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カーテンコール


「アラン……?」


私が声をかける。

だが床に伏せている人物を見て

目を見開いた。


「レジーナ大臣!

それにカロライナ王女様!」


衛兵が駆けつけるも

レジーナ大臣は既に息絶えていた。


「そんな……!」


私が震えた声で言うと

衛兵がわなわなと震えているのがわかる。


「カロライナ王女様……、

まさかこのお薬で……!」


「それは……?」


「王家に伝わる毒物です。

何かあった時に国王陛下が

持たせていたのを知っております」


衛兵が持っているネックレスには

カロライナジャスミン、

と書かれた小瓶がついていた。


「どうして……」


「僕が魔物を倒して……、

でも、それも、レジーナ大臣だった」


アランが絶望した表情で言うと

膝から崩れ落ちた。


「まさか、国王陛下の時と同じ……?」


「そうさ。

魔物がカロライナを襲って

いるのを見て、僕が倒した。

でも、それはレジーナ大臣だった。


カロライナは、

レジーナ大臣に助けられていて

後は衛兵たちを待っていただけだったって、

カロライナが言っていた。


それなのに、僕がレジーナ大臣を

また間違って殺めてしまって……。


その後、どうせ殺されるならって、

カロライナは、その小瓶の液体を飲んだんだ」


アランがぽつり、ぽつりと話していく。

私は胸が締め付けられるくらいに苦しかった。

もしもそれが自分の立場だったのなら、

どれだけ苦しいのだろう。


「そんな話を俺たちが信じると!?

貴様、よくも!!」


衛兵がサーベルを振りかざし、

アランに向かって行く。


「やめて!!

今苦しいのは皆同じなんだよ!?」


私が衛兵のサーベルを自分のサーベルで受け止める。


「そこを退け!」


「嫌よ!」


ギリギリとサーベルの金属音が鳴り、

ズルズルと衛兵がその場に崩れた。


「どうしてこんなことに

なってしまったんだ。


僕はただ、カロライナと

一緒にいたかっただけなのに。

君を幸せにしたかっただけなのに……。

もう、それも叶わないなら……」


ザクッ、と音がした。

キィイイイ!とブアルの鳴く声に

私がアランの方を見ると

アランは自分のサーベルで

自分の胸を貫いていた。


「アラン……!!!!」


私が駆け寄り、アランを抱きとめる。

ブアルもアランの顔を覗き込む。


「やだ!死んだらダメ!!」


「ごめんよ…。

最期まで、君に迷惑を、

かけてしまったね……」


「そんなこといいの!

そんなことより止血を!」


「いいんだ、もう……。

僕も、もうすぐ、

カロライナのところに……」


アランはその言葉を最期に

息を引き取り、その身体は冷たくなって、

動かなくなった。


「いや、いやだよ……アラン!」


ボロボロと目から涙が止まらない。

どうして。

アランの目の前に最期まで

いたのは私なのに、

最期に名前を呼ぶのは

王女なのだろう。

何故、私ではないのだろう。

アランはどうして

嫌われてしまった王女を

愛してしまったのだろう。


「変えたいかい?

この結末を……。

なら、祈るといいさ。

その資格が君にはある」


ペンダントの宝石からジャハルが

顔を覗かせる。


「私は、私は……!

この結末を変えたい!

皆が幸せである未来が欲しい!」


「ふふ……。

いいよ。全て変えよう。

他でもない、君が想う

皆の為にね。


でもいいのかい?

今回のはかなり大掛かりな願いだ。

うっかり君の生命を奪いかねないよ」


ジャハルが厭らしく笑う。


「うっかり、でしょ。

私はジャハルを信じるよ」


私は涙を拭ってペンダントを握りしめた。

さあ、もう一度。

もう一度、やり直すんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チリチリと身を焦がす太陽が今日も眩しい。

気温も手伝ってか喉が異様に乾くのは

この砂漠の都市、アルリアではよくあることだ。


僕、アランはこの砂漠の都市、アルリアで

次期国王として業務をしている。

隣にはカロライナという

僕の愛した女性。


この都市は守護神シェラに守られていて

今日も幸せで平和で穏やかだ。


「アラン、どこにいるの?」


カロライナの声がする。


「ああ、今行くよ」


僕はカロライナの声のする方へ向かう。

首にぶら下げた、しずく型の

ペンダントがキラリと光った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「死ぬのは怖くないのかい?」


「怖いよ」


「ならどうしてこうしたの?」


「私がそうしたかったから」


「ふぅん?僕はてっきり

自分の恋を叶えるものだとばかり思っていたよ」


「……いいの。

だって彼は私を愛してはいないもの」


「ふふ、それを叶えるのが

僕の役割だというのにね。


でもまさか君がこの世界の

やり直しと魔物の消滅を祈るなんて

思ってなかったよ」


「仕方ないじゃない。

私は叶わぬ恋を叶えるより、

アルリアを愛してしまったのだから」


「ふふ、守護神にもなったんだから

それでいいのかもね」


「だからこそこんな風に

なってしまったのでしょう?」


「それもそうだね」


高い高い空高くでアルリアを見下ろす。

隣にはジャハル。

王宮で暮らすアランや

町でショーを楽しむチェルシー団や

町の人たちや衛兵を眺める。


「それじゃあ僕はそろそろ

別のご主人様を探すよ。


君の最期は見届けたからね」


ジャハルはそう言うと何処かへ消えて行った。

これで本当に1人になってしまった。

けれどそれでいい。

これでようやく……。


「うっ、……ふ、ぇ……ぐ……っ……」


ボロボロと目から涙を流し、

目元が熱くなるのを感じる。

ようやく、泣ける。

アランに愛されたかった。

何処の、誰よりも。

貴方に愛されたかった。

愛してるいるからこそ。

幸せになって欲しくてこうしたのに。

どうして涙が止まらないのだろう。

もう誰も、私の願いを叶えてはくれない。




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