第8話 revenge -終結-
「あぁ、GGG.s、出陣だァァァァァァア!!!」
聖刃のその声に、隊員達は反応し、攻撃を開始した。
とはいえ、聖刃の持つ姉のジューメツの弾数も15発と残り僅かで、容易に撃つ事は出来ない。
それでも、メンジは沸き続け、奥に待ち構えるゴルゴーンはまだ1ダメージすらも受けていないようにピンピンしている。
周りで戦っている隊員達はメンジ達を次々と打ち倒していく。
ゴルゴーンの弱点さえわかれば、そこを狙って撃てるのだが、ただでさえ元々表示されていたスペックが二重になっているため見辛くなっているのに、エウリュアレとステンノのものであろうスペックが重なり、更に見づらくなっていた。
「こんなのどーしろってんだ。」
そんな四重になり更にわかりづらくなっているスペックが表示されている音色のジューメツの画面を見て、愛が呟く。
「大丈夫、まだ希望はある。」
「聖刃さん、それってどう言う事?」
聖刃の返答に舞は疑問した。
その顔はあまりにも自信満々で、まるで勝算があるようだった。
「あぁ、実はな…」
そう言うと、聖刃は現在進行形で続いているとある作戦の話をし始めた。
それは、エウリュアレが話した妙案だった。
「それなら、わたしに考えがあるの。」
突如、エウリュアレが妙案を持ちかけてきた。
いや、まだ内容は聞いてはいないが、どうせロクな内容ではないだろう。
「考え?」
「そう。」
「詳しく説明してくれ、ステンノ。」
「いや、私はエウリュアレよ?」
「あぁ、すまない。」
響飛香もとい、リーダーは全くもって瓜二つな見た目の女神姉妹、エウリュアレとステンノの間違いを軽く謝罪しながらも、エウリュアレの持ちかけてきた妙案を問う。
「まぁいいわ。確か、メドゥーサの弱点はわからないんでしたっけ?」
「あぁうん、こんな感じで。」
そう言うと聖刃は自身が持つ姉のジューメツをスマホ形状にし、メドゥーサのスペックを表示し、この場にいるみんなに見せつけた。
「本当にニ重になっている…」
「これのせいで弱点がわからない。正直、私達女神姉妹もメドゥーサの弱点はわからないわ。」
「え、姉なのにわからないのか?!」
エウリュアレの言葉に思わず口を滑らした。
エウリュアレはため息をつきながら当たり前でしょ、と聖刃に言った。
しかしよく考えれば、聖刃も引きこもり時期に親が何をしていたのかとか、姉は何故家に帰って来なかったのか、などがわからなかったのでそれと似たようなものなのか、と聖刃は納得した。
「…話を戻すわ。このようにメドゥーサの弱点は不明、そこで、私達女神姉妹から名案。それは…」
「…私達がメドゥーサにわざと取り込まれ、弱点を探る、よ。」
「あーっ!それ私が言おうと思ったのに!このいいとこ取り!」
一番重要な作戦内容発表を奪われ、エウリュアレは思わず声を上げてステンノにブチ切れた。
エウリュアレの怒っている様を見てステンノは悪い顔をしてクスクスっと笑った。
「ちょっと待て、それはかなり危険ではないか?」
「ああ、メドゥーサに取り込まれるったって、どうやって取り込まれるつもりだ?取り込まれようによっては死ぬぞ!?」
人間達は女神姉妹の作戦に反対、とまではいかないが、その作戦内容に不満があるようだった。
それはそうだ。何故なら不確定要素が多い故リスクが高いし、ただでさえ戦力が欠けに欠けまくっているGGG.sに女神姉妹まで居なくなったら本当に組織が壊滅してしまうからだ。
「私たちを誰だと思っているの?女神よ?しかも相手は妹よ?妹に殺されるほど弱い女神ではないわ。」
「そうよ。だから心配しなくてもよろしくて?」
女神姉妹は何故か余裕だった。
何故そこまでするのか、と聖刃は疑問だったが、女神姉妹の余裕な顔を見ていると、そんな事を質問しようと言う気にはなれなかった。
「あ、ちなみに今作戦には聖刃、あなたも付いてきなさい。」
「あぁ、それは構わないけど…」
「じゃあ決定ね!じゃー解散!」
結局、その作戦は実行され、着々と女神姉妹はメドゥーサに取り込まれていった。
作戦とはいえ、目の前で心臓をくり抜かれ、力なく倒れていく女神の姿を見るのは良い気分ではなかった。
