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父と侍従

「はぁぁぁぁぁあ。」


突然やってきた客人のため息が響きわたる。



城の一角の狭く薄暗いスペース。そこに諜報部がある。


諜報部は、他国の情報を集めて外交を助けたり、戦争や暗殺などの危機をいち早く察知して国の安全を守るといった、国王直轄の部署である。


ある昼、諜報部長のシティエールが椅子にもたれかかり、休息をとっていると…その招かれざる客がやってきた。



「聞いてください、シティ!!!」


「おおお、セバスチャンじゃないか。」


突然やってきたのは、我が国の第二王子侍従であるセバスチャンだった。


彼は、第二王子ウィリアム様の5歳上である、第一王子の乳母の息子で、若くして侍従に任命された秀才だ。


歳は17でまだまだ若いが、黒髪で背が高く、眼鏡をしているという真面目そうな容姿からか、周りからもデキる青年と位置付けられている。


「こんな所に来るなんて、何かあったのか?」


「はぁぁぁ、…またウィリアム様が、あなたのお嬢さんに会いにいかれているんですよ!!」


セバスチャンは半ば八つ当たりで、シティエールに愚痴をこぼした。



なるほど。


確かにこれまでは1週間に一回来られれば多い方だったが…


先月、妻のメアリーが亡くなってからは、3日に一回、いやそれ以上に見かける時もある。


自宅に王族が来るなんて、こちらとしてはたまったものではない。

是非、やめていただきたい。


来ていただきない理由は、それだけではない。



…明らかに距離がおかしい!


ウィリアム様は、メイリーンが盲目だと信じているから声が聞こえやすいように顔を近づけて話す。

…まるで、キスでもしてしまいそうな距離だ。


せっかく眼を隠していても、あんなに近づかれては感情が伝わってしまう。


もし、ウィリアム様が邪な事を考えていたら、それがメイリーンに余すことなく伝わるのだ。


「…まずいな…」


ウィリアム様は、もうすぐ中等部に上がられるが、メイリーンはやっと初等部だ。

純粋な心のまま育ってほしい…穢されてたまるものか。



ーおっと危ない、感情が昂ると瞳の赤が濃くなる。

気をつけなければ。


少しメイリーンの外出を自粛させよう、ウィリアム様には悪いが、誰か適当な令嬢を見繕って縁談に持ち込もう。


ここは諜報部だ、国内の令嬢の情報などすぐに集まる。



「…セバスチャン、ウィリアム殿下は確か、まだ見合いをご経験されたことがないはずだな?」


「…シティ。すごく悪い顔をしていますよ。まさか、王子の縁談を取り持とうだなんて考え…」

「うちのメイリーンとは婚約させない。絶対誰にも…。」


絶対。そう、たとえ王族であろうかなんであろうが絶対だ。

シティエールは誓った。


メイリーンの幸せのために。



「絶対、誰にも、か。」


セバスチャンは眼鏡のレンズを拭きながら、その表情は笑みを浮かべていた。


「誰にも」の後は、「渡さない」がくるのだろうか。

父親シティエールの思いは、強すぎるんだよな。


…敵にはまわしたくないタイプの男だな。


そう思いながら、セバスチャンは諜報部を後にした。


シティエール         36歳


第一王子・セバスチャン    17歳

第二王子ウィリアム      12歳

メイリーン          6歳

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