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少女達が銃で戦う世界で男の娘は剣を振るう  作者: 鳥抹茶
第1章 Avenger -聖刃-
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第7話 Gorgon -絶望-

「…。」


 聖刃は本部の外にいた。

 エウリュアレの言っていた作戦には正直乗り気では無かったが、GGG.sの隊員達が石化により全滅してしまったので、今はその作戦でしかメドゥーサを討つ方法はなかった。

 しかもその作戦は、一か八かのかなり危険な作戦…失敗すれば、聖刃も死に、エウリュアレやステンノも、リーダーも死に、文字通り全滅。


「…不安かしら?」


 突如現れたエウリュアレは弓を片手に聖刃に問いかける。

 聖刃は突然現れたエウリュアレに驚きながらも返答する。


「そりゃまぁ…うん。下手したら文字通り全滅だからなぁ」

「私は女神よ?そう簡単には失敗しないわ。」

「…どうだか…。」


 そんな時、ふと聖刃はエウリュアレに質問した。


「なぁ、どうして俺には石化の魔眼が効かなかったんだ?」

「さぁ?私にはわからないわ。」

「…そうか。」


 そんな時、リーダーからの通信がきた。


『聖刃、エウリュアレ、諸君らの上空に高熱源体接近。恐らくはメドゥーサだろう。作戦内容は把握したか?』

「…あぁ、正直納得いってねぇが、これしかないもんな…行くぞ。エウリュアレ!」

「私、ステンノよ?」

「嘘つくな!」


 本部の外で会話をしていると、上空からメドゥーサが舞い降り、エウリュアレを見て驚いていた。


「ほう…まさかとは思っていたが、人間に力を貸していたとはなぁ…エウリュアレ。」

「あら、お姉様に対してその態度…大分失礼なんじゃないかしら?メドゥーサ…?」


 先程まで穏やかな雰囲気だったエウリュアレは、メドゥーサを前にした途端に殺気漂うメドゥーサ絶対殺すウーマン状態になった。


「…いくわよっ!!」


 そう言うと、エウリュアレは弓を構え、メドゥーサに矢を打ち込む。

 聖刃はメドゥーサの避けるであろう方向にジューメツを向け、弾を発射させる。


「…何ッ!?」

「おぉ、俺の予測当たってたわ!」


 聖刃の予測は見事的中し、メドゥーサに弾を当てる事が出来た。

 しかしメドゥーサはすかさず魔法陣を生成し、火球を聖刃達に向けて飛ばした。

 間一髪でエウリュアレが守りの魔法陣を作り、攻撃は免れた。


「メドゥーサ?!アンタ魔術なんてロクに使えなかったじゃない!?」

「…知るかっ!!」


 メドゥーサは火球を連続で飛ばしてくる。

 しかしエウリュアレの守りの魔法陣は壊れる気配もなく、なんの意味も無い。


「チッ…エウリュアレ…やはり敵に回すと面倒な奴だ…」

「お姉様に向かって“面倒な奴”とは何よ!!」


 そう言うと守りに徹していたエウリュアレは魔法陣を解き、魔力を込めた矢をメドゥーサに向けて発射する。


「んぐぅぁっ!?」


 メドゥーサは胸部に矢が命中し、膝をついた。

 その隙を突いて聖刃は姉、音色のジューメツと愛に託されたジューメツの2丁拳銃で弾を撃ち込んだ。

 全弾命中したかは不明だったが、メドゥーサはかなりのダメージを負ったのか、メドゥーサはそのまま倒れ、動かなくなった。


「…やった…のか?」

「あら、案外呆気なかったわね。作戦実行するまでも…危ないっ!!」


 エウリュアレは突然聖刃を突き飛ばした。

 何事かと驚く聖刃だったが、次の瞬間には胸部に大きな風穴が空いたエウリュアレ映っていた。


「エウリュアレェエエエエエ!!!!!!」


 恐らくメドゥーサは死んだフリをして隙を突き、油断した聖刃達を殺そうとした。

 エウリュアレはいち早くそれに気づき、聖刃を庇ったのだった。


「チッ…外したか…まぁいい…代わりにエウリュアレの心臓を頂くぞ。」


