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魔導警察ゴーレム  作者: 恵乃氏
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メガネ警官の暴走救助:First

 十年前、世界が変わった。

 空に大穴から、異世界の住人がなだれ込んだのだ。

 それは、王国軍と呼ばれる人間たちだけでなく、魔王軍……魔物の軍もこちらへ来ることになる。

 確実に戦争状態となるだろう、と思われ、案の定、戦闘となったのだが。

 たったの二週間で終結するとは、誰も考えられられなかっただろう。


 いや、彼らは。

 異世界の住人達には、当然の結果かもしれなかった。

 彼らは、なんということか、組んで戦争を始めたのだった。

 して、こちらの世界の人類は敗北した。

 終わってみれば……人類の三分の一が死に、前線となった日本は焦土と化す大惨敗である。


 しかし、それは世界の改変の序曲にしか過ぎなかった。

 わずか、本当に微かに残された日本人と、異世界の住人は協定を結び。

 元あった日本を超えるものをを作り出していた。

 異世界から持ち囲まれた魔法と、スキルと呼ばれる不思議な力を持つ人間によって。


 だが、一見平和なこの国も、裏がないわけではない。

 魔法犯罪。

 そう呼称される犯罪が横行することとなる。


 さすがに危機感を覚えた政府は、対抗する法と組織と。

 そして、兵器じみた特殊な勇者の鎧をつくりだした。

 わずか、三年前のことである。


 その組織に所属する、ハイパーエリートのはずの新田安良田は。

 新田安良汰は……。

 愛用のPCの上で爆睡していた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「くかーーっ」

 よだれを垂らした、あまりにも幸せそうな顔がそこにはあった。

 キーボードに横たわる顔と、朝日をみれば、徹夜で作業したことがわかる。

 内容は真っ白であったが。

 そのくせして寝ていられるのだから、たいしたものであろう。


 それだからか、後ろから近づく影に気がつかなかった。

 それは大きく手を振り上げると……新田の後頭部を、思いっきりひっぱたいた。

 パァン、と軽く、しかし重い一撃の音が響く。

 頭がキーボードに押し込まれ、パッと画面が表示されると同時に、解読不能な文字列を生み出した。


 頬に四角い跡をつけた彼の頭が飛び起きた。

「いってぇ!ぼ、暴力反対!警察呼ぶぞ!」

 どこか聞いたことあるようなその声に、その影は答えた。

「その、おまわりさんは私たちだろう」

「む、その声」

 本来であれば、そのような口を利くことができる相手ではないのだが、寝ぼけた頭はふざけることをやめない。

「ほれ、メガネがあれば多少は今の状況がわかるか?」

 そこに差し出された、度の強いメガネをかける。

「あ、ありがと……って、桐上巡査部長ぉ!?」

 そこには、額に血管を浮かべた上司の姿があった。

「おはよう、素晴らしい日だな。お前を二度も殴れるのだから」

「あー!待ってください、今日もお美しいご様子であぁーっ!いったぁっ!」

 またもや、痛快な音が響いたのは、言うまでもない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわぁ、驚くほど白い。これは減俸ものだな」

「あの、それだけは勘弁していただけません?」

 正座をしながら、ゴマをするような手つきをするが、返ってきたのは、凍えるような冷たい目線。

 女の気持ちは分からないというが、激怒していることは火を見るより明らかであった。


 その、女性であるが。

 部下が夜通し作業したはずの……純白と言っても過言ではない画面を、うんざりした様子で眺めていた。

 いや、上の方に少しだけ、指先でつまめる程度のものはあるのだが、彼女の頭は、その事実さえ受け入れることを拒否していた。

「ちなみに聞くが……昨日、何時間、いや何分やったんだ?」

「……さ」

「さ?」

「さんじっぷん、です」

 その、予想通りながらも、書かれた文章の量と合わない数字を聞き、一つ、ため息をついた。


「ど、どうすれば」

「……っと、……ろ」

「はい?」

「とっとと終わらせろと言ってるんだ、この大バカもの!」

「はいぃぃぃ!」


 ある意味で悲鳴に近いその声は、減俸だけでなく、自分の命の危険まで感じたのかもしれないものだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そういえば」

 ようやく、タイピングの音が激しくなってきたところで、彼女は、桐上早希巡査部長は思い出したように言った。


「要件を忘れていた」

 要件と聞いて、その言葉にいい思い出がない新田は背筋を震え上がらせる。

「今度はどんな恐ろしい事を……?」

「なに、大したことではない」

 あくまでも軽い様子で、彼女は言うのである。

 その顔の裏になにがあるのか、考えたくもないが。


 そう、23という若さでありながら、巡査部長までのし上がった彼女にしてみれば、大したことではないのかもしれなかった。

 ただ、巡査にしか過ぎない新田にとっては、そんなことはなく。


「子供二人、大人一人が消える事件が発生した。現場と思われる場所では、魔力反応のあるものがでてきたらしいぞ」

 ばっかもーん、なにが大したことないだ!

 そう叫んだのちに、本日3回目となる小気味よい音が響いた。

今回はここまで

このテンションで続くのか……きっつ

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