第6話 Hopeless -再来-
「目標到達まで後1時間を切りました!」
「座標は?」
「本部からおよそ1km離れた住宅街です!」
「住宅街…?何故そんな所に…まぁいい、隊員達は多少の誤差はあるかもしれないが指定された座標へ迎え!」
「了解!」
指定された座標は、かつて聖刃が住んでいた実家がある住宅街だった。
何故そこへ落ちてくるかは不明だったが、聖刃含めGGG.sの隊員達は指定された座標、住宅街へと向かうため、車のような乗り物に乗り、運転は舞、後ろの席に右に聖刃、左に愛が乗り、座標へと向かう。
運転は舞なので正直また乗り物酔いしないか不安だった。
「…いよいよだな、聖刃。」
隣に座る愛が聖刃の方に顔を向けて言う。
「あぁ、メドゥーサを倒して仇を討つ。…正直、まだ不安だけど…」
「確かにオマエは戦闘経験が今さっきのミッションだけだし、ぶっちゃけオレらも不安だ。ま、何とかオレらがバックアップするさ。」
「うん!聖刃さんには私達がついてるからね!」
運転をしている舞が喋った。
女の子に守ってもらいながら仇を討つというのは正直どうなのかと思ったが、聖刃は先程愛が言ったように戦闘経験が浅く、バックアップ無しだとみんなの足を引っ張ってしまうかもしれない。
…いや、バックアップをしてもらう時点で足を引っ張ってるか。
「みんな…ありがとう。必ずメドゥーサを倒そう!」
「ああ!」
「うん!」
聖刃の礼に舞と愛が反応する。
そんなところで、もうすぐ座標地点だ。
「座標まであとちょっとだよ!」
「…まだ40分もあるじゃねーか、案外早えーんだな。いや、近いのか?でも1kmって…うーん…」
「いや今それどうでもいいだろ。」
愛に聖刃がツッコミをいれる。
これから激戦を繰り広げるのに、呑気だなと聖刃は思った。
「ふふっ。」
聖刃と愛の絡みが微笑ましかったのか、舞は笑った。
「…メドゥーサが来るまでまだ少し時間があるし、俺の家に行ってみないか?」
「オマエの家ここら辺なのか?」
「ああ。」
「お、女の子を家に誘うなんて…聖刃さんって…大胆なんだね…」
「そんなんじゃねえから」
「ふふ、冗談だよ。」
舞の冗談に聖刃は本気になる。
その様子が面白かったのか、舞は笑った。
そして、みんなで聖刃の家へと向かった。
「ここがオマエの家か…」
「ああ、そうだよ。」
目の前には普通の、聖刃の家がある。
「ここで聖刃さんが育ったんだねー。」
「そうだな。じゃ、上がろうか。」
聖刃は家へと入っていく。
舞と愛の二人は聖刃についていった。
まず最初はリビング。
「フツーだな。」
「逆に普通じゃないリビングって何だ?」
次に和室。
「普通だね。」
「だから普通じゃない和室て何?」
「うーん、畳が金で出来てるとか?」
「いや何だそれ。」
次に2階にある音色の部屋。
全体的にピンク色で、床にはぬいぐるみが転がっている。
昔はちゃんと飾られていたはずだが…。
「へぇ、音色さんの部屋ってこうなってるんですね!」
「音色先輩、ぬいぐるみ好きだったんだな…」
「まぁ昔はこんなに散らかってなかった気がするけどな。」
「何かあったのかな?」
「さぁ…どうだろうか。」
次にその隣の聖刃の部屋…だが。
「…何だ、これ。」
「扉…壊れてんな」
「いや、これは俺が壊したんだけど…何でここだけボロボロなんだ…?」
「聖刃さん…扉壊したって…」
前に部屋から出た時は家自体がボロボロだ、としか思わなかったが、今こうして戻ってくると、何故か聖刃の部屋の入り口の周りだけが異様にボロボロだった。
扉にはセメントのようなものが塗りたくられていた。
「…まるで、外側から扉を開けられないようにしてたみたいだな。」
「どう言う事だ…?」
「と、とりあえず中に入りましょ?」
いろいろ謎が残るなか、聖刃の部屋へと入る。
そこには、聖刃にとってはリビングよりも、和室よりも馴染みのある、かつてのいつもの部屋だった。
「ゲームいっぱいあんなー」
「まぁ…ゲーム好きだし。」
「このパソコンとかもかなり高そう…」
「うん、転売価格なんじゃねえかって思うほど高かったけど、高い分性能いいんだよそれ。」
「へぇ…」
そんなこんなで特に意味もなく実家に戻ってきたが、扉にセメントのようなものがなられていた事以外は特に何も変わらなかった。