 そういうメドゥーサの手には、エウリュアレの物であろう心臓が握られており、メドゥーサはその心臓を口に頬張り、飲み込んだ。


「お…おいっ…嘘だろ…エウリュアレまでもが…!」

「…!?ぐっ…ぐぉおおおぁああ!!!」


 突然メドゥーサは苦しみだした。

 すると聖刃の頭の中に声が響いた。


「聖刃!私がなんとかメドゥーサを止めておくから、その内に本部に戻りなさい!?いいわね?!」

「…わ、わかった…!!」


 そう言うと聖刃はその場から逃走し、本部へと戻った。


「ぐっ…まっ…待て…待てぇええええ!!!!!」



 聖刃はなんとか本部に戻ってきた。


「聖刃!エウリュアレは?!」

「…メドゥーサに食われた。」

「そうか、ではステンノ、出番だ。」

「あら?次は私が食べられる番かしら?」


 ステンノはそう言いながら、エウリュアレと同型の弓を片手に外へ出ていく。


「…女神姉妹はどうして乗り気なんだよ…。」

「彼女達も自分なりに、罪を償いたいのだろう。」

「…自分達の意思でやった訳じゃないのに…。」


 そう言い、モヤモヤしながら聖刃はステンノを追いかける。



「ぐぅ…ぬぅん!!…ふはは…遂にエウリュアレの力が我が物に…!力がみなぎってくる…!」


 同時刻、メドゥーサはエウリュアレの呪縛から解放され、さらにエウリュアレの力を我が物とした。

 そんな時に聖刃とステンノは再びメドゥーサと対峙する。


「…次は貴様か、ステンノ。」

「あら?今度は私を食べるの?」

「あぁ…貴様ら女神を取り込むと力を得られると知ったからな…!その心臓貰い受ける!」


 そう言うと今まで聖刃に集中攻撃していたメドゥーサが女神…ステンノに集中攻撃を仕掛けてきた。

 メドゥーサはステンノの心臓を奪うべく攻撃しているのだろうが、側から見るとステンノの胸を触りたくて仕方がない変態のようにしか見えない。


「あらっ…随分積極的ねっ…私の胸を触ろうだなんて!」

「貴様の胸に興味などない!貴様の心臓をだな…!」

「はい、隙ありね。」


 そう言うとステンノはメドゥーサの眼帯を指さし、指先から魔弾を放ち、眼帯を破壊した。

 メドゥーサの魔眼が露になったが、メドゥーサは手で魔眼を隠した。


「そうよね。魔眼の発動には大量の魔力が必要になる。でも、魔眼は開いた途端に発動してしまう。だからさっきは一旦逃げたんだものね?」

「そ、そうだったのか…!」


 それなら、先ほど空を飛んで撤退したのにも納得がいく。

 魔眼の使用…大量の魔力を使用してしまった為に魔力を回復させる為に撤退したのだったのだ。

 魔眼の効かない女神と、何故か効かない聖刃。

 本来なら発動しなくても良いが、ステンノに眼帯を破壊されたことにより、強制的に発動させ魔力消費を狙った。

 仮に暴発出来なかったとしても、眼帯が破壊されたことにより魔眼を隠せないので片手で隠すほかなく、それにより、メドゥーサは片手で戦わないといけなくなってしまう。


「どう?我ながら見事な作戦だと思わないかしら?」

「く…くそっ…魔眼の弱点を上手く利用され…がァァァァァァア!!!」

「あらあら、そんなに怒らないでメドゥーサ。すぐに楽にしてあげるから。」


 そう言うとステンノは、矢に魔力を込め、苦しむメドゥーサに放つ。


「『ローグスナイプ•ステンノ』!」

「グァアアアアアアアア!!!!!!」


 断末魔と共にメドゥーサは倒れた。


「死んだふりはもう通用しねぇぞ!!」


 前回のこともあり、聖刃は2丁のジューメツで追い討ちをかけた。が、かなり弾を使ってしまった。

 音色のジューメツが47発、愛のジューメツが64発だったのだが、今現在、音色のジューメツは25発、愛のジューメツは43発だ。


『聖刃君…ジューメツはリロード出来ないんだぞ?それに、今後も戦っていく訳だ。それを考えてから弾を撃て。』

「…そう、だな…。」


 メドゥーサを倒したとしても、まだメンジがこの世界には沢山では済まない程いる。

 そしてGGG.sの戦える者は聖刃だけ。

 両方合わせても68発しかない。


