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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第5章

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5-24 フォルガさんが来た!

遅くなりました!

本日もよろしくお願いします。


 フォルガ率いる使節団がやってきたのは、領主から情報を貰ってから3日後のことだった。


 ミニャちゃん村長は、賢者たちやクレイと一緒に港までお出迎え。子供たちは村でお留守番である。


 本日のミニャは、グルコサに滞在した時に貰った服を着て、賢者が作った髪飾りで髪を留めて、すっかりお姉さん気分。しかして、湖から湖面を見下ろすと釣りをしたい気持ちがむくむく。


「ミニャ、今度、湖で釣りしたいな」


『ネコ太:うん、今度来ようね』


「うん!」


 初めて釣りをしてからというもの、ネコミミ幼女は釣りキチミニャちゃんになっていた。


 しかし、魔物がいて危険なので、今のところ湖で釣りをしたことはない。

 いまだって水中から魔物が飛びかかって来ないように、湖の中で賢者が目を光らせていたりする。賢者からすれば、湖を眺めるミニャの姿は、アフリカの川で水を飲む動物を見ているようでハラハラした。


「クレイ君は湖で釣りしたことってある?」


「ないですね。釣り自体、ミニャンジャ村に来て初めてやりました」


「おー、ミニャと一緒。ミニャも釣り竿触らせてもらえなかった」


「すぐ折れちゃいそうですもんね。あっと。ミニャ様、来ましたよ」


 お話をしていると立派な船が見えてきた。

 大きな船が1隻に、荷の運搬用の船が4隻。


 立派な船の船首ではフォルガの隣でアメリアが大きく手を振っていた。ついてきたのだ。

 ミニャもピョンピョンと跳ねながら手を振り返す。


 降りるのに邪魔なので桟橋が始まるあたりまで引いて待っていると、フォルガとアメリアが船から降りてきた。


 フォルガは武装しておらず、ファンタジー系スーツといったふうな貴族の正装。しかし、無手でも相当に強いだろうから、警護班は油断しない。


 公の場と理解しているのか、アメリアはそんなフォルガの後ろで小さく手を振る。ミニャはニコパで応えた。クレイもはしゃぐことはなく、ミニャの後ろで静かにしていた。


 アメリアの後ろには女性の文官が数名いた。

 ミニャのことを考えてのことだろうが、グルコサのフェスのように、やはり女性の地位が昔の地球よりも高いことが窺えた。


 フォルガは水蛇討伐の折に賢者たちの大軍を見ているからそうでもないが、女性文官たちは初めてのことなので息を呑んでいる。


 フォルガが近くまで来ると、ミニャはキリリとした。


「初めまして! ミニャはミニャです! 7歳です! 女神様の使徒で、ミニャンジャ村の村長さんです!」


 先制攻撃である。

 フォルガは眩しいものを見るような目つきで微笑むと、恭しく頭を下げた。


「ミニャ様、お初にお目に掛かります。サーフィアス王国が剣大公、フォルガ・スレイザーと申します。この度はサーフィアス王国の外交大使の任を受け、参じました。女神の月が迫るご多忙の中、急な訪問をお許しくださり感謝いたします」


「ううん、大丈夫です!」


 領主館ではドルオタみたいなお爺ちゃんだったフォルガだが、さすがに普通だった。


「さっそく村にご案内します」


 賢者たちに流れを教わっていたミニャは、用意していたセリフを口にした。まだ7歳なので、放っておけば桟橋に腰かけて、足をプラプラさせながらお話を始めてしまうから。


「ミニャ様、お久しぶりです」


「アメリアちゃん、久しぶりー」


 移動が始まって、やっとアメリアが声をかけてきた。


「お爺様、お久しぶりです」


「うむ。しばらく見ないうちに大きくなったな、クレイ」


 シスコン気味なクレイだが、挨拶はフォルガを優先する。領主の子供3人は、こういった教育がよくされていた。

 そんなふうに挨拶を交わしていたのも束の間、アメリアはエレベーターを見上げた。


「ミニャ様、これはなんですか?」


「これはエレベーターだよ。賢者様が作ったんだ。乗ってみる?」


「わっ、乗りたいです」


 というわけで、ミニャとアメリアがエレベーターに乗り、安全柵を降ろした。賢者たちとしてはあまり人を乗せたくないのだが、飛行魔法が使える風属性を一緒に乗せることを条件にして、何回かミニャたちを乗せていた。