「あ、10分前だ、そろそろ外に出ないと!」
「ああ、いくか!」
そして家から出て、外で待機した。
10分後に全てが始まる。
「姉ちゃん…。」
残り47発しかない姉の形見であるジューメツを握りしめ、メドゥーサを待つ。
9分、8分、7分、と何事もなく時間が過ぎていく。
4分、3分、2分、1分。
『メドゥーサ到達まで後1分!警戒を怠るな!』
空を見ると、黒点のようなものが見えた。
おそらくあれがメドゥーサだろう。
「いよいよだな…メドゥーサ…!!」
30秒、20秒、10秒。
とても大きな音を立て、メドゥーサは聖刃達の目の前に到達した。
『メドゥーサ、予定時間よりも9秒早く到達!座標は聖刃、舞、愛の方角だ!総員、攻撃開始!』
聖刃達はメドゥーサと対峙した瞬間にジューメツを発砲した。
舞と愛は1発で止めたが、聖刃は何発も撃つ。
1発残り反動がすごいので連発は出来ないが、恐らくもう5発は撃っただろう。
「聖刃!発砲を一旦止めろ!弾が切れるぞ!」
「でも撃たなきゃ倒せねえ!逆に何で撃たねえんだ!?」
「オマエ知らないのか!?1発撃つと、撃った奴のスペックがわかるんだぞ!」
そう言われると、聖刃は発砲を止めた。
「…それ、早く言ってくれよ…。」
「…知ってるモンかと思ってたからよ…」
そういうとメドゥーサの分析をしていた舞の顔が驚きの顔になった。
「な…なに…これ…!?」
「どうした舞?」
聖刃と愛が舞の方へと近づき、舞のジューメツ、スマホモードの液晶画面を見る。
そこに写っていたのは、メドゥーサのスペック…のはずが、何故か二重に表示され、その上に『warning』の文字が表示されており、とても見づらくなっていた。
「フハハ、どうやら我の弱点などは見抜けんようだな。」
「メドゥーサ…何をした!?」
「我は何もしていないぞ?」
「惚けるなっ!!」
聖刃はメドゥーサに発砲するが、弾を掴まれてしまい、砕かれてしまった。
「こんなモノ、我には効かぬ。」
「そんな…マジかよ…!」
「ジューメツが効かないなんて…これじゃ倒しようがないじゃない…!」
「次はこちらから行くぞ、小娘ども。まずは…そこよ女のような男からだ、貴様は後に面倒になるからな!」
そういうとメドゥーサは一瞬にして聖刃に間合いを詰め、聖刃の顔の前に手を翳し、魔法陣を即座に展開し、何かを放とうとした。
しかし聖刃もただ立ち止まるだけではない。
聖刃はメドゥーサの眼帯に照準を定め、即座に発砲した。
「?!」
「チッ、避けられたっ…!」
メドゥーサは聖刃に魔術を発動しようとしたが、突如眼帯を狙われた為、即座に回避行動をし、後ろへと下がった。
「なるほど、やはり貴様は先に潰しておく必要があるな…!」
「俺も、さっさとてめぇをぶっ殺したいんでな…!」
そういうと聖刃とメドゥーサは、互いに間合いを詰め、聖刃は再び眼帯を狙い、メドゥーサは杖を魔術で取り出し、前方に魔法陣を展開する。
聖刃が発砲すると、メドゥーサが展開していた魔法陣に被弾し、魔法陣はガラスのように砕け散った。
「何っ?!ジューメツの弾はここまで進化しているのかっ!?」
「お前には効かないんじゃ無かったか?」
「しかし…魔法陣は砕けるが、我には届かぬ。」
「残りは…39発か…」
「フッ…たった39発で我を倒そうというのか?」
「確かに…俺一人じゃ無理かもしれねえな…だがな、俺は…一人じゃ無いんだぜ?」
そういうと全方向からジューメツの弾が炸裂し、メドゥーサに被弾した。
「がァっ!?」
『ジューメツ、全弾、メドゥーサに被弾!』
舞と愛が集まって来たGGG.sの隊員達を聖刃が戦っている間に配置していたのだ。
メドゥーサは全身に弾を食らい、かなりダメージだったのか、膝をついた。
「確かに…お前にとって1発1発は弱えかもしれないけど、GGG.sの全隊員の弾を全身に被弾したら、流石にダメージあるだろ?」
「フン…だが…これで良い。」
「あ?」
そういうとメドゥーサは不敵に笑い出し、眼帯を外そうとした。
「まさかてめえっ!みんな逃げろ!石化されるぞ!」
聖刃はこの場にいる全ての隊員に避難するように呼びかける。
聖刃の呼びかけに応じ、その場から撤退しようとするが。
「もう遅い!」
そういうとメドゥーサは眼帯を外し、石化の魔眼を露わにする。
