妻との出会い
「私」こと語り手は、父( シティエール)です。
父と母の出会いの話となっています。
「ちょっと!!そこのあなた!!
いつもどちらか片方の眼に眼帯をしているけれど…
…もしかして…眼が…見えないの?
生まれつき?それとも怪我をしたの?
誰かにやられたの??」
少し目を開けると、枝の間から指す光がきらきらと反射する金色の髪。
そして、水色のワンピースが風に揺れているのが見えた。
その若く美しい女性は、風になびいた髪を耳にかけながら、まっすぐ私を見ている。
召喚者としての役割を終えて、元の世界への還り方もわからない。
もう腹を括ってこの世界で生きていこう、そう思って旅を始めて一年が経ち、次の町へ移る前にと少し木陰で休んでいた時のことだ。
興味津々の様子で尋ねてくる若く美しい女性に、誰でもつくられた笑顔だと分かるような、ぎこちない表情で返す。
「さあ、どうでしょう。」
小さな町だ。
旅人が珍しかったのかも知れないが、そっけない態度をとればどこかへ行ってくれる。
そんな甘い考えでいた。
すると、
「なら…
見せてよ!!」
彼女はにんまりと笑って眼帯をむしり取った。
「っ…!!!」
いきなりのことで驚き、つい両眼で彼女を見つめてしまった。
しまったと思い、急いで両手で顔を隠す。
…また、気持ち悪いと思われる。疎まれる。貶される。
そういう軽蔑の感情を覚悟していた。
しかし…
彼女から伝わってきたのは、先ほど聞いた言葉と同じ、
『興味』
そして、『困惑』だった。
彼女はおろおろとした様子で、申し訳なさそうだ。
「ご、ごめんなさい。
そんなに驚くとは思わなくて。」
そう言って、彼女は眼帯を私に手渡した。
興味はまだ続いていたのだろう、
「なぜ、怪我をしているわけでもないのに
隠しているの?」
と恐る恐る聞いてきた。
「……。」
私は彼女と眼を合わせないように、
俯きながら眼帯をつける。
「ねぇ、どういう理由で隠してるのかは知らないわ。
でも、あなたの瞳、とっても綺麗よ。」
ーー私はその言葉に苛立ちを覚える。
…そんな言葉、何十回と聞いた。
この瞳は、両眼を使おうとすると共鳴して真っ赤になる。
自分でも召喚されたばかりの頃は、「綺麗な赤だな」と思ったものだ。
だが、周りからの言葉はお世辞でしかなく、言い寄ってきた奴らは、この力を利用することしか考えていなかった。
「あなたの瞳が好き。あなたを愛してるわ。」
そう言っていた女を両眼で見た時、
「あの赤く光る眼が気持ち悪い、
お金を持っていなかったらあんたとなんか。」
という『本音』。
また、その女が、見知らぬ男達と「いいカモがいるの」などと話し、朝まで呑んで楽しく過ごしている少し過去の出来事も見た。
…もう嫌だ。見たくない…嘘も過去も未来も…。
どうせ彼女だって今までと同じ。
ーー「嘘だ、私は嘘はすぐにわかる!」
私の突然の大声に、彼女の肩がビクッと動いた。
すると彼女は私を睨みつけ、顔を紅潮させていった。
「嘘じゃないわよ!!
綺麗なものを綺麗と言って何が悪いの!!
…大体ね!!あなたは……」
彼女がどんどんヒートアップしていき、
ついには涙目になってしまうものだから、
私は、今までなぜ片方の眼を隠し続けてきたかを話すハメになった。
彼女は、私が話し始めると静かになり、
じっとつまらない過去の話を聞いてくれた。
「ねぇ、もう一度、眼帯を取っても良い?
ちゃんとあなたの瞳を見てみたい!
……眼もちゃんと合わせて欲しい…だめ??」
上目遣いをする美しい女性に、敵う男などいない。
はぁ…。
ため息をつきながら、眼帯を取り、
ゆっくりの彼女の眼を見つめる。
「…やっぱり、綺麗!!
真っ赤な色は、宝石のルビーみたいじゃない!!」
そういって彼女は微笑んだ。
…驚いた。
彼女から見えた『本音』も、全く同じだったからだ。
…その後、違う町へ移るのをやめ、私と彼女はよく2人で過ごすようになった。
思ったことをすぐに言葉にする彼女に、私はだんだんと惹かれていった。
「ねぇ、そろそろ私達、
結婚しても良いんじゃないかしら?」
そんな彼女の突然の逆プロポーズで、
私達は結婚したのだった。
めちゃくちゃなところがあったらすみません。