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魔導警察ゴーレム  作者: 恵乃氏
19/67

愉快なバディのビル消失:Fifth

ちょっと解説

リグ:繋ぐ

魔法と魔法、物と物をつなげる魔法

 勝敗は、すでに決まっているようなものだった。


「デカブツには、デカブツを……ネグズ・フルム・カレスド、リグ(つなげ)!」

 生成された鉄の棒を、警棒に繋ぎ、完成したのは黒い刃の……ナギナタ。

 それを、呼び出されたゴーレムに向かって投げつけ、見事手に取ったゴーレムは、それをスライムに向けて、構えた。

「この場は託します!」

 そう言って、サファ本人は逃げる。

 逃げる。

「ちょっと、サファ!?」

「真っ直ぐ突っ込むのは、バカのやることです!あれはダミー、二分しか持ちません。圧倒はできても、辛勝もできません!スペランツァを安全な場所に運んで、また戦線に復帰するまで時間が稼げるかどうか……あのビルの間に隠れますよ!」

 建物の間に駆け込んで、その瞬間、空間がぶった斬られる音、巨大な存在が蠢き、突撃する感覚が届く。どうやら、スライムも反撃に出たようだった。


 ビルの間の空間に逃げ込み、スペランツァを壁にもたれかけさせる。

 少し動くだけで、スペランツァは喘いだ。

「ちょっとしんしゃ!もう時間がありません、こっちの手伝いを」

 だが、ひといきつく暇もない。


 ざ、と歩みを止める音がした。


「サファ、後ろ……!」

「後ろ?……わぁっ!」

 鋭い一撃を、サファが腕の装甲受け止めた。

 斬りかかったのは……黒い、鎧。

「生きた鎧……リビングメイル・モーブ!サカキバラとかいうやつ、こんなのまで隠し持ってたんですか……っ!」

 受け止めた腕を無理やり振り下ろす。

 抑えきれなくなった剣が、そのまま地面に振り下ろされ、突き立つ。

 リビングメイル・モーブが大きな隙を晒した。

 それを逃す、あたしたちではない。

「ナクル・リグ・ザン・カレスドッ‼︎」

 剣の生えた拳で、相手の鎧を間を縫って、突き刺す。

 勢い良く引き抜いた次の時には、黒の鎧はチリになって消え失せていた。

 スキルを使い、一撃でチップの位置を貫いたのだ。


 だが、ここで安心できないのがこの世界。

 絶望は簡単にやってくる。


 チリの後ろで、また新しいリビングメイル・モーブが佇んでいた。

 それも、二体。

「……っらぁ!」

 何も考えず、飛びかかる。

 剣の拳を振り下ろし、応戦しようとするが、奴らの一人が剣で受け止め……拳の剣が、へし折れた。

 もう一体が、懐に飛び込んでくる。

 そして……

「しま……ッ!」

 切り上げられた。

 鮮血が、飛び散り、黒い鎧を紅く染める。

「……だぁ!」

 それでも、サファは懸命に反撃した。

 ぶん殴られて、一体が崩れ落ちる。

 同時に、サファも、膝から倒れた。

 まとっていたリビングメイルがほどけるように消え、普段のサファの姿に戻る。

「すぺらん、つぁ」

 まずい、血を流しすぎた。

 あたしとのつながりも弱く……と、思っていたその時。


「ヒール!」


 スペランツァの、声がした。

 そして、魔法も聞こえた。

 次の瞬間、魔力が流れ込み、傷が癒える。

 でも、でもこの魔法は。

「禁忌……全快『ヒール』……」

「使ったことは……内緒」

 スペランツァが口に指を当て、立って言う。

 そう、あそこまで傷ついていたのに、立ち上がっていた。

「……もう一体のリビングメイルは!?」

 焦って、サファも立ち上がる。

 でも、その頃にはもう終わっていた。

 漆黒の馬……人間?

 ちがう、ケンタウロスだ。

 黒いケンタウロス……ケンタウロス・モーブがそこにいて、リビングメイル・モーブを突き刺していた。


「うちにだって……切り札があるの」

 リビングメイル・モーブかチリと化す。

「でも……どうやら」

 再び、いくつかの鎧の音。

 リビングメイル・モーブ。

 サファに対して、願うようにスペランツァは言った。

「うちらはここで……戦ったほうがいいみたい。サファ……あなたにしかお願いができない……スライムを、倒して」

 ……ああ、そうか。

 こいつらは、バディ、なのか。

 再び覚悟を固めたサファが、返す。

「……もちろん!」



『Start livingmail. Open the 3rdworld!』

 ええ、いきましょう。

 それが、真っ直ぐ突っ込むことが、バカなわたしにできること!

『ready……』

「set!」

『GO!model……G O L E M!!』


「行ってきます!」

 いってらっしゃい、と聞こえた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はその頃、サカキバラと戦っていた。

 実力は拮抗、押し、押し返されの繰り返し……!


