5-2 お仕事開始
本日もよろしくお願いします。
帰宅した翌朝。
『くのいち:ミニャちゃん、朝だよ朝だよ!』
『ホクト:スノーちゃん、朝ですよー!』
『ラフィーネ:レネイアさん、朝ですわー。起きてくださーい!』
『クロエ:シルバラさ……起きてる!』
村のあちこちで近衛隊が朝を告げる。
近衛隊にとって朝のお目覚めコールは特別なお仕事。自分たちが時空の彼方に置いてきてしまった子供のすやすや妙技がその寝相には詰まっている。
この朝には水蛇のアジトがフォルガたちの手によって完全に制圧されたので、そんな殺伐とした事件を見た賢者たちの心を癒してくれた。
『ネコ太:ミニャちゃんの健康状態ヨシ!』
『胡桃沢:レネイアちゃんとマールちゃんも健康でーす!』
『ラミス:シルバラちゃんの健康状態ヨシです』
『ケアリア:た、大変ですぅ! ルミーちゃんがおねしょしちゃってます! あ、スノーちゃんの一家も健康です!』
否、ミニャンジャ村でも事件であった。すやすや妙技の最終奥義が暴発する。
「わふぅ……」
シュンとするルミーに近衛隊は大変に萌えたが、本人は大変にしょげているのですぐに公衆浴場に連れていってお世話してあげた。
とそんなハプニングがありつつ、新しい朝がスタートした。
「おはよう、ミニャ様。良い朝だな」
「おはにょー、ザインさん、みんなー」
すでに起きて外にいる冒険者とクレイに、ミニャはおネム粒子をぽわぽわしながらご挨拶。
お顔を洗い、おトイレに行き、みんなで軽く体操。それが終わると、朝のお散歩で女神の祠へ向かった。
領主から女神へのお供え物を貰っているので、今日はそれをお供えする。米酒と玉米だ。
森なので、清掃してお祈りを済ませる15分ほどでお供え物を引き上げるつもりだったのだが、お祈りをしている最中にそれは起こった。
「女神様がお供え物を受け取っていますよ!」
コーネリアが驚きの声を上げた。
その視線の先では、お供え物が光の粒になってサラサラと消えていく光景があった。それは賢者が物を食べる時の光景に酷似している。
「おい、スノー。女神様が見ている。ちゃんとお祈りしろよ」
「え、う、うん」
ザインに教えられ、スノーはもちろん、ミニャたちもみょんみょんみょんとお祈り念波を送った。
それ以上何かが起こることはなく村へと戻ったが、その道すがらの冒険者たちは愉快そうにした。
「ザインのおっちゃん、さっき女神様が見てたの?」
「実際は知らんけど、そう言われてるな。俺も2、3回見たことあるが、供えてすぐに消えていったのは初めて見た」
「へえ! あの光の粒はなんだったの?」
その質問にはセラが答えた。
「あれは世界を巡って大地の力になるのよ。特に女神の森のね。だから女神の森の植物は特別な力を持つものが多くて、良い値で売れるの」
その説明を聞いた賢者たちは、自分たちが食べた物や世界に捧げられたお仕事ポイントの行き先に気づいた。女神様ショップは手数料などを取られる場合もあるが、それらはそうやって世界に還元されているらしい。
なんにせよ、珍しいものを見て、とてもいい朝になった気分。
村に帰って食堂に入ると、朝ごはんの支度がすっかり整っていた。
早速いただきます。
「昨日の夜も思ったけど、ここの飯はうめえな」
バールが鳥ガラ香草スープを飲みながら言う。
「ホントね。しかもタダだし」
コーネリアも魚の塩焼きと共に玉米ご飯をモグモグして褒めてくれた。
地球の世界中にその文化伝統の出汁があるように、この国にも出汁はちゃんとある。湖から魚がかなり獲れる地域なので、魚粉や野菜による出汁が確認されている。
ミニャが滞在した期間では、少なくとも鳥ガラベースのスープは領主館の食事で出てこなかったので、冒険者たちには新鮮に感じるようだ。
子供たちも美味しそうにモグモグしており、料理番の賢者たちもニッコリ。
ちなみに、料理番の賢者は今まで、トマトン、グラタン、ラディッシュの3名がメインだったが、賢者の増員に伴ってかなり増えていた。
ご飯を食べて食後の休憩を終えると、朝の会が始まった。
