ハワイ奇襲を中止する!
「長官!大変であります!」
南雲が見張りの兵士から謎の島と空飛ぶ生物の飛来の報告を聞いた直後、もう一人の見張りの兵士が飛び込んできた。
「いったいどうした?」南雲がたずねると、
「飛んできた生き物が護衛の駆逐艦を火炎放射による攻撃をしました!」
「なっ・・・」南雲以下その場にいた参謀等が焦るなか、
「現在も駆逐艦は炎上中であります。」兵士がそう続けた。
南雲はすぐ近くの窓に歩み寄った。
そこには艦橋が黒く焼けた護衛の駆逐艦があり、甲板には全身に大火傷をおったもの、力尽きたもの、謎の生物の火炎放射の直撃を受け炭となった水兵達が転がっていた。まだ艦は所々燃えている。近くにいた軍艦が駆逐艦の乗組員の救助と消火活動を行っている。上空には駆逐艦を火炎放射した生物はすでに飛び去った後のようで、それらしきものは認められなかった。
それらを暫く見ていた南雲は
「参謀長、ハワイ奇襲作戦は中止だ。」と近くにいた草鹿参謀長に告げた。「このままハワイへ向かうのは間違いなく危険だ。一旦引き返した方がいいだろう。」と続け、「通信参謀、GF司令部に打電。『ワレ、正体不明ノ生物ヨリ攻撃ヲ受ケ、駆逐艦一隻二甚大ナ被害受ケ、多数ノ死傷者有リ。此ヨリ帰還ル。』以上。」と通信参謀に告げ、これに草鹿も意義はなく、「やむを得んな。」と呟いた。
ところ変わってここは瀬戸内海
大小様々な島に囲まれたここ柱島泊地、連合艦隊旗艦長門の艦内にある司令部にもあの一報が入った。
「長官、ハワイへ向かっていた南雲機動部隊からの緊急電文です!」と暗号電文の取次ぎをしている軍楽隊の隊長が電文を読み上げた。
司令部にいた参謀等の反応は南雲達とさほど変わらなかった。
が、山本五十六連合艦隊司令長官は「そうか・・・軍楽長、南雲機動部隊に返信『直二帰還シ状況ヲ報告セヨ』これで送ってくれ。」と軍楽長に告げ、
「どう報告しようかねぇ」とつぶやくのだった。