配信だったが、そこにいるのは白衣のロリっ子・竜胆であった。
「ミニャちゃん見えているかな?」
「はーい、見えてるよー!」
ミニャはテイーンと手を上げて答えた。
「こうして話すのは初めてだね。竜胆だ」
「ミニャはミニャです!」
「ふふっ。ああ、そうだね」
その配信はナオマサ邸の一室から。
近くにはナオマサの持ち物の地球儀と世界地図が置かれていた。ナオマサはインディーズゲームの制作者でもあるため、こういった資料を多く持っているのだ。
「さて、ミニャちゃん。これは地球儀といい、賢者たちの住む世界をとても小さくして表現したものなんだ」
「丸い!」
「そう。そして、ミニャちゃんの住む世界もこんなふうに丸い形をしている」
「ほえー!」
「まあ、こういった世界については今度しっかりと教えてあげよう。今日はミニャちゃんに、賢者たちの世界について少し教えようかと考えている」
「むむむっ!」
ミニャは心の準備をするために、「難しい?」と問うた。
「ミニャちゃんにもわかりやすいように、簡単に教えていくつもりだから安心していいよ」
「わかった!」
「それじゃあ、まずはこの地球儀について少し説明しようか。この青い部分は海だ」
「海。塩が出てくる箱がある大きな水たまりだ!」
「そうだね。海は世界の大半を占めているが、そうでない部分もたくさんある。つまり大地がある場所だ。こういった場所にはたくさんの人たちが住んでいる。これは賢者の住む世界だけでなく、ミニャちゃんの住む世界だって同じはずだ。あくまでも、これは賢者たちの世界の地形なので、ミニャちゃんの世界の地形はまた全然違う形をしているけどね。そこは勘違いしないでくれ」
竜胆は地球儀をゆっくりと回して、海や陸地について教えていった。ミニャは「はえー!」とお話に夢中。
「賢者様たちはどこに住んでるの?」
「賢者たちが暮らす日本という国は、この小さな島国なんだ」
「おー、ちっちゃい! トカゲさんみたいな形してる!」
「ふふ、トカゲさんか、そうかもしれないね。さて、ミニャちゃん。女神様はね、このトカゲさんのような島に住んでいる日本人だけが賢者になれるというルールを作ったんだ」
「へえ、そうだったんだー。じゃあ他のところの人は?」
「残念ながら賢者になれない。ここに住んでいる人も、ここに住んでいる人も、ここに住んでいる人も、賢者になることはできないんだ」
竜胆は地球儀を回して、大陸や群島などを指で示して、そう教えた。
「にゃんと。どうして?」
「それは私たちにも本当の理由はわからない。だが、推測はできる。例えば、ミニャちゃんはゴレモニアやサーフィアス王国を知っているだろう?」
「うん」
「この二つの国は考え方がかなり違う。ゴレモニアは他国を侵略してでも奴隷が欲しいが、サーフィアス王国は奴隷制度を許していない。この違いはとても大きい。他にも、サーフィアス王国はミニャンジャ村と仲が良いが、ゴレモニアはミニャンジャ村のことを存在すらよく知らないはずだ」
新しい女神の使徒が誕生したことは吟遊詩人が各地で歌っているので、その噂は国を越えてどんどん広がっている。しかし、国交がほぼないゴレモニア方面は一部が知るくらいのものだ。
「サーフィアス王国とゴレモニアの話をしたが、これは賢者たちが住んでいる世界でも同じなんだ」
竜胆は地球儀を指さしながら、「こことここでは喋る言葉が違うし、こことここでは食べ物も好みが違う」といったように、例を挙げて世界に様々な文化があることをミニャに教えた。