 崖の上でタルの中に水が注入されると、エレベーターが昇り始めた。速度が出ないようになっているのでスピードはゆっくりだ。


「わわっ、上に行ってます! わぁ!」


 下ではフォルガやクレイ、まだ船に乗っている人たちがミニャたちを見上げていた。


 階段を上ることなく崖の上に到着。

 賢者たちがストッパーを掛け、2人は降車した。


「とっても楽です!」


「でしょー」


 ミニャはえっへん。


 一方、エレベーターを見送った港では、フォルガがその場から動かなかった。


「あの、お爺様は乗れませんよ」


「ぬっ」


「荷運び用ですが、あまり重たい物は乗せられないそうです。お爺様はたぶん無理です」


 丈夫なロープを使っているが、重量制限は60kg程度にしている。ミニャとアメリアを合わせたよりも、細身とはいえ鍛えられた筋肉を持つフォルガの方が確実に重い。

 というわけで、ミニャとアメリア以外は階段を使った。


「それじゃあザインさん、バールさん、お願いします」


「ええ、こっちは任せておいてください。ミニャ様も頑張ってください」


「はい!」


 崖の上には冒険者のザインとバールがおり、フォルガたちと入れ替わりで港へ。荷運び人にエレベーターや荷馬車、車石の使い方を教えつつ、荷運びを手伝ってくれるのだ。

 冒険者たちへの依頼はダンジョンや森の調査なので、こういった荷運びは別途で給金を出すことにしていた。


 フォルガたちを連れて森の道を行き、女神像の前で恒例の威圧外交。

 キラキラと輝く希少石の花園の中から現れた純白の女神像に目を奪われる使節団一行の前で、ミニャがお祈りを捧げる。


「今日はサーフィアス王国の大使様のフォルガさんが来てくれました。クレイ君のお爺ちゃんです。あと、アメリアちゃんが来てくれました。おかげさまで元気いっぱいです。うんとー……ミニャは頑張ります!」


 思うままにお祈りの言葉を口にする。最後のふわふわ感が7歳児らしい。

 その声に正気を取り戻した使節団は、少し長めのお祈りを捧げた。


「これほどの素晴らしい女神像は見たことがありませぬ」


「んふーっ!」


 お祈りを終えたフォルガがそう褒めてくれて、ミニャはえっへん。

 この女神像は、賢者たちが作った物の中でもかなり大きな効果を持つ物になりつつあった。


 威圧外交を終え、一行はミニャンジャ村へ。


 かつて子供たちがミニャンジャ村に来た時よりも、この森の道は短くなっている。それだけミニャンジャ村の開拓が進んでいる証拠だ。

 女神像からほんの少し歩くだけで、広い敷地が見えるようになった。


 ミニャンジャ村は開拓が進み、南北に80m程度、東西に180m程度の敷地面積になっていた。小学校のグラウンドを少し大きくした程度の広さだ。

 大きな音が出る伐採を昼に、伐採ほどは音がしない根っこの処理を夜に行なうことで、効率的にお仕事を続けた結果である。このクエストはまだまだ当分は続く予定だ。


 しかし、全ての木を切り倒したわけではなく、神社にでもありそうな立派な木やドングリを落とす広葉樹の一部はそのまま残して村の彩りにした。


「これはワクワクする光景ですな!」


 フォルガが目をキラキラさせた。

 少し大使としての仮面が剥がれ始めている様子。


 開拓村だからワクワクしているわけではない。女神の使徒の村づくりだからである。フォルガからすれば、王国の歴史書に描かれているような光景に映っているわけだ。

 こういった思考はザインたちにも見られた。子供たちはそうでもない。


 一方、同行している文官の女性たちは都会のレディなので足をガクつかせていた。だが、侮蔑するような視線はない。そういう考えの者は選ばれなかったのだろう。


「ミニャ様、そこら中にある木の柵はなんですか?」


「丁張りだよ。おウチとか水路を作るための目印なの。あれがあると、『あー、ここにおウチが建つんだ』ってみんなわかるでしょ?」


「はい、わかります」


「でしょー。丁張りをちゃんと作ると整った村になるんだって」


「へえ、そうなんですね」


 ミニャは賢者たちに教えてもらった知識を披露した。

 ミニャと同じタイミングで丁張りという言葉を知った賢者たちは偉そうにうむうむ。


 開拓が進んだ村内にはそこら中に丁張りがあり、かなり計画的に村が造られているのが見て取れて、フォルガたちは感心した。


「ここ、ミニャが測量したんだ」などと自慢しながら丁張りだらけの村の東側を歩き、一行は西側へ。こちらはミニャたちの生活スペースなので、丁張りは少なくなる。


 そこに子供たちやセラの姿はない。

 偉い人が来るわけで、ひとまずはスノーのおウチで遊んでもらっている。そんな彼女たちだが、もしフォルガと会うようなことがあってもいいように、領主館に招かれた時に貰った良い服を着ている。

