第2話 Similar people -対比-
第2話です。
友達に最終回までのストーリー構成を話したら、「お前ヤバ」と引かれ、精神的ダメージを負っていました。
正直言うと。
わかっていた、察していた。
でも、わかりたくなかった、信じたくなかった自分がいた。
人型の石像を見つけた時から、メドゥーサの特殊能力を思い出した時から。
結局、聖刃と舞は何も出来ず、することが出来ずにGGG.s本部へと戻ってきた。
「…。」
「…みんなー!ただいまー!」
舞はわざと明るく振る舞った。
でも、聖刃の雰囲気が明らかに暗かったのでGGG.sの少女達は何かあったのだと察した。
「舞…オマエ今回ばかりはかなり浮いてるぞ…」
「え?あっ…うん…。」
「いや…良いんだ…あぁ…。」
「…音色先輩に何かあったのか、オメー。」
「…何もねえよ。」
聖刃は施設から外へ出た。
「聖刃さん…。」
「オレ、ちょっとアイツと話してくる。」
「ちょ、ちょっと愛ちゃん…!」
「大丈夫だっつーの。ホントにただ話すだけだからさ。」
「…なら…良いんだけど…」
そう言うと愛は聖刃を追いかけていった。
「…。」
「よ、男の娘野郎。」
「…その呼び方やめてくんねーか?」
「だってオメーの名前知らねーし。」
姉ちゃんから弟がいると言う事は聞いているはずなのに名前は知らないのか。
…まぁ当たり前か。
「…莉里聖刃。」
「聖刃、か…んじゃ聖刃、何があったんだ一体。」
「…俺さ、数時間前まではただの引きこもりだったんだぜ?」
「お、おう。」
「ただ…普段外に出ない俺が珍しく外へ買い出しに行っただけなんだぜ?それなのに…それなのにさ…」
「まぁ…うん…そうだな…。」
「今日たまたま外出た結果、この世界から俺以外の男性が連れていかれるわ、その男性は化け物と化してるわ、メドゥーサとか訳わかんないのに遭遇するわ、姉ちゃんは石にされるわ、一体何なんだよ!」
「ちょっと待て、音色先輩が石にってどう言う事だよ…?!」
愛は聖刃の胸ぐらを掴む。
女の子なのに凄い力だ。
「…そのまんまさ、さっき舞と見に行ったら姉ちゃんが石になってたんだ…。」
「そういう…コトだったのか…早く言えよ。」
事情を知った愛は聖刃の胸ぐらを離す。
聖刃はそのままその場に座り込む。
「…急に色んなこと起こりすぎてもうよくわかんねえんだよ…俺…」
「でもよ、外に出てなけりゃオマエ今頃死んでただろうよ。」
「…こんなことならいっその事死んでた方がマシだっt」
突如叩く音が響き、顔に激痛が走った。
聖刃は愛にビンタされたのだ。
「…何が“死んでた方がマシ”だ、ふざけるのも良い加減にしろよ。」
「お前に何がわかる…力のあるお前に!何も出来なくて…逃げることしか出来なかった…俺の事なんて…」
「わかるさ、オレもGGG.sに入りたての時に今のお前と似たような事あったし。」
「…え?」
「ちょっとだけオレの過去話になる、退屈だろうが寝るんじゃねーぞ?」
一年半前、宇宙から女神姉妹が来た時の、ある一人の少女の話。
「…何だアレ。」
『地球の皆様、ご機嫌よう。私達は女神姉妹。とても、とても急で申し訳ないのですが、この地球に生きる男性みんなをお借りしますね?』
女神姉妹とやらの言っていることがよくわからなかった。
その時、近くで同じく女神姉妹を見ていた男達が宙に浮き始めた。
「あ、うわ、何だこれ!?」
「つ、つれさられるー!!」
「…オイ、何だよ…コレ…!?」
ふと、近くから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「愛!」
「兄貴!?」
兄貴は連れ去られまいと電柱に掴まっている。
「オイ、オレには何ともないぞ!?」
「多分愛は女の子だからだと思う!」
「だからオレは女の子じゃねーって!」
「関係ないから!この状況でまだそれ言う?!」
「兄貴もよくそんな状況でツッコめるなオイ!?」
こうしてみると割とコミカルだが、実際はいつ飛ばされてしまうかわからないとても緊迫した状況でだ。
