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愛情が枯れる事を知った
私には愛する夫と娘が居る。それが続いていくのだと思っていた。その瞬間までは。
何時もの一日が始まった筈だった。
冬から春に移り変わり、暖かくなってきた日に私は娘と買物に出掛けていた。夫は出張中で久し振りに娘に新しい服でも買ってあげようと思い、少々離れたデパートに来ていたのだ。それが間違いだったと今でも後悔している。
それでも、枯れてしまった愛情は元に戻らない。
「離婚して下さい」
その一言は軽かった。言う前はもっと重いのだと考えていたのだが、そんな事は無かったのである。とても、軽い。そう・・・私の思いと共に軽くなったのだ。
何故かと問う夫に不倫の証拠を突きつける。夫は勝ち目が無い事を知ると黙って判を押してくれた。
「今までありがとうございました」
他人となった人に礼を言ったのは愛情が枯れる事を教えてくれたからだった。
私には愛する娘が居る。それが続いていくかは分からない。