 なお、コーネリアだけは偽メイドをしていた経験からお仕事を頼んでいた。


 案内の途中でミニャが言った。


「フォルガ様。ひとつお願いがあります」


「はっ、なんでございましょう?」


 賢者たちがわっせわっせと木刀を運んできた。


「これで横切りを見せてほしいです」


「横切りをですか? 構いませんが」


 変なお願いにもかかわらず、フォルガは引き受けてくれた。

 フォルガは賢者たちから木刀を預かると、柄の握りと服の調子を確かめた。剣の達人であるフォルガにとっては、木刀よりも礼服の耐久度の方が気になった様子。


 全員が離れ、フォルガが木刀を構える。

 子供たちと賢者はワクワク、文官たちは戸惑いにおろおろ。


 正眼に構えたフォルガが鋭く踏み込む。

 正眼の構えだったのに、踏み込んだ後には木刀は横に払われていた。風圧でミニャたちの髪の毛がふわりとする。


「「「ふぉおおおお!」」」


 子供たちが目を真ん丸にして拍手する。

 それに気を良くしたフォルガは、頼んでいないのに袈裟斬り、回転横払い、切り上げと技を披露していく。


 子供たちの尊敬の眼差しを受け、フォルガは良い気分。


「ありがとうございました! 凄かったです!」


「ご期待に応えられたのなら幸いです。はっはっはっ!」


 楽しげに笑うフォルガ。

 一方、賢者たちは瞳をキュピン。何やら企んでいる気配。


 そんなイベントを挟みつつフォルガを軽く案内して、一行はミニャのおウチくらいの広さの竪穴式住居へ。


 領主から情報を貰ってから建てられた仮の迎賓館である。

 ミニャたちのおウチは靴を脱いで過ごすが、ここは王国の様式を尊重して土足のまま入れる仕様。


 外観のワイルドさよりもずっと綺麗な内装にフォルガは感心しつつテーブル席に座ると、ミニャはその対面に座った。賢者は軍師のライデンと警護のサバイバーだけがテーブルに乗る。

 クレイとアメリアは壁際の椅子に座って見学。


 すると、コーネリアがお茶を淹れてくれる。偽メイドをしていたコーネリアは、本日は本物のメイドさんなのである。


「お主はコーネリアか。久しいな」


「お久しゅうございます、フォルガ様」


 知り合いだった様子。そのためか、コーネリアはあまり緊張した様子ではない。


「2人は知り合いなんですか?」


 ミニャが問うた。


「拙者はダンジョンに潜るのですが、コーネリアとはその関係で知り合いました。活動する階層が違うのでパーティを組むということはありませんが、休憩所で稀に顔を合わせることがあります」


「おー、ダンジョンで。コーネリアさんはミニャンジャ村のダンジョンの調査をしてくれているんです」


 ミニャが「ねー?」と言うと、コーネリアは微笑んだ。

 対するフォルガは凄く羨ましそうにした。


 そんなコーネリアが淹れてくれたのは、外が暑いということもあって冷やされた麦茶。

 それを入れるコップは、以前ジール隊長とフェスをもてなした時に使った石材と希少石を使ったものだ。麦茶を注ぐことで希少石の窓の色が変わる。

 賢者たちからするとこういう席には合わないコップだが、こういうアイデアがまだない人からすれば珍しい品に見えて喜ばれた。


 冷たい麦茶で一息つき、会談が始まった。


「ミニャ様。改めまして、この度はグルコサの防衛ならびに賊の討伐にご助力いただき、王国を代表して心からの感謝を申し上げます」


「ううん。悪い人がやっつけられて良かったです」


「無辜の民を想うその優しきお心に敬意を禁じえません」


 生配信を見ている賢者たちも激しく同意。


「つきましては王からの書状を預かっております」


「ありがとうございます。読ませてもらいます」


 ミニャは書状を受け取ると、封を開いた。


 女神の使徒になったことへの祝いの言葉のあとに、水蛇の件へのお礼が続いていた。王国貴族へのお誘いなどは特になかったが、困ったことがあればなんでも相談してほしい旨が書かれていた。


