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次期女王になる美姫はダメンズと言われる公爵令息を溺愛中  作者: しろねこ。


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第15話 デートと打算

 今日はエレオノーラとレナードがデートに出かける日だ。


 急な誘いだったために既にレナードの緊張はピークに達していたが、それとは真逆でエレオノーラは終始うきうきしている。


(きっかけを作ってくれたリオーネには感謝ね)

 以前リオーネと二人でお茶を飲んでいた時の事だ。


 ティアシーアはあいにくと忙しく二人でティータイムだったのだが、リオーネがおもむろに話し始めた。


「今度ティアシーア姉様とミカエル様と共に街に行ってまいりますの」

 

「そういえばそんな約束をしていたわね、ティアから聞いているわ」


「本当はエレオノーラ姉様も誘いたかったのですが。まずはティアシーア姉様が素直にミカエル様の愛情を受け止めてからではないと難しい思いまして。結ばれた際はぜひ皆でお出かけしたいです」

 にこりと笑うリオーネはとても可愛らしい。


 エレオノーラ並みに数多くの縁談が集まっているのだが、そのどれにもリオーネは首を縦に振らない為、今はまだ婚約者不在である。


「そうね。でも皆で出かけるのはリオーネも意中の男性と一緒になった時かしら?」

 エレオノーラはリオーネが誰に思いを寄せているか知っていた。


 ティアシーアももちろんのこと、城内の者も勘が良い者は気付いている。


 身分違いだと囁かれているが、リオーネはその相手を自ら公言はしていないし、その恋の相手とされているものも、「気のせいではないですか?」とはぐらかしている。


 公然の噂話でしかないけれど、リオーネが肯定も否定もしない為何とも言えない空気を保っていた。


「そうなるように頑張りますわ。噂の彼もティアシーア姉様が結ばれれば仕事が落ち着きますので、その時がチャンスですの。絶対に逃がしません」

 リオーネは自信たっぷりに宣言する。


 意中の彼に嫌われてはいないし、まだ婚約者もいない。


 リオーネと結ばれることは彼にもたくさんのメリットがあるから、絶対に了承してくれると確信している。


「エレオノーラ姉様も市井でのデートはいかがですか? エレオノーラ姉様もレナード義兄様も忙しいかもしれませんが、良ければ息抜きにでもどうぞ」

 渡されたのは観劇のチケットだ。


「ありがたいけれど、これはどうしたの?」


「取ったのは良いのですが、ティアシーア姉様達の予定が合わなくて。無駄にするのも劇場の方に悪いので、エレオノーラ姉様達で楽しんできて欲しいです」

 そそっと勧められた感激の内容は恋愛ものだ。


(これは、やや描写が大人向けという噂のものね)


「本当に余りもの? ティアシーアには刺激が強くなくて?」


「ですからエレオノーラ姉様に確かめてほしいというのもあります。確かこの日は公務もありませんから、ちょうどいいのではないでしょうか?」

 リオーネがちらりとニコルを見ると、彼女は不本意とばかりに頷く。


「確かにその日はエレオノーラ様達に特別な公務は入っておりませんね。一体誰から聞いたのですか?」

ニコルの問いかけをリオーネは素知らぬ顔で受け流し、エレオノーラに向き直る。


「これを見たら奥手なレナード義兄様も少しは意識を変えてくれるかもしれませんよ。いつまでも初々しい義兄様も可愛らしいとは思いますが、婚姻までの間に多少の積極性は持っていただきたいでしょ?」

 小悪魔的に笑うリオーネは時にエレオノーラよりも大人びた表情をする。


 幼い頃より色々な国を外遊している為、様々な知識に長けているのだ。


「応援ありがとう、リオーネの為にもレナードを誘って楽しんでくるわ」

 じっと観劇のチケットを見る。


(そういえばダンスとかパーティなどの参加は多いけれど、このような普通のデートは初めてね)

 仕事から離れ、服装もいつもとは変え、外で食事をしてくる。


 そんな想像をしていると段々と楽しみになってきた。


「ぜひ楽しんできてくださいね」

 早く姉達が結ばれて世継ぎが出来れば、リオーネの恋の成就も早まる。そんな打算もリオーネにはあった。


 勿論姉たちの幸せを願っているのは当然なのだが、彼を誰かに取られたくない思いも強い。


 国王である父には頼んで彼の名が入った婚約届が届いたすぐにでも教えてほしいと頼んではあるが。


(お姉様達が身を固めてしまえば、彼の仕事は少なくなるから、仕事を理由に逃げることが出来なくなるわ。絶対に逃がさないんだから)

 嬉しそうなエレオノーラの様子にリオーネも嬉しくなっていた。




◇◇◇




 レナードは馬車の中で固まっていた。


 隣には王城でみるような隙のない服装ではなく、綺麗なデコルテが見えるドレスを着たエレオノーラ。


 外を歩くときはショールを巻くそうだが、今は車内で二人なので外している。


 うっかりすると胸元まで目が行きそうで、目のやり場に困っている。


 いつもと違う雰囲気と装いのエレオノーラに、緊張感がぬぐえない。


「今日はよろしくお願いしますね、レナード」

 そっと腕を組まれ、熱っぽく言われればレナードは顔を赤くしながらも、その顔から目が離せない。


 柔らかな感触と温かい体温、いつもと違う露出のある服と香水、絡められる指先。


 まだ慣れることは出来ない。


 甘い雰囲気ではあるものの、思っていた距離感と違う事に、レナードは困惑してしまった。


 このままでは清い交際から逸脱しそうだ。


(もしや試されている?)

 婚前交渉などレナードにはあり得ない。


 しっかりと手順を踏んでから、エレオノーラを幸せにすると決めてるのだ。


 しかし、エレオノーラに触れられるとすぐにこの気持ちが揺らいでしまう。


 エレオノーラは純粋にレナードを慕ってくれてるだろうに、邪な事を考えてしまう自分が恥ずかしい。


 目的地に着くまで懸命に別なことを考えていた。







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