しかしその度に出る聖刃のリアクションは、作戦感を無くし、メドゥーサに作戦だということを悟られなかった。
「じゃあ、まだ女神姉妹は生きてるって事?」
「ああ。今は弱点が見つかるまでひたすら待ち、だ。」
「ンだよ、まだアイツら死んでねーのか…」
愛は女神姉妹が死んでいないことに不満だった。
女神姉妹はかつて、メドゥーサに洗脳されていたとはいえこの地球に生きる全ての男性をメンジという化け物に変えた張本人なのだ。
メンジに変えられてしまった男性の中に、もちろん愛の唯一の兄もいた。
そしてその兄は、愛の手によって…。
「まぁ…愛の気持ちもわかるけど、今は女神姉妹に全てが掛かっていると言っても過言じゃない。」
「…わーってるよ、そんなの。」
愛はめんどくさそうに聖刃に言葉を返した。
そして、聖刃はふとゴルゴーンを見る。
ただ単にメンジと戦う自分達を見物しているのか、それとも女神姉妹が抗っているのかはわからないが、ゴルゴーンはその場から一歩も動かなかった。
そんな時だった。
「ぐっ…グォオオオオオ!!!!」
「あ?何だ!?」
「まさか、女神姉妹が…!?」
突然ゴルゴーンが苦しみだした。
同時に、聖刃の持つジューメツから通信が来た。
聖刃はジューメツをスマホ形状にし、通信を開く。
『メド…ーサ…弱点…脳…だ…!と…か…頭を狙……』
画面は真っ暗で何も表示されておらず、音も途切れ途切れで、すぐに切れてしまったが、その通信は女神姉妹からだった。
「今、弱点は脳って…!」
「いや、流石に脳破壊すれば女神といえど倒せるけどよ…」
女神姉妹からの通信による弱点の報告に対し、舞は驚いたが、愛はいやそんなの当たり前でしょ、とつまらない反応をした。
「とりあえず頭を撃ちまくって脳を晒け出してその脳を破壊すりゃあ良いんだな!」
「…オマエ、それ程の弾数あるか?」
愛にそう言われ、聖刃は、そういえば自分の弾数は15発しか無い事を思い出した。
「じゃあ私達が代わりに撃てば良いでしょ、ね?愛ちゃん?」
「いや、オレもゆーて35発くらいしか…まぁ良いか!」
そう言うと舞と愛はゴルゴーンに向かって走っていった。
聖刃もその後を追いかける。
「ウゥ…ウァァァァァァァア!!!!!!」
ゴルゴーンは急に言葉を喋らなくなり、獣のように吠える。
そして無造作に周りの物を破壊…いや、あれはもはやただ暴れ回っているだけか。
次々と降ってくる瓦礫を避けながらも距離を詰めていく舞と愛と二人を追いかける聖刃。
『わた…達が抑え…今の…に…!』
「えー、多分“私達が抑えてる今のうちに!”か!?わかったぞ…エウリュアレ!ステンノ!」
女神姉妹からの受信を受け、聖刃はまるで女神姉妹の思いを背負い、受け取ったような衝動に駆られた。
そして、ここで死ぬわけには行かない…とありきたりな感情を抱くのだった。
そして今まで二人を追いかけていた聖刃は体の向きを変え、別方向へ走っていった。
その先は、やけに頑丈なのかゴルゴーンが暴れている中唯一破壊されてなかった大きなビル。
「聖刃っ…アイツまさか!」
上から頭を撃とうと思ったのか、聖刃は大きなビルへと入っていくのを見た愛は、ビルがゴルゴーンによって倒されたらおしまいなので連れ戻しに行こうとビルへ入ろうとするが、舞に手を掴まれ、止められた。
「良いんだよ、私達は地上から援護しよ!」
「でももしあのビルが倒されたら聖刃は…!」
「聖刃さんは死なないよ、きっと。私達が聖刃さんを信じないでどうするの?」
「…あぁ…わかったよ…!」
舞にまさかこんな事を言われる日が来るとは。
少し前までは愛が舞に助言やら何やらを言っていたはずなのに。
正直まだ納得いっていないが、舞の言う通り、聖刃を信じ、自分達は地上から聖刃の援護に回る事にした。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァッ…」
一番高くて、ゴルゴーンの顔を狙いやすいからとこのビルに入ったが、高いと言う事はそれだけ登らなくてはならないということに気づいていなかった。
完全に盲点だった。
「あー、疲れた…。」
一旦休憩、とその場に座り込む。
しかし、なんとタイミングの悪いことか、物陰からメンジが現れたのだ。
「おいおいおい…ここにもいんのかよ…!」
