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第3話 治療と恋心

「お待たせしました。お怪我はどのようなものでしょうか?」

 深くフードを被った治癒師のサミュが入室する。


 だがそこに王女のエレオノーラがいて驚いた。


「どうしてエレオノーラ様がここに?」

 レナードを助けたのは聞いている。しかしまだ同じ部屋にいるとは思わなかった。


 サミュは思わずニコルに目をやるが、逸らされてしまう。


 侍女のニコルは言葉も発せず、ただエレオノーラに付き添っていた。


 もちろん、全ての会話は聞いている。



「心配だったのです。レナード様は転ばされてしまったし、このように酷い怪我なので」

 エレオノーラから他人を気遣う声が上がるとは。驚きつつも、サミュも傷口に目を向ける。


「確かに酷いですね」

 血のにじみ具合からだいぶ痛いと予想される。 


「では治療しますので、エレオノーラ様は退室を」


「どうして?」

 エレオノーラが退室を渋ると、サミュは困ったように話す。


「その、両膝の治療なので…衣類を脱いで頂かないと」


「あぁ」

 ようやく思い至った。


 治療のために、レナードはズボンを脱がねばならない。


「しかし、サミュは見るのでしょう? ならばわたくしがいてもいいのでは?」


「エレオノーラ様!」

 ニコルが驚き、大声を上げる。レナードの方が顔を真っ赤にしていた。


「サミュは治療の為だし、その、タオルなどを使い、患部以外は隠しますが、エレオノーラ様は駄目です! あなた様は王女でこのような場にいてはいけません、レナード様とて困ります!」

 ニコルに引っ張られるようにして退室させられる。


 エレオノーラは少なからずショックを受けていた。


 信頼しているサミュとはいえ、女性がレナードに触れるのが気に食わない。


 そんな自分の想いにハッとして、思わず縋るような気持ちでニコルを見た。


 エレオノーラはこの感情がなんなのか、教えてもらいたいようだ。有能な側近はため息をつく。


「それが恋で間違いないかと」

 ニコルは認めたくないが、告げた。


 嘘をつけばよかったかもしれないが、主相手にニコルはそのような事は出来なかった。


「家柄も問題はありませんし、成績自体は優秀な方です。長男ではありますが、弟君がおります。なので跡継ぎについての話し合いは必須となりますが、難点はあの性格。エレオノーラ様を支えられるとは思いません」

 そこは、エレオノーラ自身が気にしていない。


「ぜひ彼がいいの」

 エレオノーラがレナードを庇った時から、もしやと思っていたが危惧していた事態が起きてしまった。


 反対などしても意味がないだろう。


 あそこまでエレオノーラが積極性を見せたのだから、本当に好きなのだろうな。


 エレオノーラは初めての感情に戸惑っていた。


 レナードの優しさが、愚かさが、貴族らしくない裏表のない性格が、気になって仕方がない。


 治療を終え、サミュが呼びに来る。


 夜も更けてきた。そろそろレナードを家に帰さねばなるまい。


「ありがとうございました。殿下のお蔭で何とか帰れそうです」

 ズボンの上からも包帯を巻かれた痛々しい姿に、エレオノーラは思わず跪く。


「こんなに酷い怪我だったなんて」

 もう少し早くに気づいて諌めれば良かった、不穏な空気には気づいていたのにと悔やまれる。


「エレオノーラ殿下のお召し物が汚れます、どうかおやめ下さい!こちらはズボンに血がついていたので、見栄えが悪いから巻いて貰っただけなんです!」

 エレオノーラに立ってもらおうと必死だ。


 レナードはいつだって人の事ばかり気にかける。


 立ち上がり、エレオノーラはレナードを見つめた。


 レナードが「失礼」と言ってニコルより早くドレスの汚れをはたいて落としてくれた。


 その顔は焦りと申し訳無さが入り混じっている、そんな表情にも愛おしさがこみ上げた。


「レナード様」

 エレオノーラは意を決してレナードの手を取る。


「殿下…?」

 急に手を握られ、上目遣いで見つめられる。


 思わずレナードは後ろに下がろうとしたが、手は離されず、寧ろ強く握られた。


「わたくしの婚約者になってください」

 衝撃的な告白に、レナードの頭は真っ白になった。






お読み頂きありがとうございました。


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今後も作品をよろしくお願いします(*´ω`*)



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