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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
三章
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ギュンターへの質問



 ギュンターは二人の淑女を見つめ、態度を和らげて尋ねる。


「…どうした?

オーガスタスとは…会えなかったのか?」


ラロッタが口を開きかけたが、マディアンが言った。

「門で。

騎乗して出かけられる、ほんの数分の間」


ギュンターは気の毒げに、頷く。

「敵が侵攻しようと、道を作りまくってる。

こっちは片っ端から防ぎにかかってる。

オーガスタスはその、総指揮を任されてるから…」


「…お忙しいのね…」

マディアンの言葉に、ギュンターは哀しげに頷く。


突然、ラロッタがマディアンの背後から、会話に割って入る。

「…お聞きしたいのは、エリングレンって人の事なんだけど」


が、ギュンターはその名を聞いた途端、眉間を深く寄せた。

「…エリングレン…?

右将軍直属の、射手の名前だ。

俺は新兵だから、詳しくない」


ラロッタが、ほっ。と吐息吐き、顔を深く下げた。

その残念げな様子を目に、ギュンターが言葉を和らげて尋ねる。


「…何で、聞きたい?

あんたの…想い人か?」


尋ねられたラロッタは、光が零れ落ちそうな雰囲気の、けれど男らしさを漂わせた金髪美貌の男に一瞬、見惚れたが、言葉の内容に憮然。と表情を曇らせた。


「マディアンお姉様の、初恋の相手よ!

門で偶然再会したの!」


「…………………」

ギュンターは少し顔を傾け、沈黙する。

が、顔上げる。

「…つまり現状を知りたい。って事か?

…まだそいつが好きなのか?」


ギュンターに真っ直ぐ見つめられて聞かれ、マディアンはびっくりして目を、見開く。

「…………………」


ラロッタが横で、返答出来ず、固まるマディアンに遠慮がちに囁く。

「あの………。

お姉様…?」


「あ…え…そう…ね。

昔の彼はとても好きだったけれど、今の彼を、私は知らないから」


そして、じっ。と見つめるギュンターに、言葉を足して伝える。

「…オーガスタス様程、恋しくは考えられないわ」


「ヤツに、迫られた?」

ギュンターの直ぐ返す問いに、マディアンは二度(にたび)、びっくりして目を、見開く。


「いいえ。

それは無いけど…突然姿を消して教練に入ってしまったから…」


ラロッタが横から、助け船を出す。

「あちらはお姉様の事、美しい思い出みたいに思ってて、まだ好きみたいだけど。

でもどんな風に人が変わったのか、解らないじゃない?

今はどんな人なのか、周囲に聞けば解ると思って」


それを聞いてギュンターは俯く。

マディアンは、そっ…と囁く。

「同郷の方だから…次に会っても無下には出来ないけれど…人が変わっていて怖い人なら、避けようと思ってますわ」


途端、ギュンターは顔を上げるとにっこり笑う。

「…待ってろ。年上の男なら多分知ってる」


言って、さっ!と扉を開ける。

廊下で部屋に背を向け立っていた、ディングレーが振り向く。


ギュンターは素早く呟く。

「すまん。

もうちょっと時間くれ」


言って、つかつかと部屋を出ると、廊下を挟んだ向かいの部屋の、扉を叩く。

「居るか?!

ディンダーデン!」


ラロッタとマディアンも部屋を出ると、廊下で立って待っている、黒髪の王族、ディングレーを見上げる。


「(流石王族だけあって、威厳溢れ、厳しい雰囲気の騎士だわ…)」

マディアンはそう、思った。

が、隣に立つラロッタは、果敢に尋ねる。


「貴方はご存知じゃ無い?

エリングレンの事」


年若い、気の強そうな(ラロッタ)にそう聞かれ、ディングレーは内心ちょっと怯んだものの、王族の威風を崩さぬまま、呟く。

「…右将軍の専属お抱え射手か?

…俺はギュンターと同年で新兵だから、詳しくない」


ラロッタがまた、がっくり。

と首垂れる。


つい、ディングレーも顔を傾けて、首落とすラロッタを見下ろした。



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