15 まずはたがいに まえこうじょう
こてんぐいわの ばけがらす
おうまがときじゃと カァとなき
つるべおとしに ひがおちました
ここがしょうぶの しどころじゃ
おいなりさんの あとつぎと
おかっぱねえさん たちならび
さんどうみすえ ときをまつ
ふたときみときも すぎたろか
とっぷりくれた まよなかに
きしりとかすかな おとがして
はたととだえた むしのこえ
またたくまもなく いてついた
まふゆのごとき れいきがみちる
「ごはんもたべずに じゅんびして
ゆうがたッから まってたけれど
おばけのしゅっきん じかんなら
よなかとそうばが きまってる
じょうせきどおりの うしみつどきに
おいでなすった ようだわねェ」
あきともおもえぬ さむさのなかに
こぼれるといきも ましろにこおる
やにわにわきたつ くろくもに
つきとほしとが かくされて
いっすんさきも しれぬやみ
みすえるさんどう そのさきに
おもくるしいほど こごつやみ
あたりににじむは くされたといき
はいよるやみを ねめつけて
おいなりさんの あとつぎは
みやつぐちから とりだした
ちいさなじゅふを かたてにとって
ぬくてもみせずに やみをきる
ふところにある じゅふのたば
京のいなりの とうさんが
いちまいいちまい いのりをこめた
れいげんあらたか まほうのおふだ
いしあるごとくに そらにまう
ななつのじゅふは よるをさき
とりいのまえに れつをなす
はしからじゅんに くるりとまわり
へんじたきつねび あたりをてらす
くらいもりから こんばんは
かげはからすの ぬればいろ
まっくろくろな おおおばけ
きつねびかがりび てらされた
しろきおもての びしょうねん
おいなりさんの あとつぎを
そのめにうつして よろこびました
「あらまぁなんて きれいな子
きらきらひかって すてきだわ
この子もまとめて たべたなら
おなかいっぱい なるかしら」
「なんやあねさん とおくから
きはったらしいて ごくろぉさん
そないならおなかも すいたやろ
ぶぶづけいっぱい おあがりやす
なんならほうきも たてとくわ」
おいなりさんの あとつぎさん
すずしきすがたと そのかおで
おくちをひらけば わるくちまおう
うしろにひかえた おかっぱさん
ひたいにてをあて くびをふる
まったくだれに にたのやら
それでもここは ははおやの
ゆずれぬせんでは あるもので
「ちょいとききずて ならないねえ
だれとだれとを くらうって?
どこのだれだか しらないが
おいっこともども ウチの子に
こなかけようたぁ まんねんはやい!」
たんかをきった おかっぱさん
すぐさまりょうてで ふりかざす
ねんきのいった ひのきのぼう
どうにいったる そのかまえ
「オバさんごときが わらわせる
かわいいかわいい 男の子
ぺろりとたべて あげるから
なんにもできずに みてるといいわ」
まずはくちから こてしらべ
きったはったの そのまえに
おんなふたりは ことばでなぐる
いやみわるくち とばしあい
あいてのすきを みはからい
どちらがさきに てをだすか
にらみあいつつ まあいをはかる
がっこうでは せいせきで なぐりあう らしいぞ