疲れながらも数少ない弾を使い、メンジを一撃で倒す。
使いたくはなかったが、この場には自分しか居らず、何よりメンジが邪魔だったので、倒さざるをえなかった。
「後14発…行くか………」
まともに休憩も出来ずに立ち上がり、先ほどとは明らかに遅いスピードで上へと登る。
エレベーターが使えれば良いのだが、こんな状況で電気が通っている訳もなく、いや、例え電気が通っていても途中で止まるのがオチだろう。
つまり、結局は止まったエスカレーターを普通の階段として利用し、自身の足を使って登らないといけないのだ。
目指すは屋上、そして今ようやくこのビルのおおよそ4分の3程の高さまで登った。
しかし、そんなところで聖刃はぶっ倒れてしまう。
「あぁ…きちぃ…」
そんな状況ではないのはわかってはいるが、少しの間休憩をしようと倒れたままボーッとする。
しかし休む事を許さまいとまたもや物陰からメンジが現れたのだ。
「もう…面倒だっての…!」
もはや倒れたまま弾を発射し、メンジを倒す。
残り13発。
「ハァ…行くしかねえか………。」
またもや、ロクに休まず立ち上がり、もはや走らずに歩いて屋上まで登る。
登っている最中、自分がこんなノロノロ歩いている間にもみんなは戦っているんだ、と思った。
ふと、小学校の頃に疲れてるのはお前だけじゃないんだよ!みんなだって同じく疲れてるんだよ!…なんて言われた事を思い出した。
「はは…あん時は心の中で“いや、俺と同じく息切れしすぎて死にそうってレベルで疲れてる奴なんかいねーじゃん”なんて意地張ってたな…」
そう、体力だってみんな同じ訳ではない。
体力が超ある奴もいれば、聖刃みたいにすぐに体力が無くなる奴もいる。
超体力ある奴と体力が全然無い奴が1000m走ったらそりゃ双方疲れるだろうけど、絶対に“疲れ”のレベルは違うと思うんだ。
…なんて、関係のない事を考えながらも、気がつくともう屋上はすぐそこだった。
屋上への扉を開くと目の先には、ゴルゴーンの頭があった。
「ようやくだ…ようやく…姉ちゃんの仇を討てる…」
そう言いながら、ゴルゴーンの頭を目掛けてジューメツを撃つ。
と言っても、疲労のせいか、全然標準が定まってなかったらしく、貴重な一発が外れてしまった。
残り12発。
その後も何度も何度も撃つが、当たったのはたった2発で、残り4発となってしまった。
そして、一応当たった事により、ゴルゴーンに気付かれてしまった。
「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ゴルゴーンは聖刃の方を向き、雄叫びをあげると聖刃を指差し、指先から魔弾を放とうとする。
「このままじゃまずいな…今度こそは頭を…」
聖刃はそう言い、弾を発射した。
頭には当たらなかったが、偶然目に直撃し、ゴルゴーンは怯み、魔弾は不発となった。
ゴルゴーンは目を抑えてもがき苦しむ。
そしてそのままビルに向かって倒れていった。
「…あ。これマジでまずいかも」
そう思ったのも束の間、ゴルゴーンはビルに向かって倒れ、それによりビルが傾き、少しずつゴルゴーンと共に倒れていった。
「やべぇって!これは!!」
今まで意識が朦朧としていたのだが、完全に目が覚め、どうすればいいかわからずに立ち止まる。
しかし立ち止まっていると地面に叩きつけられる。
ふと、周りを見渡すと、ゴルゴーンの顔が狙ってくださいと言わんばかりにそこにはあった。
今ほど絶好のチャンスは無い、そう思った聖刃はジューメツをゴルゴーンに向ける。
ビルが少しずつ傾いていっているこの状況。
本当は逃げなければならないのかもしれない。
でも、目の前には倒すべき敵の弱点が。
ならば、生きるよりも先に敵を殺す。そう思い立った聖刃は頭に弾を撃ち込んだ。
ゴルゴーンは声を上げて痛みに苦しむ。
頭からは血が溢れ出て、聖刃自身もゴルゴーンの返り血で真っ赤に染まる。
「後2発…っ!!」
目に血が入ってしまい、前があまり見えないが、もうあまり関係ない。だって、向こうから撃ってくださいと言わんばかりに顔が目の前にはあるのだから。
そしてまた1発撃つ。
ゴルゴーンの苦しむ声が聞こえる。視界はもう真っ赤で何も見えない。
