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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第7章

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7-6 雨の日とリバーシ

本日もよろしくお願いします。


 本日はそこそこの量の雨。


 竪穴式住居がほとんどのミニャンジャ村だが、屋根は瓦、壁は煉瓦と石パネルで覆われているため、雨を弾き、地下水の侵入も許さずに、雨は用水路に流れ込んでいく。


 風属性の賢者は数日先の天候がわかる天候鑑定を使えるため、ミニャンジャ村はそれを元にして活動している。だから慌てる人はいない。


 こういう日はさすがに開墾や大工、製材などの仕事はお休みで、その代わりにダンジョンに行く大人が多い。


 冒険者は賢者がサブの役割を担うが、村民さんがダンジョンに行く場合は賢者がメインで村民さんが荷物持ちをする。やはり体が大きい大人の運搬能力は高いので、運搬係をするだけでも大変に助かった。もちろん深くまで潜らせるなんてことはなく、どんなに潜らせたとしても10階層までだ。


 通常の開拓村や農村は、雨の日だと家の中で内職をしたり、雨でも蓑なんかを着て働いたりするので、天気に影響されないダンジョンがあるのは生活に有利に働いた。


 機織りなどの屋内で行なわれる仕事は普通に行なわれ、少し特殊なのは調理係の人たちだ。雨の日の食事は各家で手軽に食べられる物になるのである。


 公衆食堂は雨の日に弱かった。もちろん屋根は付いているのだが、村人が多いのでテラス席が多く、横風で雨が吹きつけてくるのだ。


 さて、子供たちだが、雨の日も変わらずに学校だ。


 最近の学校は、新しいミニャの家の居間や板の間を使用して行なわれていた。他にも旧ミニャちゃんハウスの竪穴式住居も分校として使われるが、今日は雨なので全員で新しいミニャの家に。


「パラパラしてる」


「ククリ、上を見てたら転んじゃうよ」


「でもパラパラしてるもん!」


「転んじゃったらククリだけミニャちゃんのおウチに入れないんだよ!」


「わんわん!」


 通学には賢者たちが作った傘が使用された。

 イヌミミキッズのククリが雨を弾く傘を見上げ、それを姉のルキが注意した。


 王国で使われている一般的な雨具は、レインコート、蓑、笠、傘である。


 レインコートは撥水性のある魔物の革が使われ、王侯貴族から庶民まで幅広く使う。相応に値がするため、庶民だと親から引き継ぐレベルで修復しながら一生使うようなアイテムだ。


 蓑は農民などが使う防寒兼用の雨具であり、笠は頭に被る雨具。


 そして、傘は木骨に布を張った物だ。

 この布に薬品を塗ると撥水性の高い傘ができ、町を中心に普及している。村や旅ではまず使われないようだ。


 王国は米文化なので、水耕農業の都合、アジア圏の雨具と似た発想を持っているようだった。しかし、世界に魔物という要素があるため、レインコートもまた発展している印象がある。

