訪問 8
食後酒を、居間で頂く頃、後片付けをしていたエレイスもアンリースも、ラロッタ迄もが、山と積まれた空の皿と、料理が積まれていた空っぽの大皿を、呆然。と見た。
「…私達、女性だけじゃ…六人居ても絶対、この量は食べられないわね」
母の言葉に、娘達は無言で頷く。
アンローラとマディアンは、食後酒を注いで回りながら、それを一気飲みする三人の空いたグラスに再び酒を、注ぎ込む。
マディアンはオーガスタスのグラスに三杯目を注ぎながら、尋ねた。
「…私達は嗜まないけど、父様の来客用のお酒で…結構強い筈ですけれど…。
三杯飲んでも、顔色も変わらないわ。
どれくらい飲んだら、酔われるの?」
オーガスタスは注いでくれた酒をまた、一気に飲み干すと、空いたグラスに注ごうと酒瓶傾けるマディアンの手元へ、グラスを差し出し囁く。
「その日の、体調にもよります。
一杯で、酔っ払ったこともある」
が、直ぐローフィスが言った。
「俺は見た事無い」
ギュンターも続く。
「ひどい刀傷負って出血多量かなんかで、よっぽど体調悪い時だろう?
たった一杯で酔うなんて」
マディアンが吐息吐いて、ローフィスに振り向く。
「ローフィス様にお聞きした方が、確かね」
ローフィスはグラスを口に運びながら頷く。
「大抵、一瓶開けても平気で…酔いつぶそうと思ったら、強いのが五瓶は必要だ」
「そんなに、お強いの?」
マディアンに聞かれ、オーガスタスは顔下げる。
「…近衛の男は大抵、そうですよ」
が、ローフィスが告げる。
「俺は三瓶が限界だ」
ギュンターもぼそり。と呟く。
「俺はせいぜい、四瓶だな…。
この間こいつ(オーガスタス)と五瓶試したが…足元がフラつくんで、もうしない」
アンローラが尋ねる。
「どうして?」
「いつ殴りかかられるか解らないのに、足元フラついてたら、殴り返せないだろう?」
アンローラとマディアンは顔を見合わせ、マディアンが尋ねた。
「そんなにいつも、喧嘩していらっしゃるの?」
ローフィスが、肩竦める。
「彼のような美貌の男だと、女性に受けがいい事を他の男に妬まれ、しょっ中喧嘩を吹っかけられるんですよ」
アンローラとマディアンは、それを聞いて呆然と、その綺羅綺羅しい優美な美貌の、男の顔を凝視した。
オーガスタスが二人の様子に苦笑して、囁く。
「彼の顔がまだ、綺麗なのは、喧嘩がそれだけ強いからだ。
と思って頂いて結構です。
大抵これだけ突出している容姿なら、喧嘩が弱ければ鼻も顎も折られ、崩れてる」
「ああ…!だから…!!!」
マディアンが叫び、アンローラも後を継ぐ。
「ギュンター様のような美貌の騎士は、珍しいのね!!!」
オーガスタスとローフィスが、グラスを片手に、同時に頷いた。




