不要になった宝物
「お義母さまは他人でしょ」
その一言がきっかけだった。息子の妻になった女性は私に自覚させてしまったのだ。
彼女の言葉を聞いて自覚した翌日から、私は心のままに行動した。私は区別する。
転機となった日から半月後、息子が自身の妻を伴って家へとやって来た。二人とも何やら喚いている。何で家族じゃない私が結婚して自立した筈の息子の世話をしなければならないのか。私が世話をしたいと思うのは元々、夫だけだというのに。
思った事をオブラートに包み込まずに言えば、愕然とした息子とその嫁。私は明確に区別すると昔から言われていた。そう、私は区別を隠さない事にしたのだ。幼い息子がショックを受けないように隠していたが、私は愛する夫の為には何でも出来る。しかし、それ以外には無理だった。
私は何処かが欠陥しているのだと思う。
不要になった宝物に私は微笑みさえ浮かべなかった。
妻は欠陥している。それでも構わなかった。私を愛していてさえくれれば。
「愛してるわ、あなた」
だから、私は息子を捨ててしまった妻が良い。たとえ妻が欠陥であったとしても、私は妻が愛しい。
宝物である筈の息子さえ必要無い程に。