その途端、ここら一体の空気が重くなるような気がしたその時。
「あ、あぁっ!!何、これ!?」
「嫌…嫌ぁ!!」
「私…石になんてなりたくないよぉお!!」
その場にいた全ての隊員の石化が始まった。
「どうしてだ!?みんな魔眼と目を合わせてないはずなのに!?」
「…この石化の魔眼は、目を合わせる合わせない関係なしに、その場にいる者を石化する能力を持っている。貴様達のジューメツが進化していくように、我の魔眼も日々進化していく…!」
「そんな…マジかよ…!!」
そういうとメドゥーサは空を舞い、どこかへと飛んでいってしまった。
周りから隊員達の石化する事に対する恐怖の声が聞こえてくる。
そんな中、聖刃に呼びかける舞の声が聞こえてきた。
「聖刃さん!」
「何だ?!」
「私達…最初からはめられてたみたいだね…」
「そんな事より…どうするんだよ!俺達…石化され…ってあれ?」
聖刃はふと気づいた。
そう、自分だけ石化されていない事に。
「何でオマエだけ石化されてねーんだ!?」
舞との会話に愛が割って入る。
「知るかよ!俺に分かるわけないだろ!」
「とりあえず、私達はもう…無理みたい。だから…後は…任せたよ…聖刃さん。」
「ちょっと待てって…舞!!!!!!」
そういうと舞は完全に石化してしまった。
「舞!!マジかよ…まぁ、オレもヤバいんだけどさ。」
「愛…!!」
「…どーやらオレももう限界みたいだ。聖刃、オマエにオレのジューメツを託す…全弾使うんじゃねーぞ…?」
そういうと愛は聖刃の手に自身のジューメツを握らせる。
弾数は64と表示された。
「ちょっと待てって…愛!!」
「だから…これでメドゥーサをぜってー倒せ、オレとの約束だからな!」
「そんな、愛…そんな今から死ぬみたいな台詞言うなって…愛!!!!!!」
しかしその声は届かず、愛も、他の隊員もみんな、石化してしまった。
残されたのは、聖刃ただ一人だった。
「どうして…俺だけ…。」
聖刃は姉のジューメツと愛から託されたジューメツを握りながら、その場に崩れる。
「うっ…うぁあああああああああ!!!!!!」
聖刃はその場で泣き叫ぶ。
拳に血が滲んでもなお地面を殴り続ける。
「何で…何でだよ!!どうしていつも俺だけ…!!俺だけこんな辛い目に遭わなきゃいけねえんだよ!!」
そんな時だった。
突如姉のジューメツに本部からの通信が入った。
『聖刃、返答してくれ。何があったんだ!』
「…罠にはめられて、俺以外の全ての隊員が石化した。」
『そんな…!?…聖刃、一旦帰還して来てくれ。体勢を立て直す』
「俺しか生き残ってないのにどうやって立て直すんだよ!!メドゥーサもどこ行ったかわからねぇし!」
『…まぁいい、早く帰還してこい。』
そこで通信が切れた。
聖刃は立ち上がり、行きに使用したこの車のような乗り物に乗り、運転した事はもちろん無いが、ゲームで培った知識を活かし、なんとか運転する事に成功し、本部へと帰還した。
「…。」
「よく戻って来たな。」
本部へ戻ると、リーダーが待っていた。
その後ろには監禁されているはずのエウリュアレ、ステンノがいた。
「…まさか、隊員全員が全滅とは…。」
「まぁ、メドゥーサもよく考えたものね。人間達に調子を乗らせ、みんなを集めてからの全員石化、なんてね。あ、エウリュアレよ。」
「嘘言わないで、貴女はステンノでしょう?私が本当のエウリュアレよ。」
女神姉妹は雰囲気に合わないテンションで会話をする。
「そういうのいいから。」
「あら、ごめんなさいね。」
「これからどうするんだよ、みんな石化されちまったし。」
そう、今は絶望的状況なのだ。
戦える味方が聖刃以外いなくなってしまったのだ。
そんな中でこの状況を打開する策などあるわけが無い。
「それなら、わたしに考えがあるの。」
突如、エウリュアレが妙案を持ちかけてきた。
いや、まだ内容は聞いてはいないが、どうせロクな内容ではないだろう。
「考え?」
「そう。」
「詳しく説明してくれ、ステンノ。」
「いや、私はエウリュアレよ?」
「あぁ、すまない。」
空我 舞
17歳。
ドジだが真面目で明るい少女。
暗い雰囲気が好きではないので、自分が明るく振る舞うが、よく空振りする。
初期弾数は91発で、石化された現在では75発。