「と言うか、メドゥーサ…完全に動かなくなったわね。」

「死んだフリなのかマジなのかわかんねぇな…念のため魔眼だけでも潰しておくか?」

「そうね。では、私がやるわ。」


 そう言うと、ステンノはメドゥーサに近づき、メドゥーサの顔を掴み、持ち上げ、魔眼を指さし魔弾を放つ。

 ステンノは完全に魔眼が破壊された事を確認すると、メドゥーサを瓦礫の中へと放り投げた。


「扱いが雑なんだよステンノ…。」

「…。」

「あれ?ステンノ…?」

「…。」

「…ま、まさか…!」


 嫌な予感がした聖刃はステンノへと近づいた。

 その時、ステンノは血を吐き、倒れた。


「ステンノ!!!!!」

「ハハハ…!ステンノの心臓…貰い受けた…!」


 すると瓦礫の中から声が響き、中から死んだはずのメドゥーサがステンノの心臓を握りながら姿を現した。


「…メドゥーサ…!?お前…生きてたのか!?」

「フン、勝手に死んだと勘違いしたのは貴様だろう。」

「一体どうやって心臓を!?」

「ステンノに投げ飛ばされる直前にステンノの心臓を奪い取っただけの事だ…。」


 そう言うと、メドゥーサはステンノの心臓を頬張った。


「ふふふ…感じる…感じるぞ…!ステンノの力が我が物となるのを…!ふはは…ハハハハ!!!!」


 すると、メドゥーサの姿が変わっていき、巨大化していった。

 聖刃は巨大化に巻き込まれないよう逃げる。

 そして巨大化が終わる頃にはもうメドゥーサの体は変わり果てていた。

 聖刃は変わり果てたメドゥーサを見上げた。


「おいおい…嘘だろ…!?」

「ふはははは!!!我が名は…ゴルゴーン!!」


 奴はメドゥーサではなく、ゴルゴーンと名乗り、指先から魔弾を乱射し始めた。

 辺りの建物が次々と破壊され、瓦礫の雨が降った。


「く、くそっ!こんなの…どうやって戦えってんだよ!!!!!!」


 どうやら事前に魔眼を潰していた為、魔眼は使えないようだが、それ以前に2丁しかジューメツを所持していないたった一人の少年がこんな巨大で恐ろしい化け物にどう立ち向かえと言うのだ。

 瓦礫の雨の中、聖刃は当てもなく、瓦礫に下敷きにされるのはごめんなのでとりあえず逃げるのだった。


『聖刃君!状況を報告しろ!何があった!?』

「メドゥーサにステンノの心臓を奪われて、ゴルゴーンとやらになっちまった!」

『不味いことになったな…本部に戻ってこいと言っても、あんな巨大な化け物だと、本部ごと破壊されかねんし…』

「いや俺がここで殺されても本部は破壊されると思うんだけどー!?」

『女神姉妹を信じるしかないな…何とか時間稼ぎ出来るか!?』

「いやいやいやいや無理だ…って言いたいところだけど…俺しかやれる人間がいないもんな…!」


 そう言うと、聖刃は足を止め、振り返る。

 そして、ゴルゴーンにジューメツを向ける。


「いいだろう!頑張って時間稼ぎしてやるさ!でも、戦死しても文句言うんじゃねぇぞ!!」


 そう言うと聖刃は自分から通信を切り、ゴルゴーンに弾を撃った。

 ゴルゴーンに命中したが、全く効いていないようだ。

 するとゴルゴーンはこちらに魔弾を放った。


「あっぶねぇ!!」


 聖刃は間一髪で避ける。

 とはいえ、ただ無謀に弾を撃つだけでは意味が無い。

 どこかに弱点があるはずだが、問題はそれをどうやって見つけるかだ。

 とりあえず弾を撃っていれば弱点を見つけられるかもしれないが、弾は音色のが24、愛のが42。

 この弾数で、あの巨大さでひたすら撃って弱点を見つけるとなると、恐らく先に弾が切れる。

 故に攻撃手段が無くなり敗北。


「これ…詰んだか…?」

「もう…我を止められる者はいない!死ぬがいい人間!!」


 そう言うとゴルゴーンは魔法陣を上空に生成し、この世にいるメンジをこの場に一斉召喚した。


「こんな時にメンジかよ…!!」


 メンジは1発で倒せるとはいえ、数えるだけで滅入ってしまうような数で、更に奥にはゴルゴーンがいる。

 これを一人で?

 それもたったの66発で終わらせろと?