「そういえば、ミニャが前にいた村は玉米を全然食べなかった!」
「そう、住んでいるところが違えば、育つ農作物が違うことがよくある。だから、玉米を食べる国もあれば、小麦からパンのような物を作って食べる国もあるし、お芋をたくさん食べる国だってあるわけだ」
「はえー、そうなんだぁ」
「こうやって住んでいる場所が離れると、考え方や過ごし方が変わってくるものなんだ。先ほども言ったサーフィアス王国とゴレモニアのようにね。我々の世界では、女神様ではない神様を信仰している人たちもとてもたくさんいるよ。こういうのを文化という」
「へえ、女神様を信仰してない人は初めて聞いたなー」
ミニャは自分の経験から竜胆の話を理解しようと頑張った。
「そうだね。文化の違いというのは、大人でも簡単に解決できないほど難しい問題なんだ。だから、女神様は、同じ文化の中で暮らす日本人だけが賢者になれるようにしたのだと、私たちは考えている」
「にゃるほーねぇ」
「ミニャちゃんは賢者たちと暮らすようになって日本人という人たちを知ったが、ミニャちゃんが本当に知らなければならないのは、パトラシアで生きる人たちなんだよ。ルミーちゃんやアメリアちゃん、領主様やフォルガ様。周りにたくさん素晴らしい人たちがいるのだから、そういう人たちのことをもっとたくさん知るほうが良いはずだ」
「でも、ミニャは賢者様たちのことも知りたい!」
このやり取りは当然、他の賢者たちも見ており、ミニャの発言にジーンとくる。
「ああ、賢者たちと仲良くしてくれるのは私たちも嬉しいね。ミニャちゃんの無理のない範囲で賢者たちと仲良くしてね」
竜胆が微笑むと、ミニャもニコパと笑った。
「それで、ロバートさんはどこに住んでるの?」
「ロバートさんはここだね」
「でかー!」
ミニャはアメリカを教えてもらって驚いた。
こうして、お勉強会の生配信は終わった。
『ニーテスト:さて、ミニャ。そういうわけでロバートは賢者になれない』
「そうなんだー。でも、ロバートさんはナオマサさんのためにいっぱい頑張ったのになー。賢者様たちとも仲良くできそうだし」
ミニャは「うーん!」といった感じで腕を組み、お姉さんの構え。
『ニーテスト:もしかしたら、ロバートを賢者にすることができるかもしれない』
「にゃんですと!」
『ニーテスト:以前、ミニャはグルコサで、アメリアたちと賢者が会話できるようにしただろう?』
「うん、した。にゃーってしたらできた!」
水蛇がグルコサに攻めてきた時、ミニャはミニャのオモチャ箱のルールを変更したことがある。それまではミニャンジャ村の住民にならなければ賢者のウインドウが見られなかったが、この件で領主ファミリーや一部のグルコサ人はウインドウが見られるようになったのだ。
『ニーテスト:それと同じで、ロバートを賢者にしたいと強く願ってみれば、このルールを変更できるかもしれないな』
「おーっ、じゃあやってみる!」
『ニーテスト:待て、ミニャ。念のために、女神様に良い感じに調整してくださいってお願いしてみてほしい』
「わかった!」
ミニャはさっそくみょんみょんみょんとウインドウに向かって念じ始めた。
「うーん……うーん……女神様、良い感じにしてください……うーん! むむむっ、なんかニャンてきた!」
すると、ミニャちゃん陛下の脳内子猫たちがキュピピン!
