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少女達が銃で戦う世界で男の娘は剣を振るう  作者: 鳥抹茶
第1章 Avenger -聖刃-
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第3話 Schmelz -入隊-

今回は割と平和な回。

 理解者がいた。

 兄を助けようとして、その第一歩で化け物と化した兄を強すぎるが故に気付かず殺した者。

 俺は石化された姉ちゃんが生きているのでまだ希望があるが、彼女…愛の場合はもう既に死んでしまっている。

 自分で気付かずに殺してしまったのだから。

 そんな過去を聞かされたら、俺がしょーもない程に情けないみたいじゃないか。

 

 愛の過去を聞いて、聖刃と愛は施設内へと戻ってきた。


「あ、愛ちゃんと聖刃さんおかえりなさい!愛ちゃん、ちゃんとお話出来たんだね!」

「オマエ…オレをゴリラか何かだと思ってないか?」

「まぁあながち間違ってはいないが…」

「あン?!何か言ったか?」


 愛は聖刃を睨みつける。

 次には手が出そうなのでこれ以上は何も言わなかった。


「…スンマセン」

「まぁ何だっていいけどよ。」

「ふふ、聖刃さん明るくなりましたね。」

「まぁ…な。愛のあんな過去聞かされちまったら、悩んでもいられないからな。それに…」

「あ、そうそう!石化された人達、まだ生きてるって…!」

「あぁ、つまり姉ちゃんは生きてる。まだ希望はある!」


 その後、音色を含めた石化された少女達はGGG.sに回収され、石化を解く為に数日間かけて研究された。

 その数日間、聖刃はGGG.sで様々な手続きを済ませる。


「なぁ…GGG.sって男でも入隊出来んのかな?」

「さぁ…どうでしょうか…。」

「実力さえあればイケると思うが、一応GGG.sのリーダーに聞いてみろ?」

「リーダー?どこにいるんだ?」

「司令室じゃね?」

「案内よろしく。」

「オレがやんのかよ…舞、頼んだ!」


 そういうと愛は舞の意見も聞かずその場から即座に姿を消した。


「…じ、じゃあ案内するねっ!」

「あ、うん。」


 その場に残された舞は仕方なく、聖刃を司令室に案内するのだった。

 

「ここが司令室だよ。」

「へぇ、随分大きな自動ドアだな」

「司令室ですからね!」

「…関係無くねえか?」


 そういうと突如司令室の扉が自動で開く。

 どうやら内側から誰かが開けたようだ。


「君が音色の弟、聖刃君かな?」

「そうだけど…あんたがリーダーか?」

「如何にも。私はGGG.s創設者にして現リーダーのヒビキ飛香アスカだ。」

「俺は莉里聖刃…って姉の名前知ってるなら俺の名前も知ってるか。」

「ああ。音色からある程度は君のことを聞いているよ。高校中退し、引きこもりのニートってね。」

「随分ひでえ言われようだなおい。」


 …何一つ間違っていないのが腹立つが。

 しかし高校中退したのもプロゲーマーとしてやっていけると確立したからで、今までは優勝賞金で暮らしていたので働いている訳でもない、ニートだわ。


「舞、彼と二人で話がしたい。」

「わかりました!じゃあ聖刃さん、また後でね!」


 そういうと手を振りながら舞は何処かへ行ってしまった。

 リーダーは舞が行くのを見届けた後、聖刃との会話を始める。


「音色の事は…気の毒だ。」

「でも生きてるんだろ?なら希望はあるさ。」

「私は武装開発やその他の様々な研究も担当しているから、もちろん石化を解く研究もしているが、正直難航している。」

「そうか…。」

「メドゥーサのデータが有れば良いのだが…奴は何故か音色を狙っているようだったからな…」


 メドゥーサが音色を狙っていた?

 確かに奴は音色を石化して撤退したであろうが…。

 いったい何故…?


