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少女達が銃で戦う世界で男の娘は剣を振るう  作者: 鳥抹茶
第1章 Avenger -聖刃-
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第4話 mission -振切-

 姉ちゃんは戻らない。

 石化を解くのは不可能と判断されたらしい。

 たった一つの可能性、唯一の希望は砕け散った。

 姉ちゃんの代わりとしてGGG.sに入隊したけど、正直俺なんかが代わりになるのだろうか?

 色々わからない事が多いが、それ以上に。

 …俺は、どうしてこんな目に遭ってるんだ。


「…コレで2日…か。」

「聖刃さん大丈夫かな…。」


 聖刃は石化を解くのは不可能だと言われて以来、聖刃専用のマイルームに引きこもってしまった。


「まぁ…仕方ないよな…アイツだってこの前まではただの一般人だ、この数日であいつに辛い事が起こり過ぎたんだ。」

「…でも」

「あぁ…このままじゃメドゥーサがまた来てもまともに戦えない…仕方ねえ、無理矢理にでもミッションに連れてくか。」

「ちょっと愛ちゃん…!」

「正直オレもしたくない…けど、アイツの為だ。」


 そう言うと、愛は聖刃にやらせるミッションを探しにどこかへ行ってしまった。

 

「愛ちゃん…。」



 誰かが扉から離れていく足音が聞こえる。

 会話からして愛だろうか。

 プラスで足音が聞こえないということは、舞はまだ扉の前にいると言う事になる。


「…舞。」

「聖刃さん…?!」


 聖刃は扉越しに舞に話しかける。


「俺…どうすればいいと思う?」

「…わかりません。でも、せめてミッションには行きましょう?愛ちゃんがミッションを持って来てくれるみたいだし、もちろん私達も同行するから…」

「…ミッションって…そのメンジとかいう化け物の討伐とかだろ…。」

「…そう、です。」

「メンジって、元々男性だろ。もしかしたら、愛の時みたいに、誰かの大切な人を殺してるかもしれないって事だろ?」

「…そう、です………けど、けどですよ?」

「…?」

「愛ちゃんが言ってました。」



 これは、GGG.sが女神姉妹と協定を結んだ頃の話。

 とあるミッションにて。


「はぁ、はぁ…。」


 舞はただ一人のメンジを倒すミッションに手こずっていた。

 ただ敵は特に強いわけではなく。

 ただ、メンジは元々男性だという事を舞は知っている。

 だから、容易に撃つことができなかった。


「あの化け物が元々男の人なんて…そんなの知っちゃったら撃てる訳無いじゃん…!」


 舞は物陰に隠れて独り言を言う。

 しかしこの場には自分しかいない。

 代わりに撃ってくれる人はおらず、自分が撃つしかない状況であった。


「無理無理無理無理無理ぃ!!あのメンジはもしかしたら誰かの大切な人かもしれないんだよ…?それを私が撃って殺しちゃったら…その人が…!」


 メンジを撃つ、すなわち男性の…人間の命を、人生を奪う事でもあるのだ。

 そんな覚悟は当時の彼女にはまだ無かった。

 そんな時だった。


「ウゥ?!?!」

「…え?」


 突如銃声が鳴り響いた。

 舞が倒すべきメンジが誰かのジューメツによって倒された。


「あ、貴女は…?」

「…やっぱり、メンジを撃つってのは最初は抵抗あるよな。」


 現れたのは、同い年くらいの少女だった。


「だ、だってメンジは元々男の人で、もしかしたら誰かの大切な人かもしれないんだよ?!」

「あぁ…そうかもしれないな。」

「貴女は知っててどうして撃てるのよ!?」

「当たり前だろ。むしろオレ達が撃ってやらなきゃいけねえんだろうが。」

「…貴女、何を言ってるの…?」


 舞にはその言葉の意味がわからなかった。

 意味がわからない舞には、目の前に映る同い年くらいの少女が冷酷な人に見えた。

 同い年くらいなのに、どうして迷いが無いのか。

 舞は不思議で、恐怖すら覚えるほどだった。


「じゃあよ、オレ達が撃たずにその大切な人にメンジを撃たせるのか?」

「…え。」

「いいか、オレ達が撃たなきゃ代わりに誰かがそのメンジを撃つ事になる。その代わりが、メンジが人間だった時の大切な人だった、なんて…そんなのオレは嫌だね。自分で大切な人を殺すより、知らぬ内に誰かに撃たれて殺されてた方がマシだろ…?!」

「そ…それは…」

「誰かが大切な人を殺して悲しむんだったら、その人が知らぬ内にオレ達が撃って殺した方がその方が俄然良いだろ!?誰かの大切な人だからこそオレ達がそいつの代わりに楽にしてやるんだよ!」

「誰かの大切な人だからこそ…私達が…。」


 今まで自分は誰かの大切な人かもしれないから撃てなかった。

 でも、この人はその逆で、誰かの大切な人かもしれないからこそ自分が率先して撃つ。

 そうする事で、大切な人が撃たなくて済むから。

 舞はこの人に言われ、ようやくメンジを撃つ覚悟を決めるのだった。


 これが、舞と愛の出会いだった。



「…だから、後に愛ちゃんの過去を知ってから、より一層あの言葉の重さを知ったんだ。」

「…そうか、愛は…自分で兄を撃ってしまったんだもんな…。」

「そう。だから私もメンジを撃てるようになった。だから聖刃さんも…」

「あぁ、確かに俺は…メドゥーサに復讐するって決意した。けど…ようやく見えたと思った希望がすぐに消えちまうから…どうせ今後も上手くいかないんだって…考えちまうんだ…!」


