庭園 4
ラロッタがテーブルに肘を付き、両手で頬を挟んで
「オーガスタス様の笑顔。って、とっても素敵…」
と言い、アンローラとエレイスに囲まれたギュンターが、ぼそり。と呟く。
「あいつにああ笑われると、大抵の女はオチる」
ラロッタもアンリースも気づき、母も言った。
「あら…!
大抵の女は貴方しか、視界に入らないんじゃ無くて?」
ギュンターは母親の言葉に気づき、顔を向けると、ぼそり。と言った。
「俺の顔は毎日見てればその内、見慣れる。
けどあんな笑顔は早々、見慣れないだろう?」
マディアンは彼の意見に賛成だったが、他の皆は反論した。
「貴方のような美男は早々、見慣れないわ!」
「そうよ!」
「毎日見られたら、天国だわ!」
マディアンがそっ…と、オーガスタスに囁く。
「昨日の、逆ね?
彼、貴方に男としてコンプレックス持っていらっしゃるの?」
オーガスタスはそっ…と、彼女へ顔を傾けた。
「あの男は顔同様軟弱だと見られるのを、極端に嫌がっていて…昔は背だけは高かったが、かなり痩せていたから…」
マディアンは、ギュンターを見た。
肩も胸もとても逞しく見えた。
「貴方程では無いけれど、とっても立派な体格の方だと思うわ」
「彼は努力してそれを手に入れた」
マディアンは、オーガスタスを見た。
「貴方は…努力されなかったの?」
オーガスタスは苦笑する。
「この体格だと、猛者らに標的と見られ、いつも挑みかかられてるから、努力しなくても筋肉が付く」
言って、まだマディアンが見ているので、付け足した。
「ギュンターは、自分を猛者と認めさせる為、周囲に自ら喧嘩を売った」
マディアンはとても大柄で大らかな笑顔の、オーガスタスを見つめた。
「ギュンター様はきっと…自分から喧嘩を売らなくても誰からも猛者と認められる、貴方が羨ましいのね?」
オーガスタスは彼女に優しく微笑むと
「本人が目の前に居る」
と促す。
ギュンターは気づくと
「俺だけ特別じゃ無い。
大抵の男は男として、普通にオーガスタスに、コンプレックス持つぞ?」
と言って、アンローラとエレイスをぎょっ!とさせた。
だがギュンターはオーガスタスに顎をしゃくる。
「奴に聞いてみろ。
俺のような面になりたいか。って」
マディアンが見てると、オーガスタスは『真っ平だ』と言うように、目を、堅く閉じて返答に代えた。




