10 はじめてむすんだ だいじな”ごえん”
「げき(巫覡)」というのは
「おとこのひとがやる、みこさん(巫女さん)」のことです
「あたらし神よ わかき神
むりをさせたの すまなんだ
われがそちらへ いきやろう
ちいさき体で ようきたな」
ふかくひびいた やさしいこえの
おおきなりっぱな 神様は
ふわりとまいおり そのゆびで
ちっちゃなちっちゃな 神様の
じゃまするよわきを ざんばらり
にのしのやーの じゅうとろく
こまかくちぎって なげすてました
ざわざわあたまで うずまいた
うるさいこえも なくなりました
やさしいひかりに つつまれて
てあしのきずも うそのよう
みるみるきれいに なおります
おそばでみあげる 神様は
あまりにおおきく ごりっぱで
ちっちゃなちっちゃな 神様は
おそれおおくて ことばもでません
「これこれあたらし ちさき神
かんなんしんくを のりこえて
われのもとまで 来やったろう
なんぞいいたき ことがあろ?」
「そうですそうです おねがいが
おねがいしたくて ここまできたの」
おそれをはらい りすの子は
こころをこめて たのみます
「ぼくらの島の ひがしの村に
こわいおばけが やってきて
だいじなだいじな 村の子を
くさいにおいで ぐるぐるまいて
ほねまで食べよと ねらってる」
てをふり おをふり はなします
「じいちゃん神様 おでかけで
島にはちっちゃな 神様ばかり
ぜんぶの神様 あつめても
こわいおばけに かなわない」
「おおきな神様 おねがいします
島をたすけて くださいな
村の子たすけて くださいな」
「あたらし神よ ちさき神
そなたのゆうき しかとみた
いっさいがっさい このわれが
悪しきをはろうてやるほどに」
「しからばほうれ このわれに
えにし ひとすじ むすぶがよいぞ」
ちっちゃなちっちゃな 神様は
だいじにかかえた “えん”のいと
とびきりかがやく とっときの
いとをてにもち おおよわり
おおきなりっぱな ふるき神
あまかけわたる おおぎつね
それはあまりに ごりっぱすぎて
どこへむすべば よいのやら
ちっちゃなちっちゃな そのゆびで
きらきらひかる “えん”のいと
おそでのはしが いいかしら
おぐしのさきが いいかしら
まよえるちっちゃな 神様に
きつねの神様 ほほえんで
りっぱなしっぽを ぱたりとよせます
ちっちゃなちっちゃな 神様は
ちっちゃなちっちゃな りすのゆび
じょうずにむすぶは できないけれど
おおきなきつねの 神様の
りっぱなりっぱな しっぽのさきへ
いっしょけんめい むすびます
きらきらひかる “えん”のいと
からまぬように とどくよに
「かさねてすまぬが ちさき神
われはこのちを まもるもの
このみで島まで わたりえぬ
かわりにわれの つかいとげきと
まきょうもたせて やるほどに」
うかさま ごめんなさい
きつねじゃないとは おもうのですが
もふもふしっぽのみりょくには
どうにもこうにも あらがいがたく。




