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父と母と娘と
先日、メイリーンにプロビデンスの眼が遺伝していると分かった。
しかも、その能力はシティエールよりも強く、片目を眼帯で隠していても過去や未来まで見通してしまう。
そのため、メイリーンが家から出る時は、両眼を包帯で何重にも巻いた。
しかし、包帯を巻いていてもメイリーンの視界は周りの人よりクリアで、ぼんやりと「嬉しい」「悲しい」などの感情が読み取れるほどだ。
他人が、何を考えているか分かってしまうというのは、生きづらい。
段々とメイリーンは外に出たがらなくなった。
…幸いだったのは、両親であるシティエールとメアリーが裏表のない性格であったことだ。
家族内での生活は、ごく普通の家庭と変わらない。
楽しく賑やかで、笑顔も見られる、そんな日々だった。
メアリーが亡くなるその日までは。