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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
二章
32/144

庭園 2


 朝食の席で妹達は、テーブルの塩を手渡すギュンターに、きゃあ!と声を上げ、ギュンターが動く度にきゃあ!と小声で叫ぶ。


オーガスタスが見ていると、珍しく食卓に居る父親は、娘達のはしゃぎぶりにげんなりした様子で項垂れていて、母親はにこにこ微笑んで

「こんな美男なお方って、私ですらお目にかかったことがありませんもの!」

と、娘達をたしなめる様子も無い。


ギュンターは顔を上げ

「俺の優美なのは顔だけで、中身は粗雑で乱暴者だから…」

と言うと、食卓の歓声は更に高まり

「お強いのよ!」

「とても、勇敢でいらっしゃって!」

と女性達は頬染めて叫ぶ。


ギュンターはオーガスタスの顔を、確認を取るように見つめた後

「多分付き合えば、俺の性格は顔とかけ離れてるから、うんと失望するぞ?」

と言い、女性達は

「お付き合いして下さるの?!」

と都合の悪い部分はばっさり()って、はしゃぎまくるものだから、ギュンターも顔を下げたが、オーガスタスも、そして同席してる、父親迄もが同様に、顔を下げた。


父親は玄関を出る際、ギュンターに

「かしましい娘達で、大変すまない」

と告げて行き、娘達は父親を、大ブーイングで見送った。




 朝食の後、庭で皆でテーブルを囲みお茶をたしなむ。


午前の風がたいして広くは無いけれど、きちんと手入れされた庭を吹き抜ける。


「ローフィス様は婚約者がいらっしゃるそうですけど…ギュンター様はご婚約は、まだ…?」


母親に、ティーカップの乗った皿を手渡され、ギュンターは一瞬、返答を待ち構えてる娘達の雰囲気に気圧されたように、戸惑い…けれど口開く。


「俺は…片思いの…相手がいて、振り向いて貰えない」


「まあ!」


その場はけたたましく論争が始まり、母親も娘達も、彼が片思いを止めて、別の女性に気持ちを向けないのかを口々に質問を投げかけ、探り始める。


マディアンはつい、横のオーガスタスを見る。

彼は落ち着いていて、マディアンは少し、彼が夕べの事を綺麗に忘れてしまっていないか、不安になって伺う。


「…ギュンター様。って、どこでもこんな風ですの?」

「ええ、大抵」


言って、振り向くオーガスタスは、マディアンがじっ…と見つめているのに気づいた途端、頬を染め、顔を背ける。


マディアンは彼のその反応に、ほっ。として尋ねる。

「私の事、意識していらっしゃって?」


オーガスタスは赤い頬で俯いたまま、小声で答える。


「…あいつ…ギュンターの居る場では、大抵女性は彼しか視界に入らないから…つい」


そして思い直したようにマディアンを見るが、マディアンが自分を見ていて、視線をギュンターに向ける様子が無いのに、更に狼狽えた様子で頬を、赤らめた。



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