ミニャは賢者カンペを読んでふむふむと頷き、みんなに言う。
「今日はクレイ君やセラさんたちのおウチを作ります。村の湖側は木を切り倒すので、子供たちは近寄らないようにしてください。ケガをしないように気をつけて作業をしましょう!」
「「「はい!」」」
子供たちの元気なお返事と賢者たちのニャンのポーズに、クレイや冒険者たちは目を丸くした。ミニャンジャ村はよく訓練されているのだ。
「あと、クレイ君たちには賢者様からプレゼントがあります」
「え、なんでしょう?」
そうして賢者たちが持ってきたのは、ケモミミヘルメットが1つに、軍手が5つ。
「これを被るんですか?」
「うん。頭を打つと危ないからね」
賢者たちが回復できるものの、こういったことはしっかりした方が良い。
なお、冒険者たちのヘルメットはない。彼らは熟練の冒険者なので、感覚を変えてしまうような装備はむしろ邪魔になることを危惧しての判断だ。
しかし、冒険者たちは興味を持ったようで、スノーたちが持ってきたヘルメットを貸してもらい、表面を軽く叩く。
「なるほどな。戦いの防具にはできないが、作業用なら十分か」
「これすごいわね。内張りで衝撃がかなり吸収されるみたい」
ザインとセラがそう評価する。
子供たちもヘルメットを装着すると、コーネリアは「カワイッ!」と興奮した。女性賢者たちは、この人となら美味い酒が飲めるかもしれないと思った。
軍手もなかなか好評だ。
冒険者たちは皮手袋を持っているようだが、せっかくなので使うようだ。
この軍手は布製で、手のひらに縫い込みを入れてグリップにしてある。
しかし、冒険者たちは少し使ってすぐに改造を始めてしまった。細い紐を指の股から手の平へと巻きつけ、手袋のズレを無くし、グリップ性能を高めたのだ。
それは裁縫したインドアな賢者たちでは思いつかない発想で、悔しさと共に目から鱗を落とした。別に軍手にグリップを縫い付ける必要はなかったのだ。日本では商品としてそういうのが売られているので、賢者たちもそれに倣ってしまった。
裁縫した賢者たちは、コスプレ用の白手袋を引っ張り出して、最適な方法を模索し始める。
それはともかくとして、作業が開始された。
といっても、すでに穴は用意されており、あとは準備されている資材を組み立てていくだけだ。
賢者たちもずいぶん多くなったので、クレイ、ザインとバール、セラとコーネリアと組んで、3か所で同時に屋根が作られ始める。クレイのチームには子供たちがお手伝い。
「クレイ君、これはここの穴! こっちを下ろすからそっち立ててねー」
「わかった!」
クレイはマールと一緒に柱を穴に突っ込んだり、ミニャと一緒に桁となる木材を支えたりと嫌がらずに仕事する。むしろとても楽しそう。骨組みが完成した時の目なんてキラッキラだ。
「ふむふむ、この棒はここね」
「賢者様はなんでもできるんですね」
セラとコーネリアは女性だが冒険者ということもあって、力仕事はお手の物。子供たちが3人掛かりで立てる柱もひょいっと穴に突っ込んでいく。
「引退後は大工にでもなるか」
「たしかに今は面白いが、仕事となると話は別だろ」
バールとザインも楽しそうに仕事している。
冒険者たちも村の一員になったので、賢者たちのフキダシが見えるようになっていた。彼らは割と識字力が高く、あまり難しい言葉を使わない限りは問題なく意思疎通ができた。
どこも1時間程度で骨組みが完成し、その後もどんどん屋根を仕上げていく。その間に、大穴の内部では左官賢者が石でタイルや壁を塗っていった。
お昼前には、居間と2ルームという間取りの量産型の竪穴式住居が3軒完成した。
「ふぉおおお……」
貴族のはずなのに、内見したクレイはいたく感激した。やはり所詮はキッズ。
冒険者たちは感激とまではいかないが、かなり楽しげだ。彼らは基本的に冒険味があることが好きなのだろう。
一方、ミニャとスノー、イヌミミ姉妹は途中から家作りを抜け、食堂で特別任務に就いていた。
『トマトン:みんなにはお昼ご飯のおにぎりを作ってもらいます!』
「おにぎり! なにそれ!」
