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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
二章
31/144

庭園 1



 次の日、マディアンは階下の妹達の叫声に、何が起こったのか。

と、壁を伝いながら部屋を出る。


あまり派手に動くと痛むけれど、そっとならもう、歩けるようになって、階段の手すりに掴まり、下を見下ろす。


ゆっくり三段程降りると、階下のオーガスタスがはっ!と顔を上げ、直ぐ手助けする為に階段を駆け上がって来る。


腕を支えられ、腰に腕を回されるとマディアンは、なぜかその大きな手の平の感触に、真っ赤に成った。


オーガスタスはそれを見て狼狽(うろた)

「大丈夫ですか?」

と屈んで顔を、覗き込む。


夕べ…室内で暗かったけど、その間近で見る顔の、その唇に…。

“確か、私の方から口づけたんだわ”


そう意識した途端、マディアンはもっと真っ赤になって、オーガスタスは仕方なさげに少し顔を離し、そっと寄り添って階下に促す。


マディアンは横のオーガスタスを見上げるが、彼は差し障りの無いようにマディアンの腰に手を添え、倒れないように支えながら、横を一緒に一段ずつ、降りて行く。


「(まあ…!

ちゃんと紳士的に、振る舞えるお方なんだわ)」


階下を見ると、ラロッタがオーガスタスの紳士ぶりにうっとり見惚れ、そして…金髪の背の高い男性が見え、その周囲を妹達が取り巻いていた。


「…今日はギュンター様が、ご一緒なの?」


そう振り向いて尋ねると、オーガスタスは少し困ったような表情で、小声で答える。


「ローフィスはあれで隊長をしていて…今日は隊務があるので、どうしてもその予定が外せなかったんです」


近づきつつある階下を見つめると、妹達はギュンターの、男らしい、けれど優美な美貌に見惚れ、彼の周囲で呆けている。


ギュンターは顔を上げ、階段を、マディアンを支え降りて来るオーガスタスに、視線を送る。


横のマディアンに気づくと、ギュンターは少しすまなさげに顔を、下げる。


「俺でも荷物持ち程度は(つと)まるが…ローフィスのように、(うま)い口は聞けない。

今日は俺で、悪かったな」


その素っ気無い謝罪に、マディアンはつい、オーガスタスを見る。

オーガスタスは気づいたようにマディアンに振り向く。


「顔はあの通り、そこら辺でお目にかかれない美男だが、中身は普通の男だ」


マディアンはギュンターを見た。

けれど…とても素直そうなお方だわ。

そう思って。


階段を降りきると、マディアンはギュンターが、オーガスタスよりは低いけれど、普通からしたらとても長身なのに気づく。


ローフィスですら、二人きりで立って並ぶと、かなり背が高く感じるのに。


ギュンターはオーガスタスを見ると

「俺が馬鹿な事言ったら、叱ってくれて結構だ」

と告げる。


オーガスタスは少し彼に屈むと、小声で囁く。

「左将軍に、何か言われたのか?」

ギュンターは項垂(うなだ)れる。


「女性だらけだから、直接話法は控え、行儀良く接しろ。と」


マディアンが見ていると、長身のギュンターが項垂れる様を、オーガスタスは弟がしょげてるのを見るように、くすくす微笑って見つめていた。


オーガスタスはその様子を呆然。と見ている妹達に

「こんなデカい男がしょげてるのは、珍しいか?」

と笑顔で尋ねる。


が、アンローラは両手胸の前で組んで


挿絵(By みてみん)


「いいえ!」

と叫び、次女エレイスも


挿絵(By みてみん)


「とても新鮮ですわ!」

とやっぱり、叫んだ。



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