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第12話 夕食騒動 Part1

 その後もひたすら揚げ続け。


 ようやく最後の分が揚げ終わり、夕食にありつけた。




 結局第2陣は、さくらのスピードに追いつくことが出来ず、一時的に足りない状態に陥ってしまったものの。


 なんとか需要と供給を均衡にすることが出来た。




「ふぅ。やっと終わったよ。……いただきます」




 疲れを感じつつ、次々と胃の中にしまい込んでいく。


 一方。




「さくら先輩、食べ過ぎじゃないですか?」


「何言ってるの、陽菜ちゃん。このくらい余裕だよ?」


「陽菜ちゃん、この子そういう子だから。……まあ優しく見てやって」


「ちょっと!遥乃先輩、何ですかそれ。私のほうが後輩みたいじゃないですか」


「どっちも私から見たら同じだもの。……それより北野さん」


「なんだい?」


「他にもなんかありますよね?」


「……何も?」


「嘘ですよね。嘘じゃないって言うなら、今の一瞬の間はなんですか?」


「そうか。また気付かれたか。ちなみに気づいた理由は?」


「簡単ですよ。台所の方から、かすかに甘い香りがします」


「お前の嗅覚は犬レベルか!」


「そうですが何か?」


「……そこで開き直るな。というか俺にもご飯食べる時間くらいくれ」


「分かってますよ、そのくらい。……で、まだですか?」


「だから、俺が食う時間をくれって言ってるの!」


「はいはい。ちゃっちゃと食べちゃってくださいね」




 そのやり取りに吹き出すさくらと陽菜。


 よく見ると、陽菜のお母様も肩が震えている。




「遥乃。お前のせいで笑われたじゃないか」


「私のせい?」


「次はまだかと腹空かせた雛のようにうるさいからだと思うけど」


「絶対に違うでしょ」


「そうか。……まあいい、そろそろお次の時間に行こうか」




 そう言って台所へ向かい、仕上げを行った後持っていく。


 机の上においたところで、歓声があがる。




「皆斗さん、これ、ひょっとして」


「ああ。ちょうど今が旬のいちごだ。今日は良いのが手に入ったからな」




 俺が運んできたのは、さっと洗っただけのいちごと、手作りのいちごのムース(バニラアイスクリーム添え)。


 大変ではあったが、せっかくのいちご、少しでもいろんなもので楽しんでほしい。


 ちなみに、プラスでジャムも作ってしまった。


 コレで明日の朝ごはんまで決まったようなものである。




「やった、私いちご大好きなんです!」


「そうか。……おかわりはないけどな?」


「そうなんですか……」


「どうしてもって言うならこれあげる――」


「それ皆斗さんのですよね?せっかく作ったんですから、自分で食べてください」


「そうか。……さくらはもう少し食い意地が張っているかと思ったんだがな」


「ひどい!」


「ははは、まあいい、明日はいちごジャムだ」


「え?」


「いや、ジャムも作っちゃったんだよ」




 その一言に目を輝かせる、さくら&陽菜。


 遥乃はというと。




「ジャムかー、そんな簡単に作れるもんじゃないよね?」


「何いってんの、時間はかかるけどやることは単純だぞ?」


「そうなの?」


「そうよ〜、私も家で何回か作ったことあるけど、意外と簡単よ〜」




 話に入ってきたのは、陽菜のお母様。




「そうなんですよね。……ちなみに何で作ったことあります?」


「そうね、色々作ったけど、一番難しかったのはレモンかしら?」


「レモンですか。……気をつけないと滅茶苦茶酸っぱくなりますよね、それ」


「そうそう。でもお砂糖足しすぎると今度レモンの酸味が飛んじゃってね……」


「ああ、なんとなくですけど想像できますね」


「あらそう。こんど作ってみたら?」


「そうですね、どこかのタイミングで作ってみることにします。……いちごジャム持っていきます?思ったより作りすぎちゃったんですよね。だからこのままだと食べきれないかもしれなくて」


「そうなの?じゃあお言葉に甘えて」




 そこに疑問を感じたのか、質問してくるさくら。




「ジャムって結構日持ちするものじゃないんですか?」


「店で売ってるやつはね。手作りだとそうはいかないんだよ。だって果物に砂糖足して煮詰めただけだから」


「そうなのよ。だからあまり日持ちしないのよね。……で、意外と使い勝手が悪いの」


「そうですよね。カビ生えちゃって泣く泣く捨てたこともありますよ」




 そのやり取りを聞いて、驚いた顔をする女子3人。




「ほぇ〜、ジャム1つでもそんなに奥深いんだね〜」


「そうだな。……あ、そうだ、遥乃、ちょっとついて来て」


「ふぇっ?私?」


「例のアレ、って言えば分かるか?」




 そのフレーズに、表情が引き締まる遥乃。




「アレ、ね。分かった、今行く」


「ん。……さくら達はゆっくりしてていいからね」


「はーい」




 一言残し、俺は遥乃と一緒に台所へ向かうのだった。

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