トマトンは『こういうの』とおにぎりの実物を見せた。
「にゃー、三角!」
「「わんわん!」」
ミニャとイヌミミ姉妹が目をキラキラさせてテーブルに置かれたおにぎりを見つめる。
スノーが問う。
「賢者様、これ、玉米だよね?」
『トマトン:そうだよ。あ、ミニャちゃん、スノーちゃんに読んであげてね』
「スノーちゃん、玉米だって。おにぎりって名前の料理なんだって」
「へえ、おにぎり」
子供たちで文字が読めるのはレネイアだけだ。シルバラとマールも多少は読めるが、ほとんど読めないと言っていい。
賢者たちは石を加工しておにぎりメーカーを作っておいた。ひとつ分のおにぎりが作れる物で、炊いた玉米を入れて少し固め、ひっくり返せばおにぎりができるという仕様。
アチアチの玉米をぷにぷにお手々で握らせるのは可哀そうという、現代人らしい発想である。たぶん異世界人は普通に手で握れるくらいには野性味ある生き方をしているのだが。
さっそく料理番の賢者が手本を見せる。
おにぎりメーカーに炊いた玉米を4分の3ほど入れ、真ん中にポケットを作る。そのポケットにスプーンで具材を入れると再び玉米を入れてサンドイッチ。ギュッギュと軽く圧をかけ、ひっくり返せば、おにぎりの形になって型から外れた。最後に、森塩を振りかけて完成だ。
なお、中の具材はピリ辛山菜、焼き魚のほぐし身、ハーブチキンのほぐし身、苔鹿のピリ辛肉の4種類。
「おー、すっげー」
「「わふぅ!」」
スノーとイヌミミ姉妹が感心する中、ミニャはコイツの正体をキュピンと見破った。
「土のお人形の時と一緒! 型枠!」
ミニャは土人形を作るために使っていた型枠をちゃんと覚えていた。
300人の、それもミニャと一緒に土をペッタンペッタンした初期も初期の賢者たちはホロリとした。これが思い出を作るということかと。まあ、まだ1か月くらいしか経っていないのだが。
というわけで、いざトライ。
賢者たちが玉米を詰め、子供たちが具材を入れる係。
再び玉米を入れて、ほどよく圧をかけ、子供たちにひっくり返させれば、おにぎりがコロン!
「ふぉおおお、しゅごーっ!」
ミニャはおにぎりを恭しく両手で掲げて、目をキラキラさせた。もちろん中身は魚のほぐし身多め。
『グラタン:できたらこっちに並べてね』
「わかった! みんな、できたらこっちに並べるんだって」
「うん! よーし、作るぞー。ルミー、パイン、ちゃんとやるんだぞ」
「「はーい!」」
スノーたちも要領を得たのか、賢者と一緒にせっせと作る。
一方、パインとルミーはちょっと小さめなおにぎりメーカーを使っていた。2人は終始シッポをパタパタさせ、おにぎりがコロンとすれば一層とブンブンした。
おにぎりが大量にできた頃に、家の方も完成した。
レネイアたちも呼び、料理を運んでもらう。さすがの賢者たちもミニャやパインたちに大量のおにぎりが乗ったお盆を運ばせることはしなかった。
お外にあるテーブルにおにぎりが乗せられた頃に、クレイや冒険者たちもやってきた。
「え、お昼ご飯も出るんですか?」
「うん!」
そう驚いたのはコーネリア。
どうやら王都でも一般人は2食が普通らしい。といっても、グルコサを見た感じだと、一般人も昼に軽食程度は取っているようではあった。
それに比べて、ミニャンジャ村はがっつり食べる。
「変わった料理ですね。玉米を固めた物ですか」
セラが言う。
この国にはおにぎりはないようだ。
球状の玉米は芯まで柔らかくする過程で粘り気が出る炊き方になるため、おにぎりにするには向いている食材なのだが。まあなくても不思議ではないので、深く考えても仕方ない。
「これはねえ、手で取って食べるんだって。みんな、手は洗った?」
ちゃんと洗っていることを確認して、実食。
「いただきまーす! もぐもぐ、もむぅ!」
ミニャはさっそく魚のほぐし身のおにぎりにかぶりついた。見た目はほとんど同じなのだが、ピンポイントで魚を狙っていく。
森塩で引き立ったお米の甘さと、塩気の強い魚の味がミニャのお口の中で混ざり合って爆発した。
「うまーっ!」
ペカーッと青空に宣言!
