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第二十九章

何と言うか。ここに来て変です。

「も、もう我は耐えられない」

 捕虜のフィーナが訴えたのは次の日の早朝だった。

 まだ陽が昇る前。

 久しぶりにセフィ、レクシア、レニア、イートスが揃って冒険に出ようと言う時だった。

 これから朝食だ。

 出発は多少遅くなるだろう。焦ってはいない。

 今日は練習と、出来ればフィーナが居た場所の当たりがつけられればいい。

 女王は差し入れをいたく喜んでくれた。

 酒場で食べ切れなかった料理と葡萄酒だ。

 今日は新店舗で飲み歩くと言っていた。まだ中央部に帰りたくないらしい。

 イートスは自室で魔装を『着装』したばかりだった。

 簡素な宿舎にはテーブルとイス、ベッドがあるだけだ。

 フィーナ用に分厚い布を渡してある。

 そこで眠るのは屈辱的かもしれないが、それほど寝心地は悪くないはずだ。

 冒険者のボロ布よりは。

 その布に座り込むようにして、フィーナは祈るようにイートスを見上げていた。

 いつものメンバーだけではない。フィーナも人質として必要だ。

 こんな調子では延期も考えなくてはならない。

 何より倒れられては困る。

「待遇に不満があるのなら言ってくれ」

 情も移っていた。

 緑の髪。

 切れ長の、深い水のように青い瞳。

 今は潤んでいる。いや泣いている。

「この、首輪を、お願い、何とかして、欲しい」

 全身が震えていた。喋るのもやっと、に見える。

 半分陶酔したような顔だ。

 フィーナは金の首輪を掴んで見せた。

「外すのはまだ早い。魔法を使われては困る」

 いや。レニアの顔が浮かぶ。

 何かやったな。

 今度は時限式か。

 頭の中で殴る。後で本気で殴る。

「……変な機能でもあったか? 我慢しないで言ってくれ。耐えるものでもない」

 捕虜虐待は本意ではない。

 首輪はあくまで詠唱を抑えるためにある。

「ずっと、その、変な刺激が……止まらない」

 言いたい事は分かった。

 吐息が熱い。

「あ、あっ」

 びくん、と震えた。がくがくと全身が震える。

「最後まで、その、イク直前で止まるのだ。狂いそうだ」

 涙が滲んでいた。

 体液らしい染みも床に広がっている。

 まともに喋るのも大変そうだ。

 レニアは頭がどうなってるんだ?

「も、もう、我には耐えられない」

「あのバカが」

 バカ、と言ったのは当たり前だがレニアの事だ。

 首輪を作った所まではいいが余計な機能だらけだろう。

「つまりその」屈辱を堪えるように言った。

「性的な意味だ」

「分った。すぐ対応する。あり得るなあのバカなら」

 ベッドに座った。フィーナの様子を見る。

 身体を震わせている。吐息も荒い。

 熱病などではない。レニアの仕業だ。

「達しそうで達しない。気が狂いそうだ」

「まだ異常な機能は幾らでもあるだろう。レニアに止めさせる」

 大事な人質を狂わせるつもりか?

 部屋を飛び出してレニアの自室をノックする。

「鍵かかってませんよー」

「入る。バカな機能を止めろ、と昨日言ったよな」

 ドアを開けて数歩入った所でレニアを睨む。

「とりあえず服を着ろ」

 裸で寝てんじゃない。

「えー」

 ごろごろした。色々見えた。

「えーじゃない。何か被れ。それから例の首輪の異常な機能を止めろ。全部だ」

「ご主人様の餌にするのにもいいかなって。綺麗な子だし」

 にへっ、と笑った。

「ほどほどに喰えば治るんなら方法を教えろ」

「ここから頭の中読んでると、あ、う、うん。凄いし」

 聞いちゃいねえ。

 裸体をくねらせた。

「あ、あっ、来るっ」

 涎を垂らしている。

 とりあえず殴った。

「だから鉄でぶたないでって」

「うるさい」

 確かに三日ほど快楽を喰ってはいない。代わりに魔力もそれほど消費していない。

 どう補給するかはまた考える。

「捕虜を勝手に食うのは望ましくない。とっとと直せ。あれじゃただの拷問だ」

 渋るレニアにはっきりと告げる。

 命令しないと思ったようには動かない。

 命令しても、だが。

「今日には人質として使うんですよね」

「……彼らの為だ。いつまでも山奥に蟄居できるものでもない。報奨金目当ての連中に狩られるよりはマシだろう」

 いいから早くしろ。

 念じた。

「はーい。詰まんないなぁ。もう少しで奴隷になるのに」

「お前が面白いかどうかで物事を決めるな」

 ごん、と音がするまで手刀を決めた。

 次は頭蓋にヒビ入れるぞこら。

「いったーい」

「早くしろ。お前に付けさせるぞあれを」

 十個くらい。

「あうっ。ま、まあ、それも結構いいかな」

 うっとりするんじゃない。

 服着ろ。

――自室で、「快楽解除!」に続いて十個ばかり機能を解除するレニアを見ていた。

「量産したら変態に売れると思いません?」

 一仕事終えたようにレニアが言う。

 ドヤ顔だったので尻を叩いた。

「ん、あっ。目覚めそうっ」

 やっぱり頭に手刀にした。

「魔法都市に性奴隷制度でもあるのか?」

「そういうの好きな人がいるっていうだけです。レニアとか」

 にやにやしている。

 お前か。

 自分専用にしとけ。

「お前は変態なんだな。よく分かった」

 元々分かってたが。

 まくし立てるレニアは無視して、今日の作戦を再検討する。

 可能な限り森の奥まで進む。

 途中で出会う魔物の全滅は狙わない。先に進むことを優先する。

 人質にフィーナを使わなくてはならないかも知れない。

 現れればフィーナの仲間を各個撃破する。

 目的は「森の王」の情報を引き出すことだ。

 殺すのは目的ではない。

 森を制覇するからには必ず「森の王」とは対決しなければならない。

 早い方がいい。

 森全体を掌握する前に悪意は取り除く。

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