訪問 5
その時母が、笑顔で室内に駆け込む。
「お食事の仕度が、出来ましたわ!!!」
そして一斉に視線を受けて、戸惑う。
「あの…どうかなさって?」
けれどマディアンが顔を上げ
「もう少しでお手当が終わるから」
と告げ、母はにっこり笑って戸口へ歩き出し、振り向いてオーガスタスに、顔を向けて言った。
「たっぷりご用意致しましたから!
幾らでも食べて頂いて、結構よ!」
オーガスタスはそれを聞いて思わずローフィスに、視線向ける。
そして顔を寄せ、小声で呟く。
「丸一日食べてないと…!
まさか言ってないだろうな?」
ローフィスは肩を竦める。
「背と腹がくっつきそうなんだ。
嘘付いてる余裕も無い」
オーガスタスはローフィスを睨み付けるが、ラロッタとマディアンにくすくすと笑われ顔を、下げた。
手当てが終わり、ぞろぞろと食堂に歩を運ぶ。
途中オーガスタスが、ローフィスへ屈み囁く。
「…今食べたら、作法も忘れてがっつきそうだ…!」
ローフィスはオーガスタスの斜め向こうで一緒に歩く、マディアンに視線向ける。
オーガスタスも気づいて振り向くと、マディアンが本当に、嬉しそうに微笑った。
「幾らでも、がっついて頂いて結構よ?」
オーガスタスがその言葉に呆けていると、ローフィスはマディアンを見つめたままのオーガスタスに耳打ちする。
「素を曝した方が、女性にはウケる」
オーガスタスは視線をローフィスに戻し、抗議した。
「相手は、淑女だぞ?!」
「だからって、他人行儀は彼女を悲しませるだけだ」
マディアンはやっぱり、にこにこと微笑んで
「ローフィス様は女性の心が良く、お分かりね!」
と言う物だから、オーガスタスは彼女を凝視した。
「…野蛮人のように食っちまいそうでも?」
マディアンは目を、見開く。
「見てみたいわ」
オーガスタスは一辺で首を横に振り、そして再びマディアンを、真っ直ぐ見つめ直して言った。
「お勧めしない」
「見てみないと、解らないわ」
だがローフィスがオーガスタスの横でくすくす笑う。
「こいつ…!
がっついて、貴方に嫌われたら。
と心配してる」
振り向くオーガスタスが睨んでも、ローフィスはくすくす笑いを止めなかった。
ラロッタが背後から声高に叫ぶ。
「近所の貧乏な男の子がいっつも、お腹減らしているから良く食事を振る舞うけど、それと同様かしら…?!」
オーガスタスが振り向くと、ラロッタは言葉を続ける。
「皆それを見てるから、貴方がその子と同じでも、驚いたりはしないわ」