「…無理だ、そんなの不可能だ。」

 


 詰んだ。

 完全に詰みだ、これは。

 時間稼ぎすら無理だ、これは。

 ゲームですら起こり得ないこんな絶望的状況にどうしろと言うのだ、と。

 戦える仲間は全滅し、なのに敵は強大化し、更に増えて、弾も残り僅かと言うほどでは無いが、こんな無双ゲーでもあり得ないであろうこの数をこの弾数でと言われたら無理だ。

 

 聖刃はついに、その場に膝をついて崩れてしまった。


「無理だ…こんなの…誰から力を借りねえと何も出来ねえような俺に…こんな絶望的状況を打開しろだなんて…無理だ…!!」


 言ってしまえば、このジューメツも自分の物ではない。

 姉…音色の形見と、愛から託された物なのだ。

 正直GGG.sに入隊出来たのだって、音色の弟という肩書き…コネがあったからなのだ。


 昔の話になるが、ゲームの世界大会で優勝出来たのも、ゲームで上手くなれるまで付き合ってくれた数少ない友達のお陰だったり、会場まで連れて行ってくれた親のお陰だった。


 あの部屋で引きこもり生活出来てたのだって、親が俺をを家から追い出さなかったからなのだ。


 俺が今こうして生きているのも、何度も自殺をしようとしてたあの時、何回も俺を慰めて、救って、俺の心の支えになってくれた姉ちゃんがいたお陰なのだ。


 …屁理屈かもしれないけど、それでも何もかも一人で成し遂げた事なんて、無かった。

 そんな人間がたった一人であんな巨大な化け物と数えきれない数の雑魚に立ち向かえと?


 …いや、だからこそ。

 誰かに今まで支えてきてもらって来たからこそ、その思いを無駄にしない為に、生きる為に、今こうして、目の前の絶望に立ち向かわなければいけないのかもしれない。


 そう思い、足がガクガクで、今にも崩れそうな状態だけど、聖刃は立ち上がった。

 

「ほう…まだ立ち上がるか、人間。」

「あぁ…確かに、こんな絶望的な状況…今にでも逃げたい。自業自得とはいえ弾はそんなに無いし、こんな無双ゲーでも無いであろう数のメンジがいて、ゴルゴーン…お前みたいな強敵がいて…だけど俺は一人で…本音言うと物凄く怖い。」

「フン、そうであろうな、逃げても良いのだぞ?…すぐに殺すが。」

「あぁ…逃げたい。でも俺は…今まで俺を支えてきてくれた人達の想いを無駄にしない為に…俺は…逃げない!!」

『よくぞ言い切ったぞ聖刃君!』


 気がつくと、足の震えは止まっていた。

 今にも泣きそうだった目には光が灯り、その表情は、やる気に満ち溢れていた。


「そうか…ならば…死ね。」


 そう言うとメンジ達は聖刃に飛びかかる。

 聖刃は2丁のジューメツで飛びかかるメンジ達を撃ち抜いた。

 しかしまだまだメンジ達は聖刃に飛びかかる。

 流石に撃つだけだと弾切れを起こすので、後ろへ下がった。

 幸い、後ろにメンジは居なかった。

 そしてふと、ステンノが持っていた弓と、放っていた矢を入れる入れ物が目に入った。

 聖刃はそれを手に取り、矢を射ってメンジを倒す。


「何!?そんなものが残っていたのか!?」

「ステンノ…力を貸してくれ…!」


 そう言うと、慣れていない手付きでメンジに矢を射る。

 しかもちゃんと全て命中している。

 とは言え、矢も無限ではない。

 

「マジか、あと1本しかねぇっ!?…だったら!」


 すると、聖刃は死んだメンジから矢を引き抜き、またもや射る。


「これが再利用だっ…!」


 矢を再利用して、再利用して…を繰り返した。

 だが、途中で次々と矢が限界を迎え、壊れてしまっていった。


「…これが限界か…ジューメツは…姉ちゃんのが…15発か…愛のは…35発か…弓でぶん殴るって手もあるけど…危ねえしなぁ…」


 弓矢が切れてしまった事によって、また絶対絶命のピンチに陥ってしまった。


「最初はなかなかやるなと思っていたが…弓矢が切れたらこのザマか。」

「さっきから奥でうるせえなぁゴルゴーン…!お前は雑魚を操るだけで、自分は何もしねえのか?」

「貴様を殺す事に我の手を煩わす必要は無いと判断したまでだ。」

「ぐ…言い返せねぇ…てか、この状況結構不味くないか…?!」


 メンジに囲まれてしまった。

 全方位から飛びかかられたら例えジューメツの弾が沢山あったとしても無傷では済まないだろう。


「…あぁ、終わった、これは。」

「フン、遂に諦めたか、人間。…さらばだ。」


 ゴルゴーンがそう言うとメンジは全方位から聖刃に飛びかかる。

 聖刃が死を覚悟した。



 その時、メンジに向けてかなりの数の銃声が鳴り響いた。

 聖刃に飛びかかろうとしていたメンジは聖刃にたどり着く事なく何者かに倒された。


「まさか…!」

「何故………何故貴様らがそこにいる…!?」


 聖刃はまさかと思い、振り返るとそこには…!