 また、パトラシアにおける傘の歴史については資料不足でよくわからなかった。


 閑話休題。


 雨の音を聞きながら、子供たちは真面目にお勉強。

 それを見守る賢者たちは、雨の音も相まってヒーリングの波動をビシバシと受けている。


 お昼ご飯の時間になると、年長さんが食堂からサンドイッチを運んできた。新生ミニャハウスには台所もあるので、そこで作られたコンソメスープも振舞われる。


 いつもと違う場所でとる食事に子供たちのテンションは高めだ。


【677、シリウス:そういえば、雨の日の小学校って非日常感があったなぁ。僕だけかな?】


【678、名無し:ちょっとわかる。俺も雨の日の学校の何気ない記憶っていくつかあるわ】


【679、ショージ:私もありますね。もう何十年も昔ですけど、特にエピソードなんてない雨の日の記憶が】


【680、名無し:昼休み図書室勢ワイ、雨の日は図書室が混雑して非日常を感じていた模様】


【681、名無し:たしかに雨の日の図書室は混んでましたねぇ。普段は来ないヤンチャな子が来るので雨の日の図書室は嫌いでしたけど】


【682、名無し:俺は小学校2年生の雨の日の集団登校を鮮明に覚えてる。なぜかその時に西暦について考えてたのをはっきり覚えているんだよな】


【683、名無し:そういう謎エピソード好きよwww】


【684、名無し:ミニャちゃんたちも大人になって、今日のことをふと思い出すのかなぁ。そうだったら凄くエモい】


 生配信で子供たちの様子を見ている賢者たちが子供時代を思い出してしんみり。


 ご飯を食べ終わると、学校は終わり。

 だが、今日はお外で遊べないので、子供たちはミニャの家の中で遊ぶことに。


 一方、お仕事へ行く年長さんもいる。

 仕事内容は、機織りや陶器作り、調理場のお手伝い、燻製作り、ダンジョン探索などなど。

 まだまだ遊んでほしい年齢ではあるが、本人が希望することを止めても仕方ない。パトラシアの文明レベルや子供の早熟性を考慮して、賢者たちは、その道のプロになれるようにサポートしてあげるのが最善と考えていた。


 さて、残った子供たちはさっそく家の中で遊び始めた。

 鬼ごっこなんてさせた日には板の間の障子さんが絶体絶命のピンチなので、賢者たちは大人しい遊びを推奨。


 その中のひとつに新製品があった。


『工作王:ミニャちゃん。新しいオモチャを作ってきたよ』


「にゃんですと!」


 ミニャはシュバッとポージングして、誘惑してきた工作王を迎え撃つ。ミニャの反撃の一手は仲間呼び!


「みんなー、賢者様が新しいオモチャを作ったってぇ!」


「わぁ、なになにぃ!」


 ミニャが教えてあげ、子供たちがわーっと集まってきた。その勢いにオモチャを運んできた賢者たちはタジタジだ。これが遊園地のマスコットの気分……っ!


『工作王:今回作ってきたのはぁ……リバーシ!』


「リバーシ!」


 それは禁断の一手、賢者たちはついにリバーシを解禁したのだ!


『工作王:ミニャちゃん、みんなに良く言い聞かせてほしいんだけどいいかな?』


「うん、いいよ。なぁに?」


 工作王の言葉を、ミニャはみんなに伝えた。


「えっとねぇ、この遊びはしばらくの間、秘密にしないとダメなんだって。だから、ミニャのおウチの中だけで遊んでだって。特に商人さんには内緒なの。わかった?」


「「「わかったーっ!」」」


 元気なお返事を聞いて、工作王はうむと頷く。

 子供のことなので信頼度は若干低いが、まあ情報が漏れたとしてもそこまで問題はない。


 こんなお願いをするのも、この世界には特許制度がまだないのだ。

 その代わりの防衛策として、王侯貴族からの庇護を得るという方法が取られる。模倣するなら覚悟しろよとばかりに、商品に王侯貴族の紋章を焼きつけるのだ。仕組みがすぐにわかる物への効力が高く、リバーシなんて良い例だ。まあ、他国に渡ると普通に模倣されるのだが、国内や友好国ならかなりの力を発揮する。


 というわけで、時が来るまでリバーシは秘匿してほしいのだ。

 しかし、本当に人気が出るかもわからないので、子供たちに試してもらいたいという二律背反。パトラシアにも各国に昔からのボードゲームがあるようで、それを差し置いて人気になるか未知数なのだ。


『工作王:それじゃあ、ミニャちゃんとマールちゃんで対戦しながら、みんなで遊び方を覚えようか』


「マールちゃんと対戦!」


「負けないぞー!」


「ミニャだって負けないもんね!」


『工作王:まあ、最初は練習だから勝ち負けは気にしないでな。それじゃあ、まずは真ん中の4マスにこうやって並べる』


「白黒黒白!」


 ミニャがシュビビッと指差し確認。そのテンションに引っ張られて、周りの子供たちの期待度もアップアップ!