 ガン!と再び力がぶつかり合う。

「お前が事件の犯人か。お前の目的はなんだッ!」

「そう簡単に……教えるかッ!」

 サカキバラが剣を弾く。

「だが、ヒントは教えてやろう……!」

「なに……?」

 サカキバラの爪を、剣で受け流す。

「俺は、誰かの正義の味方になる。舐め腐ったテメェらとはちがう……なッ!」

 サカキバラが魔力を加速させ、私を振り払う!


 私が大きく下がったのをみて、サカキバラが声を張り上げる。

「テメェにリジェクトが効かないことは、よくわかった。ふん、魔法もろくに使えない未熟者が。その程度だったら、俺には到底及ばない。知れ!俺の一撃の重みを!


 極斬、ザングルーズッ‼︎」


 爪が肥大化し、襲いかかる!


 その一撃は、まさに獲物を刈り取る鎌。

 擦れば、即死。

 だが、到底。

「なにが重みだ……ッ!なにが、正義だ‼︎私の鎧は、民を守る盾。剣は、民に牙剥くものを討つ矛‼︎お前なんぞと、背負ってる重みの格が違う‼︎」


 私には、及ばないッ!


「リセットで保持するのもいい加減疲れた。禁忌を使ったものは、もはや討伐の対象。どれほど痛めつけても、なにも言われん!食らえ‼︎我が全身全霊の一撃を‼︎


 愛を捧ぐ者(レベルアップ)ッッ‼︎」


 巨大な光の剣を切り上げ……次の瞬間には、相手の爪は粉々に砕け散っていた。

「なん、だと」

「オオォオオオオオッッ‼︎」

 その、まま、斬り下ろす!

 サカキバラ目掛けて、叩きつけるっ!

「……っち


 反射、リファイウェール」


 相手に届く、寸前に。

 魔法陣に、止められた。

「この魔法の強みは、もう一撃あることだ」


 衝撃、逆流……!


 手元の剣ごと叩き折られ、元の姿……拳銃へと姿を変える。

「な……」

「期待できると、思ったんだがな。俺に理想とは違ったらしい。だからといって、ここで始末するのも惜しい。ここで退散させてもらう」

「待てっ!」

 引き金に、指をかけるが。

「おっと、これでも撃てるかな……オープン(穴よ、開け)

 サカキバラが、黒を生ませる。

 暗闇の中から取り出したのは、一人の、男だった。

「こいつは、事件を起こした黒幕」

「は?なんだと」

「俺はこいつを手伝っただけだ……撃つなよ、こいつに当たるぞ。さて、時にテメェよ。カイン、という禁忌魔法を知っているか」

「カイン……魔王の名か」

「そう、魔王のカインはここから取られている……が、本家は知らんだろ。見せてやる、目の前でな


 装着、カイン・グラン」


 男の背後に、魔法陣が展開する……!

 その中心に、サカキバラは黒いチップをはめ込んだ。スライムの絵が描かれたチップ。

 スライム・モーブチップ!

「なにを!」

 走り出し、殴りかかるも、また寸前で跳ね返される。

「そこでみてろ」

「っちぃ!」


『ready……』

 魔法陣から、よく聞いた、あの声が。

『GO!……MOOB,reset MOOB!S L I M E‼︎』


 見ず知らずの男の体に、鎧が纏われる……それは、まるで。

「リビングアーマー……!」

「俺の代わりに相手しておけ。いっておくが、手強いぞ」

「知るかそんなもん!逃げるな、このっ!」


 ちょうど、サカキバラが穴の中に入り込もうとしたその時。

「あの日の雪辱、今ここで晴らさせてもらう!」

 スライムの鎧を纏った男が飛び込んできて……。

「邪魔だ、雑魚!」

 見事に吹き飛ばされた。

 鎧も剥がされるおまけ付き。


「逃、げ、るな、サカキバラァァァ!」

 モブのごとく退場したあれを、頭の隅に追いやって、逃げるサカキバラに銃口を向ける。

 だが、引き金を引く頃はもう。

「残念、また会おう、現場でな」

 そこにサカキバラはいなかった。

 残ったのは、リビングメイルもどきを引き剥がした時に手に入れたスライム・モーブチップだけ。


 しばらく手の中を眺めていると、聞き慣れた変身音。

 ゴーレムを纏う音と、駆け出していく音。

 そして、立ち向かわんと飛び上がる音。

 決断は早かった。


「サファ!こいつを使え!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 飛び出していったその時、タイミングよく、置いていったゴーレムが消滅した。

 しかし、消えたゴーレムの手元にはあのナギナタはない。

 スライムに突き立ったまま、そこにあったのだった。


「ナイス、ゴーレム……!しんしゃ、早く終わらせますよ!ナクル・スオラ・カレスド!」

 高く飛び上がる!

 そして、ナギナタを掴め……

「うらっ!」

 ……なかった。

 なにやってんだ。

「だって、こんなこと初めてで……」

 壁を建てろ、それを踏み台にもう一回跳べ!

 多分それがラストチャンスだぞ!

