マディアンの答え
マディアンが、俯く。
エリングレンは吐息を吐いた。
そして…顔を、上げる。
「君の付き合ってる左将軍補佐オーガスタスは、普段左将軍の命を伝え、剣を抜かない。
が、一旦戦い始めると、五人を相手に一気に斬り殺す程の、凄まじい戦い振りだ。
そんな…奴が君のように、血生臭い事等一切知らない…優しい女性と…その…付き合ってるってどうしても…思い浮かばなかった」
マディアンは、顔を上げる。
“ああだから…”
オーガスタスはあれ程…自分から私を、遠ざけようとしたんだ………。
マディアンは俯くと、囁きかける。
「私だって…もう、少女じゃないの。
農家のお手伝いに出かけて…幾度も領地外で、盗賊に怪我を負わされた人の手当てもした。
ラロッタが言ったように、お父様や農民と…一緒だったに関わらず、盗賊の襲撃も、受けた事がある…。
殿方が…騎士が。
…戦って人を殺す事がどういう事か、解ってるつもりだわ…!」
エリングレンは目を見開き、そう言うマディアンを、見つめた。
マディアンはエリングレンを見つめ、きっぱりと言った。
「私が知ってる貴方じゃないように…私も。
貴方が知っていた昔の私じゃ、もう無いの…!」
「彼を…愛してるのか?」
そう問うエリングレンの言葉は小声だったけれど…マディアンにも、ラロッタの耳にも、はっきりと聞こえた。
ラロッタは横の…俯く姉を見た。
マディアンは顔を上げると、きっぱりと告げた。
「とても」




