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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
三章
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近衛宿舎の顔見知り




 マディアンとラロッタは、去って行く騎士らの背を見送りながら、近衛宿舎を出ようと、長い廊下を歩き始める。


「…ローフィス様も、とっくに出陣されていたのね…」

ラロッタの、がっかりした言葉に、マディアンも頷く。


「お会いしたかった?」

ラロッタは頷きながら、沈んだ声で返答した。

「オーガスタス様がとっても忙しいから…隊長のローフィス様も同様。

って思って…新兵のギュンター様をお訪ねしたけれど」


「もう少し遅かったら、ギュンター様にも、お会いできなかったわね………。

でも…」


ラロッタは姉の俯く顔を、見る。

「オーガスタス様が…。

言っても聞かない猛者ばかりだから、いつも余程恐ろしく脅さないと。

って言っていらした意味が、凄く解ったわ………」


ラロッタも、同様俯く。

「私…いつも無表情のギュンター様が…あんなに激しく怒鳴る姿って、初めて見たわ」


二人が同時に、溜息を吐く。


途端、ラロッタが通り過ぎる近衛騎士の一人を見つける。

あちらもこっちを見て、笑顔を浮かべた。


ラロッタは寄って来る騎士に、嬉しげに言葉をかける。

「シェダーズ様!」


挿絵(By みてみん)


シェダーズはラロッタに顔を向け…横の、マディアンを切ない瞳で見た後、気を取り直して囁く。

「今日は…?

補佐殿に会いに?」


マディアンは眉を寄せて囁く。

「すれ違いでしたけど」

「会えるだけいい。

同じ近衛の俺ですら、忙しくすれ違う姿しか、見た事が無いから」


ラロッタは、やっぱり…。

と改めて溜息を、吐き出した。


シェダーズは、近衛宿舎には珍しい、二人の淑女をジロジロ見つめて通り過ぎて行く男らに気づくと、囁く。


「お送りします。

無体な事はされないでしょうが…。

ともかく男、ばかりなので」


言われて、ラロッタも顔上げて周囲を見回したが、マディアンも、こっそり伺ってる男らが彼女らに見返され、慌てて顔背ける姿をあちこちで見た。


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