「どういう事だ?奴がこの世界に来たのは今日が初めてだろ?」

「そのはずだ。だが、何故メドゥーサは我々の戦力を把握している…?」

「偶然ってのもあるかもしれないけど、女神姉妹がバラしたとか?」

「あら?呼んだかしら?」


 そういうと突如女性二人組がどこからともなく姿を表した。

 天使のような服装をしているので、何者なのかはすぐに分かった。


「…あんたらが女神姉妹か。」

「あら、よくご存知で。」

「でも、貴方よく見たら男性よね?何故この世界にいるのかしら?」

「知るかよ。てかどっちがどっちなんだ?」


 女神姉妹、すなわちメドゥーサの姉はエウリュアレとステンノ。

 一番上がステンノでその次がエウリュアレ、一番下がメドゥーサだった筈だ。

 ステンノとエウリュアレは瓜二つと言っても過言ではないくらいに顔や仕草、口調が同じなので、初見ではどちらがエウリュアレでどちらがステンノなのか全くわからない。


「私がエウリュアレ。」

「私がステンノ。」

「お願いだから喋ったら最後に自分の名前言ってくれ。」

「仕方ないわね、私達も間違えられたらたまったものじゃないから。エウリュアレ。」

「そうね。間違えられては困るもの。ステンノよ。」

「まぁ…それでも良いか。」


 話が大分逸れてしまった。

 まぁ大半が聖刃のせいでもあるのだが。


「話を戻すわ、私達がGGG.sの戦力をバラす事は不可能よ。あ、エウリュアレね。」

「だって、私達が初めて来た時はGGG.sはまだ無かったし、2回目にこの地に来た時以来帰ってないし。ステンノよ。」

「それに、女神姉妹はこの司令室でほぼ監禁状態だ。何か怪しげな行動をしたらすぐにわかる。飛香だ。」

「あんたは名前言わなくていいんだよ…。てか監禁て…」

「まぁ洗脳されてたとはいえ人類には非道いことをした訳だし、むしろ軽い方だと思うわ。ステンノ。」


 そう。

 今こうして普通に話しているが、女神姉妹は洗脳されていたとはいえ彼女らのせいでこの世界から俺以外の男性が連れ去られ、化け物にされた。

 というか、妹に洗脳される姉達って…。


「そういえば、音色の銃が見当たらないのだが、聖刃君、何か知らないか?」

「ああ、俺が持ってるよ。」

「なるほど、そうか。弾は何発入っている?」

「…どうやって確認するんだこれ?」

「ああ、貸してみて。」


 飛香に姉の銃を渡す。

 ガチャガチャと銃を手動で変形させる。

 あっという間にスマホに早変わりした。


「え?!それスマホになんの?!」

「ああ、そうだ。…49発か。」


 スマホの液晶には『49』の数字が写っていた。


「リロードしないのか?」

「リロード出来ないよ。特殊な銃だからね。」

「その分威力が凄まじいんだっけか。」

「ああ、そうだ。あ、君にも一応教えておこう。この世界の知識をね。」

「この世界の知識?」

「そうだ。例えば化け物の名称とか、この銃の名称とかだ。」



 GGG.sは、gun-girl-guardian'sの略。


 化け物は男性が連れ去られ、姿を変えられてしまった者だという事は既に明らかになっているので、『メンジ』と呼ばれている。

 男性を意味する『men』と変わるを意味する『change』を掛け合わせたものである。

 様々なタイプが存在しており、主にオオカミタイプが多い。


 そして少女達の持つ銃の正式名称は、『ジューメツ』と言う。

 意味はそのままで、銃で敵を滅すると言う事から。

 そして、この銃を手にした少女はどんな怪我を負っていても、脳と心臓さえあれば決して死ぬ事はない、老いる事もない。

 すなわち、不老不死になれるのだ。


「不老不死!?」

「ああ、そうだ。男性がこの世にいないから子孫を残す事が出来なくなってしまったんだから」


 確かに、男性がいないので子孫を残すことができない。

 だからせめて今を生きる少女達を死なせまいと不老不死にさせたのだろうが、聖刃が言いたいのはそう言うことではなく。


「そう言う事じゃねえよ!不老不死なんてどーやって…!」

「ああ、そっちか。君は、『シュメルツ』と言うものを知っているかい?」

「『シュメルツ』…?何だそれ?」

「『シュメルツ』それは、不老不死になれる代わりに周りの人間の不幸を自身が受け取り、その受け取った不幸を『シュメルツ』である者が代わりに受けると言った数百年前から存在する呪いだ。」