 そう。

 外に出て、姉という希望が現れても、その後石化されてしまい、希望は無くなった。

 姉が石化されたが、実は死んではおらず、生きているという希望が現れ、もしかしたら石化を解く事ができるかもしれないという希望が現れても、石化を解く事は不可能だと判断され、希望は無くなった。


「…大丈夫だよ。諦めなければ、きっと上手くいくよ。」

「…諦めなければ…?俺は最初から諦めてねえよ…諦めずに希望求めて頑張ってた…でもその結果がこれなんだよ!」

「…うるせぇなぁ、いい加減にしろっつーの!」

「あ、愛ちゃん!?」


 すると突然、戻ってきた愛が聖刃のマイルームの扉を蹴り壊した。

 部屋は電気を付けてないのか暗く、覇気のない聖刃が驚いた顔でこちらを見つめていた。

そして愛は聖刃の部屋にずいずい入っていき、聖刃の胸ぐらを思いっきり掴む。


「男のくせにいつまでグズグズしてんだ、メドゥーサをブッ殺すって覚悟決めたんじゃねえのかよ!」

「だからようやく見えた希望がすぐに消え…」

「オレ達はそんなに頼りないか?!」

「え?」

「よーやく見えた希望がすぐに消えるだと…?オマエはオレ達がそんな信頼できねえのか?!」

「…!」

「なぁ、確かに音色先輩は石化しちまって、未だ石化が解ける見込みは無い…でもよ、例え音色先輩がいなくても、オマエは一人じゃねえんだぞ…?」

「…そう…だな…。」

「一人で抱え込むなよ…オマエにはオレ達がいるじゃねえか…。オレ達は全然ウェルカムなんだぜ?」


 そうだ。

 俺には舞と、愛と、GGG.sのみんながいる。

 一人で全部抱え込んで、絶望して、悲しむ必要なんて無かった。

 メドゥーサへの復讐も、一人でする必要は無いんだ。

 何が「希望はすぐ無くなる」だ。

 こんなにも近くに希望はあった、いや、むしろ向こうから手を差し伸べてくれていたんじゃないか。

 俺は、本当に本当に、全てを振り切った。


「…ありがとう、愛、舞。お陰で目が覚めた。」

「へへ、どうってコトねぇよ!」

「ふふ、いつもの聖刃さんに戻ってよかったです。」

「さて、聖刃が戻ったところで、ほら、ミッション。持ってきてやったぜ。」


 そういうと、愛は聖刃にミッション内容が書かれた紙を渡した。


 ミッション内容は、

『新型メンジを討伐せよ』


「新型メンジ…。」

「おもしろそーなの持ってきたぜ。」

「新型メンジなんて…手強そうだね…。」

「大丈夫だろ、聖刃とオレと舞なら!」

「新型だろうがなんだろうが知らねーが、いっちょ行ってやるかー!!」

「おー!!」


 そして、聖刃は初めてのミッションへと出撃する。


「この辺りのハズなんだが…いねーな…」

「そりゃメンジとやらも生き物だ、ずっとそこにいる訳じゃないからな…。」

「あ、もしかしてあれじゃない?」


 舞の指差す方向を見やると、そこには、トカゲのような化け物がいた。


「あれか!よし、みんな行くぜェエ!!」


 聖刃の掛け声と共に舞と愛と聖刃が駆け出す。

 3手に分かれ、3方向から新型にジューメツを撃ち込む、が。

 直後、新型は空へと跳んでいった。


「なんだアイツ!?空飛べんのかよ!?」

「いや、多分あれはジャンプだ。」

「ジャンプだけであんな飛べるんだ…!」

「空行かれたらコッチの対処法が無いぞ!?」

「いや、多分だけど空中では身動きが取れないと思うから、目視できるようになったら空中で仕留めた方がいい。」

「聖刃…オマエ結構分析凄いな……」

「分析はゲーマーとして当たり前だからな。」


 そして、新型がちょうど目視出来るほどの高さまで落下してきた。

 そして3人ともが狙いを定め、新型に撃ち込む。

 弾は見事3発命中し、新型は死体となって地上へと落下した。


「さて、ミッション完了だな!」

『緊急連絡!緊急連絡!』

「…なんだ?」

「緊急連絡って…」


 ちょうど新型を討伐し、任務完了…かと思いきや突然トランシーバーからリーダーの声が聞こえてきた。


『空から高熱源体がかなりのスピードで接近中!ミッション遂行中の者や、施設外へ出ている者は警戒せよ!繰り返す!空から高熱源体がかなりのスピードで接近中!ミッション遂行中の者や、施設外へ出ている者は警戒せよ!』


「空から高熱源体?」

「まさか…いや、だとしたら早すぎるだろ!」

「だって…女神姉妹の時は半年くらいだったでしょ!?」

「お前らのその会話からして、この高熱源体の正体って…」

「あぁ…そうだよ。オマエとの因縁のヤツだ。」

「…まぁ、ある意味復讐を果たすのが早くなったな…メドゥーサ…!!」



 今、この地に再びメドゥーサが現れようとしていた。

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