ミニャのウインドウで勝手に設定画面が開き、色とりどりの大量の肉球マークが下から上へと流れていった。レインボー肉球群予告である。
『ニーテスト:どういうこと!?』
「ねえねえ、できたー?」
ミニャはやり切った感を出しながら問うた。
『ニーテスト:わ、わからん。たぶん、できたんじゃないかな?』
どこが変わったのかわからなかったニーテストだが、確定演出であるレインボー肉球群予告を見せられてはこう答える他ない。
たぶんできたミニャは、「むふぅ」と誇らしげ。
結論を言えば、この件は実際にできていたのだが、それを確かめる前にミニャの方からニーテストに相談をしてきた。
「そうだ! ニーテストさん。あのね、ミニャもお願いがあるの」
何が変わったのか自分のウインドウを弄っていたニーテストだが、ミニャからそう言われて手を止めた。ニーテストであろうとも、賢者はミニャちゃんファーストなのだ。
『ニーテスト:珍しいな。なんだ、何でも言ってみろ』
そのセリフからわかる通り、ニーテストはミニャに甘かった。
「うんとね、ミニャも修行したい!」
『ニーテスト:しゅ、修行? それはダンジョンに入ったりするってことか?』
「うん!」
ニーテストは若干遠い目をして、『絶対に闇人の影響だ』と思った。ヤツの戦闘シーンは、別に中二病ではないニーテストから見てもカッコ良かった。子供のミニャからすれば、それこそアニメを見る幼女のように鮮烈に映ったことだろう。
とはいえ、魔物が出る世界なので、強くなって損はない。
ニーテスト的にはちょっと早すぎる気もするが、剣王の血を引く連中は幼い頃から剣を振っているし、この世界ではそういう英才教育を受けている子供が多いはずだ。
実際に、ミニャの母親も森歩きの方法や知識を教えていたようなので、強く育てる準備を始めていたように思える。
それにミニャが決めたことなら、たとえニーテストでも止める権限はない。もちろん命に関わればその限りではないが、今回はそうではない。魔物と戦うことにはなるが、危なくないようにする方法はいくらでもあるのだ。
『ニーテスト:わかった。それじゃあどんなふうに修行するかみんなで考えてみよう』
「うん!」
というわけで、ミニャの修行が決まった。
時はロバートやナオマサとの話し合いに戻る。
竜胆の手には、ミニャのルール改変によって作れるようになった1枚の特別招待チケットがあった。
竜胆は英語で説明する。
『こういったチケットを使用することで、あなた方を賢者にすることができます。ナオマサさんはこっちの日本人用のチケット。ロバートさんはこっちの外国人用のチケットを使用します』
ナオマサの分もポケットから出して、見せる。
ナオマサの方は通常の招待チケットだ。
『ほ、本当に私も異世界に行けるのかい?』
ロバートは子供のように顔を輝かせて尋ねた。
『はい。これらのチケットは『我、ロバート・アンダーソンを新たな賢者に推薦する』といった呪文を唱えることで、その人物が正しい性根を持っているか自動で判断してくれます。例えば、邪な心を持って賢者になろうとする人はこの段階で弾かれてしまいます』
実際に、賢者たちがスカウトしようとした者の中には弾かれた人もいる。あらかじめチケットで判別して会うので、そういう人とは適当に雑談して別れるだけである。
ネコ忍が関わる案件の場合はもっと確実で、賢者になる資質がある人だけと会う約束をしていた。
『申し訳ありませんが、お二人は事前にこの呪文で賢者になれるか確かめています。そして、確かめたうえでこの話をしています』
『賢者になる資格がなければ、そもそもこの話自体をしていなかったということですね?』
『その通りです。まあ空港の入国審査を魔法的要素で行なっていると考えていただければいいかと思います』
ナオマサが言うので、竜胆はそう喩えて説明した。
『ロバートさん。賢者になる場合は、無宗教者になるか女神パトラ様を信仰しなければなりません。もちろん、異世界で女神パトラ様以外の信仰を広げてはなりません。それを承知してください』
『宗教勧誘なんて面倒なことするわけないが……しかし、私の道徳心は自分でも知らないところで宗教をベースにしているような気もするのだが、そのあたりは大丈夫なのかい?』