 数百年前からあるのに呪いの名称は英語なのが不思議だが、多分これは突っ込んではいけない奴だ。


「まさかとは思うが、その呪いを使って不老不死にさせることに成功したとか言わないだろうな?」

「いや、その通りだ。」

「マジかよ。でもどうやって」

「簡単だ、『シュメルツ』の呪いに掛かってしまった者から分離させて、それを研究し、擬似的に再現するだけだ。」

「何が簡単なのか全くわからないが、人間ってやろうと思えばなんだって出来ちまうんだな…」

「そう、人間ってとても恐ろしいの。エウリュアレ。」


 と言うか、姉が「私、死なないから。」と言っていたが、その意味がようやくわかった瞬間でもあった。

 脳と心臓さえあれば決して死ぬ事はないらしいし、よく考えれば、この銃…ジューメツを持っているおかげで姉は死ぬ事はなかったのだ。


「さて、話は以上だ。まぁこの先、様々な困難があるだろうが、頑張ってくれ。」

「ああ、俺にも打倒メドゥーサっつー目標があるからな!」

「あら、随分大きく出たわね。ステンノよ。」

「メドゥーサは強敵。倒すのは一筋縄ではいかないけど、頑張ってね。あ、エウリュアレよ。」


 そう言われた聖刃は、司令室から出る。

 そして扉が閉まり、司令室の内部が見えなくなる。



「…メドゥーサは何故君達を洗脳したんだ?」

「わからないの、ある日急におかしくなって。」

「普段は私達のパシリみたいになってるのに、全く聞かなくなったどころか、急に私達を洗脳して気がついたらこれよ。」

「そうか…急におかしく、か…いや、まさかな…」

「心当たりがあるの?」

「ない訳では無いが…まぁ…まだ話す段階ではない…かな。そうと決まった訳でもないし…」

「あら、そう。無理に話せとは言わないけど。」

「手遅れになる前に…誰かに話しておいた方が良いわよ…?うふふ…」



 それから数日後。

 聖刃は音色の代わりとして一時的にGGG.sに入隊。


「聖刃…オマエ銃とかの扱いは上手いのに体力無さ過ぎだろ…」


 聖刃はその場にぶっ倒れる。

 息切れが激しく、下手をすれば死にそうだ。


「はぁ、はぁ、仕方ないだろ…ほぼ2年間まともに運動してないんだから…はぁ、はぁ…」

「1,000m走でそんなブっ倒れる程疲れるかオイ。」

「いや…1,000mって1kmだからな…!俺今1kmノンストップで走ったんだからな!」

「いや、オレらも走ったよ。」

「なんでお前らそんなピンピンしてんだよ…!」


 少女達も1,000m走った筈だが、息切れもしていない。


「毎日走ってるからなそりゃ。」

「毎日っ!?それってつまりこれから俺も毎日走らされるのか?!」

「あぁ、そうだぞ。頑張れ聖刃。」

「嫌だぁぁぁぁぁあ!!!!」


 ここから、聖刃にとって地獄の鍛錬生活が始まるのであった。

 休憩中にて。


「お疲れ様!聖刃さん!」

「あぁ、ありがとう。」


 舞はスポーツドリンクを差し出し、ベンチに座る聖刃がそれを受け取る。

 そして、聖刃の隣に座る。


「凄いよね、聖刃さんって。2年間運動してないのにちゃんと1,000m走り切るなんて。」

「そうか…?舞だってちゃんと走り切ってるじゃん。」

「今は走り切れてるけど、最初は500mくらいでもう駄目〜ってなってたもん。」

「そうなのか?」

「そうだよ〜!だから最初から走り切れてるの凄いと思うよ!」

「舞、あんまり甘やかすなよ。」


 ベンチで座って話していると、愛が来た。


