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英雄は愛しい女神に跪く  作者: 奈口 結
ルマニアン王国編
9/23

ゴブリンの殲滅



「ここか……にしても多いな」


「ホントだね」


俺の存在隠蔽のスキルで完全に気配を絶っているため、ゴブリン達は俺達の存在に気づかない。


俺の存在隠蔽は、触れていれば他の人間にも同じ効果を与えることができる。なので、俺に触れている優理も全く感知できない状態だ。


「雑魚は俺が魔法で殲滅だな」


「森は私が治す(戻す)から好きに暴れていいよ?」


「……よく分かったな」


「ふふふっ、十夜の事ならね!」


最近暴れたりないと思っていた事に気がついていたらしい。


「じゃ、いってくる」


「いってらっしゃい」


俺はゴブリンの大群の中へと突っ込んだ。


「まずは数だな……爆炎(フレア)


中級炎系広域殲滅魔法“爆炎(フレア)”。本来詠唱が必要で、普通の魔導師ならそこそこ魔力を食う魔法だ。


しかし、魔導の極みを持つ俺にとっては無詠唱も、魔力も問題ない。それどころか、魔法攻撃力は高いので中級レベルの魔法が上級、王級レベルになってしまう。


「500は逝ったか」


「十夜ー!後1235だよー」


「おう」


残りを殲滅するため紅黒を抜いた。


身体強化を最大限に使う。元々の才能もあって、神速で繰り出される攻撃に、最早ゴブリン達は的でしかなかった。


ゴブリンもホブゴブリンもゴブリンライダーも向かってくるものを斬り伏せる。辺りはすでに血の海だ。


「もっとこいよォ!」


「あ~、十夜テンション上がってるなぁ」


10分もしないうちにほとんどのゴブリンを殲滅し終えていた。


すると、洞窟の奥から地響きと共に、ゴブリンとは比べ物にならない巨体の魔物が出てきた。


「変異種……いや、オーガか」


「ニンゲン!ヨクモッ!コロスゥ!」


オーガは怒りにかられて襲いかかってきた。


大きな鉈のような剣を振り回す。正確性はともかく、力はなかなかのものだ。


「おい、木偶の坊!」


「シネッ!」


「お前には冥土の土産に見せてやる。─燃えろ紅黒!」


紅黒に魔力を注ぐと、黒い刀は紅く輝き、炎をあげる。魔力を込めれば込めるほど、刃先の炎は激しくなる。


紅黒を造るときに使った鉱石は、魔力伝導率が高く親和性も高いミスリルと、魔吸石という魔力を吸収して溜め込む性質を持つ石を使った。




「簡単に死ぬんじゃねぇぞ」


刀を構えて、俺は刀を天に向かって振り抜いた。


「──天斬(てんざん)


オーガはあっけなく両断された。その後ろにあった()と共に。


「あー!もぉ!やりすぎだよ十夜!」


「悪い悪い」


真っ二つに割れた山とオーガ。切り口からは次第に炎が燃え上がる。


「しょうがないなぁ…ウォーター!と大地操作(クリエイトアース)!」


優理はウォーターの魔法で俺の炎を鎮静化し、大地操作(クリエイトアース)で真っ二つに割れた山を元通りに戻した。


山をまるごと一つ操作する優理の技量は流石だ。


「これでよし!」


「ありがとな、優理」


「いーえ、と言うか…派手にやっちゃったよねー」


「……悪い。まぁ、お前が居てくれるから無茶できるんだけどな」


「…………バカ」


優理は恥ずかしそうに頬を赤く染めて小さく呟いた。


何故だ。本当の事しか言ってないのに。


「ゴブリンの素材になるのってあったか?」


「確かほとんどのゴブリンには取れる素材は無いけど、ホブ以上は魔石を持ってるかもってあったよ」


「魔石か…」


「魔石は魔道具の動力にもなるし、おっきいのだと高額で買い取ってくれるんだって」


「なるほどな」


俺も創造スキルを持っていて、魔石を使って、自分で魔道具や魔法武器など造ったりするので、よくわかる。


しかし、俺達は終焉の深森(ゼロ・フォレスト)で狩った魔物の魔石を持っている。これは、ゴブリンの魔石とは比べ物にならないくらい大きくて強力なやつだ。いくつか売ったら一財産だろう。