「本当だ。美味しい」
貴族のクレイにも好評の様子。
「これルミーがちゅちゅったの。食べて食べて」
「こっちパイン! お兄ちゃん食べて」
イヌミミ姉妹がラッカとビャノに食べさせようとした。
「へえ、2人が作ったの? あ、美味しい」
「凄いじゃん。ホントだ、うめー」
「ビャノのはなんだった? 僕のはちょっと辛くてシャキシャキした山菜だった」
「俺は山鳥! うまー!」
ラッカとビャノが美味しそうに言うと、イヌミミ姉妹は尻尾をパタパタさせて、次なるターゲットを探した。作ったのを自慢したくて、自分で食べるのは二の次になっている様子。
「中身が違うのか。これは苔鹿だ」
「バールのは苔鹿か。俺は二つとも魚だったぞ。ん、今度は野菜だ。あー、これピリッと辛くて美味いな」
バールとザインはバクバク食べている。
が、レネイアとマールの方が夢中で食べている。賢者たちの中で、エルフ娘はよく食べるキャラになっていた。
なお、魚のほぐし身が多いのはミニャのせいである。同じく大人用のおにぎりを作ったスノーはバランスよく作った。
お昼の遊び休憩やお昼寝タイムをたっぷりと取り、午後の部。
大人が4人加わったことで、作業の効率は格段に良くなった。
この日のうちに6軒の竪穴式住居ができた。3軒は新しく入ってきたクレイたちの家で、残りの3軒は客室的な家となる。
冒険者たちが午後も家を作ってくれている間に、ミニャたちは大量の敷布団を作った。
市場で商売をしていた少女モナから大量に買ったスーピィ布を縫い合わせる。
グルコサには綿もあるのだが、綿は高価なうえ、敷布団にするための綿は4~6kgほどと結構な量が必要だ。
そのため、クッション性も十分にあり、防虫効果もあるコルンの樹皮繊維を大量に詰めることになった。前回作ったミニャの布団も同じくコルンの樹皮繊維を中に詰めて未だに使えているので、耐久性も問題ないはずだ。
集会場所にもなるほど広いミニャのおウチの居間に集合し、みんなで作業。
「おー、レネイアちゃんはやーい!」
「えへへ、裁縫は得意なんです」
「ミニャちゃん、私も早いよ!」
「ホントだ、マールちゃんも早い! よーし、ミニャも負けないぞー」
グルコサでは縫物を請け負っていただけあり、レネイアとマールの裁縫の腕はとても良かった。次いでシルバラも器用だ。双子兄弟は家計を助けるために籠などを編んでいたので、これまた器用。
彼女たちは手先が器用だったが、今までは家作りなど初めての経験ばかりだったのであまり活かせていなかった。これからはいろいろできそうだと嬉しそうだ。
スノーやクレイの器用さは平凡だが、賢者たちのサポートで特に問題なく作業を進める。ミニャは一回やって得意なので、ちゃんとチクチク。
なお、イヌミミ姉妹は布の押さえ役。たぶん、必要ない作業だが、2人はお仕事をしているとキリリ顔。
コルンの樹皮繊維を中に詰め込み、キルティング加工までされ、さっそくミニャちゃん品質管理部長がポフる。
「わぁ、ポッフポフ! みんなも触ってみて! ポッフポフ!」
「ホントだー!」
検品ヨシ!