『それは多かれ少なかれ他の賢者も似たようなものです。要は彼らの文化や考え方を尊重すれば問題ありません。例えば、異世界パトラシアには女神の森という聖域があるのですが、他の宗教が流入することでこの森をないがしろにする思想を育む土台を作るわけにはいかないのです』
『一神教は他教の聖域を荒らしてきた歴史があるからね。そういうことなら、問題ないと思う』
『僕も問題ありません』
ロバートとナオマサの返事を聞いた竜胆は頷き、続けた。
『では、お二人とも、賢者になるということで説明を始めます』
竜胆は2枚のチケットをそれぞれに渡した。
『その2枚のチケットには、ひとつだけ違いがあります。ロバートさんが使う方は、賢者になったあとに他人をスカウトする機能がありません』
『その程度しか違わないのかい?』
『はい、そうです。これは変更できないルールですので、予めご了承ください』
ミニャが改変した新たな賢者の招待のルールによって、日本人以外でも賢者にスカウトできるチケットが手に入れられるようになった。
実際に購入した外国人用のチケットの裏面を読んでみると、女神様ショップに賢者招待チケットが出現しないと記載されていた。ミニャがそんな小難しいことを考えられるはずもないので、女神がそうやって調整したのか、元からそういうふうに解放される予定だったのだろう。
一通りの説明を終えて、2人は賢者になった。
そして、賢者登録を終えた瞬間、竜胆やネコ太たちの前に浮かぶウインドウが見えるようになって、ロバートが思わず言ってしまった。
『オーマイガ……じゃない! いや、すまない! 今のは慣用句みたいなものなんだ!』
大慌てで謝罪するロバートに対して、竜胆は苦笑いして答えた。
『女神様はいちいちそんなことで怒りませんよ。あなたの人格を形成しているのはこれまでの人生なのですから、それを否定するようなことはしなくても良いと思いますよ』
『リンドウ……わかったよ』
そんなプチ事件をしつつ、いよいよ異世界初体験の時になった。
『ロバート:な、なんてこった……なんてこった! 動画で見た通りだ!』
『ナオマサ:あーわわわわわ……』
いつもの研修所、旧ミニャちゃんハウスでゴーレム型の人形に宿った2人。
ロバートは興奮して腕をブンブンし、ナオマサは何もかも巨大な光景に手を右往左往させる。
そんな2人が選んだ属性は。
ロバートは闇属性。やはり今回の悪霊事件で闇に魅了されたようだ。
ナオマサは雷属性。自分が今後どのように活動するか考えたうえで、IT関連のぶっ壊れ魔法である電子情報鑑定が欲しかったようだ。
興奮する2人の前に、竜胆が宿る美少女フィギュアがやってきた。
『竜胆:ようこそ、パトラシアへ』
『ロバート:え、誰……竜胆!?』
『竜胆:ふむ。どうやらロバートさんのフキダシは自動で日本語にされるようですね。私のフキダシはどう見えていますか?』
『ロバート:えぇーっ、君はクールだな!? そんなことよりも私は大興奮しているよ!』
ロバートは竜胆の本体から知り合ったので白衣のロリっ子という認識が強いが、他の賢者の認識は学者肌のクールな女というのが竜胆への認識だった。そして、その認識は正しく、竜胆はクールな面が多い女だった。
『竜胆:なるほど、私の言葉もそちらに翻訳されて見えているようですね』
竜胆はロバートの反応からどうやって見えているのか推測する。村民さんが話すパトラシア言語もウインドウ内で同時翻訳されるし、そういう機能があるのだろう。
『髑髏丸:おい、竜胆。そんなことよりも案内をしてやれよ』
『ロバート:あ、君は髑髏丸か! そうだよ、竜胆。放置しないでくれ!』
やれやれと竜胆はロバートの相手をし始めようとしたところで、髑髏丸と一緒に来たネコ太がナオマサに言った。
『ネコ太:ナオマサさん。体調はどうですか?』
『ナオマサ:そ、そういえば体が軽い。先生、まるで衰弱する前に戻ったようです』
『ロバート:おーっ、本当かい!?』
『ネコ太:人形の体に入っている時はみんなそんなふうに元気になります。ですが、本体に戻るとまた元に戻ってしまうので、その差で参ってしまわないように気をつけてください』
『ナオマサ:わかりました、十分に気をつけます。ですが、これは本体に戻ったら興奮で心臓がもたないかもしれませんね』