「愛ちゃん…別に良いじゃん!逆に愛ちゃんは厳しくし過ぎなのよ〜!」

「いや、最初はこれくらいが丁度イイだろ。」

「そうかなぁ…?」

「まぁ、俺が運動不足なのも原因だが、急な激しい運動はむしろ体に悪いんだぜ?だから、最初は軽い運動をして体を慣らしたほうが良いんだ。」

「そ、そーなのか?」


 おいおい、立場がさっきと逆転してんぞ。

 何でまともに運動してない俺がこんな事知ってて普段から運動してる愛が知らねえんだ。


「ふふ、さっきと立場が逆になってるね。」

「…だな。ははは。」


 そんな時だった。

 突如リーダーが笛を鳴らし、全員をブリーフィングルームに集まるように指示をした。


「何だろう?」

「さーな。新しいバケモンでも出たんじゃね?」

「もしかしたら石化関係かも。」


 聖刃達は走ってブリーフィングルームへと移動し、集まる。


「…すまない、みんなに悪い知らせがある。」


 急にリーダーが悪い知らせがある、なんて言われたもんだから周りのみんなはもちろんざわざわしだした。


「石化の件についてだが、ついさっき、我々の技術では石化を解く事は不可能だと判断した。」

「…え?」


 石化を解くことが…不可能?

 今、リーダーは確かにそう言った。


「我々はなんとか石化を解くために研究をしたのだが、研究が全く進展せず、やむを得ず不可能だと判断した。」

「…!」

「話は以上だ…これだけはみんなに聞いて欲しかったんだ。気分を害したのなら…すまない…。」


 そういうとリーダーはブリーフィングルームから何も言わずに出て行った。

 大半の少女は何とも思わずにそのままブリーフィングルームを出て行ったが、聖刃を含め一部の少女はその場に立ちすくんだ。

 

「…石化を解くのが…不可能…?」

「それって…音色さんは戻らないって事じゃ…!」

「音色先輩…マジかよ…!」


 石化されたのは音色だけではない。

 他にも何人か…おそらく音色の所へ行かせまいとメドゥーサの足止めをしたであろう少女達も石化されたのだろう。

 その石化された少女の友達、知り合い、親友、家族なのかはわからないが、ブリーフィングルームに残っている少女達は泣き崩れてしまった。

 聖刃が立ちすくむ中、周りから少女達の泣き声、啜り泣く声が聞こえてくる。


「…。」

「聖刃さん…。」


 聖刃は下を向いて、泣く事も、叫ぶ事も、それ以上の喪失感で何も出来なかった。


「いくぞ…聖刃、舞。」

「ちょっと愛ちゃん…!」

「聖刃の気持ちはオレが一番わかる。でも、もう音色先輩は戻ってこないんだよ…。」

「…わかってるさ…わかってるけど…でも…」

「あぁ、わかる…痛いくらいにわかるぞ、オマエの気持ちはよ…でもここで立ち止まってたって音色先輩が戻ってくる訳じゃない…割り切るしかねーんだ…!」

「愛ちゃん…。」


 愛は、自身の過去と合わせて考えているのか、必死に聖刃をその場から歩かせようとしていた。


「割り切るなんて…難しい事言うなよ…」

「コレは物がモノだからな…割り切るのは難しいだろうが、オレが言いたいのは、ここで止まってたら何も出来ねえって事だ…」

「…あぁ、そう…だな…。」

「聖刃さん…。」


 そういうと聖刃はブリーフィングルームを出た。

 舞と愛は聖刃の背中を追いかけた。


 その背中は、苦しみと悲しみに満ちていた。

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