 工作王が教え始め、子供たちはすぐにルールを覚えた。


「ここ!」


「マールがやるの。ルミーは口出しちゃダメ」


「きゅーん……」


「もー、ほら」


 口出しして注意されたルミーがしょんぼりしたので、マールは隣に座らせて頭をナデナデした。ルミーはすぐに機嫌を直して尻尾をパタパタ。大変にエモい。

 そんな子供にありがちなやりとりを挟みつつ一局を終えて、勝者はミニャちゃん棋士。決め手は、とりあえずいっぱいひっくり返るところに置いたのが吉だった模様。素人なんてそんなものだ。


 4セット作ってきたので、適当に遊ばせる。

 特にコツなどは教えていないので、後先は考えない子供っぽい打ち方。いっぱいひっくり返れば楽しいし、逆にひっくり返されたらビックリする。笑い声もそこかしこで上がって大変に楽しそうだ。


『ネムネム:ミニャちゃん。もうひとつリバーシがあるんだー。こっちはちょっと特別な物なんだけど、見て見てぇー?』


「わぁ、どんなのー?」


『ネムネム:これ。単語入りリバーシ!』


 それはコマにパトラシアの文字と小さな挿絵を書き込んだ、遊びながら学習できるリバーシである。コマの大きさの都合上、挿絵は小さく描いてもすぐに何が描かれているかわかり、文字数が5文字以内の物にした。

 さっそくやってみると、すぐに子供たちが周りに集まってきた。


「あーっ、イヌだ!」


「こっちは家!」


「ひっくり返ったら木になった!」


 コマの裏表は関連し合う物にした。家なら木、ネコなら子猫といった具合。

 とはいえ、5文字制約の中で関連性のある物を組み合わせるのが案外難しく、中にはちょっと関連性の遠い物もある。


「にゃんこだ!」


「ひっくり返ったらミニャお姉ちゃんになるのかなぁ?」


「でもイヌがひっくり返ったら子犬だったよ」


「じゃあ子猫かも!」


 ワイワイと文字と絵を、そして、その裏に何が描かれているのか楽しむ子供たちの姿を見て、賢者たちは話し合う。


【775、名無し:やっぱり特別製リバーシの方が人気か?】


【776、ネコ太:うーん、絵の有無で楽しむのは最初だけの可能性もあるよ】


【777、シリウス:僕もそう思うな。絵と文字にゲーム性がないから、少し経てばただの飾りになっちゃうと思う】


【778、名無し:打った際とひっくり返された際に読ませるとか?】


【779、名無し:それはさすがに面倒すぎるだろ。大量にめくれたらゲームのテンポが悪くなる。それに文字を覚えていない子にはキツイだろう】


【780、名無し:でも、1枚ずつ手でめくるわけだし、その都度パッパッと言えばそこまでテンポは悪くならないんじゃない?】


【781、名無し:絵や文字を使うならまったく別のルールで遊ぶしかないんじゃないかな?】


【782、名無し:そうなるとリバーシである必要がないと思うな】


【783、名無し:つまり失敗作か……】


【784、ネムネム:あたし、めっちゃ頑張って描いたんだけど( ;∀;)可能性を信じて!】


【785、名無し:作るのも手間だし、こりゃ量産するならノーマルのリバーシだな。ゲーム的な学習教材は他に開発した方が良いと思う】


【786、名無し:まあちょっと動向を見守ろうや】


 賢者たちの推測は当たり、途中からノーマルリバーシを始める子が現れた。ミニャもそんな1人だ。賢者が苦労して作れば、必ず大成功を収めるとは限らないのである。


 逆に、ルミーやパイン、クレアといった年少組には人気がある。勝敗よりもコマの裏に何が描かれているのか気になるようだ。そのうち、リバーシではなく裏面に何が描いてあるのか当てるゲームを始めてしまった。予備を含めて68枚のコマがあるので、そこそこ記憶力が試されている。


 それを眺める製作者のネムネムは、まあ少しの間でも楽しんでいるならいいか、とニコニコするのだった。


読んでくださりありがとうございます。

ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
イラストに意味を持たせたゲーム性となるとやはりドンジャラ ちょっとルールが複雑か
晴れの日は普通に仕事して、雨の日はダンジョンとか楽しそうでいいなぁ〜 あとこの話を読んでから、既存のゲームをパトラシア版にするのをいろいろ考えてるんですが、その時間が超楽しいっす(๑╹ω╹๑ )生産属…
オセロに文字を書いてゲーム性に変化を与えようとするなら…うーん コマに単語や動詞を書いて、勝者は自色に染めたコマで文章を作って敗者に罰を与える闇のゲームとか? 例えば染めたコマに「絵」「を」「かく」…
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