 特に難しい言い回しもなかったので、賢者たちのせいで日頃から文字を読みまくっているミニャはちゃんと理解した。

 ライデンも問題なしと判断して、ミニャに任せた。


「王様からお祝いの言葉を貰えてとても嬉しいです」


「そう言っていただけると王も喜びましょう」


 それからミニャは女神の使徒になった祝いの品や、水蛇の財宝を寄付したお礼の品を貰った。

 寄付のお礼に物品を貰うという矛盾をミニャは不思議に思ったが、7歳児なので深くは考えずに喜んだ。


 お祝いとお礼に来たということもあってか、グルコサでの会談ほど難しい話にはならずに話は終わり、一行は外へと出た。


「ミニャ様は普段、どのような生活を?」


「うんとねー。午前中はみんなとお勉強をしてー、午後はお仕事を手伝ったり、遊んだりしてます」


「ほう、勉強を。それは良いことですな」


 そんな世間話をしつつ、村のあちこちを紹介する。

 やはりフォルガはダンジョンに興味津々で、ダンジョンポールに刻まれた『最強女神の修羅道』という文字を見て感動していた。

 そして、そのテンションに任せるように、フォルガは言う。


「ミニャ様。拙者がミニャンジャ村の住民になることは可能ですか? 大使としてではなく、一個人としてです」


 フォルガがそう口にすると、後ろにいる文官たちは眉毛をピクッとさせた。しかし、それ以上なにも言わないところを見ると、すでに話はつけられているのだろう。


 対するミニャもこの件について賢者たちと協議していた。

 王侯貴族のあれこれを知らないミニャの返事は、賢者たちとの協議の際も今回も変わらない。


「わっ、本当? 村民さんが増えるのは、ミニャ、凄く嬉しいです!」


 そう、ミニャは村民さんが増えるのが嬉しかった。なので、オッケー。


 賢者たちはフォルガを迎えるメリットは多いと考えていた。

 王国の貴族から変なちょっかいを掛けられる可能性が減るし、前国王としての知識を持っているのでグルコサの領主と並んで相談役にもなってくれる。

 なによりも、フォルガはもとより冒険者を誘致するきっかけになるのではないかと期待していた。パトラシアの冒険者は専門技術を持ったプロ集団であり、各国や各町に帰属しているため、呼び込むのがかなり難しかったのだ。


 予想よりもあっさりと迎え入れてもらえそうな気配に、フォルガはパァッと顔を明るくした。文官たちは、これはダメだなと諦めている様子。


「でも、しばらくはミニャたちと同じようなおウチになっちゃうけど大丈夫ですか?」


「承知しております。他の村民と区別する必要はありませぬ」


 領主が言っていたように、フォルガはダンジョンに長く潜る都合、家について気にした様子は全くなかった。


「じゃあ、次にフォルガ様が来た時に、フォルガ様のおウチを一緒に作りましょう」


「家作りからですか!? それは楽しみですな!」


 心底楽しそうに言うフォルガに、賢者たちは変わってるなと思った。

 すると、アメリアが言った。


「ミニャ様。その時は私も来てお手伝いしていいですか?」


「うん。領主様がいいよって言ったらいいよー」


「絶対に説得します!」


 ニコパとするアメリアを見て、賢者たちは貴族令嬢のイメージが壊れた。とはいえ、アメリアは6歳。これがお年頃の貴族令嬢になれば話は変わるかもしれない。都会暮らしだったコーネリアも村を見た時は、足をガクつかせていたし。


 それから迎賓館でフォルガと昼の食事会を行なう。

 その時になって給仕を手伝ってくれたレネイアやシルバラとフォルガが初めて顔を合わせたが、普通に良いお爺ちゃんだった。


「これは美味ですな!」


 本日の料理は、カニチャーハンとクリームシチュー、山鳥のから揚げ。

 王族になにを出していいのかわからなかったので、気取らない献立になった。


 ちなみに、冒険者たちから聞き取った限りでは、この国にはチャーハンがなかった。

 しかし、日本の炊き込みご飯やインドのプラーカと、米を食べる文化で米に味付けをする発想が生じないはずもなく、そんな感じの料理は存在する。あくまでもチャーハンがないだけだ。