「よう!ずっと一人でよく頑張ったな、聖刃!これもオレが託したジューメツのお陰か?ははっ!」

「聖刃さん…!よかった…生きてくれてて…!」


 そこには、かつて石化されてしまったはずのGGG.sの隊員達の姿があった。


「舞…!愛…!みんなも…!」


 聖刃は石化されたはずのみんなが自分を助けてくれた事に感謝しながら、涙を流した。


「お、おいおい、泣くなって聖刃。…いや、それだけずっと一人で辛い目に遭ってたって事か…」

「聖刃さん…私達が石化されている間、ずっと一人で戦ってくれてたんですよね…」

「いや…エウリュアレやステンノ、みんなのお陰だ…。あ、愛、ジューメツ返す、かなり助かった。」


 そう言うと聖刃は愛にジューメツを返した。

 愛は自身のジューメツの残り弾数を確認し、驚愕した。


「おう!そりゃ良かっ…っておい!?35って…!?オマエどんだけ弾使ってんだよ!?」 

「いや…すまん…。」


 謝る聖刃に対し、愛は改めてボロボロになった聖刃とこの敵の数を見て、状況を把握した上で、この弾数になってしまうのも納得がいった。


「…まぁ、そんなボロボロになってても、これだけ残ってる方が凄い方か。」

「もう!愛ちゃんはなんだかんだ聖刃さんにいつも優しいんだから!もっと私にも優しくしてよー!」

「はぁ?!聖刃に関しては仕方ないだろ!?だって一人でこの数相手にしてんだぜ!?そりゃこんだけ減ってもまぁ仕方ないかってなるだろー!?」


 こんな状況でも、舞と愛が喧嘩をしている。

 そんな姿に聖刃は吹き出してしまった。


「プッ…ハハハハハ!!!」

「聖刃さん?何でそんな笑ってるの?」

「いや…何かいつもの風景が戻って来たなって。」

「あぁ…オレ達からしたら一瞬だったけど、聖刃…オマエからしたら、かなりの時間だっただろうな…」

「やっぱり愛ちゃん聖刃さんには優しいじゃん…」


 舞は小さな声でそう言った。


「ん?なんか言ったか?」

「何も言ってませんよーっだ。」

「あぁ?!ぜってー何か言ったじゃん!なんて言ったんだオイ!」


 そんな姿を見ていたゴルゴーンは痺れを切らし、声を上げた。


「何を楽しそうにしているのだ貴様ら!?ここは戦場だぞ!?まぁいい!みんなまとめて死ぬがいいぃい!!!」

「あ?何だアイツ。」

「奴はゴルゴーン。女神姉妹の心臓を食ってパワーアップしたメドゥーサだ。」

「め、女神姉妹の心臓って…!?」

「てことはもう女神姉妹は…って事か。」


 舞と愛は、女神姉妹が死んだことを悟った。


「あぁ…女神姉妹の死を無駄にしない為にも、ゴルゴーンをぶっ倒すぞ!!」

「うん!」

「あぁ!」

『みんな!どうやら復活したらしいな!』

「リーダー!貴方も生きていたんですね!」

『無論だ、今まで聖刃君が何とか持ち堪えてくれていた。聖刃君の努力を…女神姉妹の死を無駄にしない為にも、ゴルゴーンを必ず討伐せよ!』

「了解!」


 その場にいた隊員達はゴルゴーンやメンジに向け、銃を向ける。


『指揮は聖刃君、君に任せる。』

「…いいのか?」

『勿論だ。いけ、聖刃君!』

「あぁ、GGG.s、出陣だァァァァァァア!!!」



 聖刃のその声に、隊員達は反応し、攻撃を開始した。

潤武 愛 16歳。


俺っ子で、兄貴に恋をしていた少女。

性格は尖っていたが、舞と出会い、交流を重ねていくにつれ丸くなっていった。

聖刃とは自身と似たものを感じており、どうしても聖刃には優しく対応してしまう。


弾数は聖刃のせいで残り35発。

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