「もう…ダメだっ…!!ごめん…愛っ…!!」
「お、おい…諦めんなって!兄貴!」
「いや…マジでもう限界…!!」
「そんな…オレ嫌だよ兄貴がいなくなるの!!」
「僕だって愛と会えなくなるの辛いよ!?でも…これ以上は…無理っ…かも…!!」
その瞬間、限界を迎えた兄貴の体が宙に浮く。
そしてそのまま空の彼方へと消えていってしまった。
「愛ーーーーーっ!!!!!」
「兄貴ーーーーーーっ!!!!!!」
そして、男性は居なくなった。
兄貴も、その場に居合わせなかったけど、父親も。
一人で歩いている所を後にGGG.sのリーダーとなる人に拾われた。
それから数日後、GGG.sと言う組織が生まれ、愛は兄貴と父親を助ける為に加入し、特殊な銃を受け取った。
弾は89発しかないし、リロードも出来ないとか言うクソ仕様だが、その分弾1発の威力は凄まじかった。
弾の凄まじさを知ったのは、初めて化け物と対峙して倒した時だった。
「うわぁ…こんなのとオレが戦うってのかよ…!」
「ウゥ…ワンワン!」
「何かイヌみてえだなコイツ…」
「ウゥワゥウ!!」
犬のような化け物は愛に向かって走り出した。
愛は驚いて銃の引き金を引いた。
弾は化け物に命中し、そのまま倒れた。
「…す、すげえ。一撃かよ…!」
「ウゥ…」
「コイツまだ生きてんのか…!」
「アァ…アィイ…」
「こっ、コイツ…何でオレの名前を…!」
化け物が何故か自分の名前を知っている。
それはとても気持ちの悪い事だった。
愛は化け物に対して銃を撃った。
「ボォ…ボォクゥワァ…ココダァ…アィイ…」
「…?!」
今、確かに聞こえた。
“僕はここだ、愛”と。
「まさか…兄貴…!?」
「アィイ…ダァズゲデェ…」
化け物はそこで力尽きた。
化け物が連れていかれた男性だということは女神姉妹がまた来た時に言われたのでわかってはいた。
でも…確率が低すぎる。
よりによって…。
「…何でオレが最初に殺したのが兄貴なんだよおおおおおお!!!!!!」
愛はその場に泣き崩れた。
昔から大好きだった兄貴を。
あの日必ず助けると誓った兄貴を。
今、たった今。
この手で…殺した。
初めて…虫以外の生き物を殺した。
「うわぁぁぁぁァアアア!!!!!!」
どうして?
もっと他に…連れていかれた男は居たはずだ。
多分…数億は居たはずなのに。
その中のたった一人を殺した。
その一人がたまたま兄貴だった。
「何で…何でだよっ…何で…何で兄貴なんだよっ…兄貴だけは…例え化け物になったとしても…殺したくなかった…なのに…なのにっ!!!!!!」
ここで、初めて弾の凄まじさを知った。
それと同時に、“強すぎる力”を恨んだ。
「…ま、オメーと違ってオレは弱くはなかったけど、強いのも…時に酷だぞ…。」
「…そんな過去が…お前にあったとは。」
「ま、そーゆー訳だ。死んだ方がマシなんて言うモンじゃねー。…残されたヤツの気持ち考えろ。」
「…姉ちゃんも居ねえ、親も居ねえ、俺が死んでも…残されるヤツなんていねえよ。」
「あー言えばこー言うだなーオメー!男だろーが!」
「これに関しては男とか女とか関係ねえだろ!」
どちらかというと残されたヤツは聖刃なのだが、と言いたい気持ちが凄かったが、愛には言わなかった。
それと同時に、自身の決意を思い出した。
「…ま、似たモン同士仲良くやっていこーぜ。」
「あぁ、それに俺は決めてたしな。」
「あ?何を?」
「姉ちゃんの形見…この銃でメドゥーサをぶっ殺す。それが俺の決意。俺のやるべき事!」
「…なんだ、オメーわかってんじゃねえか。」
決意を改めたと同時に放送が流れた。
『報告する。メドゥーサによって石化された人間は死んではいない、生きている。繰り返す。メドゥーサによって石化された人間は死んではいない、生きている。』
「…え?」
「良かったな、聖刃。音色先輩、生きてるってよ。てかいつの間に調査してたのかよ。」
とりあえず石化された人間は生きている。
それがわかっただけでも良い。
だって、それは姉ちゃんが生きている…死んでいないという事だから。