 モリモリと食べるフォルガを見て、村での食事も問題なさそうだと賢者たちはホッとした。


 一方、本日も荷運び人たちには振舞い料理が配られていた。

 本日もコンソメスープとおにぎり。おにぎりの種類にはチャーハンもあり、少しだけバージョンアップ。荷運び人たちは大満足の様子である。


 午後になると、すっかり大使の任を終えた気分のフォルガと私的な打ち合わせをする。村に来る日や人数についての打ち合わせだ。

 そんなフォルガだが、女神の月はすでに予定が入ってしまっているようなので、引っ越してくるのはそれ以降になる予定だ。


 荷運びが終わる頃にはフォルガの個人的な用事も終わり、使節団が帰る時間になった。


 その前に、ミニャはいつもお外でご飯を食べる時に使っている長テーブルの下へフォルガを案内した。


 テーブルの上には2つの木箱が。

 白く美しい木で作られた箱で、上部のフタをスライドさせると開けられるようになっている。生産賢者たちはノコギリを魔力で作れるので、小さければ製材もできるのだ。


「これはミニャと賢者様から友好のしるしに、王様へプレゼントしたいです」


「これはお心遣い感謝いたします」


 そうお礼をするフォルガだが、賢者たちがフタを開けると目を見張った。

 コルンの樹皮繊維の上にグルコサで貰った一番上質な布が敷かれ、そこに希少石で作られた女神像が収まっていた。


「女神様の像です」


「な、なんと……これほど大層な物をよろしいのですか?」


「はい。賢者様はこういうのを作るのが得意だから、大丈夫です」


「左様ですか。このフォルガ、たしかにお預かりいたしました」


 お互いに贈り物の状態を確かめたので、フタを閉める。開けてからのお楽しみもいいが、こういった確認は社会人の基本なのである。ミニャクラスになると国際問題になるので、なおさら運搬前の確認は必須。


「あと、こっちはフォルガ様へのプレゼントです」


「なんと、拙者にもですか?」


 木箱は2つ、その片方はフォルガへのプレゼントだった。それも女神像が入っていた木箱よりも少し大きい。

 賢者がフタを開ける。


「拙者!?」


「お爺様ですぅ!」


 そこに入っていたのはフォルガの姿をした石製のフィギュアだった。

 当然賢者たちが宿るようなものではなく、本当の置物。それを証拠に台座で固定されている。


 フィギュアのポージングは回転切りを終えた瞬間を切り抜いたものだ。その眼光は鋭く、動きに合わせて髪や礼服がなびき、今にも動き出しそうな迫力だ。さらに暗色気味の石材なので渋さも兼ねた仕上がりになっている。


 そう、先ほどのミニャの変なお願いはこの人形を作るためであった。

 製作時間は5時間程度だったが、石製フィギュアを作りまくってきた賢者たちにとって、帰るまでに作るのは特段難易度が高いミッションではなかった。

 なお、ミニャが頼んだのは普通の横切りだったが、その後にサービスで見せてくれた回転横斬りがカッコ良かったのでこちらが採用された。おかげで躍動感がヤバい。


「「「ふぉおおおお……」」」


 フォルガはフィギュアを手に取って、孫の2人と一緒になって感激した。

 ちなみに、台座は石場をイメージされたもので本体も合わせて、アメリアのぷにぷに筋肉では持てないほど重い。


『工作王:剣術の達人であらせられる剣大公陛下には違和感のある部分も多いかと思いますが、ご笑納いただければ幸いです』


「いやいや、とんでもない。素晴らしい逸品ですぞ」


 どうやら本当に喜んでもらえたようで、ミニャも工作王もニッコリ。


 こうして、大使さんとの会談は無事に終わった。


 その後、フォルガはグルコサの領主やサーフィアス王を始め、知り合いに自分のフィギュアを自慢しまくるジジイに変貌するのだった。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
デフォルメされた躍動感は日本のサブカルの独壇場 他国民をも惹きつけるのに簡単には真似できない 異世界なら革命的表現だね
フィギュアは多分19800円(税別)くらいのクオリティしてる。
追いついた! 少し前に話題だったなろうタイトル並べ替えゲームでこの小説がでて、かわいいタイトルと思ったらミニャちゃんすごくかわいかった!! これも女神さまのお導きか…
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