大本営からの呼び出し
里井と連合艦隊司令長官山本五十六の話し合いは、小一時間に及ぶものだった。里井は自分が持っている異世界関係の知識をすべて山本に話した。
「なるほど・・・もし、この異世界と戦争になった場合、空からの攻撃は魔法によって無理かも知れないな。」と山本は言ったが、
「ですが、射程はそこまでではないかと。まぁ、対空砲みたいなものですよ。」と里井は答えると山本も納得した。
「さて長官、この事はどう発表するんですか?」と里井が聞くと、
「とりあえず大本営には報告しておいた。あとは大本営次第だね。」
と山本は少し残念そうに答えた。自分の口から発表したかったのだろうか。
そんなことを思っていると、
「長官!あ、里井大佐もおられましたか!」とあわただしく司令部のドアを開けて入ってきたのは軍楽長であった。
「先程、呉鎮守府経由で大本営から連絡がありまして、長官と里井大佐に大本営へ出頭するようにとの連絡が入りました!」と山本と里井に告げた。
この時山本、里井の二人は嫌な予感がしたが、二人ともそこまで気にはしなかった。
翌日、山本、里井の二人は大本営へ出頭するために東京へ向かった。
途中呉駅の近くで昼食を取った。
食事を終え、時計を見たが、列車の到着までまだ時間がある。
「よし、まだ時間があるな。里井君、ちょっと付き合ってくれ。」と山本に促され、会計を済ませて山本のあとに続いた。暫く歩くと、「お、やってるな。ここに来たかったんだよ。」と少し嬉しそうな山本長官、その先には和菓子屋があり、暖簾には『天保元年創業』と書いてある。そこで里井は山本が超のつく甘党だったのを思い出した。そんなことを思いながら店の中へ入ると、おぉ!流石老舗、ショーウィンドウの中のものは菓子ではなく、芸術作品のようであった。暫く眺めていると、山本は目当ての菓子を買うため会計をはじめた。店の主人と思われる男性といくらか話したあと、じゃ、また来ますといって店を出ていくようだったので、山本の後に付いていった。呉駅で特急の乗車券を買い、山本とホームへ向かった。