最後の1発…そう思ったが、突然ゴルゴーンが大きな大きな雄叫びをあげた。それにより、ビルは倒れるよりも先に崩壊を始めた。おそらくだが雄叫びの音波にビルが耐えられなかったのだろう。
「ビルが…壊れてゆく…!?」
「ちょっと待て、あん中にはまだ聖刃が…っておい、あれって聖刃じゃねぇか!?」
愛が指差す方向を見ると、そこには空中に投げ出されている聖刃がそこにはいた。
高い位置にいる為、何をしているのかはわからないが、一つ言えるのは、あの高さから落ちたらひとたまりもない、という事だった。
「ねぇ、愛ちゃん。あれ結構マズくないかな!?」
「あぁ…とはいえオレ達にはどーも出来ないぞ!?」
「愛ちゃんがなんとか空中でキャッチして…」
「オメーはオレを何だと思ってんだ!オレはそんなジャンプ力ねーし剛力でもねーよ!?」
今はそんな冗談にツッコミを入れている程余裕のある状況ではない。
このままだと仮にゴルゴーンを倒せたとしても、聖刃が地面に叩きつけられて死んでしまうだろう。
とはいえ、じゃあ何か出来るのか、と問われれば何も出来ないのが現状だ。
「打つ手…なしかよ…!」
「そんな…!」
自分達の無力さを嘆いた。
しかし嘆いたところでアニメや漫画のように奇跡が起きる訳ではない。
そんな中、ゴルゴーンは更に雄叫びをあげた。
「…うるせぇなぁ…っ!!」
とはいえ、今の聖刃は目が見えない。
なので今の雄叫びでゴルゴーンがどの方向にいるかがわかった。
そして空中で体制を整え、ゴルゴーンがいるであろう方向にジューメツを向ける。
これが最後の一発。
これまで、様々な事があった。
始まりは、姉の石化。
そこから、成り行きでGGG.sに入隊。
メドゥーサと対峙して、聖刃以外のみんなが石化。
その後は、女神姉妹と共に戦う。
作戦とはいえ、女神姉妹の取り込まれる瞬間を見届けた。
どれも、決して良いものではなかった。
どれも辛かった。
でも。
何故か石化したみんなが復活した。
本当に何故かはわからない。
でも、それってつまり。
…姉ちゃんも復活していると言う事だ。
本部で待っている姉ちゃんの為にも、愛と同じ思いをして苦しんだ人達の為にも、俺の復讐の為にも…!
全て。全て。全て。
この1発に、全ての思いを込めて。
「これが最後のぉぉ!!!一発だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!」
聖刃のその声と最後の一発の銃声が、空に、大地に響いた。
よくわからないが、何となく、この一発はとても重かったような気がした。
その弾は、ゴルゴーンに命中した。
その場にいた誰しもが、それを目撃した。
そして、ゴルゴーンは断末魔と共に、力尽き、生き絶え、そしてビルと共に倒れていった。
「…。」
リーダーも、その光景をモニターで見ていた。
ゴルゴーンが聖刃によって倒された。
…作戦会議を解散し、聖刃が真っ先に出ていき、エウリュアレがそれを追いかけて外へ出ていった後の出来事をふと思い出した。
「…飛香。」
「…珍しいなステンノ。私をその名で呼ぶなんて。」
普段ステンノはリーダーのことを貴女とか、リーダーと呼ぶのだが、今は珍しく飛香…本名で呼んだ。
「彼には、内緒にしておいて欲しいのだけれど…まぁ…すぐにバレるでしょうけど。」
「何だ?」
「多分彼が妹を倒してくれると思うのだけれど、それはつまり…」
「…取り込まれている君達も死ぬ、だろ?」
ステンノの言おうとした事をリーダーが先読みして食い気味で答えを言った。
ステンノは少し残念そうな顔をした。
「あら、随分察しが良いのね。」
「これでエウリュアレの気持ちも少しは理解したか?」
「貴女、随分意地悪ね。」
「君に言われちゃおしまいだな。」
鼻で笑いながらリーダーは言った。
鼻で笑う意地悪なリーダーに、ステンノは少し、機嫌を悪くした。
「まぁ、そう怒るなよ。でも良いのか?死んでしまうんだぞ?」
「良いのよ。むしろ私達は死んだ方が良い。その方が、人間達に償いが出来るでしょう?」
「償い、か…。」
償い、という言葉にはリーダーにも当てはまる。
だがそれは今ここでする話ではないのでリーダー自身の話はしなかった。