「……!わかりました。ウォル・ガズルゴ!ついでにもう一回、ナクル・スオラ・カレスド!」

 どん!と轟音がして、道のど真ん中から岩の壁がそそり立つ。


 垂直な壁に足を立て、一気に蹴り飛ばした。


 壁が砕け散る感覚、空を切る音、そして、足を引かれる痛み。

 ……痛み?

「……ああっ、ちょっと!」

 サファが空中でつんのめった。


 足に、スライムがまとわりついていたのである。


 宙吊りになった状態で、必死に手を伸ばす。

 が、しかし。

「手、が、とどかない」

 あたしの体を借りて、多少長身であろうと、絶対に埋まることのない空間がそこにある。

 それどころか、足にまとわりついた細いスライムでも、少しずつなら人を飲み込めるらしく、脚を這って進む感覚があった。

「ひっ……しんしゃ、ど、どうすれば」

 まずはスカート抑えたらどうだ?

「そうじゃなくて……っ、この状況を打開する策を」

 それなら大丈夫そうだぞ。

「はい?」

 ほら、早希がなんかぶん投げた。


「……は、いいいいい!?」

 チップが胸元目掛けて飛び込んでくる!

 内臓が飛び出すんじゃないかと思うほどの衝撃を乗り越え、飛んできた方向を見ると、早希が親指を立てていた……。

「……あのゴリラ」

 親指が下を向くのが見えた。

 終わったな、お前。

「……どれだけ地獄耳なんですか……隊長!貰いますよ、これ!」

 そいつの特性は?

「だいたい分かってます!」

 手元のチップの黒が、ポロポロと落ちる。


 そう、それは!

 スライムチップ‼︎


『ready……』

「set!」

『GO!model……S L I M E‼︎』


 瞬間、光に満ちた穴から、鎧が……いや、鎧と呼べるか定かではない。

 流線型の、まるで液体のようなそれ。

 それが、サファを呑み込む……!


 つるん、と拘束を抜け出した。

 サファ自身が、スライムになったようである。


「うらうらうらーっ!」

 スライム・モーブの上を流線型のままサファが滑る。そのままスライム・モーブを踏み台に……

「うらーーっ‼︎」

 ジャンプ!


 地面に着くまでに、人の形が形成される……!

「ふふーん!……スライム・サファ、ヒューマンフォーム、参上‼︎」

「ああ、やっと着たか」

 横に、早希がいた。

「……すごいリビングメイルだな」

「へへ、スライムの割に強そうですよって痛っ!」

 額を指で、弾かれた。

 俗に言う、デコピンである。

「なにするんですか!」

「さっきの借りだ、ゴリラ呼ばわりしやがって……得物は回収したのか」

「もちろん!」

「貸せ」

「え?」

「いいから貸せ


 ……愛を捧ぐ者(レベルアップ)!」


 ザン!

 スライムがまた、真っ二つになる。

「っち、もう一発!」

 ザザン!

 今度は四等分に!


 しかし、それでもスライムは、ゆっくり再生していく……。

 命が何個もあるかのように。

「チップを、何枚も取り込んだみたいだな……よし。私があれを、細切れにして、あの流体の壁を薄くする。サファ、お前が全部、チップを割れ」

「は、はい?」

「お前が、とどめを刺せってことだ……できるな?」

「……もちろん!」

「よーし、リセットで構えてろ……ラァッ!!」

 斬撃音!

 続いて二、三……何百、何千もの、斬撃‼︎



「よーし、私たちもやりますよ!しんしゃ、サポート!」

 おう、と返事をし、地図を展開、スライム・モーブに集中……!

「見えました!さんきゅしんしゃ!拡がりなさい、わたしの腕!」

『reset……S L I M E‼︎』


 サファの腕が、細かく、枝分かれして、広がる!

 何百にも分かれたように見える腕のひとつひとつに、小さな拳が。

「ナクル・カレスドリ、を、のせてっ」

 一撃はたとえ弱くとも、的確に急所をつくサファの拳は、


 一 撃 必 殺 ッ‼︎


「サファ、今だ!」


 瞬いて。

 消滅、再燃。

 穿つ、百閃!


「スライム、流星パーーンチッッ‼︎‼︎」


 砕ける、音。

 放つ流星は。

 百発、百中!



 ……残ったのは、モーブの残骸、ひらめくチリだけ。


「っやっ……たぁ、勝ちまし、た……」

 バタン!


 ぶっ倒れたサファとのつながりが薄くなる。

 どうやら、相当無茶をさせていたらしい。

 前回も、今回も。

 ……労ってやりたいが。


 そんなことを考えているうちに、どんどん意識が薄くなる。


 意識が消える、最後の瞬間。

 早希の、お疲れさま、の声が聞こえた。


 お前も死ぬほど疲れてるくせに。


今回はここまで

すっごい長くなって、投稿までの期間が空きました。

それはさておき、魔法が多くなって私も処理をしきれなくなってきたので、いい加減整理したやつをあげようと思ってます。そのうち、ね。

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