『ネコ太:ふふふっ。重要なのは本体も健康体になることです。そうすれば差はなくなっていきますから。それまで頑張りましょうね』
ネコ忍のジジババも、初めて人形の中に入った時はシュバシュバと動いてみせた。いまでは八鳥村に引っ越してきたネコ太からの治療も終わり、本体でもシュバシュバと動くヤバいジジババになっている。
ナオマサも本体はまだ弱っているが、召喚状態では元気な様子。ただ、ベースとなるのがあまり運動をしない男なので、ネコ忍のようにシュバシュバしない。
それから2人は初めての異世界と魔法を楽しんだ。
翌日の朝。
「うんしょ!」
ミニャは玄関で靴を履き、イチ、ニ、イチ、ニ、と足踏みして、今日のお靴具合を確かめる。
「よし!」
良い感じの様子。
その様子はとても可愛らしく、母性本能ギュンギュンな近衛賢者たちの朝の栄養補給ポイントとなっていた。
そうして、朝の身支度を終えて元気にお外へと出たミニャは、玄関前にいた賢者を見てすぐにキュピピンとした。
「あーっ、ロバートさんとナオマサさんだ!」
そこにいたのは、ペイントフィギュアに宿っている2人と、その指導役をしている竜胆。あとは縁があるので闇の福音たちもいる。
最近のミニャは、フキダシを見なくても賢者を識別できるようになっていた。これも魔法のレベルアップなのだろう。
「やっぱり賢者様になったんだー!」
ミニャはちょこんとその場に屈んだ。
『ロバート:あ、あわわ。み、ミニャ様、わたくしめを賢者にしていただき、誠にありがとうございます! それと友人の命を救っていただき、本当にありがとうございます!』
『ナオマサ:お礼に参じるのが遅れてしまい誠に申し訳ありません。このたびはミニャ様の賢者である皆様のおかげで、この命を助けていただきました。ありがとうございます』
巨大ネコミミ幼女の迫力と愛らしさにロバートがあわあわしつつお礼を述べ、その横で正座したナオマサが深々と頭を下げた。
朝っぱらからそんなクライマックスな様子にミニャははえーとしつつ、これはアレだなと、石畳の上に胡坐をかいて最近覚えたセリフを使った。
「ミニャはそのお礼をたしかに受け取りました! んっ!」
真剣にお礼を言ってくる人には、この言葉を言っておけば間違いないと思っているミニャである。とはいえ、自分のお礼の言葉を真摯に受け止めてくれたとわかるので、良い対応だろう。
実際に、その言葉を聞いた2人は本当に7歳なのかと思うと同時に、これが真なる王の器なのかと「ははっ!」と忠誠を誓った。
それをミニャの横で見ている近衛隊は、よく弁えた新人の様子にうむうむと頷いた。実際に本体で彼らと対面したら、きっと借りてきたミジンコよりも大人しくなる。
「ナオマサさん、治って良かったね!」
『ナオマサ:はい。このご恩は誠心誠意お仕えすることで一生をかけてお返しいたします』
重い覚悟だが、死ぬ一歩手前の状態だったので、そう言いたくなるのも仕方ない。
そんなナオマサの姿は、エルフのシゲンや奴隷から解放された村民さんたちに似ているとミニャは思った。だから、そんな村民さんたちの暮らしぶりを思い出して、2人に言葉を贈った。
「うーん。ミニャはねー、ナオマサさんとロバートさんがミニャンジャ村で楽しく過ごしてくれたら嬉しいな。そうしたら、きっとミニャンジャ村はもっと楽しくなるから、他の賢者様も楽しくなって、ナオマサさんとロバートさんももっともーっと楽しくなるよ。ミニャはそれで十分だよ」
ミニャはニコパと笑った。
その言葉を聞いた瞬間、2人は竜胆たちが何を守りたいのか真に理解した。そして、再びの平伏! 当然、近衛隊の足もガックガクで揃って臣下の礼!
「じゃあ、あとで女神様の像にお参りに行くから、2人も一緒に行ってお礼をしようね!」
『ロバート&ナオマサ:はっ!』
もともとアニメやマンガが好きなロバートとナオマサである。
ミニャから聖属性の言葉を貰った2人は、ミニャのオモチャ箱というぶっ壊れコンテンツにどっぷりとハマるのだった。
読んでくださりありがとうございます。
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誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




