オーガスタスと喧嘩したい気満々のディンダーデンに真剣に怒鳴るギュンター
間もなく、ギュンターが叩いた扉が開く。
開いた扉から覗く男は、ギュンターと並ぶ程の長身。
広い肩幅の逞しい体格。
けれどその上に乗っている顔は…。
背に届く濃い栗毛のくねる長髪は額にも垂れ、その下の瞳は青く、長い睫けぶる、流し目。
整いきった、それは綺麗な顔立ち。
「まあ…凄く美男」
マディアンが、つい小声で呟く。
ラロッタとディングレーに同時に見つめられ、マディアンは気づいて、頬染め俯く。
扉を開けたディンダーデンはその呟きを聞いて、目前のギュンターで無く、その先の廊下に佇む、美しい淑女マディアンに視線を送る。
彼女を上から下まで見つめ、微笑浮かべ囁く。
「…俺に気があるんなら、断らない」
ギュンターは思い切り、顔を下げた。
途端、ディングレーが吠える。
「オーガスタスの想い人だ!
彼女に手出ししたら奴と、事を構え………」
最後迄言う間無く、突進するギュンターに、ディングレーは口を塞がれ、手で口を覆う決死のギュンターの、表情を見つめる。
ギュンターは髪振って振り向き、ディングレーもが同時に、扉から、のそり。
とその長身を現す、青い流し目のディンダーデンを見る。
「オーガスタスの、想い人…?」
ディンダーデンは言って、くっ!と笑う。
「…つまり俺が彼女を頂けば…。
オーガスタスと、喧嘩出来るな」
咄嗟、ギュンターが喧嘩売る勢いで怒鳴り付ける。
「彼女に手出ししたら!
オーガスタスとやる前に、俺と殴り合いだぞ!!!」
ディンダーデンはすっとぼけてギュンターを、見る。
「…つまり、お前も狙ってんのか?
お前がオーガスタスと殴り合うなら、俺はお前の、次でいい」
ラロッタとマディアンが見ていると、ギュンターは言葉の通じない相手に、腹立ちを堪えるように、目を固く瞑り歯ぎしりし、だが再び目を開き、怒鳴り返す。
「オーガスタスと俺は、殴り合わない!!!
お前の時同様な!!!」
ディンダーデンは、流し目をくべてギュンターを見る。
「お前は彼女を口説かないってのか?」
ギュンターは腹の底から声を出して、怒鳴り付ける。
「お前の気に入ってる女を、俺が口説いた事、あったか?!
オーガスタスの場合だって、例外じゃ無いぞ!!!」
「…………………………………」
長い沈黙の後、ディンダーデンは言った。
「…つまり俺が彼女に迫ったら、オーガスタスに成り代わって俺にお前が、拳向けると?
…そう言ったのか?」
「そうだ!!!」
ラロッタとマディアンは、背後でディングレーが、その言葉の通じない美男の猛者の態度に、俯いて吐息吐くのを聞いた。




