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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
二章
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左将軍ディアヴォロスの約束 1



 近衛に出動がかかり、園遊会でもあちこちでその話題が人々の口に上るさ中、マディアンはようやく痛みと別れを告げ、人々の囁き合うひそひそ声を聞いていた。


挿絵(By みてみん)


「ギュンター様も、出動がかかったそうよ?」

「まだ新兵でいらっしゃるのに?!」


挿絵(By みてみん)


左将軍補佐…オーガスタスの噂はどこからも、聞こえて来ない。

噂では左将軍ディアヴォロスも…自分の部下らを偵察に出したと言われているのに…。


きっと左将軍の命令を伝えに…あのお方は走り回っていらっしゃるのね…。


マディアンは怪我を負った数日間、オーガスタスがずっと付き添ってくれていた夢のように楽しい日々が、遠ざかるのを感じた。


「アシュレイ婦人の夫は、大怪我を負って自宅に運び込まれたそうよ?!」

「けどまだ死人は、出ていないんでしょう…?」


マディアンはその話を聞いて、ぞっ…としたけれど、妹達…エレイスやアンローラが顔を青ざめさせ、震えているのを瞳にし、しゃん!とした気持ちを取り戻して囁く。


「ギュンター様はとても勇敢だと…オーガスタス様がおっしゃっていらしたわ」

「…でも、お怪我をされないとは限らないわ…?」


挿絵(By みてみん)


アンローラの言葉に、エレイスもが俯く。


挿絵(By みてみん)


けれどラロッタだけが


挿絵(By みてみん)


「きっと、格好いいでしょうねぇ…。

髪を(なび)かせて騎乗され…敵に剣を振るオーガスタス様やギュンター様…。

とても猛々(たけだけ)しいんだわ!」

と、頭に思い描いて囁いてる。


しょげていたエレイスとアンローラはそんな脳天気なラロッタに、呆れた視線を向けた。



次の日も何の連絡無く過ぎ…そしてその次の日、ようやくギュンターが顔を出す。


挿絵(By みてみん)


彼の美貌が、はっ!とする程男らしく見え、あれ程心配ばかり口にしていたエレイスとアンローラは、玄関から室内にずかずかと入って来るギュンターに、見惚れて声も出ない。


ギュンターは階段途中に居たマディアンが、転がるように寄り来るのを目にし、微笑む。


「良かった…!

もうすっかり、痛みませんか?」


マディアンは転がりかけてギュンターの腹の衣服にしがみつき、長身の彼を、見上げて尋ねる。

「オーガスタス様は…?!お怪我は?!」


言った途端、顔を下げたギュンターの、自分を見つめる瞳が見開かれ、マディアンは喰い入るように彼を見続ける。


「…あんたがどうしてるか、あいつは気になってて…けど、忙しくてオーガスタスもローフィスも顔出せないから…」


だが居間の戸口で、末っ子のアンリースが叫ぶ。


挿絵(By みてみん)


「噂は、本当なの…?!

ローフィス様の隊が、崖で孤立して敵に取り囲まれてて…オーガスタス様も一緒に、閉じ込められてるって!!!」


マディアンが直ぐ妹に振り向き、叫ぶ。

「どうしてそんな事、知ってるの?!」


アンリースは瞳を潤ませ、凝視する姉達を見回し…小声で呟いた。

「だっ…て…噂だったし…お姉様方が心配すると思って………」


マディアンはもう、しがみついたギュンターの衣服を、握り込んでその長身で美貌の青年を見上げ、叫ぶ。


「…本当ですか?!」


ギュンターは一瞬、苦しげに顔背け…そして今にも泣き出しそうなマディアンを見つめ、唇を噛むと囁く。


「…説明が聞きたければ…案内しろと言われた」

「誰に?」


背後からエレイスに声かけられ、ギュンターは振り向き、告げた。


「左将軍ディアヴォロス」



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