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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
三章
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オーガスタスと喧嘩したい気満々のディンダーデンに真剣に怒鳴るギュンター


 間もなく、ギュンターが叩いた扉が開く。


開いた扉から覗く男は、ギュンターと並ぶ程の長身。

広い肩幅の逞しい体格。

けれどその上に乗っている顔は…。


挿絵(By みてみん)


背に届く濃い栗毛のくねる長髪は額にも垂れ、その下の瞳は青く、長い睫けぶる、流し目。

整いきった、それは綺麗な顔立ち。


「まあ…凄く美男」

マディアンが、つい小声で呟く。


ラロッタとディングレーに同時に見つめられ、マディアンは気づいて、頬染め俯く。


扉を開けたディンダーデンはその呟きを聞いて、目前のギュンターで無く、その先の廊下に佇む、美しい淑女マディアンに視線を送る。


彼女を上から下まで見つめ、微笑浮かべ囁く。

「…俺に気があるんなら、断らない」


ギュンターは思い切り、顔を下げた。

途端、ディングレーが吠える。


「オーガスタスの想い人だ!

彼女に手出ししたら奴と、事を構え………」


最後迄言う間無く、突進するギュンターに、ディングレーは口を塞がれ、手で口を覆う決死のギュンターの、表情を見つめる。


ギュンターは髪振って振り向き、ディングレーもが同時に、扉から、のそり。

とその長身を現す、青い流し目のディンダーデンを見る。


「オーガスタスの、想い人…?」


ディンダーデンは言って、くっ!と笑う。


「…つまり俺が彼女を頂けば…。

オーガスタスと、喧嘩出来るな」


咄嗟、ギュンターが喧嘩売る勢いで怒鳴り付ける。

「彼女に手出ししたら!

オーガスタスとやる前に、俺と殴り合いだぞ!!!」


ディンダーデンはすっとぼけてギュンターを、見る。

「…つまり、お前も狙ってんのか?

お前がオーガスタスと殴り合うなら、俺はお前の、次でいい」


ラロッタとマディアンが見ていると、ギュンターは言葉の通じない相手に、腹立ちを堪えるように、目を固く瞑り歯ぎしりし、だが再び目を開き、怒鳴り返す。


「オーガスタスと俺は、殴り合わない!!!

お前の時同様な!!!」


ディンダーデンは、流し目をくべてギュンターを見る。

「お前は彼女を口説かないってのか?」


ギュンターは腹の底から声を出して、怒鳴り付ける。

「お前の気に入ってる女を、俺が口説いた事、あったか?!

オーガスタスの場合だって、例外じゃ無いぞ!!!」


「…………………………………」


長い沈黙の後、ディンダーデンは言った。

「…つまり俺が彼女に迫ったら、オーガスタスに成り代わって俺にお前が、拳向けると?

…そう言ったのか?」

「そうだ!!!」


ラロッタとマディアンは、背後でディングレーが、その言葉の通じない美男の猛者の態度に、俯いて吐息吐くのを聞いた。



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