しかし、あまり売るつもりはない。おそらく売っても金にはなるが、冒険者成り立ての俺達には余計な騒動を呼び込むことにしかならない。


俺達は倒したホブゴブリンから魔石を採取した。


数が数で、殲滅より疲れた。


「小さい魔石が200近くあって、後はゴブリンキングとオーガの魔石だな」


「これはそこそこ大きいね!」


魔石の他に、オーガの方は牙や皮膚が素材になるので、死体ごとまとめてアイテムバッグにつめこんだ。


俺達は魔石を回収したのち、ゴブリン達の死体をまとめて燃やして、村に戻った。








─────────────────────




「村長代理、依頼終了だ」


「冒険者様!ありがとうございます!こんなに早く終わるなんてすごいですね!」


「それなりに数はいたが、討ち漏らしなく殲滅した。暫くは安全だろう」


「本当になんとお礼を言っていいか…!」


村の人間に見送られ、俺達はカザリアに戻ることにした。行って帰って半日もかからなかった。


とりあえず移動手段が今のところ自力で走るしかないので、しょうがなく乗り合い馬車に乗ることにした。次の依頼までに移動手段考えておくか…。


馬車に揺られながらギルドカードを見ていた。カードには今まで空白だった右下の欄に、討伐したモンスターの名前や数が確かに正確に記載されていた。


「すごいね、本当に記録されてるんだ」


「あぁ、今回は俺が殺っちまったから、次の依頼は優理に任せる」


「うん!」


カザリアについてすぐに、ギルドへ向かった。丁度夕方頃なので、朝に出ていった冒険者達が戻ってきていた。ギルド内に沢山居て、情報交換していたり、ギルドの酒場で飲み食いしている。


昼の閑古鳥が鳴いていたとは思えないくらいの賑やかなギルドになっていた。



「お帰りなさいませ。トーヤ様、ユーリ様」


「あぁ、依頼の達成報告だ。確認してくれ」


「……え?た、達成…ですか?えっと…まだ半日も経っていませんが…」


「達成だ」


「ぎ、ギルドカードを拝見させていただきます」


俺は素直に自分のギルドカードを提示した。


「ゴブリンにホブゴブリン……1768!?しかもオーガまで倒してるじゃないですか!」


「ん?あぁ、思ったより雑魚かったな」


俺の返答に、受付嬢は口を開けて驚愕したように俺の顔を見た。


まぁ確かに最初の依頼で、1800匹近くのゴブリンを半日もかからず討伐して戻ってくる駆け出し冒険者はいない…かもしれない。


悪目立ちしたかもな。


「お、オーガは討伐推奨最低ランクCですよ。駆け出し冒険者の獲物じゃないです!」


「そうか?」


「はぁ…。とりあえず、依頼の達成ご苦労様です。こちらが報酬です。」


報酬は銀貨8枚。ギルドへの依頼料を考えると、あの小さい村からかき集めたお金だろう。


「今回の功績を鑑みて、トーヤ様はあと採取依頼を何度かこなしていただければ、ランクアップとなります。」


「採取依頼か…」


「常時依頼には、薬やポーションの材料になる薬草の採取がありますよ。薬草の資料などは資料室で無料で調べることができます」


「わかった」


報告を終えて次に素材を売るため、買取カウンターに持っていった。


「あら、トーヤ様とユーリ様。買い取りですか?」


「あぁ、魔石を買い取ってくれ」


じゃらじゃらと音をたててカウンターに置かれた大量の魔石に、受付嬢は目を見張った。


「こ、こんなに……?!」


「あぁ、ゴブリンの巣を殲滅したんだ。」


「ってことは……ホブゴブリンが200匹以上居たってことですか?!」


「カード確認するか?」


「は、はい!ご提示をお願いします」


買取カウンターの受付嬢は、俺のギルドカードを見て、また驚愕の顔でカードと俺の顔を交互に何度も見比べた。


何とか冷静さを取り戻して、査定をしに行った。


「査定が終わりました。こちらの小さな魔石が1つ2,000~3,000ニアンで合計368,000ニアン。ゴブリンキングの魔石が150,000ニアン。オーガの素材が合計で670,000ニアン。オーガの魔石が240,000ニアン。締めて1,428,000ニアンです。ご確認ください。」


一日の稼ぎで100万を超えた。さすがに驚いた。思ったよりオーガの素材が高い。


受付嬢に聞くと、武器や防具の素材になる魔物は総じて討伐が難しく、武器や防具は多く求められるので、高額で取引されるらしい。


初めて金貨が出た。


「確かに。じゃぁ、またな」


「はい。またのお越しをお待ちしております」




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