メガネ警官の暴走救助:third
「で、どうして事件の真っ最中なのに、署まで帰ってきたの?」
「うぐっ」
目の前に座っている、大柄で毛むくじゃらの魔物は痛いところをつく。
彼は新田の同期であり、そして親友であった。
名をサリバ-ル・ランドゲル・フェイア。
そう、かの有名な作家であり政治家でもある、キュルバール・ランドゲル・クレストの実の息子、その次男である。
しかし、親が国を変えた男であるのに対し、彼はとても気が弱く、親と正反対であった。
そのくせして、図体はでかくなるものだから、新設のこの課に無理やり入れられるという始末である。
そこからさらに、日々上司にいじめられているのだから、とても可哀そうな……。
「そんなに言うと、桐上巡査部長に怒られちゃうよ。あと、君と違って僕はちゃんとやってるからね」
「まさか、怒られないわけないだろ」
「怒られないよ」
……嘘だろ?まさか、あの鬼みたいな女が……。
「そんなに言うと、余計怒られるのに……あれ、そういえば桐上巡査部長の姿が見えないけど」
今頃気が付いた彼が、疑問を投げかける。
「おいおい、サリー。もっと早く気が付くべきだぜ。俺なんていつも、視界のどこかで追ってるよ」
「それって、ずっとおびえてるだけだよね?」
「何か気になることがあって、一人で調べものだってサ」
これ以上何か言われるのが怖くて、とっとと話を切り上げた。そのはずだったのだが。
「なんで、上司は働いてるのに帰ってきちゃってるの?」
「うぐぐっ」
それでもなお、心にグサグサ刺さる言葉を言えるのは、もはや才能のそれだろうか。
「さ、サリー。これでも俺は頑張ったんだぜ」
そう、俺も俺なりに頑張ったんだ。
ただし、成果は一切なかったが。
聞き込みをしても、同じ情報しか得られず、ましてや、容疑者となるような魔力を持つ魔物もいるわけでもなく。自暴自棄になり、いっそのこと穴を開けてやると思っても、できる筈もなく。
何か周辺に手がかりがないかと走り回っても、そんなものなどそこらへんに転がってるものではなかった。桐上巡査部長に報告しようともどこにもいなくて、周りの警官に聞いたところ。
「ああ、巡査部長なら一人でどこか行っちゃったよ」
「……心中お察しするよ」
サリーが憐れみを含んだ目で、俺を見る。
できればだが、そんな目で見ないでほしいと思うのであった。
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「サリーは、この事件についてどう思う?」
すでに日は落ち、橙色の世界を暗く染めていく。
すべてを話した後で……彼に問いかけた。
彼もまた、理解ができない風かと思ったが、しかし、意外な答えが返ってきたのだった。
「?まだわかってないの?」
そう、サリバールは答えた。
「おいおいおい、冗談はよしてくれ」
「冗談じゃ、ないよ」
サリバールは、真剣な様子で言う。
「だって簡単でしょ?安良汰言ってたじゃん、魅力的な裏路地、って」
「?そんなこと言ったか」
「言ってたよ。でも、それって」
どこか、おかしいよね。
そう、彼は言った。
「それも、そうだ」
そう、普通の感性では。
事件現場を魅力的とは思わない。
そうじゃなくても……裏路地を見たとき真っ先に出た感想が、魅力的だというのは変だろう。
「向こうの世界に、冒険者っていう職業の人たちがいることは知ってるよね」
「ああ」
「彼らが失踪する理由の一つに……代表的なものに、とある魔物が関わってくることが……おっと、わかったの?」
気が付くと、立ちあがっていた。
サリバールを見向きもせずに、外へと向かう、歩みを進める。
「ああ、わかった……ちょっと行ってくるよ」
「いってらっしゃい。あ、チップと錠は忘れないようにね」
その、送迎の言葉に対し、軽く手を振る。
腰には、片方しかないこと以外、なんの変哲もない……そのように見える、やけに洗練されたデザインの手錠があった。
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さて、ネタ晴らしとしよう。
と、いっても皆さんももう分かっていることだろうが、整理もかねて、念のため。
向こうの世界には、異世界には、冒険者と呼ばれる人たちがいる。
その一行に勇者の素質がある者がいれば、勇者一団と呼んだりするのだが、今はそれは置いておく。
彼らが、旅をする理由は何か?
名声を得るため?あるいは、かつてないほどのスリルを体験するため?
それもあるだろう。
ただし、それだけではない。
冒険者を職業にしてるということは、つまり……富を得るために、と答える者が最も多いだろう。
稼ぐ方法はいくつかある。
魔物を倒す、人々の依頼を聞く……そして。
宝箱を開ける。
宝箱。その響きは、人を魅了してやまない。そう、魅力があるのだ。
しかし、空の宝箱は中身を見なくても、魅力的には思いにくい。
中身の入った宝箱は、その金銀財宝がフェロモンに近い何かを出しているとの説があるのだが……それに近いものを出す、魔物がいる。
俺が裏路地を魅力的に感じたように、そう思わせる魔物がいるのだ。
皆さんご存知、ある意味では最強最悪の魔物。
冒険者の方々なら、最も警戒しなければいけない魔物。
おそらくだが、あの服はフェイクだろう。あるいは、愉快犯的な行動か。
少なくとも、あの行動に意味はない。あるとすれば、気をそらすため、か。
その魔物は、正体がばれた場合の正面戦闘は弱い。
宝箱に擬態する彼らが最も避けなければいけないものだ。
そう、今回の犯人は。
『ミミック』だ。
今回はここまで
むっちゃおそくなっちゃったから頑張って投稿しましゅ………………