「…まぁ、そういう訳だから、彼には言わないでね?彼、心がとても弱い…まるで、豆腐のよう…でも、私達のことを心配してくれるほど、優しい人間だから…私達も死ぬって知ったら、彼はきっと病んでしまうわ。」
「フッ…それもそうだな…。」
聖刃のメンタルが豆腐だと遠回しのディスりをかましながら褒める…一体どっちなのかわからないが、いずれにせよ当てはまっているのがまた面白い。
リーダーは思わず鼻で笑ってしまったのだ。
「さようなら、女神姉妹…。」
誰にも聞こえない声で、一人孤独なリーダーはそう呟き、涙した。
その涙は、また孤独になる事に対してなのか、女神姉妹が死んでしまった事に対してなのか、もしくはその両方なのか…。
いや、そもそもこの二つは同じ意味なのかもしれない。
だから結局、涙した理由は一つしかなったのだ。
一方、戦場では。
戦いは終わり、勝利を喜ぶ…はずなのだが。
空中で舞っていた聖刃は現在、地面へと降下中。
「あぁー!!!どーすんだこれぇえええ!!??」
聖刃はゴルゴーンの雄叫びと同じくらい…いや、流石に言い過ぎかもしれないが、それくらいの大きな声を上げる。
「死ぬぅううう!!死んじゃうよぉおおお!!」
誰か助けてと叫ぶ聖刃。
下を見やると舞や愛が手を差し伸べている。
とても嬉しい。うん、物凄く嬉しい。
…でも。
「女の子2人だけじゃ流石に安心出来ねぇえよぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「うるせー!!仕方ねーだろ!!この場にいるの、オレ達しかいねーんだからよー!!」
聖刃のわがままに愛が半ギレしながら返す。
すると、聖刃のゴルゴーンの雄叫びの如く大きな声のおかげか、先程までメンジと戦闘していた他の隊員達が集まってきて、一斉に手を差し伸べた。
どうやら丁度戦闘が終わり、こっちに来てくれたようだ。
「私達の手を掴んでー!」
「安心して落ちてきてー!」
などの声が聞こえてくる。
わがままな聖刃でも、流石に女の子が何十人もあるのなら安心して落ちる事ができる。
「みんなー!ありがとーー!!!」
そう、聖刃は叫びながら少女達へと落ちていった。
…で、ゴルゴーンを倒したからなのか、そのまま胴上げされた。
…こうして、ゴルゴーンもとい、メドゥーサを倒し、GGG.sの戦いも、聖刃の復讐も終結した。
「さぁ、帰ろう。みんなが石化から復活したって事はつまり、他の石化された人達も復活してるって事だ!」
「それってつまり!」
「あぁ、姉ちゃんも、勿論、みんなの石化された大切な人も復活してるって事だ!」
聖刃がそう言うと、辺りは歓喜の声で溢れかえった。
そして、久々に姉と話せるという希望を胸に、本部へと帰った聖刃であった。
本部へ戻ると、石化されていたであろう少女達が出迎えてくれた。
出会い頭、嬉しくてお互い涙しながら抱き合う少女達もいた。
聖刃はそんな場面に微笑ましく思いながら、ふと辺りを見渡すが、ある事に気付く。
「…姉ちゃんは?」
「そういえば、音色さんだけ見当たらないですね…。」
「オイ、嫌な予感がするのはオレだけか?」
愛の言う通り、勿論聖刃も嫌な予感がしていた。
まさかと思い、会議室へ向かった。
「…なぁ、石化された像はどこに保管してた!?」
「…どこって、地下一階の霊安室だが?」
そう言われ、聖刃達は直ちに霊安室へと向かった。
そして霊安室の扉を開くと、そこには、石化が解かれ、倒れている音色がいた。
「姉ちゃん!?」
「ま…まさか…」
聖刃は駆け寄り、音色を起こそうと顔を叩いたりする。
それでも起きない音色に対し、聖刃は更に嫌な予感が煽られた。
それでもなんとか起こそうとする。
そんな中、舞は恐る恐る音色の脈を確認した。
「せ…聖刃さん…」
「な…なんだよ…そんな顔して…」
音色の脈を確認すると、舞の顔は青ざめた。
そして、音色を抱えたまま、舞の顔を見て更に嫌な予感を感じている聖刃に真実を告げた。
「音色さん…死んでるよ…脈が…無いもん…」
「……………は…?」
響 飛香 35歳
残り弾数 3発
口調が男のようだが、愛ほど男っぽくない。
サバサバしているように見えるが、何の感情も抱かずにふざけたりボケたりする事がある。