詩花 ある夏の重なる思い出
暑い日射しに焼かれて
思考はどこか朧気で
隣にいるのが誰かを
見失わせる
繋いだ手
暑さで汗ばむ手
同じ温もりで
優しく力強く握る
いつか歩いた道
彼と歩いた並木道
少しでも私が日陰を歩くように
そっとエスコートして
記憶の扉から
溢れてくる
彼との日々
君が語る言葉に
虚ろに
曖昧に
あいのてを入れる
生暖かい風が運ぶ
香りに違和感を覚えて
急速に脳が働きだす
今隣にいるのは
彼じゃなくて
君のことを意識させる
何考えてんだろ
頭を横に振り
君を見上げる
一瞬彼の姿がダブって映る
同じだったから
同じような日
同じ道を
彼と歩いたから
そこかしこに
彼との記憶が
彼との思い出が
転がっているから
ねぇっ
せがむように見上げ
目をそっと閉じる
突然の事に
少し慌てる声
そんなところも似ていて
心の中で
苦笑をこぼした
唇にそっと温もりが触れた瞬間
強く香る君の香り
気づいた
実感した
違うこと
彼のいないこと
口付けてるのは君ということ
そっと涙が流れた
どうしたの、と慌てる君に
何でもない
涙を流しながら
思うままに流しながら
君に笑顔を返す
彼との思い出が
流れていくのを実感しながら
落ちた涙が蒸発するように
消えていく彼に
そっと心の中で告げる
別れの言葉
涙が流れ切って
今隣にいる君に告げる
愛の言葉
君が好き
君が大好き
君は恥ずかしそうに
頬を掻きながら
僕もだよ、と返してくれた
今
記憶が
思い出が
塗り変わったよ
君との思い出に