それは日本の布団に慣れている賢者たちにとっても初めての感触の布団だった。寝転がると中でわずかにサリサリと鳴り、どこか素朴さを感じさせる。
出来上がった敷布団は順次、各おウチに配送。
「ええ? こんなに良い布団を良いんですか?」
ワラにシーツを敷いて寝るのが当たり前なので、冒険者たちは驚いた。
夕方になり、本日のお仕事は終了。もちろんそれはミニャたちのことであり、賢者たちは無限に働く。
夕ご飯を食べる前に、ミニャたちはお風呂へ。
「はー、やっぱりここの風呂はいいわねぇ」
ミニャンジャ村に来た昨日にすでに一度入ったセラが、湯船に入ってしみじみと言う。
「毎日一番風呂なんて王様か風呂屋の娘じゃんね」
コーネリアも同意。
グルコサには公衆浴場が普通にあるので、王都にも当然あるのだろう。
しかし、文明的に汗水垂らして働く人が多そうだし、おそらく綺麗なお湯の風呂に入れるというのは特別なことなのだと賢者たちは想像した。
そんな2人だが、昨日の女性賢者たちはそのスポーティな裸体を見て、『これが戦う女の体なのか』とドキドキした。ベッドに寝転がりながらマンガを読んでいる自分たちとは、全体的に引き締まり方が違う。
さて、グルコサでいろいろ買ってきたことで風呂用品はバージョンアップした。
やはり一番の注目ポイントはグルコサで買ってきたシャボンマッシュの粉石鹸。これがなかなか良い物で、定期的に購入することが決まった商品でもある。
あわあわにされてピカピカになったミニャたちも、コーネリアたちと一緒に透き通るような綺麗なお湯に浸かる。
レネイアとシルバラは大人しく、スノーは悪戯しすぎないようにルミーを抱っこしながらお風呂に入る。ミニャを含めた年少組は木製人形に宿った賢者やアヒルさんで遊びながらの入浴だ。
『くのいち:ミニャちゃん、この布の真ん中をこうやって持ち上げてみて』
「こーお?」
グルコサで買ってきた布が水面に浮かべられ、その真ん中をミニャが抓んで持ち上げた。すかさず数名の賢者が水面を移動し、布に空気が入るようにしてまとめる。
『くのいち:ミニャちゃん、ここをこうやって持って!』
「むむぅ! こーお?」
『くのいち:そう! そうしたらお風呂の中に沈めるの!』
賢者たちがまとめてくれた場所を握って、布をお湯の中に沈める。すると、布が膨らんでブクブクと泡を出した。タオルクラゲである。
「にゃんだこれ! ブクブクしとる!」
「「すごーい!」」
「ルミーも! ルミーもやぃたい!」
「わぁ……って、ルミー、暴れるなって!」
バカウケである。
今までは目が粗いコルンの布だったのでできなかったが、モナが売っていた布は綺麗に仕立てられていたので、ちゃんと空気を蓄えてくれた。
そんなふうに一頻り遊んで女性陣が出ると、今度はラッカたち双子兄弟やクレイ、ザインたちの男性陣が入浴。
コーネリアたちの体に女性賢者がドキドキしたように、ザインたちの体に男性賢者たちはビビった。やはり肉体の鍛え方が全然違うのだ。
ザインたちは大きな風呂を喜び、ラッカとビャノは家作りについてザインたちへ楽しそうに話した。
一抹の不安があったクレイだが、普通に自分で服は脱げるし、体も洗えた。
元国王が剣の道に没頭してしまうようなお国柄、上級貴族の子供であろうとも、ある程度なんでもできなければならないのかもしれない。
「クレイ様、どうだい。町での暮らしとは結構違うでしょう?」
「そうだね。でも、初めてのことばかりでとても楽しいよ。自分で作った家に住むなんて想像もしなかった」
「はははっ、そりゃ俺たちもですよ」
「僕も!」「俺も!」
大人なザインたちはちょっと所在なさげなクレイに話を振り、会話の中へと入れてあげている。なかなかできたヤツらである。
新しく仲間に加わったクレイや大人たちとの生活は順調な滑り出しであった。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




